2017/01/27 のログ
ご案内:「設定自由部屋3」にマティアスさんが現れました。
■マティアス > ――路銀が心もとない訳ではないが、何をするにしても金が必要だ。
最低限の荷物を携えて旅をするのだって、金が要る。
ただ固い馬車の床に雑魚寝する間、無聊を紛らわすための本だって無銭というワケにはいかない。
故に、己に為しうる仕事に飛びつく。それが冒険者という奴だ。
いつか、心躍らせる未知なる何かに遇える、その日まで。
「……だが、しかしだね。此れは此れでどうかな、と思わなくはないね」
そうぼやきつつ、ローブの裾を揺らして歩く其処は王都に山二つ程離れた地にある。
もとは清水を湛える池だったそうだが、いつしか瘴気を漂わせる沼地に変じたという。
依頼は其処を水源とする村々からだ。瘴気を祓い、また元の清き水の集う場所にしてほしい、と。
そのための下準備として、沼の縁を巡り歩き、周囲を確認する。
如何なる儀式と手管を凝らせば、依頼を達しえるか。
話によれば、その沼地に魔物も巣食っているともいう。
伝え聞く特徴から、別途別口より以前から受けている依頼の達成も恐らく、見込めるだろう。
道中拾った木の枝を引きずり、地面に一筋の線を引く。
その上で、時折ポケットから出した小さな細長い木札を等間隔で地面に差しておくのも忘れない。
黒い顔料で不可思議な文字とも模様とも突かない図形が描かれたそれは、術の媒体となり得る。
「さて、と。これで一周したかな」
やがて、見えてくるのは出来る限り長さを揃えた枯れ木を切り、井の字型に組み上げた焚き火だ。
既に火は入れている。刻はすでに夕刻を迎えていれば、傾きかけた陽光の下でもよくわかる。
焚き火の周囲にも長さを整えた木杭を立て、四角く紐で囲いを敷いている。
ただの焚き火ではない。これは儀式のための祭壇である。ぴんと張られた紐を潜り、その中に入ろう。
まず行うべきは、浄化の儀である。
ご案内:「設定自由部屋3」にエアルナさんが現れました。
■エアルナ > 泊った村から見込まれて、頼まれてしまったなら旅の途中でも仕事は受けるしかない。まして地元に多大な影響があるような頼み事は。
というわけで、やってきたのは瘴気をたたえる沼地。
魔物の住み着いたと噂のある場所の、水辺にほど近い場所に起こしたたき火を守りながら、どことなくよどんだ空気に浮かない顔をする。
「これは…確実になにか、いますね」
つぶやきに応えるように、傍らの白狼が頷く。なにかいるのを感じているのか、座ろうとせず、立ったままだ。
その狼の顔がそれた方向を見れば、青年の姿が見え、ほっと安堵して
「おかえりなさい、マティアスさん。…いかが、ですか?」
短い言葉で、状況を尋ねてみる。
■マティアス > 「やぁ、戻ったよ。火の番をさせてしまってすまないね。
一人でもやれなくないが、いちいち熾すのは手間なものだからさ」
ともあれ、だ。付き合わせては火の番をさせている姿を認めれば、言葉を投げ返そう。
少しばかり、すまなそうな素振りを見せるのは由縁がある。
ここに巣食う魔物の傾向を資料と伝聞より察しえたからだ。男よりも、女の方が食いでがある――という話である。
そうだからこそ、見込めるものもある。だが、それは後に語るべきであるが。
「間違いなく居る、ね。とりあえず手早くいこう。暗くなってしまうと面倒だ」
では、と。ローブのフードを被りつつ、袖の中から取り出した袋の中身を焚き火の中に放り込む。
其れは調合した魔法薬や或る種の香木の欠片だ。ぱちぱちと爆ぜる炎に、すん、と。微かな香りが加わる。
そのうえで、左腰に帯びた剣をずらりと抜く。右手で軽く振るい、足は縺れるようなステップを踏む。
魔力を起こす。くすぶる炎が、ごう!と大きく弾けて、勢いを増す。
「我――四方を封じ、天と地を閉ざす。
界を此処に定む。凝る澱みよ集え。定まらぬ姿を晒せ」
そんな文言を出だしとして、詠唱を連ねる。空から見れば分かるかもしれない。
