2017/03/08 のログ
ご案内:「ドラゴンフィート・組合の施設」に物音さんが現れました。
ご案内:「ドラゴンフィート・組合の施設」から物音さんが去りました。
ご案内:「ドラゴンフィート・組合の施設」にテイアさんが現れました。
■テイア > にわかに警備門の方から騒がしさが、アーヴァインのいる部屋へと微かに届くだろうか。
それは、声であったり足音であったり、気配であったり、警備門から離れていればいるだけ音は聞こえづらいだろうが、何かしらの異変を感じ取ることはできるだろう。
「~~~っ」
警備門の内側に立つ木々が、微かに揺れてそこから茂みの中へと一瞬銀色の髪が煌く。
混乱する頭の中で、必死に狩りのときの気配の消し方を父から教えてもらった事を思い出し息を殺すと、すぐそばで
『いたか?!』
『いや、向こうかも知れない。』
そんな警備の者の声が近づいて、通り過ぎていく。
ほっとそれに胸をなで下ろすと、茂みの中に隠れながらもっとしっかりと隠れられる場所を探して移動していくか。
――どうしてこんなことになってしまったのか。
思い返せば後悔ばかりが募ってくる。
城から一人で出てはいけないと言われ、最初のうちはよかった。
見たこともない構造、物は10歳の少女の好奇心を満たし楽しかった。
けれど、それは時間の経過とともに退屈へと変わり外への欲求が強くなっていた。
そんな折、城に来ていたオルカモントの引く馬車を見つけた。
こっそりとシルキーの目を盗んで、馬車へと近づきなんだろうと中へと乗り込んだのが悪かった。
必要な物を積んだ馬車の扉が閉じられ、そのままノンストップで此処、ドラゴンフィートへと来てしまった。
森しか知らない記憶の中では、まるで全く知らない世界にいきなり放り出されたようなもので、混乱と恐怖と、少しの好奇心でドラゴンフィートの中をさ迷い歩いて、着いたのは警備門。
うろうろするさまに不信に思った警備の者に声をかけられて、驚き魔力が暴走して小さな竜巻を起こしてしまい、現在の騒ぎに至る。
どっどっと早鐘を打つ胸を押さえながら、さらに奥へと逃げるように進んでいけばアーヴァインのいる部屋へと近づいていくか。
■アーヴァイン > 静かな部屋に届く物音、それは何かと定めるには断片的で、限られたものばかり。
なんだろうかと顔をあげると、脳内に声が響いた。
「……どうした、ハンス」
雷の隼が外が騒がしいと呟きながら、平地の一角から門の騒ぎを眺める。
誰かが侵入したようだが、何が入り込んだ化まではわからんと呟く様子に窓の外を見やる。
竜巻で散った木の葉が散乱した門の周辺、慌てふためく警備員達。
事態を確かめようとしたところで、近づく足音に気付いた。
(「こんなところまでくるとは」)
深夜とは言え、そこらには少数ながら組合員がいる。
それを誤魔化せる移動の技術は、並の存在ではなかろう。
少しだけ緊張しつつ、扉を自ら開き、廊下を確かめれば、最奥部たる彼の部屋へ通じる廊下、そこに見覚えのある姿を見つけた。
「…テイアか?」
銀髪に特徴的なオッドアイ、すぐに浮かんだのは彼女の名前なのだが、何処か違和感を覚える。
怪訝そうな様子が少しだけ表情に浮かびつつも、廊下へと出れば、駆ける彼女の方へと歩み寄ろうとした。
■テイア > 茂みの中を移動いた、顔や手など肌の露出している部分にはいくつも引っかき傷のような傷ができている。
けれど、今は痛みは全く感じなかった。
知らない場所…むしろ、生まれてから10年分しかない記憶は、今から遠い遠い過去のもの。
世界そのものが知らない何かであること、そんな中で追いかけられる恐怖に痛みを感じている余裕などあるはずもなく。
茂みのすぐ近くにある建物、そこにつけられた窓は幸運にも鍵が掛かっていなかった。
そこから侵入して、廊下を足音を消しながら小走りに駆けていく。
どこか、もっとちゃんと隠れる場所はないかと、追いかけてくる者はないかと左右や後ろを振り返りながら。
「――っおとうさん?!」
びっくーんと、掛けられた声に後ろを振り返っていた肩が跳ね上がる。
けれど続いた言葉に、きっと彼は戸惑ってしまうだろう。
