2022/12/11 のログ
■バルゴラ > 「………ハァ……。」
ため息を吐くと白い湯気が昇り、眼鏡のレンズが少し曇るとため息を吐いたが為に発生した事象にため息を吐いて、シャツの袖でレンズを拭く――…後で綺麗に拭かないと。
さて、1冊の本を手に取る。
魔獣……或いは獣人の生態を書いた本である。
タイトルは<<魔獣の飼育法>>と聊か胡散臭さから逃れられない、下手すると青少年禁止系の本では?となりかけないタイトルの背表紙を指でなぞった後に手に取った。
後は片手で背表紙を支えながら、表紙をパラりとめくり内容を確認し、面白いか知識として有用であれば読むのだが、さて、見るからにビーストテイマー向けなのだが、自分が読んで理解出来るだろうか?
表紙から次のページをめくり、直ぐに眼鏡のブリッジを中指で押上げて眼鏡のズレを直して、視線はレンズ越しに文章と挿絵に眼を通す。
暫くはそうして時間をつぶしていたが、借りるほどではないとわかると、図書館を後にし、寮へと帰るのだった。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/図書館」からバルゴラさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 奥地」にタツミさんが現れました。
■タツミ > 【待ち合わせ待機中】
ご案内:「九頭龍山脈 奥地」にエルディアさんが現れました。
■タツミ > 九頭龍山脈の奥地、人が来ない様なそんな場所。
解放状態での修行の為に偶に出向いては魔物を狩って、食べれる魔物ならその肉を食いながら修行を続ける。
移動術はあるが、修行に入った時はよほどの事が無ければ使う気はなく。
少し前から聞こえる破壊音に釣られるように、その発生源に近づいていく。
感じられる気配は大きい物が二つ、うち一つは今にも途切れそうで。
「こりゃ、大物っぽいな…さて、何がいるのかね」
ナニカに気づいて、その場所から少しずれた位置へ体を動かす。
其処を巨大な何かが通り過ぎ、樹々を倒して、動きを止める、気配の片方らしいそれは、生の気配を急速に小さくしていて。
そしてその何かを吹き飛ばした相手が、追い打ち気味に一撃を加えると、完全に気配は途絶える。
追い打ちへ来た何者かの姿をとらえ、一瞬の驚きを浮かべる。
小柄な姿、頭には龍の様な角があり、手足は漆黒、外見は甲冑のようで、恐らく女性というか少女か、体の線はそのように見える。
甲冑に包まれてていない場所は黒の薄布?か、に覆われて、さらにその背中には魔導機械製に見える、腕が一対、その腕の肘部分は大きく目立つ。
見えている顔の中、赤く輝く瞳には薄く知性が感じられる。
ただ、知性を覆うように獣性が感じられて、その気配は、幾度か戦った事がある戦闘狂達によく似ている。
「人の方にいきなりそんなもんとばしたら、危ないだろ、というか…言葉わかるか?」
その姿に警戒を強めつつ、棍を向けて声を掛ける。
重心は落とし、直ぐに動けるように構え、知性があるなら、とまずは会話を試みる。
産まれ故の性か、会話できそうな相手とは、まずは会話から入るのが基本で、甘さでもある。
それも暴走状態であったなら、関係なくなってしまうのだが。
■エルディア >
普通の動物は瘴気溜まりには近づかない。
触れるだけで命を奪うこともあるそれは往々にして災厄として扱われるものであり
野辺の動物……モンスターや怪獣などと言われる者達も自我を失いかねないそれを避けるよう生きてきたものが殆どだ。
けれど例外というものはいつだってあって……身に覚えがあると称する方々や、生存競争に勝ち抜いて一種の恐怖を失った存在は
逆にそういった”力の塊”へと吸い寄せられるように近づいてくる。
今宙を舞い、木々をなぎ倒しているそれもその一種。
…結果は大体こう。正気を失い、変質し、澱みをまき散らす何かになり果てる。
どこかに意識が残っていたのか、数合打ち合うと逃げ出そうとしたのだけれど。
「……」
殴り飛ばしたそれに追いすがる様に加速すると大剣を突き立てる。
