2016/10/02 のログ
ご案内:「九頭竜山脈の街道に面したログハウス」にリリティアさんが現れました。
■リリティア > 日も傾き始めた頃、鼻歌を歌いながらダイニングで保存食作りの仕込みをしていた。
キッチンで切り添えた野菜を笊の中に均等に並べていくだけ。
後はこれを軒下にでも下げておけば、水分だけがとんで日持ちする野菜に変わる。
軽く下味もつけてあるので、そのまま齧って食べれるのもいい。
窓から空を見上げれば、夕焼けが紺色に染まりつつあった。
そろそろ夜、今日はお客さんはなしかなと思いながらも手は止めない。
「ぁ、ついでだからあれもやっちゃおうっと」
籠に敷き詰め終えれば、それをもってパタパタと玄関の軒下へ。
古びたフックに吊り紐を掛けると、ちょうどよく地面と水平になって笊が揺れる。
後手でドアを閉めると、今度は編み物。
綺麗に棘取りを行い、しなり良くなるまで柔らかくした蔓をカゴいっぱいに持ってくると、椅子に腰を下ろしてそれを手に取る。
三本の蔓が細い指に導かれて器用に編み込まれていくと、三つ編みのように絡み合いながら縄を作り上げていく。
洗濯物を干すときの紐に使ったり、バケツの取っ手につかったりと色々と使えるそれを、ソプラノの歌声を奏でながら編み続ける。
ご案内:「九頭竜山脈の街道に面したログハウス」にフォークさんが現れました。
■フォーク > 「うーむ、参ったな。このままじゃ山の中で夜になる」
愛馬に跨がりながら、男は独りごちる。
冒険者ギルドの依頼の帰路、近道して山脈を越えて戻ろうとしたらこの始末。
すっかりと道に迷ってしまった。街道を歩いてはいるけど、すでに日は傾いている。
野宿の準備もしてはいるが、できれば宿に泊まりたい。きちんと予算が下りているからだ。
馬の脚が止まる。
「どうしたビッグマネー号」
馬の鼻面が指す方を見れば、ログハウスの明かりが見えた。
「でかした。一晩泊めてもらおう」
急いでログハウスの前へ。どうやら宿屋のようだ。
愛馬から降りて、扉を開く。
「すみませーん。ここ、もしかして宿屋ですかあ?」
ぬっと大きな顔を家の中に突き出してみた。
■リリティア > これぐらいでいいかなと出来上がった縄を伸ばして確かめると、確りと蔦が噛み合って軋む音はするも、堅牢性は十分に感じる。
出来たと微笑みを浮かべながら縄を籠に戻すと、外からする物音に気づき、そちらへと視線を向けつつ籠を抱え上げた。
「こんばんわ。はい、宿屋ですよ~お泊りですか?」
籠を抱え上げたまま立ち上がると、満面の微笑みでご挨拶と共に答える。
思っていたより早く日が暮れちゃったとかそんなところかななんて考えつつ、ぱたぱたと籠を持ったままカウンターの裏へと向かうと、籠を片付けて直ぐに戻ってくる。
「一晩で40ゴルド、お食事付きで50ゴルドになりますけど…」
よろしいですか? と言いたげに軽く首を傾げながら問いかける。
それにしても大きな人だなと、自分よりも一回り二回り大きく見える姿を見上げ、格好から冒険者かなと考えながら宿帳をカウンターの上へ広げていく。
■フォーク > 「ああ、良かった。てっきり野宿する覚悟だったんですよ。渡りに船とはこのことだ」
室内を見回す。居心地のよさそうな宿屋だ。料金も手頃なので
「では食事付きで頼みますわ。俺、けっこー食べる方なので……って、わかりますよね」
困っていたところで宿屋が見つかったので、ちょっとはしゃぐ男。自分の胸を叩いて豪放な笑い声をあげる。
店の女将らしき女性が美人だったことも、浮かれた様子になっているのは言うまでもない。
カウンターで記帳をする。傭兵として活動している時は偽名を用いることもあるが、
今日は冒険者ギルドの仕事なので、本名「フォーク・ルース」と記帳する。
「へへ、じゃあ俺ちょっと馬を外に繋いできますんで」
と、いったん宿の外に出て馬を手頃な場所に結びつけてくるのである。
「喜べ、ビッグマネー号。女将がいい女だ!」
