2018/09/29 のログ
ご案内:「ダーシャの城 客間」にダーシャさんが現れました。
ダーシャ > 調度品の整った部屋。クッションの効いた見るからに高そうな椅子が椅子を挟んで二つあり、その内一つにローブを着た少年が座っている。少年が見ているのは、椅子の先にある扉。それは何処か違う場所に繋がる扉。街の路地裏や森の奥深くから人を連れてくる、この城の傍迷惑な"機能"だった。

「来ない方が良いのは確かだけど……でも……」

それを見ている少年の顔は浮かない。来ないほうが良い、と言いつつも、何処か寂しそうに、或いは物欲しそうにその扉を見ている。

机の上には切った果物と、お茶を入れたポット、そして二つのティーカップ。それは、客を歓待する為の物だ。この扉を抜けてくる、異世界からの"お客さん"の為の

ご案内:「ダーシャの城 客間」にエシル・アルトワーズさんが現れました。
エシル・アルトワーズ > トンネルを抜けるとそこは異世界だった――

そんなどこかで聞いたようなそうでないような言葉がふと脳裏をよぎる。
はじまりはどこだったか、確か――

「そうだ、確か俺はシャワーを浴びようとして――ここはどこだ?」

あたりを見渡す。そこは見慣れたシャワールームではない、どこかの城の様な客間のようであり。
そこに鎮座する少年に目が行く。

「なんだ、お前も連れてこられたのか――いや、違うな。お前が呼んだのか?」

信じがたいことにこの気配はよく知っている。
色々な意味で忘れたくとも忘れられない――魔王の気配。
目の前の柔和で善良そうな雰囲気とはちぐはぐな存在に思わず声に棘が立つ。
睨むように少年を見るも、直後視界の隅に映るティーセット。

「・・・俺を呼んでお茶会でもするつもりかぁ?」

毒気を抜かれたような、間の抜けたような声で少年に問いかける。

ダーシャ > 「あっ、来た……!?」

反射的に出た声は喜びと驚きが半々のもの。
心の中にあるのは不安と期待。人を勝手に呼んでしまうというこの扉のやってる事は、怒られても仕方ないことだとは思う。でも、もし、それを許してくれて、それで友だちになれたなら――
しかし、そんな思いを直ぐに振り払う。まずは、何やら苛立っているようなこの人に、説明をしなければ。

「すいません!呼んだのは、ボク……というより、このお城の方なんです」

ごめんなさい、と頭をさげて、説明を続ける。

「このお城は、勝手に人を呼んでしまうんです。人気のない場所に扉を出して、中に入った人を強引に。だから、このお城の持ち主として、来ちゃった人にごめんなさいする為に、此処で待ってたんです」

と言う。

「あの、よかったら、お茶と果物だけでも食べて……いや、持って帰られませんか?どちらも、美味しいと思いますから……」

お茶会、という言葉に一瞬パッと顔を輝かせたが、直ぐに、連れてこられた人をそんな事に誘うのは厚かましいと思ったのだろう。その様な事を言う。

エシル・アルトワーズ > ――なんだこの可愛い生き物は。

縮こまる姿はまるでこちらが恫喝しているかのよう。
その様子にすっかり勢いをなくしてしまい。

「まぁ、なんだ・・・お茶くらいならいいよ、付き合ってやるさ。
このまま帰るのもなんだか悪い気がするし・・・な」

自分でも驚くほどあっさりと快諾してしまう。

「名前を知らないのも不便だな。俺はエシル。エシル・アルトワーズだ。お前は何て名前だ?チビ、なんて呼ばれるのは嫌だろ?」

軽く自己紹介しながら、あまり怖がらせないよう、にっと笑いかける。

ダーシャ > 「はうっ、良いんですか!?」

がばっと頭を上げて彼女の顔を見る。
叱られた後に餌を差し出された小動物のように、うるうるとした目で。
そして、名前を聞かれると、はっとした表情で

「ごめんなさい!お名前もお伝えせずに言い訳ばっかり……えっと、僕はダーシャと言います。このお城に住んでる、魔王擬です!」

と元気よく自己紹介を。

エシル・アルトワーズ > 「魔王擬ィ?」

やはりというか聞きなれた――それとは少し違う答えに思わず語尾が吊り上る。
名称からして魔王とは似て非なるものか。
とはいえ、目の前の子犬のような表情を見ると不思議と悪意は感じられず。

「ダーシャ、だな。まぁよろしく、だな
言っておくが、俺は茶会の作法とか知らないからな?あんまり期待はするなよ」

そう言いつつ脚は少年の下へ、対面になる位置の椅子に腰掛ける。
目の前の果物は見た目だけでも十分な良品であることが窺える。
わたしのような“誰とは分からぬ来客”へ向けたものなのだろうか、だとすれば来るかもどうか分からない客人を待ち続けていたのだろうか。

「それで、ダーシャはどれくらい待ってたんだ?
その様子じゃあ5分や10分なんてモンじゃあないんだろ?」

ダーシャ > 「はい、魔王擬です。えっと、魔王に似てるけど、違うから、魔王擬、って言うらしいです。あ、さほーとかは大丈夫です!僕も全く知らないので!」

そう言いつつ、座ったエシルのカップと自分のカップに、お茶を注ぐ。
ポットが重いのかややぐらついた手付きだが、結果としてはちゃんと二人分のお茶が注がれた。

そして、待っていた時間を聞かれると、懐をごそごそ探って懐中時計を取り出して

「えっと、今が夜だから、約一日ですね。扉は一度出ると一日中消えないので」

と事もなげに言う。しかしその後、あ、と思い出したように

「そのフルーツとかはちゃんと定期的に氷室に保管したものと交換してますから、お腹とかは壊しません!大丈夫です!」

とズレた心配はしたが。
そして、今度は逆にエシルに問い返した。

「そういえば、エシルさんは何処からやって来たのですか?何かしていた最中とかじゃないと、良いんですけど……」

エシル・アルトワーズ > 「一日中、てお前退屈だろうに・・・」

驚き半分、呆れ半分な溜息でカップに注がれる紅茶に視線を落とす。
フルーツについて説明は受けたが、まぁそんなもんだろうなと特に思うところもなく。

「ああ、俺は日課の鍛錬をな。この姿だからってナメられるのは癪だからな。その帰りにシャワーを浴びようと思って脱衣室のドア開けたらここにいたって訳だ――汗臭く・・・ないよな・・・?」

ここに至る経緯を説明すると同時に忘れていた汗のべたつきを思い出す。
汗臭くなければいいのだが。

手元のカップを手に取り、一口。
余り慣れた味ではないが、花のような香りが口を鼻を駆ける。

「いい匂いだな・・・美味しいよ」

なんの捻りもない、率直な感想が零れる。
紅茶の種類は知らないが、これはこれで結構好きなやつかもしれない。