ひときわ大きく痙攣した後、急速に熱を失っていく対象を確認すると一つ大きな息を吐きながら、大剣を引き抜いた。
普通の動物ではありえないほど巨大化したその体からは噴水の様に赤黒い液体が飛び出し、周囲を重く、そして赤く染めていく。
「……あれ?」
どうやら飛んでいった先に誰かいたみたい。
雨の様に降りしきる血に塗れながらかくん、と人形の様な動きで近くにいるイキテイルモノへ顔を向ける。
嗚呼、まだこの辺りにイキモノがいる。困ったなぁ。
「……危ない、なら、にげたほーが、イイヨ?」
血振りと同時に死した獲物の周囲に焔柱が立つ。
汚染源となる血も肉も確実に全て灰に還すために。
その明かりを背に、向けられた棍とそれを握る男へ歪な笑みを向けた。
■タツミ > 飛び込んできた相手が持っていたのは大剣の様子。
その大剣で吹き飛んできた何かに突きさせば、それで完全に動きを止め。
此方の問いかけに返ってきた答えは、逃げたほうがと言う言葉。
それと同時に、今倒された何かが焔に巻かれて、残る物もなく灰に返っていく。
「言葉わかるのか…あぁ、危なかったのは、今灰になったのが飛んできた時に当たりそうだったから、な。
まぁ、それ自体は事故みたいだし、良いんだけど」
言葉を掛けた相手の答えを聞きながら、小柄な体に似合わぬ大きな気配、そのアンバランスさに何処か感心したように笑みを浮かべる。
とはいえ、ここら辺にいて、飛んできた魔物と思わしきものを軽く倒す所を見るに、戦闘力は高いのだろう。
小柄な体で持つには大きい大剣を苦も無く扱っていた所や、さらっと立ち上がった焔柱の温度や密度からも良く判る。
「お前さんは、何でこんなとこにいるんだ…こっちは、色々あって修行してるんだが」
解放状態だからこそ、普段の静かに抑えた性格と、言葉使いは隠され。
尋ねながら、相手の隙を探す様に、棍の先を動かす、相手が気づけばこれ自体も余り良い顔はされないであろう、挑発にも近い行動。
意思が通じ、言葉が通じる、強力な戦闘力を持った相手に対し、先ほど思い浮かべた戦闘狂達に似た笑顔を浮かべ、それ自体は自分では無意識で。
「んー…あれだ、そっちがよけりゃ、ちと相手をして貰えないかね…勝ったほうが相手に一個、相手が不可能ではない事を叶えて貰えるとか、そんな条件で。
ちなみに、こっちができるのは…街からお前さんが欲しいもんを買ってくるとか、何か労働力としてとか、そこら辺かね…戦力はいらなそうだしな…あぁ、いや、もう一個一応あるか、戦い好きだろお前さん、その相手とかもできるかな」
そんな笑顔を浮かべながら、解放状態のなか、抑えていた炎を棍に纏わせ、先ほど警戒のために構えた格好のまま、少女に問いかける。
自分にできる事を軽く告げ、少女の答えを待ちながら、先ほどよりも少し腰の位置を落とし、それでいて前後左右、どちらにでもすぐに動けるよう重心自体はまっすぐに。
■エルディア >
投げられる言葉には答えずに改めてじっと目前の男を観察する。
長身気味で筋肉質。武芸を収めている雰囲気と低めの重心。
成程確かにそこら辺のツマラナイものよりは余程練り込まれている気配を感じる。
挑発するように向けられた昆の先もぶれる事が無く高い練度を伺わせる。
「……」
そして多分それだけではない。
この場所はそんな人基準のフィジカルでは何にもできないような場所。
……この男からは龍と似た香りがする。
強者であることに疑いを持たず、力を揮う事に喜びを見出す、正直一番”説得”が難しいタイプ。
どうしようかなぁ……と首を傾げていると男の口から飛び出した提案にはた、と動きが止まった。
「そっか」
遊んでくれるんだ。なら、このふわふわも、我慢しなくていいんだよね。
ずっと魔力欠乏で意識がふらふらし、視界も揺らいでいる。
どこかで誰かの声がする。獣の血が匂い立つ。
「じゃぁね、えるとね」
それをきっかけにパチパチと音が響き始めた。
初めは小さかったその音は次第に大きくなり
それに伴い髪や指先に紫電が舞い……
「あそぼ?」
無邪気な声と共に小さなその影は残光と踏み砕いた地面の欠片を残しながら飛び込んだ。
