2016/03/30 のログ
ご案内:「とある酒場」にハーディさんが現れました。
ご案内:「とある酒場」にエリミアさんが現れました。
ハーディ > ダイラスの街中にある、一見雑然とした酒場。
客の入りはそこそこだが、酔っぱらいたちの罵声や異国人たちの歌声が喧しい。
入り口付近では傭兵、もしくは仕事にあぶれた冒険者だろうか、物々しい装備の若者たちがカード遊びにふけり。
奥の方には商人の隊商がいくつか。小さなテーブルを丸椅子で囲み、商談だろうか、ひそひそ話をしている。
壁際には掲示板があり、依頼状だろうか、たくさんの紙切れ、そして枠を区切った一か所に、賞金首のリストが無造作に貼られている。

テーブル席の一つに、異国風の衣装をまとった男が座っている。
グラスを片手に、目の前に置いてある茶色の封筒を訝しげに眺めていたが、カード遊びの若者が勝利の雄たけびを上げると、眉をわずかにしかめた。

エリミア > (酒場に入ってきたのは、酒を飲むにはやや歳の足りない小柄な少女であり、その姿は酔っ払いの喧騒にはやや不釣り合いな印象を抱かせる。
ローブを纏うことで下に着ている服が隠されていなければ、娼婦のようにも見えたかもしれない。
少女は酒に酔って歌う一団を少し興味を持ったように見つめるも、立ち止まることなく店の奥、テーブル席へと向かっていく。)

「やっほ、お兄さん。何それ?」

(少女は男性の席に近づき、横から覗き込むように封筒を見ながら声をかけた。
相手が気づけば、そのままよいしょっと言いながら対面に座り、相席になろうとするだろう。)

ハーディ > 「ん?あーっと、エリ…ミア、でよかったか?
いや何、国元の親類から手紙が来てな。近況報告か珍しい品でもおくれとさ。」

目の前の封筒に影が差し、それで誰かが傍に立ったとわかったので顔を上げる。
碧の眼に少女の姿を確認すると、苦々しげに答えた。どうやら手紙の主はハーディにとって苦手な部類であるようだ。
近くを通った店員を手招きして呼び寄せ、相席になった少女に飲み物を尋ねる。

「まあ暇なら飲んでいけ。
この辺の地理について調べたいこともあるからな。依頼を出すかもしれんし」

エリミア > 「そうだよ、お兄さん。
へーっ、お土産の催促されたんだ…あっ、もしかして奥さんとかぁ?」

(顔を上げた男に問われた名前に少女はこくんと頷き、椅子を動かして席に座り、ローブを寛げて楽な姿勢になった。
どこか苦々しい表情を浮かべている男の態度に、珍しく回った頭がろくでもないことを考えて、少女はからかうように下世話な問いを投げかけてみせて。)

「あ、私オレンジジュース!ちゃんと搾った奴ね!
お仕事だね、でもお兄さんなんだっけ、ほらあのぶわーっ!って飛ぶ奴あるじゃん。
それで調べられないの?」

(注文を聞きに来た店員には、果汁を搾ったフレッシュジュースを頼みながら、男の言葉に両手を広げながら小首をかしげる。
要は前に見た空飛ぶ絨毯のことを指しているらしく。)

ハーディ > 「ところがどっこい、俺はまだ独身だ。一発当てて拠点に屋敷でも買うまでは、妻も妾も不要だと思ってる。
行商中に賊に襲われることもあるこんな世の中じゃ、身軽でいたほうが気楽なのさ。」

指でバツ印をつくり少女の予想を否定すると、めんどくさそうに続ける。

「ま、言っちまってもいいか。俺はとある王国の王族のひとりでな。つっても継承順位3桁だが。
継承争いってのはどこの国でもあるもんだが、そういうのに担ぎ出されるのが嫌だったんで、位を返上して商人になったのさ。この手紙の主はお袋だ、土産を決まった期限までに送らないなら、帰ってこいって言ってる。だがそれじゃ国外逃亡した意味がないんで、何とかしないといけないんだな。」

ハーディから摂取した魔力は質がよかったはずである、端くれとはいえ伊達に貴種ではない。

「ぶわーて… あの空飛ぶ絨毯の事か?
確かに飛んでいける場所もあるんだが、九頭竜山脈の一部地域に結界が張られているらしくてな。
俺は一応魔術師だが、残念なことにそういった方面ってやつは不得意でな。元々“朽ち枯れ果てる”砂と“生命はぐくむ”森とじゃ相性が悪いのもあるが。」

今度絨毯の乗り方教えてやろうか、と冗談を言う。

エリミア > 「なぁんだ、近況報告に書かなくてもいいよって言ってあげようと思ったのに。
まぁでも、気が楽ってのはわかるかな~?私も根無し草だし」

指でバツを作る男には少し残念そうに口を尖らせながら、両腕を頭の後ろで組んで脚を伸ばしながら、男の言葉に同意する。

「えーっ!?お兄さん美味しかったけど王子様だったの!?
ふ~ん、よくわかんないけど、怖いお母さんだね。
怒らせないように何かお土産送ったら?」

微妙に主語が省かれて妙な響きになった言葉を頓狂な声を上げながら少女は言ってのける。
かくいう少女は親のようなものにくれてやったのはグーパンぐらいであり、以降絶縁に等しい関係であるから、無難な提案ぐらいしかできなかった。

