2019/10/28 のログ
ご案内:「ダイラス 酒場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「ダイラス 酒場」にハーティリアさんが現れました。
クレス・ローベルク > 「よし、それじゃあ、頼もう」

机に備え付けられていた鈴を鳴らすと、店員が扉を静かに開けて、男の元に歩いてくる。
男は、メニューを店員に見せつつ、

「鮪のグリエと、カルパッチョ……それと、刺身盛り合わせとサーモンサラダとソーセージグリル。
後、ロシアンルーレットパイを1:1で」

やや量は多いが、ハーティリアが全く食べなかったとしても、試合後の男はこれぐらいは普通に平らげられる。
注文が終われば、入ってきたのと同じように、静かに扉の向こうに。
そして、再び現れた時には、ワゴンを押してやってきた。
料理が次々並ぶが、その中に一際異質なのが、質素なパイが二つ置いてあるだけの皿だ。
横には頼んでいないミルクが二つ。これで辛さを中和しろという事だろう。

「当たりの方はビーフシチュー。外れの方は……確かマスタードと赤トウガラシとホースラディッシュのペーストのミックス……え、今はワサビも入ってる?そ、そう……」

店員から耳打ちで捕捉され、引き攣った苦笑いを浮かべる男。
試合中に何時も浮かべている表情が、何の危険もない店で浮かべられている時点で、どれ程の物かは察せられるだろうか。
しかし、後には退けない。注文した以上は平らげるのが、最低限のマナーである。

「後でやるのも落ち着かないだろうし、先にパイから食べない?」

ハーティリア > 「ん、任せる。」

備え付けの鈴を鳴らせば、入ってくる店員。
景色がまるで広い草原のように塗り替わっている室内に、一瞬だけの反応で済ませたのはさすがプロか、その後は滞りなく注文を取り、そして運んでくる。

「今更だけど魚だらけだな。いや好きだから別に良いけど。…そういえば最近カルパッチョ作ってないなぁ。」

もう少しバランス考えればよかった、と注文してから思ったが…まあ良い。
そして最近料理の腕を奮ってないのをふと思い出す…今度、肩慣らしに何か作ろうと心に留めておいて。

「…パワーアップしてんのか。いや…キャロライナ・リーパーとか入ってないだけマシか、うん。」

引きつった苦笑い…彼と闘技場で遭った時、彼が浮かべていたそれと同じ表情にこちらも苦笑いを浮かべて。といってもこちらはまだ余裕があるが。

「あー、そだな…口直しできるものがあるうちじゃねぇと返りしんどそうだし…じゃあ俺、こっちで。」

さっと、更に乗ったパイのうち、自分に近い方を手にとった。

ハーティリア > ロシアンパイ 偶数でハーティリア 奇数でクレスがハズレ [1d6→2=2]
クレス・ローベルク > 「まあ、港街ってのもあるけど、個人的に魚好きなんだよ。
好き嫌いっていうか、実家で躾けられた影響ってのが正しいけど」

何でも、肉より魚食ってる方が、戦士には良いんだってさ、と雑に言う男。
実際、どうしてそうなるのか、については実家の教育係も知らなかったように思う。
故にか、男の声にもそこまでこだわりは感じられない。

「何故かこの料理だけは定期的にバージョンアップ入ってるみたいなんだよね……。
何だろう、此処のオーナーの趣味なのかな……」

言いつつ、パイを手に取る男。
気持ち、心臓の鼓動が早くなった気がする。
それとなく匂いを嗅いでみるが、生地が分厚く、且つバターと小麦の匂いが強く、全然中身が匂ってこない。
それほどに薫り高いのは料理人のこだわりなのだろうが、どちらかというと不正は許さないという無言の圧力を感じる出来である。

「んじゃ、残った方で。それじゃ、いっせーの、せで食べようか」

おっかなびっくり口までもっていき、口を開ける。
此処まで来て小さく食べるのも男気がない。
一気に齧り付くつもりで、

「いっせーの、せ!」

ハーティリア > 「あー…いや、別に間違っちゃいねぇけど、バランス良く色々食うのが結局良い気はするけどなぁ。
 そういえば、こっちの地方で冒険者用のレシピってねぇの?うちでは、カルパッチョで最初の一撃だけ急所に当たりやすくなるとかあったんだけど。」

言いながら、手にとったパイをまじまじと見て…くん、と鼻を鳴らす…匂いも見た目も、全く違わないように見える二つのパイ…まあ、かじれば分かるか、とこちらは案外と乗り気で。