地を這うような低さで相手の昆に向かうように真正面から踏み込み、そのリーチの直前に背後の巨腕が男に向かい真っすぐ振りぬかれる。
■タツミ > 遊ぼうと、此方へ告げながら、足元の地面を踏み砕き、そのかけらをまき散らしながら飛び込んでくる。
小柄な体を地面につきそうなほどに低く、真正面からの踏み込み。
同時に、その背中にある巨大な腕が振りぬかれるのを見て。
「はっ、これが遊びか、それに…さっきの提案は同意って事だなっ!」
小柄な体の影に対し、棍を先端近くでもって、一撃を受ける覚悟を決める。
歯を食いしばり、その行動に対しカウンターを入れる様にほぼ拳に近い長さの棍を握りながら拳と共に突き出す。
その段階で、かなりのパワーがあるであろう相手に、体を軽くする意味はないと考え、普段使っている土行の重力操作を解いて。
その体は、本来の重さを地面に伝え、地面を踏みしめて。
巨椀に対しては、濃い魔力を半実体化させながら、『炎椀』と東方の言葉でとなえる。
魔力腕が炎を纏って実体化し、巨椀に対し、撃ち合う軌道で繰り出される。
ふと浮かぶのは、先ほどの焔柱。
あのレベルの焔を使う相手に、炎が通じるかが、少し疑問で。
「ふ、ぅ…はっ」
そうしてから、一瞬息を溜め、一気に吐き出す。
棍と魔力腕の結果を見る前に、更に一手。
近づいてくる小柄な相手の脚、つま先を狙って、踏み込み、踏みつけようとして動く。
先ほど影が踏み込む時以上であろう力をもって、地面を砕く勢いで踏みつける。
■エルディア >
リーチギリギリで相手に仕掛け、対処を強いることで潜り込む隙を作り畳みかける。手数を生かした王道の手段。
腕が二本の相手にはこの時差を作るだけで大体終わるけれど……
「…わぁ」
圧縮言語で感嘆に似た一言を小さく漏らす。
正眼に構えた相手を凝視しつつ視界の端で空中から湧き出た腕と撃ち合うのを確認。どうやら相手も同じような手段を持っていた様子。
同時に棍を短く構えることで対処する時間を稼がれた。これは生身も撃ち合いになると判断。
重たい金属同士がぶつかるような響きと共に一瞬動きを止めた両椀の下をかいくぐる様に飛び込むと同時に
砲弾じみた勢いで踏みつけられた足に砕かれた地面が散弾の様に飛び散った。
その音は重量物、それこそ重獣種の様な質量がぶつかったようなもので、目の前の男が見た目通りの重さではないことをうかがわせる。
ただ単純に勝利を見据えるなら真正面に飛び込むのは愚の骨頂だけれど……
「ぁは」
真正面からその土砂と重圧を浴びながらもその勢いは少しも衰えることはなく、
むしろどこか嬉しそうな笑みさえ浮かべながら巨腕同士がぶつかる衝撃で花火の様に飛び散った炎の光を瞳に反射させ、
背負うようにしていた大剣を男の首元を目掛け突き出された拳諸共切り裂かんと横凪に叩きつけた。
■タツミ > 影の背後の巨椀と此方の魔力腕が音を立ててぶつかり合う。
纏っていた炎が辺りに飛び散り、互いに背中の腕が弾かれ合って。
そうして、もう一度打ち付けあう、巨椀と魔力腕。
地面を抉り、砕く程の踏み込み。
破片が礫の様に飛び散り、影に当たるが、それを気にした様子はなく。
「楽しそうで、何より、だっ!」
そのまま 踏み込んできて、首元を狙って此方の拳毎に切り裂く軌道の大剣。
その大剣に対し、ダメージは覚悟して、少しだけ行動を修正する。
腕の振りをずらし、肩を無理矢理持ち上げる、剣速は視認できる早さだったので。
最初に、陰陽印のペンダントの結界が起動、攻撃力を弱めるが、それでは足らないのは直ぐに判る。
足らない分を無理に上げた肩で受ける事で致命を割ける、大剣が当たる瞬間、肩には赤い鱗が現れる。
それを割られ肉へ大剣が食い込むのを、地面を踏みしめた脚で吹き飛ばされないように踏ん張って。
肉に食い込んだ大剣を一種でもとめれるかと、思考し、食い込んだ大剣の刃を筋肉で締め付け。
「おかえし、だっ…おらぁ!」
地面に踏み込んでいた足を軸にして、反対の足を正面の影に対し、蹴りあげる。
