2023/03/06 のログ
■虹石の獣 > (未だ異質なる獣、少なくともこの場に至る者が在れば
今回の異変の元凶が、この獣に在ると直ぐに感じ取れる筈
アンデッドが密集していた浅層と異なり、淀みに満ちていた深層こそ
大規模な浄化魔法でも嗾けられたかのように、淀みが失せ
そして何より、こびり付いて居た不浄を覆い尽くす様に
新たな植物が芽吹き、根を張り始めている
少なくとも、人工的であった筈の壁面を蔦が覆い始めている様は
森林の中にある地上遺跡にも似て居るだろうか
そして何より――深層だと言うのに、他の魔や、獣の気配が失せている
其れが遺跡全体に及ぶのであれば、寧ろ人にとっては歓迎すべき事象であったろう
だが、現実はそう甘くはない。 居場所を失った死霊達が溢れ、地上側を脅かす
獣は、それらを討伐した訳では無いのだ。 ただ、今の寝床が此処であった、其れだけ。)
「――――――……クルルルゥ……。」
(寝息にも聞こえるであろう其の鳴き声が、小さく、部屋に響いている
されど時折動く、耳らしき部分が、ぱたぱたと其の向きを変え
来訪者が、或いは、敵対者が居ないかを探って居よう)。
ご案内:「遺跡再奥部」にシフォンさんが現れました。
■シフォン > 遺跡に異変の兆候ありとの第一報が入ったのは、まだ数刻前のこと。
けれどギルドとしても、その一報だけでは動きようがない。
となれば、まずは情報収集のための依頼が貼り出されることになり―――
「………遺跡の外にまで、アンデッドが出てきてる……」
単独で依頼を受けたのは、まだ駆け出しの少女
本来ならば、このような難易度の高い遺跡へ来ることなどないのだけれど。
今回ばかりは偵察ということで、深追いしないことを条件に依頼の受託が認められたのだった。
遺跡の入り口近くで息を潜めて様子を窺えば、わらわらと死者たちが這い出てくるのが見られ。
それは本来ならば有り得ない光景だからこそ、異変というに相応しいもの。
交戦したところで、この数を殲滅させるのはまず不可能
それに今回の目的は偵察だと、不浄の存在を前に気持ちを落ち着かせ。
小さく呟く呪文に、少女の姿が消えていく。そればかりか気配さえ朧気になっていき。
「……大丈夫そう。」
亡者の前を通り過ぎても気づかれない。
そのまま足音を消して遺跡の入り口をくぐると、奥へ奥へと進んでいく。
初めのうちこそ亡者が群れを成していたのが、中層にもなるとその姿が消え。
代わりにまるで森の中のように、清浄な気配が漂い始めて。
「……どうなってるんだろう……?」
冒険者としてまだ日の浅い少女は、ここまで潜ったこともなかったけれど
熟練の冒険者をしてもこの現象は不可解なものだろう。
一体遺跡で何が起きているのか。
それを調べるのが少女の仕事であり、その最奥へと足を踏み入れる。
■虹石の獣 > (亡者達に主だった目的など無い
逃れて、其処で淀んで、只無秩序に生者を追いかけているだけ
全うに相対するなら厄介では在るが、討伐や対処を目的としないならば
其の感知を欺き、遺跡内へと侵入する事は叶うのだろう
無論、忍び込んだ所で、現況を対処出来るかはまた別の話だが
深層へと潜って行くごとに、危険度は寧ろ減って行くと言う矛盾
冒険者としての基礎が在るだけでも、其れがおかしい事だと判じられる程に
そうして深層へ、最奥へと辿り着くなら、侵入者の瞳に映るのは
床に伏せて穏やかに鎮座する、一匹の、獣の姿
獅子とも、虎とも違う巨躯は、何とも例えられぬ珍しい姿では在ろう
明らかに、真っ当な存在ではあるまい。 其の獣の傍が特段に、緑が茂って居るのだから。)
「―――――……クルルル…。」
(耳が、ひょいと動いた。
姿が、存在が希薄となって居る筈の娘が近付くと、其の耳が辺りを探るように動き
其の内に――娘の方へ、向けられる筈だ。
僅かに、頭が持ち上がる。 きっと、娘と視線も合う事だろう。
だが、だからと言って動く気配は無い。 まるで娘の存在を見定める様に、じっと
ただ、見ているだろう)。
■シフォン > 遺跡の最奥―――そこに居たのは一匹の獣だった。
それだけなら、まだあり得る話だったかもしれない。
こうした遺跡には、往々にして主という存在がいるというから。
けれども、その獣の周囲には緑が生い茂り、まるで豊かな森のごとく清らかな空気が満ちている。
それは少女が生まれ育った森のそれにも似ていて。
(……え? もしかして、見えてる……?)