愛馬は小さくいななく。別に馬にとって女将の顔の善し悪しは関係ないことらしい。
そして、男は宿の中へ戻る。
「ここはあなたが一人でやってらっしゃるんですかい?」
世間話。
■リリティア > 「ふふっ、最近は日が落ちるの早くなっちゃいましたからね、夏の感覚だとあれっと思ったら夕方ですし。あはっ、じゃあお食事付きで…では沢山作らないとですね」
朗らかな彼の笑みに、こちらも釣られるように柔らかな微笑みが溢れる。
明るくて良い人 と思いながら彼にペンを差し出すと、書き込まれていく名前を確かめる。
「はいっ、ぁ、近くに馬を止めるところがあるのでそちらにどうぞ~!」
フォーク・ルース、フォークさんでいいかなと思いながら、一旦外へ出ていく彼を見送った。
出入り口から少し離れた部分に小さな雨避けの屋根と、その下に馬止の丸太が備えられており、水を張った木箱があり、丁度いい高さに干し草が釣ってある。
魚と、後は野菜を畑から幾つか取ってこようかなと献立を考えていると、彼が再び戻ってきた。
「おかえりなさい、えぇ、私一人です。普段は近くに薬草が多い草原とか、歩いてすぐのところに温泉があるので、そこをお目当てにくる人しかいませんから」
だから一人で事足りのだと説明しつつ、部屋の鍵を手に取るとお部屋へとご案内していく。
2階の角部屋を開くと、一人が寝泊まりするには十分な広さにベッドと、簡素な調度品などもある。
ここも1階と同じく観葉植物が飾られており、目に優しい色合いで飾られていた。
「こちらをお使いください、鍵はお帰りの時にお支払と一緒にお願いしますね?」
優しく微笑みかけながら彼を見上げると、小さな手でウォード錠の鍵を差し出した。
■フォーク > 女将に先導をされる。どうしても前を歩く女将の尻に目が行く男。
どちらかというと尻派だった。
「……ああ、どうも。いい部屋ですね」
女将に鍵の話をされて、我に返る。
部屋の中を見渡した。清潔感があって不自由のなさそうな造りの部屋だった。
「温泉があるんですか。そりゃあありがたい!」
鍵を受け取る。男の手は少女の拳を包み込める程に大きくて無骨だった。
ここで男はお得意の悪知恵を働かせる。
(温泉があるということは、女将さんも利用をするはずだ。そのタイミングを狙おう)
混浴ではないという可能性もあるのに、そんなことを企む所が、男のちょっと抜けた所である。
■リリティア > ゆったりとした服装ながら、コツコツと歩く度に腰が少し揺れる。
ふわふわとしたスカートに包まれてはいるものの、小さいながら細い体付きに溶け込むような綺麗な曲線美を描いているのが分かるかもしれない。
視線がまさかそんなところを向いているとは露知らず、部屋の案内を進めていった。
「ぇ、えぇ…傷に効くとか、美肌効果があるとかみたいで、湯治に来られる方もたまにいますよ?」
小さな手は無骨な手に包まれると幼子の手のように指が細く、白い肌はしっとりとして柔らかい。
手を握られたことに少しだけ驚きながらも、不意にこんなことを問いかけた。
「ちなみに……いつ頃入られにいきますか?」
こんな辺鄙なところの温泉というのもあって、混浴になっている。
というのも、脱衣場も昔ここによく来ていた人が作ったのか、古ぼけた板木で作られた簡素なもので、男女別に別れもしていない。
自分で整えようかと思ったものの、工具を手にするのは慣れていないこともあって億劫だし、悪さをするひともいなかったので今に至ってもそのままだった。
流石に鉢合わせるのは恥ずかしいものがあり、彼の入る時間を確かめようとした。
■フォーク > 「傷に効く。ますますいい、これは是が非でも入らなければ!」
美容効果があるということは、女将さんも利用しているのだろう。確信した。
悪巧みをする時、いつもこの男の表情は明るくなる。特にいい女絡みの奸計はとりわけ嬉々としていた。
(これは、なんとしてでも偶然を装い入らねば)
そこに突然、質問をぶっこまれた。いつ入るか、と。