その瞬間に呟くのは『焔纏』のことば、魔力腕が纏った赤い炎ではなく、それよりも高温の青い焔が蹴り足を包み込んで。
此方を斬りつけた影の腹に、加減も遠慮もなく打ち込まれる。
■エルディア >
「たのしく、ないの?」
折角こうして楽しく壊し合っているというのにこの人は楽しくないのだろうか。
再びお互いの隙を探すように組み合った巨腕の下、至近距離のインファイトで殴り合う。
振り切りながら相手の動きを確認。対処する反応速度はある。
返す手で逆切りに移行しようとしてがっちりと固定された感触に一瞬苛立ちを見せた。
「んーっ」
鱗と筋肉に拒まれた大剣はもともとあまり切れ味に特化した仕様ではない。
それこそ斬るというより剪断するといった表現が近いようなもの。それでも速度とその質量で斬れるように扱ってきた。
それでも肉にめり込むまでは叩きこんでいるけれど、今回は却って動きの邪魔になった。
力の均衡で一瞬お互いの姿が制止する。
互いを目視するその刹那、僅かながら少し不思議そうな表情を浮かべている事に気が付いたかもしれない。
そしてこの体格差で動きが止まるのはそこそこに致命的。
元々子供と大人というほどの体格差がある。しかも相手は人外と思しき相手。
「…っ」
押し切るか一瞬迷ったことが仇になって足先が脇腹にめり込む。
直撃する直前に空中に浮かされるのを避けるために真横に力を逃がしたことがその感触から伝わるかもしれない。
男の足に柔らかい感触を一瞬残しながらその体が何本か樹をなぎ倒しながら真横に吹き飛びその先で土煙に包まれる。
その一瞬後、その土煙を裂くように身の丈を超えるほどの大きさの岩が二、三と矢継ぎ早に男に向かって投げつけられた。
■タツミ > 「いや、俺も楽しいな、うんっ」
相手のふとした問いに対し、そんな風に答える。
頭の上では、互いに従える腕同士が組み合って。
食い込んだ大剣の刃、その動きを体で止めながらの蹴りが当たり、少女が吹き飛ぶ。
ただ、蹴りが当たった時に感じた違和感、恐らくは蹴りの力をを吹き飛ぶ方向に逃がしたのだと理解し。
その飛んでいった先で、数本の樹が巻き込まれ、倒れていく。
その様子を、見て、一瞬だけ、ふっ、と息を付き。
次の瞬間に、自分の身長以上のサイズの岩が数個、投げられたのか此方へ飛んでくる。
「力もたいがいだな、こりゃ」
その岩に対し、棍を槍の様に持ち、後ろ脚に力を込めて、ダンッと言う踏みこみと、小さな爆発の音、それを同時に立てて飛び込んでいく。
種としては、脚が地面をけるその瞬間に、『爆』と一言唱え。
足の裏と地面の間にできた小さな火球、それを踏みつけ、地面をける反動と、火球の爆発、両方を推進力にして、飛んできた岩を棍で砕きつつ、吹き飛んだ方向へ突進していく。
倒れた樹々の影、岩の飛んできた方向に今もそれを成した相手がいるかはわからないが、見えない相手に時間をあたえれば、それは此方の不利になると、そんな考えの元の突撃。
砕いた岩の破片を一瞬浮かぶ鱗で弾きながら、見えない相手に対し、岩の投擲ヵ所へと一足飛びで飛び込んで。
■タツミ > 【しばし、休憩、ルームはこのままです】
■エルディア > 【きゅーけーたーむちゅう……】
■タツミ > 【再開します】
■エルディア >
土煙を煙幕に岩を投げながら一瞬自身の体を確認する。
わき腹から軽く煙が上がっているけれど、火傷というよりそこに着いていた土や石が溶けてへばりついているといった印象に近い。
むしろ蹴り上げの方がよほど響いているようで……ぺっと口に入った土を吐き出すとそこに朱が混じっていた。
「んー……」
自分の中で軌道修正。
さっきの一撃は相手の目が追い付いていた。
しかも生身で受けても平気と判断された。
逆に言うと、”あのくらいじゃ死なない”。
一瞬見えた鱗と手ごたえからして相手は竜種。
人の形をしてコンパクトなだけで、多分尻尾も羽もある。
普通に腕も出てくるし、まともに足を止めて打ち合ったら力負けする。
そこらの龍なら狩りにしかならないけれど、目の前のこれはそうじゃない。
「”極力殺さない。死なない。”
……ちゃんと、覚えてるもん」
