2017/01/07 のログ
ご案内:「第七師団駐屯地」にクラーラさんが現れました。
クラーラ > 王城の執務室からの帰り道に、第七師団の兵員を見かけたのがきっかけだった。
女性の身の回りについての事で何やら戸惑っていたところに口を挟み、師団長に往復ビンタをかまして生きていた話もあり、この駐屯地にたどり着く。

「…お邪魔します」

小さくノックをしてからドアを開くと、静かにその部屋の中へ。
ベッドに座る彼女の姿は夜の闇でよく見えないが、窓から掛かる星明かりに、うっすらと輪郭は見えていた。
どうせだから今日ぐらいは自分が身の回りのお世話をしようかと切り出したものの、何処か戸惑いながらの頷きだった答えが蘇り、表情こそ涼やかなもので崩れないが、手にはじっとりと汗が浮かびつつ、彼女へと近づいていく。

サロメ >  
『全く、妾の目も曇ったか───おっと』

ぶつぶつと独り言を呟いていた"剣"は予期せぬノックの音に沈黙する

ノックに対する返答はなく、
部屋に入れば上半身をベッドから起こし、虚ろな目で窓の外を眺めている女性が目に入るだろうか

来訪者に対する反応が何もない様子は、
"心が壊れている"という状態を如実に表していた

クラーラ > ケラウノスが彼女の剣に呼応し、薄っすらと光を宿す。
普段ならその光と、彼女が携える氷の魔剣に心を躍らせる瞬間だった。
けれど、その主は何の反応もなく窓の外を見上げている。

(「――見つけたら、王都から離れたところで、深窓の令嬢にしたほうがいいと思う」)

将軍にそう告げたのは自分だったと言うのに、今になってすべてが繋がった。
なるべく外に情報を漏らさないのも、こんなところに隔離しているのも、彼等が面会に戸惑ったのも。
自分が考えた最悪が起きてしまったから。

「……冬の空は綺麗。冷たくて震える程綺麗になっていくの、空に雲がなくなって、熱が空に逃げるからだって」

夜空を見上げているのだと、己に言い聞かせるように他愛もない話で言葉をかけつつ、ベッドの傍にあった椅子に腰を下ろす。
どうにか笑みを作りながら語りかけると、己の魔剣を彼女の剣と同じように傍に立てかける。
距離が狭まり、一層光を放つも、それに構えるような状況ではなかった。

サロメ >  
「……」

聞こえているのか、聞こえていないのか
夜空を眺める眼を僅かに顰める

返事はなく、そちらに顔を向けることもしない

代わりに、立てかけられた剣の宝玉が冷たく輝いた

『(───?)』

意思もつ剣は、自分に呼応した剣に僅かに興味を示す

クラーラ > 「……だからかな、冬の夜は明るく感じる」

ゆっくりと声を絞り出し、話しかけ続けるも反応はない。
何か声を掛けないと、彼女はずっと何処かに閉じこもったままになりそう。
自分が味わった苦しみと屈辱では想像できないモノに晒された彼女を、直視できなくなっていき、スカートの裾をぎゅっと握りながら俯いていく。

「……」

いつもとは違う光、冷たい光に気づくとそちらへと視線を向ける。
彼女が携えていた氷の魔剣に今になって気づくと、相変わらず光を放ち続けるケラウノスに苦笑いが零れた。
使い手を選びし同胞がここにいると、今でも主張し続けている。

「……貴方は凄い人、あの戦争でも命を落とさず、ずっと前で頑張って、魔剣と生き続けたから。この子……ケラウノスと出会う前から、尊敬してた」

少し年上の彼女に抱く思いを吐き出すも、出来れば彼女が言葉を交わせる時に伝えたかった。
変わらず光を放ち続ける魔剣に触れると、落ち着いてという様に柄をゆっくりと撫でる。

「今は仕事しなくていいよ、サロメさんも、その子も疲れてるだろうから」

その言葉に呼応するように光がゆっくりと収まるものの、それは彼女の携える魔剣ほどではないにしろ意志がある証拠でもある。
童話に語られる事もある、恐れなき騎士の携える雷の剣足り得る潜在力というところか。

サロメ >  
『───魔剣の主か』

ぼうっと淡い光が拡がり、それと同時に鈴のような女性の声が部屋に小さく響く

『魔剣の繰り手に会うのはこの国では久しいのう。
 …我が主はご覧の体たらくじゃが、妾を一緒にされては困るというものぞ』

疲れてるだろうから、という言葉に抗議するように、宝玉の光が明滅した

クラーラ > 「……?」

不意に高い声の音が響き、びくりと驚きに身体が跳ねる。
何処から!?というように、勢い良くあたりを見渡すものの、続いた言葉から察する先は、先程まで視線を向けていた剣の方。
恐る恐る見やると、光が喋るのに合わせるように明滅しているようにも見えた。

「……ど、どうも。今の声って…まさか、貴方?」

すっと彼女の魔剣を指差すものの、変わらぬ表情とは裏腹に同様に指先が震える。
ケラウノスに至っては、そうだと言わんばかりに淡い光を改めて放っていた。

サロメ >  
『驚かせたか?
 それは済まぬな。妾はゼルキエス。この剣に宿る思念とでも言おうか。
 魔剣に携わる者なら、声くらいは聞こえても可かろうと判断したのじゃ』

古めかしい言葉で話す剣は、言葉と共に宝玉を淡く明滅させる

『此処に訪れるということは、我が主の縁の者であろう?
 妾もはたと困り果てているのじゃ、もう余り残された時間もない…』

クラーラ > 「ゼルキエス…さん? うん、ちゃんと聞こえる…」

何処と無く古風な口調は、魔剣の意志が染み付いた年月を示すかのようで、普段なら感動で色々と聞いてしまいそうなところだろう。
こくりと頷きながらも、続く言葉に耳を傾ける。