(さて、どう答えたものか)
食事の準備の都合もあるだろうが、おそらく彼女も温泉を利用するのだろう。
だから入浴時間を訊き、ずらそうと考えているのかもしれない。男はそう推測した。
そして数秒ほど考えた後に――
「長旅で疲れたので、少し部屋で小休止をしてから入ることにします。なので女将さんは他にやることがあれば、そちらを優先してくださいな」
そう答えた。
■リリティア > 「お仕事柄、怪我もされてるでしょうし…ぁ、傷跡もきえやすくなるらしいですよ?」
嬉しそうにしている様子に、悪巧みをしているとは気づかずにこちらも柔らかに微笑む。
問いかけた言葉に数秒ほどして返ってきたのは、少し休んで空にするという事。
ただ、意味深に他にすることがあれば…と言われたのは、自分が時間をずらそうとしているのを察して伏せてくれたのかもしれないと思うと、苦笑いを浮かべながら小さく頷いた。
「わかりました、じゃあ夕食は1時間ぐらいしたらにしますので、それまでゆっくり休んでてくださいね?」
包まれた手を優しく解いてから、ペコリと頭を下げると1階へと降りていく。
そのまま勝手口から農園へと抜けると、夕食に使う野菜を籠に集めていき、キッチンへと戻る。
それが大体5分ほどのことで、時計を確かめると壁にかけていたランプを手に取る。
タオルと着替え、ボディタオルとお手製の石鹸等など、お風呂用具を麻ひもの鞄に詰めると、ランプの明かりを揺らして温泉へと向かっていく。
その姿は、部屋の窓からも、紺色に染まった空の下、暖かなランプの明かりが遠ざかることで分かるはず。
■フォーク > 「そうですね。どこもかしこも傷だらけ!」
と、話を盛り上げる。女将が尻を揺らしながら部屋から出て行った。
10数える。
「よし、行動開始だ!」
まず革の鎧を脱いで身軽になる。
扉に内側から鍵をかけて、窓から出る。扉に鍵がかかっていれば、いざという時の時間稼ぎになる。
もし犯罪捜査に詳しい者が見ればプロの仕業に違いないと唸る行動であった。
屋根に上がった。
ちょうどいいタイミングで、ランプの灯が動いていく。女将のようだ。
「よし、あの方向に温泉はあるんだな」
ヤモリのように屋根と壁を降りていく。巨体に似合わない身軽さだった。
「ふ、ふふふ……」
顔に泥まで塗って暗夜に紛れ、女将を尾行する。
傭兵はあらゆる技術を体得しておかねばならない。追跡などお手の物だ。
女将が服を脱いで温泉に入り、たやすく出ていけない状況を狙うつもりだった。
■リリティア > 薄暗い草地の上を歩き続けると、木々が開けて湯けむりが上がる一角が見えてくる。
そこだけは温泉の成分もあってか草木がなく、岩肌が露出したような場所となっていた。
古ぼけた脱衣所をくぐると、籠を置いて鼻歌まじりに服を脱ぎ始める。
カーディガンのボタンを解いて、袖から腕を抜いていくと、ポンチョのようにゆったりとしたそれを脱ぎ、きれいに畳んでいく。
スカート・ワンピースの肩紐をズラしてすとんと落としていくと、長袖のカットソーを脱ぎ、下着姿へ。
白色に薄紫のレースや装飾が施されたブラのホックを外し、控えめな胸元が外気に触れると、冷えた空気に小さく振るえ、ショーツに両手を掛ける。
細い腰つきも顕になり、小さく丸まったそれを綺麗に畳むと籠の中に収め、麻ひもの鞄からお風呂用具を一式取り出し、暖簾をくぐって湯けむりが上がる温泉へと向かう。
「ちょっと寒くなってきたなぁ…」
独り言を呟きつつ、桶を手にすればかけ湯をしてから湯の中へ。
縁に道具類をおき、岩淵に背を預けながらゆっくりと肩まで浸かっていく。
■フォーク > 男は闇に紛れ、茂みの中に潜んでいた。
女将の脱衣から、温泉に身を沈めるまでを眺めていたのである。
(斥候の仕事を思い出すな。やってることが覗きというのが情けないが……)
音も無く立ち上がり、脱衣所の方へと向かう。
一部始終を眺めていたので、怒張した股間が地面に窪みを作っていた。
(お、お宝発見!)