投げつけた岩ごときでどうにかなるはずがない。投げた岩は視線を切るための物。
その岩陰に身を潜めるように再び飛び込んでいく。同時に破砕音と風切り音。
突っ込んできたと判断し体の小ささと軽さを利用して投げた岩を掴んで体をずらす。
同時に身を隠していた岩が爆散。
躰の真下を駆け抜けていく棍とそれを構えた長身の主と空中ですれ違うように視線が交錯して……
「いくよ」
空中でウィンドミルの要領で体の軸を合わせ、空中を蹴る。
それと同時に再び背中に湧いた巨腕の関節部が轟音を立てて火を噴く。
その推力と空撃により弾かれたように鋭角に運動ベクトルを変え、
金属音を響かせながら背後から先程とは比にならない速度で掬い上げるように斬り上げた。
■タツミ > 飛んできた岩を砕きながらの突撃、その直前に小さく何かが聞こえた気するが、小さすぎて聞き取れなかったので情報としては排除。
砕いた岩の先、小さな体が損陰にあり、視線が一瞬あって。
「しま、っ」
その瞬間に動きを制動するための火行術を発動、速度を落とす。
が、むしろそれが不利に働く、相手は此方と軸を会わせると、空中を蹴って加速。
さらに、背中に現れた巨椀、その各部から火を噴いて追加の加速。
二重の加速をつけながら、此方の背後へ、その勢いのまま、大剣が掬い上げる様な軌道で斬りあがる。
それを視認し、気配を感じて、決断を一つ。
体を捻ると、先ほど大剣を受け止めた方の腕を折り畳み、斬り上げの軌道へ置いて、全身に力を込める。
刃が食い込み、前腕を斬り飛ばし、そのまま上腕へ到達、そちらも間もなく斬られるのは確実。
それでも、結界に鱗、肉に骨、前腕と上椀でそれが2回、数瞬ながら、時間を稼ぐ。
それにまだ地面に脚が付いていなかった事も手伝い、制動用の火行術と、体の捻り、片腕の犠牲。
結果、片腕を切り飛ばされながら、錐揉みしつつその体を弾き飛ばされて、近くの樹々をなぎ倒す。
薙ぎ倒した樹々が一瞬で燃えると、その炎が一点に吸い込まれる。
その次の瞬間には、片腕を斬られ、起き上がる姿が見えるだろう。
何処か嬉しそうに口元を緩め、先ほどは背中から現れた魔力腕を、斬られた場所から一本。
その腕は、先ほどと違い炎を纏うのではなく、炎その物で出来ており斬られた場所を焼きながら血止めとし、その色が赤から青へ、焔へと変化する。
「…っさて、も一回、行かせて貰う、ぞ!」
真っ白な棍を両手で構え、『焔槍』、『加炎』と続けて唱える。
棍の先端は青い焔に包まれ、槍の形状をえて、自分の背中、肘、踵から炎を吹き出す。
再びの踏み込み、槍とかした棍をリーチを生かす様に、端の方を持ち。
踏み込みながら、吹きあがる炎が動きを加速させ、その切っ先を少女の胸へと突き出す。
■エルディア >
奇襲気味の一撃は今度は刃が通った。
断ち切ったのを確認すると斬りぬけた勢いを活かしてサマーソルトを追撃で放つ。
が、相手の攻撃を受けてからの判断が早く、切りつけた勢いを活かして離脱された事で利用して回避された。
そのまま空中で回転し、ぽとりと四肢を地面につけて着地、様子をうかがう。
「だいじ、ぶ?」
本来なら間髪いれず追撃するところだけれど
その心配は不要だったようで……。
「ん」
炎の化身の様に燃え上がり、起き上がる相手の姿を確認してそれに続く
笑っているような、吠えるような宣告に僅かに口角を上げて応える。
炎の槍と化した棍は流石に受けるには危険なほどの熱量。
どこかで読んだ言い伝えの仙術師……ナタ、だったかな。
そんな姿は先程とは違う事をこれでもかと雄弁に伝えてくる。
速度も威力も間違いなく上がっている。だからまともに受けたらアウト。
「あああああ!」
けれど、彼女は雄たけびを上げ、本来なら避けるべき突きを待ち構え真正面から剣を合わせた。
悲鳴のような音を立て、受け止めた剣の周りに炎が舞う。
衝撃で骨格が軋み、外角の一部が砕けて吹き飛んでいき素肌が露わになる。
頭ではわかっている。力比べなんか得策じゃない。
「ね、もっと」
万全ならともかく、こんな状態で相手にするべきじゃない。
でもね?
