2018/07/09 のログ
ご案内:「富裕地区 路地裏」にツァナさんが現れました。
■ツァナ > 【お約束待ちです】
ご案内:「富裕地区 路地裏」にルシアンさんが現れました。
■ルシアン > 「売り物…ううん、君の事をそういうつもりで言ったわけじゃ無いから。気に障ったなら、ごめん」
最初は所謂、追剥のような事をされた相手だけど。こうして話が出来れば、少しずつ態度も柔らかく。
それでもまだ、多少の警戒はあるのだけど…そういう意図はない、と軽く首を横に振って。
「ん…ふふ、気にしなくていいよ?今日は割と沢山貰えたし、余裕はない事も無いんだ。
せっかく上げたものだし、落ち着いて食べな?」
そんな強盗まがいな相手にお人よしだな、なんてことは自分でも思ってしまうのだけど。
それでも、そんな性分であるのだから仕方なく。小さく苦笑いしつつ、食べる様子を何処か楽しげに見守って。
だけど…その後の少女の言葉には、少しだけ思案気な表情となり。
「神様、か……それを言うなら、こっちも一つだけ。
キミの言う神様は、教会に行くことは許さなくても…こうやって、人から物を取ろうとすることは許すのかい?」
淡々とした調子の口調。責めるわけではなく、何処か諭すような調子。
静かにそんな事を語りかけてから、少し考え…小さく首を横に振って。
「ごめん。君の事情も知らないで、言いすぎたかもしれない」
■ツァナ > 「なら、良……ぁ。いや良い、本当に、そっちこそ、気にしないで…?」
途中で、びくりと頭を揺らした。売られる事を警戒するというのは。
まるで、それが前提である存在のようだと…種族を気取られる恐れが有ると。
遅ればせに気が付いたから。相手を、というより他者全般を。警戒するのは此方も同じ。
「うん?…うん。でも、それって。何人分?…けっこう、たくさん、だけど。」
それでも。食べ物を粗末にはしない。フードの下から、男の様子を、一挙手一投足を見やりつつも。
小刻みに囓って飲み込む、小動物めいた捕食行動も止まる事はなく。
少し首を傾げたのは。男がこの食べ物を運ぶ先。果たして、どれだけの子等が居るのかと。
「…ゆるさないと、思う。怒ると思う。」
其処は、痛い所だった。男の指摘に溜息を吐き…丁度食べ終わったから。
少し落ち着いたように、その場で壁際に座り込んでから。
口元程度は見えるように顔を上げて。男の方をじ、と見やり。
「…でも。いない、カミサマには、怒られないから。
……カミサマ、帰ってきたら。ちゃんと、いっぱい、怒られるから。」
悪びれた…というより。事実その物を、ただ言葉にしている、ような。
悪い事をしている、そんな自覚が有るのも、確かだとしても。
■ルシアン > 気にするな、と言われれば素直に頷いてあげる。
ここまでの会話で、何となく少女の素性は分かるような気がしていた。
――売られることを恐れる。隠したい事がある。その種族であれば、多かれ少なかれ似た反応をすることは多い。
幸い、というべきか…そういう相手を、青年は良く知っていた。
「小さい子だけなら、今は7人だったかな?あと大人が、僕も含めて5人か。
独り立ちをして出て行ったり、新しい子が入ってきたり……種族も、色々だ」
少女の隣、壁際に寄りかかる様にして腰を下ろして。荷物もその隣へといったん置く。
少女へと、軽く目配せをしてみて。「種族」という言葉をちょっと強調しつつそんな事を。
小さく息を付きつつ、見上げてくる少女の目線を見つめ返しながら。
「…そうだろうね。人の物を取っても良い、なんていう神様は、僕が知る限りでも居ないもの。
それに…神様が今は居なくても、帰ってきたら怒られるような事をするより、最初から怒られないような事をする方が良いんじゃないかな?」
…静かに言葉を返しつつ…さて、これは予想以上に複雑かもしれない。そんな予感を覚える。
神様が居ない。そしておそらく、少女の種族はミレーだ。
だとすると…どうしても、少々きな臭さを感じざるを得ない。その程度の情勢は理解していた。
くしゃり、と自身の髪をかき上げつつ思案して。ゆっくり言葉を紡ぐ。
「ねえ、君は何かできる事はない?今みたいな危なっかしい事は無しで。何かのお仕事とか、料理みたいな技能とか」
■ツァナ > 「ふうん。…そうか。大変、そう。…子供の、お世話。大変だし。
それは。多分、何処の誰も、同じ。なのかな。」
それこそ。種族を問わず、身分を問わず。子は大変で…大切だ。
男自身も、其処の所を良く知っているから、今そういう施設に関わっているのだろうか。
そう考えると、もう少し、警戒度が下がる。
何時でも飛び退ける、或いは飛び掛かれる、という体勢を捨て。
疲れに任せてその場に座り込んだのが。その証。
「……最初から、って。言われちゃうと。それは……それって、手後れ、かな。
だって。もう、悪い事、怒られる事、いっぱい…いっぱい、しちゃってる。」
覗く唇が尖る。頬が膨らむ。拗ねたような声…というより。間違いなく、拗ねていた。
男の言う事は解る。正論、即ち正しい事であって。だから、言われる側が間違っている。
盗んじゃいけない。殺しちゃいけない。その程度は解りきっている。けれど。
「他にもね。同じ事、言ってくれる人、居たよ?