女将が脱いだものを確認する男。下着は懐にしまいこもうとしたが、中身が奥に居るのだから必要ないと判断した。
「いやあ、やっぱり疲れを取るには温泉じゃないとなあ!」
手ぬぐい一枚を肩にぶら下げて、威風堂々と温泉に突入するのである。
すでにギンギンに立ち上がった巨根を隠すような真似はしない。温泉に腰巻きなど不要なのだ。
「おや、そこにいらっしゃるのは、どちらさまで!?」
湯煙の奥におわす女将に向かってしらじらしい声をかけて、悠然と近づこう。
■リリティア > 「――~♪」
両の掌で湯を掬い上げながら歌を奏でる。
父に習ったミレー族の古い言葉で紡ぐのは、自然を愛し、命を慈しむ生きる者を称える歌。
澄み切った音色を響かせている中、不意に脱衣所の方から気配を感じ、歌はそのままにそちらへと振り返った。
「~――……っ!?」
歌声がとまり、真っ赤になって表情が固まっていく。
先程部屋でゆっくりすると言ったはずの彼が、裸でそこにいたのだ。
固く反り立ったイチモツをしっかりと見ることなんて出来るはずもなく、バッと顔を背けながら見をチヂこませた。
「ふぉ、フォークさん……あの、お部屋で休まれるんじゃ……」
そのはずなのに何故ここにいるのか、そんなことを問いながら、視線は逸らされたまま、逃げるように脱衣所から離れるように奥の方へと移動していく。
■フォーク > 「あっ、女将さん!」
ちょっと類を見ないタイプのしらじらしい驚き方だった。
奥に逃げる女将を追い詰めるように近づいていき
「いやははは。やはり疲れを取るには温泉が一番と思いましてねぇー」
掛け湯なぞをしてみせる。こういうマナーは守る方なのだ。
ざんぶりと湯船に入り、女将へと寄っていく。
「いい温泉ですなあ。なんとなくこう元気になるというか、目の保養になるというか」
女将の艶姿を凝視する。股間の昂ぶりが抑えられず、肌よりも黒ずんだ亀頭が固い腹筋を叩いた。
「へへ、女将さん。ここで逢ったのも何かの縁だ。ここは一つ裸のつきあいということで」
にこにこと笑顔で混浴を提案するのであった。
■リリティア > 「……ど、どうも」
流石に天然な性格をしているとはいえ、白々しさ溢れる驚き方に笑みが引きつってしまう。
先程の問いかけは、間違いだったかもしれないと思いながらも、離れても近づこうとする彼にどうしたものかと内心戸惑いながら視線を上げられずにいる。
「そう、ですね……目の保養、ですか? もう少し寒くなると星空がきれいになるんですよ」
自分の姿の事を言っているとは考える余裕もなく、それとなく浮かんだ星空のことを語った。
うっすらと濁った湯の中で、身を縮こませるようにした身体は細く、湯の上から僅かに晒された胸元の曲線は緩やか。
その下や頂点は湯で歪んでよくは見えないが、綺麗系の体付き。
「ぅ、あ……そ、それはちょっと…恥ずかしいので」
そっぽを向く様に視線を彼とは反対方向へ傾けながら、しどろもどろに呟く。
のぼせたわけでもないのに頬が真っ赤になるほど恥ずかしく、耳も赤色に染まってしまう。
今すぐにでも逃げたい心地でいっぱいになり、小さく体を震わせた。
■フォーク > 「山の近くは空気が澄んでいますからね。清浄な地には美しい星と美しい女性がいるっていいますし。いやあ、大正解だ」
背を向けた女将の超至近距離までやってくる。
これが普通の男女ならばともかく、現在こちらは『客』という立場にある。
お客様は神様です、と威張るつもりはないが多少の融通を利かせるにはもってこいの状況だ。
「まあまあ、そう言わずに。俺も女将さんと親睦を深めたいですし。見たところ他に客もいない。差しつ差されつという言葉もあるし」
