2017/06/05 のログ
ご案内:「霊樹の森」にマティアスさんが現れました。
マティアス > 何かを欲するならば――動かねばならない。

天を見上げ、口を開いていても何も落ちてこない。
落ちて来るとすれば良くて雨だれ、時と場合と地域によっては糞便やら投げ出された死体位だろう。
金銭を投げだしても、都合よく望みどおりの品が手に入るとも限らない。

求めるならば――行くしかない。在り処がある明確であれば、其処で求めるのが欲を充たす近道である。

「……うん、相変わらずだねぇ此処は」

王都より離れ、どれだけ時間をかけたか。知る人ぞ知る或る森の入り口で清浄な空気を思いっきり堪能するが姿がある。
黒いローブ姿に腰に剣を帯びた姿。一見して魔術師然としているが、得物がそれだけであるとは思わせない。

ただの散歩ではない。或る冒険者ギルドを経由し、薬師ギルドからの依頼を請けて此処に立つ。
幾つか指定された薬草類の採取、並びに森林内を跋扈する魔獣の可能であれば討伐、排除。
私的にもやりたいことがあれば、請けない手はない。

ご案内:「霊樹の森」にエルツさんが現れました。
エルツ > 「いい場所知ってるねー、おにーさん」

(ひこひこと鼻を動かしながら上を向く少女。ミレー族…特に、犬の気質を強く継ぐので人間より嗅覚が鋭い。この辺の匂いは強い緑と土の匂いで、土を見ずともよく肥えた場所だと分かった)

「んで、今日は薬草摘むだけで良かったんだっけ?なんか他にもある?」

(ギルドで鉢合わせ、同じ依頼を受けていたからここまで引っ付いてきたけど、彼にはなにか他にやることがあるのだろうかと首を傾げた。
なにせ薬草摘みは初心者向けの簡単な依頼。常時受け付けているというものだからだ。駆け出しの自分ならともかく、経験の詰んだ人には物足りないはずで)

マティアス > 「勿論だとも。この辺りは薬草師や魔術師の類にとっては有用な場所でね?

 ……――うん、要点だけで云うと。お金になる薬草や霊木の類が狙える場所だよ」

専門的な視点を以て言うのなら、大地に流れる力の波動が強く地表に現れている場所である。
故にこの森は肥沃であり、深山幽谷に踏み入らなくとも有用な薬草の類などが手に入る可能性がある。
また、奥地に生える年月を経た樹木であれば、魔術師たちが使う杖の材質としても有用であろう。

丁度、依頼を見繕う中で鉢合わせ、同道することとなった知り合いに眼鏡を押し上げながら説明しよう。
専門用語を述べても仕方がない。重要なところをかみ砕いで述べるだけにとどめて。


「嗚呼、最近どうも魔族や魔獣の出入りがあるようでね。駆除して欲しいというのもある。
 ともあれ、探索に勤しもうじゃないか。……採り過ぎ注意、足元注意だよ?自然は懐深いけれど時に厳しいものだ」

では、と。身に着けた装備類を確かめる。
袖口に仕込んだ符、良し。飲み薬類良し。採取用の鞄と手袋とナイフ、良し。
――左腰の剣、良し。諸々確かめたのちに、気負いのない足取りで森へと踏み入る。

基本的にあまり人の手が入らない森は静かだけど、そこかしこに確かな草獣の気配がある。息遣いがある。
周囲に目を遣りながら、時折足を止めて足跡や糞便の有無等を確かめよう。

刻限は丁度、昼過ぎ。木漏れ日を借りて探索の助けとするには十分すぎる。
 

エルツ > 「すごく重要な情報ありがとー」

(手に持った地図に赤丸して書き込んでおく。森の中だけど迷わないというのも犬としての能力を継いだ部分。
忘れっぽいので、メモは欠かせないのだけれど)

「こういう緑の濃い場所だと、植物系かな?はーい!全部取ると来年困っちゃうもんね」

(了解の意味を込めて敬礼のポーズ。冒険者というのは危険が多く出来高報酬なので、こういう確実に稼げる場所を教えてくれる人はほぼいないし、森歩きや採取の基礎などは経験で覚えるか、お金を出して講師に教えてもらうかしかない。彼のように気軽に先生役を引き受けてくれる人などほぼいないのだから、素直な返事にもなろうというもので)

「剣良し、荷物良し…あ、おにーさんこれ飲み水にどうぞ?あと、こっちは行動食ね」

(手荷物のチェックをして、そういえばと手渡したのは水魔法で生成した水にはちみつ漬けのレモンを沈めた飲み水と、スティック型に焼いたスコーン。こちらはドライフルーツがたくさん入ったもの。水分補給とカロリー、ミネラルの補給が簡単にできるよう工夫した一品だ。
森の探索は勿論初めてではないけれど、遺跡で手ひどいトラップにかかったこともあるし、視覚だけでなく、聴覚や嗅覚までしっかり使った警戒モードで分け入ろうと)