「もっと」
指先を青い炎が焦がす。防御は最低限。
元々単純な力なら相手が格上。
一瞬でも制御を失敗すれば衝撃で体ごと持って行かれる。
座標固定の術式を足元に敷いてなお、
地面を踏み抜き、じりじりと炎に身を焼かれながら
「戦いの向こう、に、連れてって?」
この先にある景色を見れば、何かわかるかもしれないから。
鍔迫り合いの炎と火花に照らされた、外見に似合わない凄絶な笑みを武器越しに男へと向けて。
■タツミ > 焔の腕を斬り飛ばされた腕の代わりにし、樹を燃やしてその炎を吸い込む、木生火、五行の相生に従い、木は燃えて火を作る。
火の魔力、龍を基にする身、五行術も収めているからこその、木を焼いての火の補給。
此方の踏み込んでの、焔の槍を、相手の大剣が受け止める。
普通に考えれば、躱すなり、背中に現れる巨椀なりを使っても問題はない筈。
互いの武器を押し付けあい、削りあう中で、聞こえる声。
もっとと、この先が見たいと告げる何かを求める様な声に。
「いいぞ、なら…一緒に行ってみるか、なぁ?!」
更に力を込める、体の各所に纏った炎が燃え上がり、突進の力へと変換される。
重い体を支える足を、地面へとしっかりと押し付け。
焔の魔力腕で焼いたはずの傷口から、血を零しながら、力を込める為に合わせた歯が、ぎりっと音を立てる。
相手の求める戦いの向こうが何かは判らないが、この先に何かあるのならそれを見てみたいと、行ってみたいと思い。
吸い込んだ火の魔力を、更に燃やしていく、元になった龍の力、マグマ、溶岩の龍王、何物をも溶かす様なその存在。
それ故に、それから生まれた身は交流を良しとする、言葉で行動で、そして戦いで。
これが相手の望む事なら、自分の望む事なら、互いに交流を持つために、先へ進もう。
だからこそ、加減はなし、全力で押し合った武器を通して、視線を通して、互いの中を晒す様に。
全力をあげ、相手の大剣を貫こうと、焔の温度を上げていく。
「ぁぁ…あっぁぁぁっ!」
内からの衝動に叫びをあげる、足元が地面に沈み込み、互いの力を加えた武器がきしみ、焔が互いを焼いていく。
棍に纏った青の焔が、変化する、真っ白の棍、龍骨の棍を燃やし、赤く粘つくような姿に、それは形を持った溶岩。
元の姿がもっていた、溶岩の力を、この瞬間に顕現させる、燃やす燃料は多くなく、時間は短いが、此処で使うには十分。
そして、その力は自分の制御力を越え、意地にも近い境地での発動、故に、自分の腕も炙って燃やしていく。
鍔迫り合いでの押し合い、勝てばそのまま一撃を、どんな形でも加え。
負ければそれは此方が一撃を受ける、そんな状況。
■エルディア >
ずんと重みを増す圧力と熱量。
弱きものなら魂も吹き飛ばされそうな咆哮と衝撃。
飛び散った溶岩と火花が体を灼き、身を削っても一歩たりとも引かず対峙する。
じりじりと圧され、体へと近づいてくる大剣をそれでも支え、更に全身に力を込める。
「もっと…!」
魘された様な叫びはどちらへ向けたものだったのか。
怒れる炎龍の一撃のようなそれを身一つで支えるのは愚かかもしれない。
けれど、こんなにも確かに、誰かがいる事を伝えてくる。
生きているとを叫んでいる事を感じられる。
……それを邪魔する理由に何がなるだろうか。
だから、視線と全身に力を籠め、相手を刺し貫くように叩きつける。
万の言葉で語るよりも雄弁に。
――均衡はそう長くはなかった。
嘶くように悲鳴を上げながら耐えていた大剣に罅が走る。
元々祭具であり耐久の面でそれほど優れているとは言えないそれを無理やり呪で固定しているだけ。
盾にするには脆すぎて、貫くには鈍すぎる。
硝子が砕けるような音とともに、剣を補強している拘束が砕けていく。
罅の向こうには炎そのものが質量をもったような溶岩の槍と、生ける炎と化した相手の姿。
既に、勝負は決している。
「んふ」
目に見える終わりを前に、小さく呟く。
どこかで思考を走るいつかの一瞬。
アノヒトがしたように植物を使えば、きっと怪我なんかしなかった。
あの時炎を顕現させたのは私の方だったっけ。
でもそうしたらきっと、この叫びは聞けなかったからやっぱりこれで良かった。
うん。
「……楽しかったぁ」
それを合図とするように大剣は幾千の欠片となり、弾け飛んだ。
■タツミ > どちらの声か、混ざり合った叫びが響きあい。
焔へと喰わせる燃料はすり減って、手に持つのは既に棍の姿をしておらず。
持ち手も含め、棍の形をした溶岩、その芯にあった、炎龍王の髄も燃えて。
手を焼き、体を焼くのを構わずに、ただ鍔迫り合いを押し込むように体重をかけていく。
「っぁ、く…おぉ!」
均衡の時は長くなく、此方の棍は燃え、それでもまだ溶岩の熱さを持った槍は手に。
相手の大剣は、少しずつ音を立て、皹が広がっていく。
とはいえ、そんな状況に気づいてる暇はなく、押し込む事に集中した足に力を伝え。
大剣の崩れる音と共に、溶岩で出来た槍もほぼ姿を消し。
そんな中で、何故か聞こえた楽しかったという言葉。
「そうだな…あぁ」
ふと、そんな言葉を返しながら、溶岩の槍も燃え、残ったのは握っていた一部だけ、それでもその次を考えていたためか。
抵抗の無くなった前進する力を持って、相手の胸元へ、槍を持つために前に出していた手の中に、棍の残りを包み、拳の形に握り込む。