女将の赤くなった耳に軽く息を吹きかけてみせる。
じわりじわりと追い詰めるやり口だ。
少しずつ女将の心も体も開いていこうと企んでいる。
「せっかくだから背中でも流してもらえたら、嬉しいかな……なんて思ったりするんですけどね」
それくらいいいじゃないですか、とおねだりをしてみせた。
■リリティア > 「あ、あはは……その、私なんかまだ子供ですから…」
体付きも内面も、まだ大人とはいえないと思ってはいる。
美しい女性というよりは、お子様ぐらいな扱いだと。
相手が客という立場もあってあまり強引な手段には出られず、遠回しな言い方を繰り返してどうにか距離を取ろうと考えていた。
「それはうれしいですけど……それをいうなら持ちつ持たれつ、では?」
何を差すのやらと思う余裕はなく、突っ込むような返答をしながら暗い林の方を見やっていた。
耳元に息を吹きかけられると、ひゃっと悲鳴を零してビクリと身体をはねらせて身を縮こませていく。
身も心も開くどころか一層緊張して、丸まっていくばかりである。
「……じゃあ、お背中お流ししますので…その後、私は失礼させてもらいますね?」
ギリギリの妥協点と彼のお願いを聞き入れると、湯の中を四つん這いになるように身を低くして動く。
お湯の濁りで身体を隠しながら籠の傍まで行くと、そこからボディタオルを手に取り、彼の方へと振り返る。
先にどうぞと言いたげに、備え付けの手動ポンプのシャワーがある洗い場を、すっと掌で指し示した。
■フォーク > 「まだお若いのに、店を切り盛りしているからですかね。貫禄があらっしゃる!」
やはり経営者ともなれば責任感が伴うもの。そうなれば自然と精神的に大人びてくるものなのだろう。
逆にこの男といえば四十も近いというのに、精神年齢は十代半ばと実におとなげないのである。
健全な肉体に不健全な精神が宿ってしまった。
「えっ、どこを持っていいんですか!?」
思わず女将の胸を持ち上げる想像をしてしまう男であった。
「では、失礼をして」
体を隠すように移動する女将と違い、こちらは堂々とむしろ誇らしげに魅せるかの如く湯船から上がる。
洗い場に立てば、腰を下ろす。前にも背にも古傷のある大きな背中だった。
男は男なりに命がけで生きてきた証明である。
「じゃあ、おねがいしまーす!」
ただ、朗らかな声は明らかに悪戯坊主のものだった。
女将の背中流しにうきうきとしているのである。
■リリティア > 「そ、そうでしょうか…ね?」
食事も、お部屋も、色んな所に少女なりに気を配っているところはあり、少々乙女チックな宿にはなってしまったが、居心地いい空間は提供できている…筈。
自分よりも年上なのに、子供っぽい人だなとはひっそりと思っていたけれど、そういうところで背負う気持ちの違いがあるからなのかもしれない。
それよりも、なによりも、いまはただ恥ずかしい状況からどう逃げるかが肝心で、声も引きつってばかり。
「……肩を持つって言葉から、持ちつ持たれつです。でも肩を持つって言葉も…その人の味方をするって意味ですから、どこかを持つって意味じゃないです」
学のある父母からそこそこに教えを受けているのもあって、意外とそんな諺の由来をすらっと紡いでしまう。
どちらかといえば、そんなことでも言っていないと落ち着いていられないほど、脳がパニックを起こしていた。
大きな体が湯船から上がると、古傷のある背中が見える。
木製の腰掛けに座る彼を見やりながら湯船から上がると、お風呂道具をいれた小さな桶を持って、彼の後ろへと向かう。
「では…」
手にしたボディタオルに石鹸をこすり付けると、花のいい香りが泡と共に広がっていく。
