2021/04/09 のログ
ご案内:「メグメール 街道沿いの魔法店」にイルミさんが現れました。
■イルミ > 誰が何を買いに来るのか、そもそもここの土地の所有権は誰が保証するのか。
さっぱりわからないほど辺鄙で、さりとて秘境の隠れ家と言うには人が通る……そんな中途半端な場所にある魔法店は、当然店主も半端者。
「ええと、これはギリギリ売り物になる、かな……」
そう言いながら棚に置いたのは、たまたま拾った魔法の本。『しばらく爪が伸びなくなる魔法』や『くしゃみの音を犬の鳴き声にする魔法』など、何に使うのやらさっぱりわからない魔法の呪文について書いてあるらしい。
「あとは薬草の棚と、えっと……」
ちらっと見たのは薬品棚の隅っこに隠すように並べられたピンクの小瓶。自分の……ちょっと人に言えないようなアレを使って作った薬だ。
需要という意味では売り物の中でもトップクラスなのだけど、いかんせん恥ずかしくてしかたないのでこっそり売っている。
正直今もこれを店の裏に隠してしまいたいきもちがあるのだけど、これを売らないといよいよ生活がままならないのでぐっと我慢。
次は生活用具の棚、その次は……という具合に、商品のチェックを進めていく。
■イルミ > 「これが済んだら、王都の方に占いでもしに行こうかな……」
魔女としてやっていっているにもかかわらず、ろくな魔法が使えない自分にとって、占いは数少ない得手だった。
『まぁ当たってるかもしれない』『無くしたものが意味のわからないところから見つかった』と微妙な評判のそれは、なんとか人からお金が取れるレベルに達している。
問題は、占い師にとって重要なのは占いの成否なんかよりもコミュニケーションスキルの方が何倍も大事だということくらいで……。
「なんでこんな仕事してるんだろう、私にも……」
はぁ、とため息をつく。しかし、その疑問にはひとつだけ思いつく答えがある。
人恋しい。人と話したい。人と関わりたい。引っ込み思案でコミュ障気味な魔女がその欲求を満たすためには、『仕事』という言い訳が必要なのだ。
だから今もこうして、『誰も来なければいいのに』『でも誰か来て欲しい』と矛盾した気持ちのまま、来客を待っている。
ご案内:「メグメール 街道沿いの魔法店」にエレイさんが現れました。
■エレイ > 「──チィース……やってますかーい」
ふと店の扉が開いて、控えめな声掛けとともににゅ、と店内に顔だけ覗かせたのは金髪碧眼の男。
そのまま軽く店内を見渡してみれば、商品棚の前に立つ人影を見つけてぱちくり、と瞬きを数度。
「おや……ひょっとしてそこにいるのはイルミちゃんかな?」
それは男にとってはよく見知った淫魔の少女の姿。
意外そうにその名を呼びつつ、おもむろに店内に足を踏み入れ彼女の方へと近づいてゆこうとする。
■イルミ > 「ひゃっ……あ、あ、えっと、いらっしゃいま、せ……」
店内にはいってきた男性の気配に一瞬身体を縮こまらせるが、相手が顔見知りだとわかると、愛想笑いと挨拶を返した。……それでも若干身体はこわばっているのだけど。
「ど、ども……えっと、私の、お店なので……えへへ」
何かを誤魔化そうとしているつもりはないのだけど、どうしても嘘っぽい笑い方になってしまうのは、好意を示そうという意思と男性恐怖症がせめぎあっているから。
仕草ももじもじしていて、まるで幼児のよう。
■エレイ > 「やあやあお久しぶりッ。……まだ苦手の克服はできていないようだったな」
彼女の目の前までやってくれば、なんだか強張った感じの愛想笑いに眉下げて笑いつつ、
つん、と人差し指で唇をつつき。
彼女が男性恐怖症であるということは既に男も知っているので、彼女のそんな態度を
特段気にすることもなく。
「ほうここはイルミちゃんの店だったか。いや実はこの店は前々から気になってはいたのだが
寄る機会がなかったりあっても閉店中だったりでなかなか開いてる時に来れてなくてな。
──で、ここって何の店なわけ? なんか色々置いてあるから雑貨屋とかかな?」
私のお店、という言葉に笑いながら、これまで彼女がいる時に訪れる機会がなかった、なんて
事情を聞かれても居ないのに話しつつ。
改めて周囲を見渡せば、棚に並ぶ商品を眺めながらそんな事を問うてみて。