テイアと名を呼ぶ声は、城で両親から自分を預かってくれているおにーさん、実際にはテイアの夫なわけだが…彼のものとも、集落にいるおじさんたちのものとも違う。
父が自分を呼ぶ声と酷似していて、ぱっと振り返る顔には安堵の表情がありありと浮かんでいたことだろう。
■アーヴァイン > 手足や顔に残る小さな擦過傷のような跡、逃げ惑う猫のような様子は、以前に記憶していた凛々しい彼女の雰囲気とは全く異なる。
窓越しに二人の様子を見やる隼も、何の冗談だ?と変わらぬ声で、彼の脳裏に問いかけるほど。
「……いや、お父さんではないが」
驚きの様子に、訝しげに様子を見ていたが、続く言葉は想定よりも斜め上。
こちらもこちらで、クソ真面目な返答を真顔で紡ぐも、親を見つけた幼子のような表情に、どうしたものかと、僅かに眉が動き、表情が崩れた。
「……こっちにおいで?」
ともかく、いつもの彼女とは何か違う。
それだけを把握しながら、小さく手招きをすると、開かれたドアの方を掌で指し示す。
それからすっと掌を差し出した、幼子が逸れぬように手をつなぐ時の仕草とまったく同じだ。
(「何にしろ、他の組合員に見られた時が大変だ」)
森の領主たる女性が、幼子のようになって現れた。
知れただけで一騒動だろう。
そんな様子はおくびにも出さず、落ち着いた静かな表情で彼女を見つめる。
■テイア > 父がそこにいる、という安堵は振り返り彼の顔を見た瞬間絶望へと変わる。
振り返ったその先にいたのは、全く知らない男性だった。
普段表情の変化の乏しい女の顔からは、考えていることすべてが手に取るようにわかるほど、表情がころころと変わっていく。
「おとうさんじゃない…もーやだー、おうち帰りたいっ」
視認して、父ではないと認識した上に彼からもまた父ではないとクソ真面目な返事が帰ってきて現実を叩きつけられる。
う゛っと堪えていた涙が溢れ出して、その場にへたりこむと溢れる涙をぬぐい、しゃくりあげて。
此処にくる前から我慢していた様々な感情が溢れてくる。
おとうさんとおかあさんに会いたい
おうちに帰りたい。
ぐすっと鼻を啜りながら、声に涙の溢れる瞳でアーヴァインを見上げた。
こっちにおいで、と父とよく似た声と落ち着いた様子は女の中の少女の警戒心と恐怖を幾ばくか和らげ躊躇しながらも、差し出されたその手をとって立ち上がり、部屋の中へと招かれていくか。
■アーヴァイン > 明らかに表情が落胆しているのがわかる、追い打ちに告げた言葉が更に心を抉ってしまったようだ。
愚図るような言葉に、暫し次にすべきことが浮かばないほど脳内はフリーズし、ハンスの『何やってるんだ』と、対岸の火事を見るような言葉にイラッとしながらも、へたれ込んだ彼女の傍でしゃがむ。
「ご両親と逸れたのか…ここは、それなら何処にいるか探してもらおう」
真面目が故に、子供のような言葉にも真面目に受け答えしつつ、その手を優しく握る。
おいでと連れて行った先の部屋は、大きな本棚がいくつかと、事務所のように向かい合った机が4つ。
どこも書類の山や本の山がある、少々散らかった事務所らしい場所だ。
休憩用に一つだけ置かれたソファーへ彼女をご案内すれば、座るように促し、小さな茶箪笥の引き戸を開く。
「…名前はテイアだったと思うが、年は幾つだ?」
女性に年を聞くものではないが、今は彼女の状況を知りたい。
見た目は変わらないが、中身はまるで別人だ。
問いかけつつ、小さな包みを取り出すと、彼女へとそれを差し出す。
海運で流れ込んできた外国の砂糖菓子である。
丸っこい小さな突起が幾つも並んだそれは、色とりどりな粒となって袋の中に収まっている。
口にすれば、心地よい硬さの食感が崩れ、甘みと薄っすらと花の甘い香りが混じり合うだろう。
薪ストーブの上に乗っかっていたケトルから、ポットにお湯を注ぐと、中に広がっていた茶葉からジャスミンの心地よい香りが広がっていく。
■テイア > 「おとうさんと、おかあさんは、今遠くにお出かけしてるんだってお城のおにーさんがいってたの…。
おとうさんの声がしたと思ったのに、おとうさんじゃなかった…。
お城の前に、オルカモントがつながれた四角い箱みたいなのがあって、なんだろうって箱の中に入ったらがたがた揺れて、揺れたのが止まったらここにいたの」