泡だらけになったそれを広い背中へと押し付けると、細腕で力を込めてゴシゴシとこすり始めた。
幼いころに父の背中を流したときも全力で足りないぐらいと言われたほどで、手が小さい分力が入りづらい。
全力で擦ってちょうどいいぐらいの力加減で背中へ泡を広げながら動かしていく。
温泉の成分で少々曇った鏡が彼の前にあり、時折小さな胸を揺らしながら腕を動かす彼女の姿が見えるかもしれない。
■フォーク > 「掃除も行き届いている。貴女の背よりも高いタンスの上にも埃はまったく積もっていなかった」
男の眼はこれで決して節穴ではない。見ている所は見ているのである。一番見ていたのは女将の尻であるが。
背に女将の熱を感じる。この熱は決して温泉の熱だけではないだろう。火照った女の色香のおまけつきの熱だった。
「ははは、女将さんは学があるんですな。俺は教養がなくてね。どうもそっちの方はいけません」
自慢できるくらい教養がなかった。しかし戦術に関してはいささか自身がある。
戦場で産湯をつかった男は、生まれながらのいくさの子なのだ。
「おー、こりゃええこりゃええ」
女将が背中を流してくれている。全力で背中を擦ってくれているのだろう。
ふと、前を見ると鏡があった。少し体をずらせば、女将の乳房がじっくりと拝める。
女将は背中を洗うのに全力で鏡越しに見られているのに、気づいていないようだ。
「では今度は前の方もお願いします。女将さんの擦り方はなかなか上手だ」
当然というように体を女将の方へ向ける。
そして、そっと女将の両肩に手を当てた。勿論、逃がさないためである。
女将の眼前には、いきり立った雄の権化が天高くそびえているのが見えるだろう。
女将の性体験の多寡は不明だが、どんなリアクションをするか見物である。
■リリティア > 「お部屋は…何時も綺麗にしておかないと、ですから」
手の届かないところは踏み台も使って何時も綺麗にしている。
そんな小さな努力を褒められたのは、少しうれしくて、恥じらいばかりだった顔が少し喜びに明るくなった。
「父と母が二人共色々知っている人だったので…ふふっ、でも私はフォークさんみたいに力持ちじゃないですから、冬になると大変です、薪木とか…」
先程の子供っぽいテンションも、教養の少なさから来るのだろうかと思うも、自分を騙したと思う彼が根っからの悪党かと言われれば、頷けないところもある。
少し褒められただけで緩むのはよくないとは思うものの、心の反応を制御できるほど大人びてはいない。
「ふぅ……終わりましたよ? へ? ま……」
不意に振り返った彼が、自分の両方を捕まえる。
そして眼前に見える男の象徴が、雄々しく反り返っているのがわかれば、思考が一瞬にして止まる。
それから唇が戸惑いに開閉を繰り返しながら視線が散っていき、何も紡げずに動けなくなってしまう。
控えめな胸元も、そこにある薄褐色の先端も、薄茶の茂みとスリットも隠すことはしないが、あまりのパニックにカタカタと震え、ついには怯えてうつむき、ポタポタと頬に大粒の涙が伝い落ちる。
へたりと座り込んで両腕を胸元に添えて、何を言うわけでもなく振るえて泣きじゃくるばかり。
■フォーク > 「力だったら任せてください。何せこの前、馬と鹿と知らない婆さんを背負って山を駆け下りたことがありますから。わはははは」
冬になったらまた来ますよ、と付け加えて。
みんなが知らない所で様々な騒動を巻き起こしているようである。
大体、男の武勇伝はどうしてそんなことをする羽目になったのか気になることがほとんどだった。
「むむむっ!」
正面を向いた際、女将の秘所が視界に入る。