その勢いのまま、少女の体に拳を打ち込んで、勢い余って、諸共に地面を転がっていく。
そうして、暫く…体を起こして立ち上がると。
「…楽しかった、な…ともあれ、一応こっちの勝ちで、いいか?」
一緒に転がった少女へと、そんな言葉を掛ける。
周りをみれば、樹々は倒れ、その樹々を燃料としたため、倒れた樹々も燃え尽き灰になって。
結果として、二人の周りは小さめの広場の様になっており、その真ん中で、ぼろぼろの二人がいると、そんな様子になっていて。
■エルディア >
「……!?」
炎の槍に刺し貫かれる事を予想していた代わりに小さな衝撃。
軽く押すようなその一手に数歩たたらを踏むと、ころんと地面に転がる。
しばらくあれー?と不思議そうな顔で空を眺めた後くすくすと笑いだして
「あはー、まけちゃった」
また黒星が増えちゃった。と地面に転がったままぱたぱたと両手足を遊ばせた。
楽しい時間はいつだって一瞬。
いつまでも見ていたい輝きは直ぐに見えなくなってしまうけれど……
改めて見ると二人ともボロボロに見える。けれどお互いに致命傷ではないし、多分それほど深刻な状態でもないとおもう。
腕も生えたりくっついたりしそうだし……。
なんなら最初の頃の姿に戻っているようにみえる。腕は体の陰に隠れてよく見えないけど。
「たのしかったぁ……」
空を見上げてしみじみと吐き出される言葉はその一瞬に満足したことを漂わせていて……
同時にどこか寂しさのようなものも感じさせた。
「ん」
そうして投げられた問いかけに上半身を起こしペタンと座り込んだまま小さく頷いた。
■タツミ > 「気軽に誘ったら、こんなやばい相手だとは思わなかったよ、こっちは」
不思議そうな顔をした後、負けたという相手に苦笑しつつ。
勝負には誘ったが、殺し合いに誘った覚えはなかったんだけどな、と呟いて。
地面に転がって、手足をばたつかせる姿は、先ほどまでの印象とかなり違って見える。
「楽しかったな、確かに…というか、あそこまで力出したのは久しぶりだ」
命より体の一部を選ぶことは何度かあったが。
炎龍王、溶岩の恐れから産まれた何者とも触れ合えない龍の力まで引き出したのは、この身を得てから初めてで。
ぼろぼろの二人だが、相手も此方も人外、ある程度すれば回復するだろうと、考え。
此方の質問に頷く少女に、そうかと頷き。
その近くにどさっと腰を降ろすと、胡坐をかいて。
「それじゃ、最初に誘った時の言葉覚えてるか?
一個だけ、互いの出来る範囲で、っていうの」
誘った瞬間嬉しそうに戦闘へ突入したため、正確な答えは聞いておらず。
もう一度それを確認しながら、少女を手招きして。
近づけば、ぽんと、その頭を撫でて。
■エルディア >
「そ」
楽しかったという言葉には幾分か満足そうな雰囲気を漂わせて頷く。
今出せる力の中では割と頑張った方だと思う。えらい自分。と内心ちょっと自分を褒めてあげる。
約束もちゃんと守ったし、やるべきこともちゃんと思い出したから、
だいぶ上々ではないでしょうか。
「ん」
問いかけに再び覚えてるとこくこくと頷く。
戦闘が終わると途端に無口になるそれもちゃんと始めの合図前のお約束は覚えていたようで
とことこと近寄ると再び近くにペタンと座り込んで……。
「……?」
伺うように撫でられたままじーっと見上げる。
■タツミ > 楽しかったな、と言う言葉に言葉少なの頷く少女に。
「そうか、まぁ何よりだ」
何処か上機嫌で、満足げな少女を見つつ。
此方も何処か満足そうに頷く、解放状態で元の龍の力まで引き出したのだ。
その状態で暴走しなかった事はかなりの快事であり、修行が一段進んだとも言える出来事。
「あぁ、ちゃんと覚えてるんだな…返事の代わりに攻撃だったからな、どうなのか今になって、気になってな」
問いかけにも頷きと、短い言葉で答えるのを見て、そういう性質なのかと、納得して。
そうしてから、近づいてきた頭を撫で、視線を受けながら、少し考えて。
「そうしたら…こっちの要求としては、あれだ、お前さんと、してみたい、だな。
男女的な、方で、な」
この言い方で通じるなら、少女はそういった知識を持つであろうし。
通じないなら、知識はないのだろ、どちらでもそれほど気にしないが。
「まぁ。その前に…名前聞いていいか、俺はタツミだ。
あと、その要求の前に飯にしないか、流石に疲れたから何か腹に収めたいし、食いたいもんあれば、買ってくるから」
流石に激闘を繰り広げた相手、その魔力はしっかり覚えたので、神脚術の対象にできる。
買い物にかんしても同じ術で街まで戻って買ってこれるから、軽く聞いて。
ちなみに今は、装備以外に食料などは持っていない修行中はその最中に手に入れた食糧で済ませる事にしているから。
だからこそ、今の食事の誘いは、特別で。
■エルディア >
出来る範囲でとの事ですし勝者の権利としてというお話だったので
勝ったぞ死ねー!てきな要求は無いだろうし、と待っていると何処か言いにくそうな言い回し。
しばらくきょとんとした後首を傾げてふむ、と考える。
「こっち、のこと?」
片手で自分のお腹を撫でながら尋ねる。
別にそういう経験が無い訳でもない、そういう機能が付いているし、
そういった欲求に猛る精霊を受け入れるのも”役目”の一つだったから。
「いい、よ?