マティアス > 「どういたしまして。

 ――うん、そうとも。全部根こそぎにしてしまうと、次に生えている保証はないからねぇ。
 植物系か……知っている中で面倒なのがあるけど、それじゃあないだろうね。多分獣の類じゃあないかな」

そう、この森の生態系は出来る限り保全するように気を付けなければならない。
特有の植物しか治せないといった病が流行った時、それがないという事態はあってはならないものである。
狩人ではないものの、この手の心得は冒険者としての経験を培う中で覚えてきた。
だから、それを他の人間に教導することに惜しむ理由はない。否、まだまだ若輩者であれば、なおさらである。

「やぁ、これは良いものだね。有難く頂くよ」


進みだす前に、受け取る品々に有難い、と素直に笑って答える。
この手の品は良いものである。自分も持ち合わせはあるが、如何せんここまでちゃんとしているとは言い難い。
ローブの下や腰のベルトに吊るして、進もう。途中、足を止めて……。

「――さっきの御礼に一ついいものを教えてあげよう。
 君の足元、右斜め前の樹の幹に映えている赤いキノコ、そこそこ値がついているよ?」

地面に手を付け、枯草に隠れた足跡を見出しながら眼鏡の目を細め、ふっと視線はそのままで森の一角を指さそう。
一見して、毒々しい赤色のキノコがそこにある。毒性はあるが、適切に処理すれば良薬となる類のもの。

エルツ > 「ここみたいな場所だと、珍しいものもあるだろうしねえ。
それに、残しといて毎年きたほうが、長く稼げるし」

(いくらレアな植物でも、一気に大量に出回ると値崩れが起きてしまう。同業者にも恨まれるだろう行為なので、そこは慎重にすべきだ。細く長くと意識する辺りは冒険者というより、商売人。世話になっている店主の影響だろう)

「いえいえ。この時期って長袖じゃ暑いけど、森に入るなら着てなきゃだし。そっちのバーは、ドライフルーツの処分も兼ねてるしね?あ、賞味期限内だし味見もしたから、そこは安心してよね」

(長袖のシャツやズボンが手放せないのは、森をあるくと茂みや草やら突っ切ることが多いし、虫もいるからその予防だ。ヒルなんか出るときもあるくらいで、虫よけに刻んだタバコを漬けた水とか塗るときもある。ニコチン臭いけど虫よけ、獣除けには抜群の効果だ。
差し入れの菓子は、胃を掴んで仲良くなろうという思惑とともに、一人で食べきれないので在庫処分という意味も含まれたもの。自分のセールスポイントをアピールしていくスタイルは、ほんとうに商売人のそれである)

「え?あっぷな!ふみつけるとこだった!」

(言われて気が付いた足元には、確かに赤いキノコが生えている。ざっと周囲を警戒しなおし、いそいそと収穫して…ひくりと鼻が動く)

「ねえおにーさん。風上、なんか獣くさくない?」

(嗅覚が捕らえたわずかな匂い。キノコは腰のポシェットにしまい込んで盾を構える。勿論、右手は剣をいつでも抜けるようにして)

マティアス > 「経験者曰く、奥に行けば行くほどらしいけどね。今日はそこまでは踏み込まないよ」

希少植物とは名前の通り、数が少ないからこそである。其処に特有の作用があれば、その希少価値は跳ね上がる。
行き渡るべきものに行き渡らないことこそ、恐れるべきでことである。
他者の不幸は蜜の味とは言うが、驕れる者の行いの報いが甘露であるべきだ。

「ご厚意感謝するよ。味見もちゃんとしているなら、信用するとも」

この時期の森では蚊や虻等が煩わしい。また、強い日差しや枝葉等、素肌を苛むものは数多い。
自作の蟲獣除けの香を上着に焚き締めていても、他にも備えなく山野は歩けはしない。
適切な水分や栄養の補給もまた然り。
自分も小麦粉やナッツ類を焼き固めた保存食はあるが、味わい深さには彼女の品に負けるだろう。
つくづく、将来が楽しみである。片膝をつきつつ、地表を確かめながら笑って。

「僕もまず一つ押さえて、と。……ん、確かに匂うね。
 エルツ君も見てみるといい。まだ新しい足跡だよ。この深さと輪郭、かなり体重がありそうだ」

丁度、見つけた薬草を丁寧にナイフで土をかき分け、鞄に納めよう。
ついていた種を落として、堀り跡に入れておくのも忘れない。
その上で、目についた足跡のうえに持参していた白砂を散らし、より輪郭を分かりやすくする。
二つに割れた形状と、強く土に食い込んだ形状、間隔から体長や体重をイメージする。――かなり、大きい。

嗚呼、だからか。強い獣臭が風上から香るのは。小さく頷き、左手を腰の剣の鞘に添える。

――遠く、森の奥に垣間見える。それは大きな、猪と思しいシルエット。