視線が物質化して秘所に刺さるのではないかと不安になるほどの凝視だった。
「どうしたんですか、女将さん。いきなり泣き出して」
さすがの男も動揺するのである。女の涙に勝てる男などいない。
胸元を押さえて泣きじゃくる女将の背にまわり、そっと肩を抱くのである。
「怖かったんですね。申し訳ない、少々悪戯が過ぎました」
無骨な指で女将の涙をぬぐいながら、謝った。
■リリティア > 「それは…凄いというか、なんと言いますか…」
何で馬と鹿を背負っているのだろうかと思いながらも、お婆さんを背負って山を降りたというなら、やはり悪い人ではないような…でも、ちょっと変な人かもしれないぐらいには思うことにした。
そんな思考も一気に叩き消してしまうほどの、男の象徴を見せつけられると、淫魔の血が混じっているとは言え、それを嫌がって森の中でひっそりと暮らしていた少女からすれば、抵抗手段がないなら怖くなってしまう。
グスグスと鼻を鳴らしながら、問いかけられた言葉にフルフルと小さく頭を振って、薄茶の髪が揺れる。
「……ごめ…んなさい、なんでも、ない…です」
王都の宿ではこんなことが当たり前なのだろうか?
今までそんなことを求められたことはなく、困惑とわからないことへの恐怖で体の震えが止まらない。
肩を抱き寄せれば、小さな身体がずっと振るえているのが分かるはず。
涙を拭われながらも、掛けられる言葉に無言のまま、されるがままにいたが、謝罪の言葉にわざとだと知れば、ぺちぺちと小さな手が彼の胸板を叩くが、まるで痛くないはず。
「フォークさんの……ばか、ばか…っ、良い人だって…思ってたのに…っ、だから…背中だって……」
どこか変わっているけど、良い人なんだろうと思っていただけあり、ワザとこんなことをしたと知れば、絞り出すような涙混じりの声が、不機嫌そうに響く。
ぺち、ぺちと叩く手が徐々に弱まると、早かった呼吸も震えも収まっていき、落ち着きを取り戻したものの、やはり恥ずかしくて改めて胸元を隠すと、少し赤くなった紫の瞳がじっと彼を見上げた。
■フォーク > (この小さな体で、いろんなもの背負って生きてきたんだねえ)
肩を抱いてわかったが、震える女将の肩は同年代の少女と何ら変わりのないものだった。
胸板を叩いてくる仕草も、その力も、街に居る少女と同じだった。
「へへ、いや……申し訳ない。女将さんを初めてみた時から絶対に裸を拝んでみたいと思っちまったんで」
かわいい子にいたずらをする子供と同じような感覚だった。そこがこの男の精神的成長のない部分なのだが。
男が謝れば、少女は少し落ち着いたようでじっとこちらを見つめてくる。
その顔を、こちらも覗きこもう。
「あんたは実に綺麗だ。ここの星は綺麗だろう。でもあんたの顔の方が綺麗だと俺は思う。
顔だけじゃない。体だって魅力的だ。それは……わかるだろう?」
男が照れくさそうに笑う。少女の肉体の魅力は、男の逸物が正直に表現していた。
「俺はお前さんの嫌がることはしないさ。ただ、ちょいとね。親密になれたらいいなと思っただけさ……嫌かい?」
ちょっとずつ顔を近づけていく。うまくいけば、唇を吸えるかもと考えて。
■リリティア > 「――っ、そんなの…簡単に見せれるわけないじゃないですか…っ!」
今ですら殆ど見られてしまっても恥ずかしくてたまらず、やはり胸元を隠してしまう。
短絡的で、子供っぽい理由だが、嘘偽りない分わかり易い言葉。
どこか変わっていると思ったのは、彼が自分よりも幼く感じるからかもしれない。
「……最初から、そういってください。こんな…無理矢理なの、嫌です」