える、は、えるだよ」
やはり正体的に言い出し難かったのだろうか。
人間相手だと無理が色々とありますしね?
少なくとも自分は多分龍相手だから無理とかにはならないと思う。
……体より大きかったら流石にちょっと考える。
「ごはん。よき。
……けど、まち、はいれない」
気持ちちょっとだけへんにゃりしながら答える。
色々と戻れなくなっているのが目下の問題の一つ。
どうする?と言外に疑問を滲ませて再び首を傾げて見上げて。
■タツミ > 少女が片手を腹に当てて撫でて、告げられる問いに。
「そそ、そういう知識はあるんだな、ならそういう事の方で」
それに頷いて、ぽんぽんと頭を撫でる。
同意を得られ、何処か安堵したように、ほぅ、と息を付いて。
「エルか…ん了解、今更ながらよろしくなエル」
少女の頭を撫でながら、今更の挨拶。
少女の同意が得られたとはいえ、体格差も結構あるが。
知識があって受け入れたなら大丈夫なのだろう。
「買い物は食べたいもの言ってくれれば、俺が勝ってくるよ。
一寸ばかり便利な、移動術があるから、そこは心配しないで良い」
へんにゃりした相手に、微苦笑しながら。
買い出しは任せて暮れて良いと、告げる。
問われれば、神脚術についての説明も付け加えるだろう。
一度言て記憶した場所か、魔力を覚えた相手の近くに移動するという、元は神道の術式。
「そういう訳で、好きな料理とかあるか、甘味なんかでもいいぞ」
そうして、ぽんぽんと頭をんでて問いかける。
■エルディア >
「んー……
ない、わけじゃない」
少し悩みつつえるは大人なので―。とない胸を張る。
実際の所、少し前まで知識としては皆無だったのは棚に上げておこうと思う。
本屋のハゲ―店長に騙された色々も棚の上。
というか明確に雄相手は初めてかもしれない。大丈夫かしら。
「ん」
よろしく、という言葉には小さく頷く。
知り合いは多い方ではないので、あんまりこの言葉は使ったことが無いかもしれない。
ちょっと新鮮。
「……かんみをしょもーする。
おちゃ、と、会うのが、良い」
別に食事をしなくても困らないけれど、甘いものは好き。
特にお茶菓子が好きなので、それは外せないと。
それにしても、なんというか
「よく、わらうね」
ぼそっと一言だけ。
■タツミ > 「まぁ、判らなければ教えるし」
すこし煮え切らない答えに対し、そうかと頷いて。
そこそこ経験もあるし、此方でそこら辺は教えると言って。
「んむ」
短い同意に、此方も短く答え、これも頷く。
慣れてない様に感じるのは、少女がどこか浮世離れした雰囲気だからか。
「お茶に合う甘味か、了解…一応略茶でも紅茶でも合うのを買ってくる」
なるほどと、呟いて。
甘味の方は請け負ったと。
「んー、そうかね…まぁ、昔は笑う機会なんかなかった、からな。
その反動かもな、話せる相手となら、話をして縁を繋いで、楽しむ、感じだな」
良く笑うと言われれば、苦笑や微笑は普通に浮かべているのは確かで。
それは誰かとの交流が楽しいかからこそで。
ちなみに戦闘での交流も好きな事の一つで。
「エルも戦いのあとは満足そうにしてたと思うけど、ああいう時に笑わないか?」
そういって、手を伸ばし、少女の頬を撫でて、問いかけて。