地面に描いた線が沼を囲う円となり、等間隔で立てられた小さな木札がぼう、と光を放っていると。
瘴気や澱みをこれ以上内外で育てないよう包囲し、集めるための儀式魔術である。
■エアルナ > 「かまいません、火の番くらい。…こちらをうかがっている気配は、先ほどからしっかりと。」
と、ペロが言っていますと。白狼の警戒を解かない姿勢を指さし。
暗くなると面倒、という言葉に同意する。
「黄昏時は…怪しい者たちの好む時間帯でもありますが。今日のお客様は――はたしてどんなかた、でしょうね」
戯れ交じりの口調で言いながらやや後ろに下がれば、青年の手技で炎をが勢いを増す。
魔力を感じ、見通すのが魔法使いだ。それゆえにわかるのは、展開された儀式魔術――そして。
「っ、」
その中に、はじけるもの。感じる存在。
その手にクリスタルのロッドを握り締め…ゆがむ何かを、見据えよう
■マティアス > 「成る程。……あぁ、可能なら刃物の類とか出しておいた方がいい。
獲物については、じきに分かる。
僕が口で言うよりも実物を見た方がとてもとても、分かりやすい」」
術を繰る合間に言葉を挟みつつ、剣を振る。
左手の中指と人差し指を添えてぴっと伸ばし、淡い光を帯びた剣身をなぞって切先まで至らせる。
ローブの裾を靡かせて、小刻みなステップを踏んで右手で持つ剣を地に立てる。
身振りも含めて、悉くが己の魔力を喚起し、高めるための動作だ。
各地の術法を取り入れ、アレンジした結果の産物。
その証として地に刺さる切先から、見えない波動が風の如く起こり、走り抜ける。
「祓い給え。清え給え。四方を司る素霊の力受け、ここに星辰を巡らす。速やかに我が敷く律の如く為せ。――哈ッ!!」
地を剣を突き立てつつ、両の手で複雑な印を切り、詠唱を終えて両の手を大きく左右に広げよう。
連動して円上に刺さった木札たちが青白い炎を上げて焼失し、その内側で風が巻き起こる。
炎に照らされて、見えるだろうか。
何処からともなく生じた黒い靄が沼の内側に渦を巻いて集まり、祭壇に宿る炎を移されたかの如く消え失せるのが。
そうして至る澱みを、瘴気を昇華した先の清浄に耐えかねて、水面に泡が生じる。姿を現すのは――。
「……――ッ、ん。やっぱりか」
青黒い蔦の集まりとも付かない異形である。目鼻も何もない、さながら巨大な食肉植物の如きモノ。
自身で生成する瘴気を呼吸し、さらに生物の排せつ物や血肉を啜って肥え太るモノである。
だが、それにしても大きい。二階建ての家屋くらいはある。触手そのものの蔦を伸ばせば、もっとあるか。
長く延ばされた蔦の先に生える、顎のような器官がわななく。
いわば、窒息しているようなものだ。水から陸に上げられた魚の如く。
そんなモノが自分達を認識して、猛る。怨嗟と再度瘴気を吐き出す糧とするために。
■エアルナ > 「刃物? …わかりました」
つまり。打撃系ではあまり効果がない表面をもつ相手、ということだろう。クルン、とロッドを逆さにして勢いよく振り下ろせば、底から現れるのは槍のような穂先の刃ーーそれを認めればあとは、そちらを前にして軽く構えて。
そして、まずは見届ける…沼の表面を割り、出現するその異形の姿を。
「あれは…ずいぶんと育ったものですね。せいぜい人間大、のものなら何度か見たことはありますが。」
嘆息。
植物の怪物としては、実に大物だ。
「どうします?」
なにか作戦はあるのかと、青年のほうをちらりと見て
■マティアス > 「アレは汚染された地域でたまに見かけるものでね。
自身で生成した瘴気を呼吸し、生物を糧にしてより肥え太る。
……ウツボカズラとか知っているかね?蟲を捕食する類の植物なんだが、あれに近い。……が」
一旦、ここで区切ろう。己の忠告通りに刃物を構える姿をちら、と見つつ、一瞬思考を巡らす。
言葉を選ぶ。だが、どう足掻いても、どう包み隠しても率直な表現にしかならない。
「……――あれの表面、てらてら照り光っているだろう?