そんな彼が照れくさそうに紡いだ口説き文句は、先程までの恐怖からの落差もあってか、少し心が揺れてしまう。
魅力的な証拠は目の前にあり、すっと視線をそらしながら紡ぐものの、まんざらではない心地になっていく。
「…今みたいに、嬉しい言葉…言ってくれなきゃ嫌です。乱暴なのも嫌…あと、お名前伝え忘れてからですけど…ちゃんと名前で呼んでください。リリティアって…」
顔を近づけられば、俯いていくものの、彼がおねだりの言葉に答えるなら顔をあげるはず。
本当はこうして宿に来た客と交わるのは胸がチクチクする、自分の母を殺した淫魔みたいに、男を誘ってるみたいだと淡い自己嫌悪に陥るから。
その痛みを誤魔化す甘ったるさが、何よりも大切だった。
■フォーク > 「だからこんな子供っぽい策を弄したのさ。すまなかった」
稚拙に次ぐ稚拙な企みではあったが懸命に悪巧みをしたのは、正攻法では簡単には墜ちないタイプだと思っていたからである。
しかし今、こうして密着をしている少女はロマンチックに憧れる普通の少女だった。
どちらかといえば正攻法で口説いた方が良いタイプだった。
「そうだったな。考えてみりゃあまだ名前も知らなかったぜ。ずっと女将さんって呼んでいたからな」
こりゃ失敬、と高笑いをする。口説こうとする相手の名を知るのはナンパの基本だった。
「俺は乱暴なことはしないぜ。ま、大して善人ってわけでもないんだが。お前さんの前じゃ立派な善人になってみせるぜリリティア」
少女を抱き寄せようとする。唇も奪おうとする。
そのためなら乱暴もやめよう、無法もやめよう。
「綺麗だぜ、リリティア。食っちまいてえくらいだ」
反り返った男根が少女の柔肌を擦る。何かをねだっているような、妙にいじらしい寄り添い方をしていた。
■リリティア > 「フォークさんのばか…」
自分の中にある淫魔の浅ましさを否定するように、甘ったるく穏やかにありたい。
彼が思う通り、乙女な思考は乱暴な方法よりも言葉での攻勢の方に弱い。
名前を伝えると、早速彼の低めの音が自分の名前を呼ぶ。
少しふらついていた気持ちが、それでさらに揺れていく。
何時もならそんな簡単に落ちないつもりだけれど、綺麗と言われるとチクリとする罪悪感から逃げるように守りが甘くなる。
食べたいの意味する理由ぐらいわかり、再び頬に紅色がかかってきたところで腹部の白い肌が肉棒をこする。
「んっ……」
強請るような押し付け方に、ちらちらと彼へ視線を向けると……くしゅっと小さくくしゃみをした。
湯に浸かっていたとはいえ、秋の夜風は冷たく、小さな体からはすっかり温泉の熱が抜けている。
「少し温まってから……お部屋に戻りたいです。お食事、おそくなっちゃいますけど」
いいですか?と言いたげに上目遣いに彼を見上げ、答えを求めた。
■フォーク > 「美しい花は可哀想なもんさ。見つかればどうやったって最後は摘まれちまう」
どこに居ても、美しい女性は目を引くものだと言っているのだ。そして自分のように手を出そうとする輩も出てくるとも。
少女の柔肌に擦られた男根は、さらに男らしさを誇っていくのであった。
少女が幼いくしゃみを一つした。
羞恥と緊張で体を覆っていた火照りが抜けてきたのだろう。
男はそっと少女の頬に手を当てた。
「いいよ……夜は長いんだ。どうせ客一人、慌てることもないぜ。リリティア」
秋の夜長だ。今夜、二人がどうなるかはわからない。
しかし、男はまた絶対ここに顔を出そうと考えた。どんな結果になろうともだ。
ご案内:「九頭竜山脈の街道に面したログハウス」からフォークさんが去りました。
ご案内:「九頭竜山脈の街道に面したログハウス」からリリティアさんが去りました。