■イルミ > 唇を触られると、ビクッと背筋を伸ばして数秒硬直する。普段ならそのまま動けなくなるところかもしれないけれど、『向こうに悪意はない』とわかっているので、持ち直すのには苦労しなかった。気を遣わせて申し訳ない、とは思うけれど。
「あ、えと、拾ったものとか、作ったものとか、なんでも売ってます……雑貨屋、ですね、はい……」
一応魔法道具のお店なのだけど、魔法と関係ないものも少なからず置いているので雑貨屋というのもあながち……というより全く間違っていないので否定はしなかった。
とりあえず店主らしいこともしておこうと思って、
「こ、これとか、どうですか?『空飛ぶ座布団』、です……地面から5センチしか浮きませんけど……」
商品をひとつ取って紹介してみるけれど、説明するにつれて声のトーンが落ちていく。
■エレイ > 「作ったものってのはわかるが拾ったものってのは一体……ほう……それはどちかというと『浮く座布団』と
呼ぶべきなのではないか? まああ店主のオススメなら試してみるのが大人の醍醐味」
頭上に疑問符を浮かべつつ、彼女が酷く自信なさげに紹介してくれた商品を
手に取り、試しに床に置いて……否、浮かせて座ってみる。
──……うん、浮く座布団以外の何物でもない。ちょっと珍しいがそれだけ、としか感想が出てこなかった。
「……ありがとう。この店が閑古鳥が鳴いている理由がちょっとわかった感」
眉下げて笑いながら彼女に商品を返す。おそらく他の商品も似たりよったりだろうというのは
想像に難くなかった。
「──ん……あの隅っこで密かに存在を主張しているピンクの瓶の薬は何かな?」
他になにか話題になるものでもないか、と視線を彷徨わせたところで、薬品棚の
それを見つけ、首を傾げつつ問いかけ。
■イルミ > 実際に商品を試してみるエレイさんを、若干の冷や汗を流しながら見守る。
そして、全く予想通りの結果に終わった空飛ぶ座布団改め浮く座布団を受け取りながら、
「ま、まぁ、そんなかんじです、ハイ……」
と、言いながら視線を合わせられなかったのは、もちろん男性恐怖症とは別の理由だった。
「あ、えと、あれはですね、その……」
こんな時に限って客の目に止まってしまうピンクの小瓶。ドキッとして、適当に誤魔化すかなにかしようとも思ったのだけど、せっかく来てくれた知り合いに嘘をつくのもよくないと思って、
「あれは、えっと、その……えと、の、飲むとすこし……だいぶ……エッチな気持ちになる薬、です……」
顔を真っ赤にして俯きながら、切れ切れに答えた。うっかり魅了の魔法がでませんように!と祈りつつ。
■エレイ > 「──ほう……いわゆる媚薬とゆーやつであるか。サキュバスのイルミちゃんが作ったものなら
さぞかし効果があるんだろうなあ」
薬品棚に近づき、その瓶を摘んで掲げて眺めてから、俯く彼女の方を振り向いて楽しげにそんな言葉を投げかけ。
「とはいえ俺達でお薬の効果を試してみる、っていうのも今更ないしなあ……そうだ」
なんて言いながら少し思案して、それから何かを思いつくと再び彼女のそばへと戻り、
肩にするりと腕を回して。
「来店記念にコイツは買っていくので……代わりと言っちゃあなんだが、コレどうやって
作ってんのか教えてくれるかね? 材料に何使ってるのか、とか……
できたら、店の奥でゆっくりと教えてくれたりすると嬉しいのだが……」
さすさすと肩を撫でつつ、耳元に口を寄せて内緒話のようにそんな事を囁いた。
男が実際に求めているのがただの説明でないことは、彼女でなくても解るだろう。
■イルミ > 「あ、あの、いえ、それほどのものでも……」
正直言って見られるだけでも恥ずかしくて仕方がないものを、丁寧に解説されてしまうともうどうしようもない。
顔は真っ赤になって、汗もダラダラと流れ始める。
「あの、いえ……か、買っていってくださるのは、ありがたいんですけど……」
その上肩を抱くスキンシップも取られてしまっては、未熟者では抗う術もない。
視線を合わさないまま、ごくりと生唾を飲み込んで、
「わ、わかり、ました……」
向こうの『提案』を、全面的に受け入れるしかなくなってしまった。
■エレイ > 汗ダラダラの横顔を眉下げた笑みで眺めながら、やがて承諾の返事が得られればフフ、と小さく笑い。
「サンキューだぜ。ンフフ、じゃあ悪いがちくと案内してくれたまへ」
なんて言いながら、肩を抱いたまま彼女を連れ、店の奥へと──