「そうそう絨毯。
あ、結界かぁ、たしかにあのあたり気持ち悪いもんね。
ホント!?私でも乗れるかな?」

魔族としては、そもそもこの王国自体に広がる加護に良くない影響を受けているが、あの山にも何か方向が違うが加護のような気配を感じていた。
絨毯には密かに憧れていたらしく、冗談めかしたつもりであろう相手に少女は身を乗り出して問いかけたりした。

ハーディ > 「やめてくれ、考えるだけで怖ろしい。
傭兵ってのはそうだろうな。徒党を組んでるのでもない限り、一家単位とか、夫婦であるとか、あまり見かけないな。」

納得した表情だったが、続く言葉に、急に目つきが険しくなる。
といっても、少女が急に発した頓狂な声に驚いたのではなく。

「美味し、かった……???
ちょっと待て、俺はてっきりエリミアをダークエルフかなんかだと思ってたんだが。
んな感想漏らすってことは」

無意識の行動だが、腰をやや浮かせかけ、はっと我に返ると椅子を浅く腰掛けなおす。
警戒を露にした男の頭を“魔族”という単語がかすめていった。

「まさか、あのドサクサに何も仕込んでないだろうな。
精気ならくれてやるが、それ以外はごめんだぞ」

結界で“気持ち悪い”と来れば、常人ではない。
とはいえ、いつかの山脈で見せられた怪力を考えると、接近される前に退避したほうがいいだろう。
ジュース代と自分の飲代を、迷惑料を含めて少し多めに袋に入れる。逃げる際カウンターに投げ渡せば大丈夫か。

エリミア > 「やっぱり怖いお母さんなんだね。
まぁ色々事情があって、貰い手もないからね~」

男の言葉に娘は持ってこられたオレンジジュースに夢中になりながら言葉を続けていて、目つきを険しくする男の反応に気付かないでいた。

「…あ。
ま、待って!えっと、その、違うの!」

男が行動に移して初めて少女は、自分が驚き過ぎて口走った言葉に気が付く。
慌てて口を押さえるような動作も無意味で時すでに遅く、席を立とうとした男を制止するような声をかけた。

「えっと、その、確かに私エルフでもダークエルフでもないけど、お兄さんとシた時に変なことは何もしてないよ!ホント!
ただその、定期的に人とああいうことシないと、すごくお腹が減る体質みたいなもので…お兄さん魔術師みたいだったから、お礼を兼ねてお腹も膨れるかなって思って…ご、ごめんなさいっ」

武器を持っていないことを示すように両手を上げながら少女は釈明しようとし、腕のセスタスを兼ねた籠手を着けっ放しなことに気がついて慌ててそれを手から外そうとしながら、その続きを述べていく。
そして、籠手を外した素手でもじもじとしながらバツの悪そうな表情を浮かべてぽつぽつと告白を続け、最終的に頭を下げて謝るに至った。

ハーディ > 少女が謝罪の言葉を口にし、ぺこりと頭を下げると、場違いで目立ってしまったか、周囲の視線がハーディに向く。
それに気が付いた男は手を振ってしっしっと仕草をすると、目を伏せて席に座りなおし、声を絞り出すように答えた。

「……害意が、ないならば、いい。
……素性を偽った理由も、聞かないでおこう。」

ふう、と大きくため息を吐いて。
周囲に聞かれぬように声を落とすと、実は、と切り出した。

「マグメール王国、それ以外の多くの国々じゃ、魔族魔物、あるいはそれと間違われる存在は肩身が狭かろうが。
うちの国は特殊でな、建国に精霊と悪魔が関わってるって、明確に神話として語り継がれている。国自体が異種族に対して比較的寛容だ、国を荒らさない、民を虐げない、って大前提ありきだが。
だから俺は正直なところ、相手が人間だろうが、人間でなかろうが、害意がなければ気にしない。」

言いながらハーディの眼は相手の顔をしっかり見。それを踏まえて、と言葉をつづける。

「単に体を重ねるだけなら、相手はそこら中に居るだろうが。さっきの俺のように、疑り深い連中もいるだろう。
だが、少なくとも今後俺が相手になるときは、自分を隠さなくていい。もちろん単に愚痴を吐きだす相手でも構わん。
俺はエリミアが何者だろうが気にしないとここに誓おう」

そこまで言い切って、相手の反応をうかがった。

エリミア > 「…ほ、ホントに?」

机に突っ伏さんばかりに頭を下げていた少女は、男の言葉に首を捻って見上げるように問い返した。
ぷるぷると小刻みに身体を震わせており、緊張していたらしいことは見て取れるだろう。

「へえ、変わってるとこなんだね、お兄さんの国って」

男の切り出した話に顔を上げて聞いていた少女は、ぽつりと悪意なく零すように言った。

「お兄さん…!いい人だね、ありがと…!
隠すって言っても、この恰好が一番楽な恰好なんだけどね。
すっごい強い魔族みたいに角とか翼とか生えたり、尻尾が生えたりしてるわけじゃないし、この恰好だって化けてるわけじゃないんだ」

見つめられながら言われた言葉に、少女の目にうるうると涙が溜まっていき、その手をぎゅっと握りながら感極まった声で礼を言った。
所謂典型的な悪魔、魔族のような特徴を備えているわけではない少女は、偽らなくていいという言葉にはそう言及し、自分の頬をむに~っと抓って引っ張って離した。