その獣の視線がこちらを向く。
まだ魔法は解いてはいないにもかかわらず、目が合ったように感じられた。
声にこそ出さないまでも、その表情に驚きと、警戒を滲ませて、咄嗟にダガーを構える。
獣の大きさは、森にいた狼よりも大きく。
まともに組み合えば、小柄な少女などあっけなく組み伏せられてしまうだろう。
存在を看破されてしまったのなら、もはやそれ以上身を隠す意味もない。
身体を覆っていた幻惑の魔力が霧散すると、代わりにそれは身体の内側に収束する。
額に特徴的な宝石を抱く獣は、恐らくは魔獣か聖獣の類
少女にその判別はできないけれど、仮に襲われたとしても、すぐさま逃げられるようにと全身に強化の魔法を巡らせて。
「……あなたは、ここの主…なの?」
すぐさま、この獣を敵だと判じなかったのは、この清浄な空気のせい。
上層にいた亡者たちとは真逆のそれは、とても悪しきものだとは思えずに。
姿を露にした少女は油断なくダガーを構えながらも、澄んだ声でそう問いかけてみて。
■虹石の獣 > (森の気配を感じられたのは、恐らく期の所為では無い
纏う魔力も、大自然の其れと近しい清浄な空気も
清らかな森の中を知る娘にとっては、酷く慣れ親しんだ物
少なくとも、この獣が、そう言った自然の中から産み落とされたのだ、と
娘が姿を現しても、驚いた様子を見せる事無く
静かに、時折鼻をひくひくと動かしながら、娘を見る
其の内、響いた娘からの言葉を、果たして解して居るのか、如何か
あくびの様に、くぁ、と口を開いて、また、ぽふりと首を下げた
娘の事を、敵、或いは害を及ぼし得る脅威として、認識しなかったように。)
「―――――……クゥルルル…。」
(獣なりの回答なのか、只の鳴き声か
けれど、確かにそう音を零しては、長い尾の先端を、ふわり、ふわりと揺らして見せた
尾の先端は、しなやかで、柔らかさを保って居るだろう
鋼の様にも、針の様にも固く、鋭く変化する其れが、今は攻撃の意思も見せぬ儘で
――もし、娘が近付いて来たとて。 其れは変わらぬ。
身じろぎもせずにその接近を赦して、迎え入れるだろうか)。
■シフォン > 害意はない――ように見える。
話しかけたその言葉は通じているのかいないのか。
それさえも分かりはしないけれど、少なくとも襲い掛かられるような様子はない。
周囲の様子を窺ってみるも、他に気配は感じられず。
この場所にいるのは、自分とこの獣だけのようで。
「……他に考え付かないけど……」
亡者たちとは真逆の雰囲気だからこそ、異変の原因がこの獣であることは容易に知れる。
ただ問題は、なぜここにいるのかということ。
意思疎通が難しそうなら、その辺りのことを解明するのも無理だろう。
「……ちょっとだけ、触らせてくれる?」
とりあえず獣の外見は見て覚えた。
ギルドに報告するには十分な情報だろう。
あとは体毛のひと房でもあれば、信憑性も増すはずで。
大きく欠伸を漏らす様子は、こちらのことを気にもしていないように見えてしまう。
だったら、触るくらいはできるだろうか。
揺れる尾の方も、警戒や苛立ちといったものは感じさせないもので。
ゆっくりと近づいていくと、自分の髪色にも似たその鬣にそっと手を伸ばし。
梳くように指を絡めていき。
■虹石の獣 > (――近付いて来た娘に、ほんの僅かだけ、片目の瞼が開いた
けれど排しようとする気配は無く、触れるならば其の体毛に
酷く手触りのよい、羽毛にも似た優しい感触を感じ取らせるだろう
指を絡めれば、鬣部分は、他の体毛よりも太さを感じるだろうか
しなやかながら芯の在る体毛は、梳けば幾房か、指に絡むやも知れぬ
明らかに、既存の、知られている魔獣や幻獣の類では無い其れも
専門家で無くば、其の希少さに気付くのは難しいやも知れぬが
少なくともギルドに持ち込めば、其の希少さを正当に鑑定して貰えよう
だが――其の前に。 しゅる、と、尻尾が娘に延ばされる。
其の胴体に、傷付ける意図も無く、優しく絡み付けば
――獣の懐に、その、ふわふわとした体毛の中に
其の身を抱え込もうとするだろう。 ――まるで、我が子でも温めるかに。)
「…………オマエ サムゾウ」
(――少々発音の怪しい言葉が。 けれど、確かに人の言葉が。
不意に、娘の鼓膜に届くだろう。 其れで漸く、獣が、多少なりと人語を解すと判るだろうか
寒そう、だなんて一言発した後にはまた。 瞼を閉じて、大人しくなって仕舞うけれど)。
■シフォン > 「……うわぁ……ふわふわ……」
これまでに獣を狩ったこともあれば、飼ったこともある。