ウチに来ないか。働かないか。こんな事やめないか。…って。
けど。…やられた事。酷い事。悪い事。…された事。
忘れて、やりかえさずに、私だけ…良い子になって。私だけ、救われて。
そんなの。カミサマ以前に、私が、私を、赦せないから。」
ある程度、最近の時事を知っていれば。…当然これも知っているだろう。
大々的に知らしめられた、王国軍の、この国の。ミレーの過激派が潜む場所を、壊滅させた、という話。
膨れっ面がその侭、じっと男に向けられて。…次の言葉までに、少しだけ間が有ったのは。
多分少女自身が、酷い事を言ってしまうと、自覚していたから。…それでも。唇は止められなかった。
「そっち、だって。
…さっき言ってた、子供達とか。
奪われたら――殺されたら。
それでも、良い子でいる事の方が、大事?」
■ルシアン > 「まあ、そういう僕もそんな偉そうなことを言える立場じゃないんだけどね。
僕自身も、其処で世話になってるんだ。…さっきの君みたいに人から取ろう、なんて元気もなくなってぶっ倒れてた所を助けてもらった。
そのまま世話になって、お礼も兼ねてお手伝いさせてもらってるんだ」
くすくす笑いながら軽く天を仰いでみて。何のことはない、少女とこれだけ腹を割って話すのも、似た境遇があるからこそ。
勿論、孤児院に係わってからは少女の思う通り、毎日が大変ではあるのだけども。
相手がまた少し、警戒を解いてくれたことが何処か嬉しく思える。小さく頷きつつ、言葉を続ける。
「…そっか。それはきっと、何かの形で償わないといけないのかもね。
これも僕の知る限りだけど…救いを与えてくれない神様、って言うのも、聞いた事はないし」
実際の所、青年に信仰する心というものは薄い。
生まれがこの地ではなく、はるか遠い異国だから…もし祈る神が居るなら、その地の神だ。
だけれども、少女がその信仰を心の拠り所にしているなら、それを尊重しようと言葉を選ぶ。
…もし避けられたりしないならそっと手を伸ばして、少女のフードに隠れた頭を、ポンポンと撫でてみようと。
「…ものすごく、難しいね。僕としては…考えるのは、2つだ。
それでも神様を信じるなら、その教えに従うべきだろう。
殺されたら殺し返せ…そんな教えは如何なる神でも有り得ない。
若しくは…自分が許せず、相手も許せないなら…敵討ち、復讐…それを果たす事を誰に止められる謂れも、無いと思う。
ただし、それをしてしまったら、二度と神様に顔向けはできない。口にする事も憚るべきだ」
淡々と。少女の心を慮ったか、返答をする声は感情が籠らずに。
眼を閉じ、深く考える。ゆっくりと目を開くのだけど。
「…僕には君ほどの信仰心は無い。僕がその立場なら…後の行動を取るだろうね。
でも、君は…かみさまが、大事なんでしょう?」
問いかける。少し大人である自分にも難しい問いだ。少女には、いかほどだろうか。
■ツァナ > 「…あぁ、うん。ちょっと、解る。
お腹が空くと。動けなくって。辛くて。どうしようも、なくなって。
いっしゅ…いっしゅく、いっぱん?えぇと、一宿一飯の、恩って。結構大きい。」
そう考えると。少女自身も、この男に、借りが出来たという事になる…それも、大きな借りが。
なので、迂闊に恩を仇で返すようなマネは。出来るならしたくない。
だからか、此方に伸ばされる手に対しても。飛び起きるような動きは見せずに…
頭の上に置かれる、その掌を受け容れた。
「そう、だね、叱られる位は…叱ってくれる、人、居るのは。大事なコト。
けど。救いは、どうかな。…何が、救いか、って。結構、みんな、バラバラだ。」
…正直を言うと。少女自身も、極度に信心深い訳ではない。
ただ、それ以外の判断基準という物が、少なかった。学ぶ術も場所も知らない、純粋というよりは唯の無知。
目を伏せ表情が沈む様子は、俯いた頭を、すっぽり覆ったフードが隠し通し。男には見せないものの。
触れられた頭が、掌に返す感触は。頭骨とは違う、明かに柔らかな物。
…獣の耳が其処に在ると。隠す事を諦めたのか…開き直ったのか。
「そして。其処は、ちょっと、違うと思う。
武神は?戦神は?魔神は?邪神は?…考え方、信じ方、みんな、それぞれ、だよ。
……でも、確かに。私のカミサマは。本当は、優しいカミサマの筈…だけれど。
貴男達の、この国のカミサマと、違って。」
それは本当に。難しい問いだった。それこそ、正解など無いのだろう…という程に。
もう一度。其処で言葉は途切れてしまった。先程よりも長く、長く。
思案と煩悶の長さと深さを、その侭示して押し黙り。
………やがて。忘れていたかのような、深い息を吐いてから。立ち上がろうと。
「言われると。わかんなく、なっちゃう…よ。
けど。確かなのは。…カミサマの為に、みんなを。みんなの為に、カミサマを。
どっちかの為に、どっちかを、忘れるなんて。 ……出来ないよ。全部、欲しいよ。
…なくなっちゃった、なんて。嫌……だよ。」
それはもう。信仰でもない。教義でもない。ましてやテロ思想でも破滅思想でも。
単なる…本当に、単なる。子供のワガママだった。