「まあ、そうなんじゃね?遊び心があるっていえばそれまでだけど…そだな、せーのっ。」

もぐっ! と一息にかじる。小麦とバターの薫るパイ生地は文句なしに美味しい、おぉ…と一瞬感心した、次の瞬間。

「……~っ!?からっ、かっら…っ!ぶぇ、舌痛……いぃ~~っ!!?」

パイ生地に隠れて押し寄せてきた刺激物と香辛料のオンパレードに、悲鳴を上げてのたうつ。
そういえば俺甘党だったわ…とおぼろげに思い出しながら、思わず暴れてテーブルを蹴倒さなかったのは褒めて欲しい、が…ぐあぁぁぁぁ!!と悲鳴を上げている間に、周囲の景色がボンヤリとかすみ、普通のレストランの一室へと戻っていく。
魔法を維持する余裕すら失せたようで……しかしまあ、出されたものを食べなければ、という良心はあったらしく…そのパイはまるまる1個、胃袋へと収まったとか。

「げふっ…かふ、舌と喉が…痛い……!」

クレス・ローベルク > 「えっ、何それどういう理屈!?いや、こっちにはないよそんな魔法の料理。っていうか、それ君が作ったから、とかじゃないの?いや、魔王が料理できるってのも意外なんだけどさ!」

彼と会話していると、一言毎に突っ込み処か出てきて追いつかない。
異文化交流の妙と言えるのだろうが、しかし最早別の物理法則を生きている様に思える。
……実は実際にそうだったりするのだが、それを知るのもやはりもう少し後の話である。


ともあれ、時間軸をパンを齧り付いた後に戻そう。
齧り付いた男が感じたのは、まろやかな、甘みにも似た旨味である。

「うっ、ま!」

シチューと共に、肉の塊も入っていて、その肉が蕩けるような柔らかさだ。
齧り付いた際に不要に固い食感を与えないように、とことん煮込んであるのだろう。
手間をかけた料理である――何故それをこんなメニューで提供するのかは謎だが。
しかし、その味に酔えたのは一瞬。
とんでもない声を挙げたハーティリアの方に意識が向く。

「やっべ、大丈夫!?魔法が解ける程の……ってそれはどうでもいい。ミルク、ミルク飲んで!」

ミルクの入ったマグカップを慌てて渡す男。
こんな事になるのを見越してか、蜂蜜を入れて甘く、且つ喉に優しくしてある。
飲めば、それなりには落ち着くだろうか。

ハーティリア > 「どういう理屈かと効かれても、コツとレシピだよ。別に俺じゃなくても作れるし。まあ俺には効果ないけど。
 意外とは失敬な。俺だって昔は単なる山奥の田舎出身の医者だったんだから普通に飲み食いも料理もしてたっての。」

アンデットになって一番困ったのが、自分の作った料理や薬品が全く自分に効果がなくなった事だろうか。
まあ、嗜好品として楽しめなくなったわけではないので、そこは不幸中の幸いだが、そこはそれ…当時冒険者としては非常にこう、困ったのだ、一応。

辛みと酸味と痛みと刺激が舌と鼻に押し寄せて…咳き込んだせいでワサビの成分が鼻に来たのか割と大惨事である。
アンデットなので生理的な涙や鼻水が出なかったのだが、その分成分が残って辛い、ホントに辛い…。

「げふ、うぐ……さんぎゅ、んぐ…ゴク…っぷはぁっ!…あー、なんとか、落ち着いた…。」

毒も薬も効かなくなった体だが…単純に肉体への刺激は通用することを…まざまざと思い出された瞬間である。
五感を切ってなかったのも原因だろうが、まあこのタイプの遊びで五感を切るのは、ズルだろう、という無駄なフェア精神もあったらしく。

クレス・ローベルク > 何とか落ち着いた彼を見て、ほっと一息つく男。
男も体験済みであったが、ハーティリアに此処まで効くとは思っていなかった。
実際には、寧ろ常人より効きは強かったぐらいなのだが、まあそれは流石に男には分かる物でもない。

「いや、とんでもなかったね……。魔王にも通用する辛みか……ちょっとした伝説だな」

と言いつつ、噛り付いたパイを平らげ、その皿を脇にどける。
このメニューを胃腸の弱い人に勧めるのはやめようと、強く心に刻みつつ、

「でもまあ、そうか。魔族相手だと、こういうのやっても、割と自然に『愚かな人間よ、我にその様な小細工が効くとでも思うたか』みたいな感じで対応されちゃうんだけど……元人間か、道理で」

親しみやすいはずだ、と男は納得したように頷く。
敵としては恐ろしいが、こういう洒落が通じる所や、料理の話などを聞いていると、何というか、普通の友人と飯を食べている気分になる。

「にしても、君の作る料理って奴も興味はあるな。
いや、魔王云々とか謎の特殊効果は置いといても。
俺は作れはするけど、基本男料理っていうか、野営料理だからさ……」

肉の丸焼きとか、魚の丸焼きとかが基本だから、大味な上にレパートリー少ないんだよなーと呟く。
実際、永い時を生きた彼ならば、大分多くの種類を作れるのではなかろうか。