けれど今触れた鬣の柔らかさは、そのどれよりも柔らかいもの。
その体毛に比べて、鬣は幾分太いものの、硬さまでは感じさせず。
指に絡まったそれをポーチに仕舞い。
「え……? あの、どうし……って、喋れるんだ……?」
不意に腰に巻き付いてくる長い尾
そのまま獣の懐へと抱き寄せられてしまい。
喋ったことに驚きながら、会話を試みるも、それに対する返事はなく。
上等な毛皮よりも、なおふわふわとした毛並みに包まれる。
それも相手の体温が伝わってくるものだから、温かく。
戦闘こそ回避してきたものの、遺跡の最奥であるこの場所へ来るまで身を潜めてきたのだから、
精神的にはかなり疲弊していた。
柔らかな温もりに包まれていると、その疲労がゆっくりと溶けていくかのようで。
瞳を閉じた獣の腹を撫でるようにしながら、身体を寄せて。
しばらくの間、そうしていただろうか。
その手の動きが止まり、代わりに小さな寝息が聞こえてくるまで、そうは時間はかからず―――
ご案内:「遺跡再奥部」からシフォンさんが去りました。
ご案内:「遺跡再奥部」から虹石の獣さんが去りました。
ご案内:「深い霧の中」にインビジブルさんが現れました。
■インビジブル > 前すら見えず、朝か夜かもわからない濃霧。それは入っただけで今自分がどこにいるかもわからなくなるほどだろう。
ここは街の中なのか、それとも建物の中なのか。戦場やダンジョン。もしかしたら魔族の国かもしれない。
ひとつだけわかることは、今霧の中には犠牲者が入っているという事。それゆえにこの霧は異世界と現実の境目のような不思議な空間へとなり果てている。
「クスクス」
笑い声がする。色々な笑い声がする。特に目立つのは3人の少女の笑い声。
怨嗟の渦巻く中、楽しそうな3人の声は特に目立つ。
■インビジブル > 男か女か、一瞬の悲鳴が霧の中に轟く。
そして霧は晴れる。その場には誰も残ってはいない。
その攫われた者がどうなったか。それは彼女たちの機嫌次第だろう。
怒らせていなければ無事に帰る事が出来ただろう。だがもし怒らせてしまっていれば……その者が成した悪事を思い起こされる惨い結末を迎えたかもしれない。
恨みを背負う怪異は今日も獲物を探す。ただ自らが蘇る。そんな夢の為に。
ご案内:「深い霧の中」からインビジブルさんが去りました。
ご案内:「遺跡最奥部」に虹石の獣さんが現れました。
■虹石の獣 > (地上は、如何なって居るのか。 獣が其れを知る由も無い。
溢れ返った死霊達が村に到達するのを防ぐ為、幾人かの冒険者や兵達が
討伐に動いている状況だと言えど、獣には関係の無い事だ
ただ、其処に居るだけ。 ただ、棲み処だから、のんびりして居るだけ
次第に浄化される範囲が広がり、より、死霊達の居場所が失せつつある
遺跡の中に跋扈して居た其の量が、浅層側だけで押し留めて置ける筈も無い
本来地上側に現れる筈の無い、高位の死霊すらも出没を始めている現状
人間側の危機は、刻一刻と増しているとも言えるだろう。)
「――――――……クゥルルルルル……」
(暢気に、尾をなびかせて、少々深く茂り過ぎた緑を押し退け
押し退けられた緑が、獣の周囲に球状の寝床を作り出している
其の出入り口となる穴部分から、上半身と首を出して居る状態
此処が、こんな場所でさえなければ。 其の存在が、元凶でさえなければ。
こんな所を棲み処と定めさえしなければ、ただの、温厚な獣と認識されるやも知れなかったろう
だが、此れまで人間側に伝わった情報や、獣にとっては単なる繁殖行動でしか無い行為の数々は
決して無害さを示す物とは言い難いモノであったろうが)。
■虹石の獣 > (部屋の隅に転がって居る、骸骨と装飾品
本来、この階層の主であったろう高位の死霊の残骸
昨日には、其処に無かった筈の物
獣にとっては、迷い込んで来た幼子、と言った風情の娘が
無事にこの棲み処から離れ、帰って行った、其の後に
自らの居城を取り戻さんと襲い掛かって来た其れは
今は、返り討ちとなって、魂までも浄化されている
魔導具、或いは高価な宝飾、貴金属
見る物が見れば、余りに希少な、価値の在る品々も
獣にとっては、ただの残骸でしかなく、放置されて居る
宝物を護る獣…なぞと、傍目には見えなくも無い、かも知れぬが。)
「――――――……クルルルゥ…」
(そも、"宝"の位置から獣の寝床は、随分と離れている
忍び込み、獣の感知から逃れれば、こっそり持ち去れそうではある
――気付かれずに、と言う部分が、一番の問題だろう、と言うのはさておき)。