ぐすっぐすっと鼻をすすりながら、涙で震える声は此処ではぐれたわけでないことを告げる。
それとともに、ここまで来た経緯も説明して。
優しく手を握られ、部屋の中へと招かれると涙をぬぐいながら辺りを見回した。
本棚と、机、そこらじゅうに積み重なった書類や本の数々と城にある本来の女の執務室にほんの少し似た様相。
ソファへと促され、素直に腰掛けて。
「なんで私の名前知ってるの?…10歳」
初めにテイアと、そう父に似た声で名を呼ばれたからこそ父だと勘違いした。
素直に問われた事に対して年を告げて、差し出された包をみればそこには色とりどりの砂糖菓子が入っている。
「……お星さまみたい。……っ…」
ころんとした小さなそれにはいくつも突起がついており、一粒つまんでみれば微かに甘い香りがする。
食べてもいいの?と相手を見上げたあと口に含めば優しい甘さが口の中に広がっていくのに、瞳を輝かせて。
■アーヴァイン > (「……彼女の両親について聞いたことはないが、奇妙な感じがするな。オルカモント…あぁ、以前装甲馬車を引くのに話が上がった鳥か」)
彼女の言葉に静かに頷きながら耳を傾け、話の内容を脳内で整理していく。
彼女の言葉はまるで迷子そのもので、見た目からはそんな想像もつかない。
彼女の身に何かがあった…その何かが分からず、心の中にモヤが掛かり、焦れったい心地を覚える。
「…もっと前にテイアとあったことがあるんだが、忘れてしまったか」
まるで幼い頃に出会ったかのような口ぶりで呟けば、苦笑いを浮かべる。
10歳、在りえない話だ。
何かの要因で少女のような性格、もしくは記憶へと変わってしまっている。
たどり着いたのがここなのは不幸中の幸いだ、間違って王都にでも流れ込んだとしたら…想像もしたくない。
そんな悪寒も顔に出さず、ジャスミンティーを淹れていくと、傍のテーブルへとそれを静かに差し出す。
「コンフェイトという砂糖菓子だ、海の向こうでは定番のお菓子らしい」
問いには勿論と頷いて答えれば、可愛らしい笑みに柔らかに微笑み返す。
夜が明けた頃に、隼に乗って森へと送り届けるのが良さそうだ。
今頃森は大騒ぎだろうと思いつつ、ソファーの傍にある窓を指差した。
「教えてくれたおかげで、テイアのお家が分かった。朝になったら家まで送ろう。そこの鳥に乗ってだ」
窓の向こうにある平地には、とても大きな隼が羽根を畳んで留まっている。
相棒たる鳥にも彼女の話し相手を勤めさせ、今宵のベッドは彼女のものだ。
翌朝には、隼の背に乗せて遊覧飛行を楽しませつつ、彼女の住まう城へと送ってゆく。
帰路は事の顛末を、知る人がいれば訪ねながら事態を把握するのだろう。
■テイア > 「うーん…うん?…覚えてない…。」
もっと前、女の中の少女の感覚からすれば幼い頃ということになるが、そう言われてきょとんとした表情を浮かべる。
その後眉間に皺をよせて、記憶を探ろうと唸るが全く記憶の中に見つけられずに首を横に振り。
「こんふぇいと?甘くて口の中でほろほろってとけてくの。はちみつよりもおいしいかも」
森の中で甘いものといえば、植物の蜜や樹液の類でそれとは違う優しい甘さに吐息がこぼれる。
ジャスミンティーを入れたカップが置かれると、礼をいってそれにも口をつけてまたほっと吐息をこぼして緊張がほぐれていくか。
「おうち分かるの?帰れる?おっきい隼だぁ、乗れるの?」
家まで送ってくれるというのには、一気に表情が明るくなっていくか。
窓の外の平地に留まる隼に歓声をあげて、彼を質問攻めにして、やがて眠りへと落ちていく。
翌朝初めて飛ぶ空に、はしゃぎながら森へと送り届けられていくか。
森ではシルキーと女の夫たる男が慌てて出迎えることだろう。
そして、少し前に女が死にかけていたこと、そしてそこから目を覚ました時には今の状態になっていたことなどが告げられるか。
隼にのって空へと舞い上がっていく彼を見送るのは、10歳の無垢な少女。
次に会うときに、どちらの女であるかはまだわからない。
ご案内:「ドラゴンフィート・組合の施設」からアーヴァインさんが去りました。
ご案内:「ドラゴンフィート・組合の施設」からテイアさんが去りました。