生態として、生き物がひり出すものを直接啜ってよく肥える。
糞尿や血の類は言わずもがな、女性だったら母乳や愛液とか色々な。
おまけにより効率よく絞り出させるため、体液に媚薬のような作用まで含んでいる有様だ。
色んな意味で厄介な癖に需要があってねぇ。豊胸作用とかもあるそうだよ? ――ゆ、え、に、だね」
危険性を述べよう。その裏腹の別の意味での有用性も込みで。
剣を構えつつ、魔力を回す。己の周囲に人の頭ほどもある青白い魔力のカタマリを6個浮かせ、周回させる。
「まず、可能な限り捕まらないことだ。捕まったら速やかに片方が蔦とかを断ち切ること。
奴の体液を直に浴びるのもやめた方がいいね。 氷凍系の術はお得意かな? と、……来るぞ!」
方針を述べたところに触手の束がくる。極太の鞭として、自分達のいる場所を叩く。
咄嗟に飛びのいて躱しつつ、剣が向く先に生み出した魔力の塊=魔弾を放とう。
浄化の術式の基点だった篝火の祭壇。其れが弾け、舞い散る炎を浴びて化け物が震える。
■エアルナ > 「ウツボカズラ…だとしても。それはーーか、可愛くないですねっ」
説明を聞けば思わずこぼしたくもなる。が、つまり、いろいろ薬の材料にもなるということだ。
豊胸作用、のところでつい植物をまじっと見てしまったのは、たぶん、気がつかれてないだろうけど。
需要がある、というのもわかる。わかるのだが、つかまるとひどい目に合うというのは…間違いなさそうだ。
女はもちろん、…たぶん男でも。
「凍結系はつかえますが―ーマティアスさん。あれ、切り付けたら、それこそ…体液浴びちゃうんじゃないですか?」
どっちかと言えば。炎でたじろぐなら、燃やしてしまいたいものだが…そうもいかないらしい。
「あれだけ肥えるには、どれだけ犠牲者がでたか、ですね。
水よ、とく集まり、時を超えよ――冷たき雪と氷となりて、舞え踊れ っと!」
ロッドの周囲に冷気が顕現し、雪の結晶が舞い始める。
すかさず飛んでくる触手をよけてとびすざり、その触手へと氷のシャワーを浴びせかけようと。
■マティアス > 「いやぁ。あれを可愛いと言える人物が居たら、そのセンスを疑わずにはいられないねぇ」
食性(?)はどうあれ、極限状況で育つものである。
その肉に蓄える成分というのは、何かと使い出がある。殆どが如何わしい薬の用途ばかりだが、滋養強壮の薬にもなり得る。
しかし、戦いなれた身でも、極力相手にしたくはない。
自分が餌食になる前に片をつけているが、糞尿を啜るために尻や股間を狙ってくるのは面倒が過ぎる。
「浴びないようにするための戦い方は心得てるよ。傷口も焼いて塞げばいい。
あの蔦の一、二本は確保しておきたいんだ。だから、一先ずは凍らせる方向で頼むよ」
理由はおのずと分かる。右手一本で正眼に構える剣の切先の向こうに、改めて敵を捉える。
生じる氷のシャワーを受けて、魔物の蔦が凍てつき、動きを鈍らせる。そこに向かって走ろう。
「――おおおっ!!」
籠めた気力を受けて、剣が眩い光を放つ。強い熱を帯びた光だ。
その力を宿らせた刃をひらめかせれば、凍てついた触手の束が綺麗な断面を見せて落ちる。
微かに切断面から立ち上る煙とは、切断と同時に焼いて体液の放出を阻害した結果でもある。
だが、手傷を負って黙っていられる魔物ではない。
内部の体液の流動で迅速な動きを得るが、低温に晒されたら動きは鈍る。
それでも、数は力となる。術者たる女性に向かって、2本の蔦が狙い澄ませて奔る。
沼の中から水面を割って、蛇の如く両足を縛りあげて捕まえようと。