「えっと…師団とかは違うけど、同じ王国軍で…その、ここの師団長さんに平手打ちした縁で…ここに」

奇妙な縁ではあるが、彼女の問に肯定すると、時間がないと言う言葉に、緩やかに首を傾ける。

「残された時間がないって…どういうこと? これって、サロメさんが酷いことされて、心が壊れちゃってるとかと…違うの?」

サロメ >  
『平手打ち』

一瞬明滅が停止する

『ふっ…はははははっ。
 あの者を平手打ちか、それは好い。
 意地もありプライドもあり、テコでも動ここうとしなかったのであろうな』

明滅が楽しげに早まった
微妙に感情がわかりやすいようでもある

『我が主の心は凌辱程度で壊れるほど弱くはないぞ。
 壊したのは魔族の手の者だ。
 魔族の力が加わり心を破壊される、それは呪詛に等しい。
 ……こうやっている間も我が主の魂を毒のように蝕んでいる』

一転して明滅は落ち着き、不安げに光が揺れる

クラーラ > そう という様にこくりと頷くと、楽しげな笑い声にキョトンとした様子でゼルキエスを見やる。

「ふふっ……うん、二度助けたからもう助けないとかいったり、女心がわからないとか言った時に、平手打ちした」

魔剣の想像したとおり、自分が女の脆い心を察しろといっても受け止めなかった彼にカッとしてのことだったが、頑固だなと思ったのは他にもいたらしい。
笑みを浮かべたのもつかの間、問いの答えは想像した最悪よりも酷く、少しばかり顔が青ざめて小さく震えた。

「……もし、それが…解けなかった…ら」

時間がないというだけあり、きっと壊れてしまう。
死ぬよりも苦痛な存在に落ちるのだろうかと思えば、震えが止まらず、胸元に寄せた掌をぎゅっと握り込んでいく。

サロメ >  
『人は肉と霊と魂でその存在を構築される
 そのうちどれか一つでも欠ければ、維持できぬ』

──明滅が小さく、弱まる

「死ぬということじゃ」

クラーラ > 「……」

死ぬ、そう言われてから改めてサロメの方へと視線を戻す。

「サロメさんは…ちゃんと生きたいのかな。私は…一度乱暴されただけで、死んじゃいたいぐらい辛かったけど」

玩具のように弄ばれ、全てを汚されてしまった彼女は、それでも命を求めるかが分からず、そんな言葉が溢れる。

「…解く方法って、例えば掛けた人を倒すとか…そんなの?」

それでも、解き方を問うのは、自分も彼女を失いたくないと思うからで。
静かに呟くと、再び魔剣へと視線を戻した。

サロメ >  
『生きたいという意思がなければ既に死んでおるわ』

言葉をそう返して、光が落ち着く
まるで思案するようにぼうっと薄く薄く輝いて

「術者と切り離された呪詛ならば一概にそうは言えぬ。
 しかしてそれを判別する術は、少なくとも妾は持っておらぬ。
 術者を殺してしまいたいのは山々であるがな」

クラーラ > 「…そっか、強いね、サロメさんは……」

生きたいと思うからと、まだここに在り続ける理由を聞けば、笑みを浮かべる。
それなら呪いを解いてあげないといけない。
そしてその解き方を問うと、魔剣にも詳しくはわからない様子に、少し思案顔で解決方法を纏めていく。

「ということは…呪いそのものを消してしまうか、掛けた人を捕まえて、呪いを解かせるか、最悪殺しちゃうか…。でも殺すとそれでも残る術なら厄介」

一筋縄ではいかない彼女の身の危機に、心配そうにサロメを見やり、それから 魔剣へと視線を戻す。

「じゃあ私も探す…解く方法」

サロメ >  
『……時間はないぞ』

私も探す、という声には少しだけ厳しめの声色で
しかし宝玉に灯る光が暖かくなったように感じるだろうか

『…我が主もまだ生きようとしておるが、
 主がこれでは妾の力では出来ることがほとんどないからの…』

主の周囲の力に頼る他はない

クラーラ > 「それでも…足掻かなきゃ」

警告するような声に、苦笑いを薄っすらと浮かべながら立ち上がると、ケラウノスを手に取る。

「大丈夫…だからゼルキエスさんも、あまり張り詰めないで? 私とか…師団長さんとか、きっと解くから」

早速動くのだろう、大丈夫と前向きに言葉をかけると、扉の方へと向かっていく。
静かに開かれた扉をくぐると、改めて一人と一振りへ振り返る。

「届かなくても…ゼルキエスさんも、サロメさんに声を掛けてあげて? 解けなくても、きっともう少しだけ、踏みとどまってくれるかもだから」

生きたいと願うなら、その気持ちが消えないように剣が出来るであろう事をお願いすると扉が閉まっていく。
魔族が現れる場所、そして、呪いを解く鍵となるもの。
二つに心があたりがあった、後は…正しいか、只管に探るのみ。

サロメ >  
『……そうするとしよう』

声をかけて、と言われれば素直に応じる
この主との付き合いも長い、願わくば此処で終わらせたくはないのだ

静かに宝玉の光は薄らいでゆく
扉が閉まりゆく様子を、僅かにサロメがその目で追う

その瞳は、相変わらず虚ろなままだったが───

ご案内:「第七師団駐屯地」からクラーラさんが去りました。
ご案内:「第七師団駐屯地」からサロメさんが去りました。