2023/03/04 のログ
NPC > 「もっちろん。もともとはお父様から出資してもらったんだけど、あたしが仕入れて。縫って。売ってるの。
 用心棒ねー……。その時はその時、かな? 腕に覚えありって奴?」
 
こういう場所に住んで、店を持つというのは、平民の出ではないのだろう。
それも戦闘訓練、または経験のある元冒険者か、あるいは現役であろう。そうでなければ、見本めいた装束の理由がつかない。
マネキンに見える剣帯らしいベルトの配置は、細身の剣の類でも吊るすとより引き締まりそうな印象をさせる。

「ジギィ、さんね?
 よっろしく。そっちの地味っぽいおにい、オジサマのお名前は?」

頭の上が気に入ったのだろうか。
モモンガが銀髪をふかふかするさまをくすぐったそうにしながら、帽子を押さえるような仕草と共に、銀髪の店主がエルフに会釈する。
少なくとも暗がりで細々と陰々と針を動かすような仕草や、印象の類はきびきびとした動作の中にはない。
君はこっち、とモモンガを店の奥のカウンターの上に優しく置けば、紐で綴られたスケッチブックや布地の見本を漁りだす。
毛玉たちと少しでも触れ合うことで、何か思ったのか。考えたのか。
柳眉をしならせてイメージを巡らせつつ、スケッチ用の布を巻いた木炭筆も出してくる。

ジギィ > 「遊んでるんじゃないの、だだこねてるの」

等と真顔で返すエルフと、それを叱る彼の幻影まで銀髪の彼女に透けて見えたものか。
訝しげな視線は関係を怪しんだものか何なのかは判別できないが、少なくとも悪印象ではなかったらしい。

毛玉コンビたちによる恩恵は十二分にあっただろう。暖かで滑らかな毛皮は彼らの普段からの『お手入れ』の賜物。いつかおやぶんのきゅーてぃくるも何とかしようと画策しているかもしれないくらいのつやつや加減。
うりうりと撫でて貰った『すーちゃん』はもちろん上機嫌だし、彼女の銀の毛並みを確かめた『ひーちゃん』も上機嫌。
総合して、毛玉コンビたちも彼女を気に入った様子だ。

銀髪の彼女の頭越し、怪訝な表情を向けて来る彼に、エルフはにっこり笑ってピースサインを返して見せる。
店の奥に向かいながら、ピースサインのワケを唇で語れば彼は何故か肩を落とす。
ずりおちそうになった『すーちゃん』の抗議を見つつ、エルフは心底不思議そうに首を傾げた。

女生徒の噂話よりずっとずっと面白そうな事案だと思うけどだって人形のはなしとかどうでもよくないあわかった彼女のスタイルもうちょっと胸の辺り見落としてるんでしょよく見ておいてよすごいからえそれとも女生徒位の淡い方がおこのみだったっけ?

―――と、エルフはこれを全て表情と唇で語った。無駄な技能ではない。脳裏では着々と、彼女からコイバナを引き出すチャンスを狙っている。

カゲトキさんが引っ掛けてくれたらいいのに

とエルフが思っていそうだと見抜けていたとしたら、それはもう、このエルフと付き合いが長くなってしまった証拠だろう。

「…ああ、なるほど。 元々そちらの方も嗜まれていらっしゃるんですわね」

腕に覚えが、という彼女を横目に、エルフはマネキンに着せられた衣装に視線を走らせる。そこには、実経験がなければ気の届かないところにまで行き届いた仕立てが、幾つも見受けられた。

(―――よかったね、『おにいさん』って呼ばれかけてたじゃんー)

エルフは彼女に会釈を返してから、傍らの『オジサマ』を肘でつつく。実際銀髪の彼女の実年齢は解らないが、自分より年上ということは無さそうだと思っている。本当は彼女の言う『お父様』の事を尋ねたりもしたかったが、スケッチブックを前に考え込む風情の彼女の邪魔をしたくはない。

『―――おいで』

エルフは小さく鋭く鳴くと、彼の肩に居る『すーちゃん』へ手を差し伸べる。『すーちゃん』は『おやぶん、ちょっと言ってきやす』とばかりに再び彼の肩をぺちぺちと叩いてから、エルフの腕を伝って『ひーちゃん』と同じくカウンターの上へ。
木炭片手に彼女が視線を上げれば、2匹はそろってポーズをとって見せる、かもしれない。

影時 > 「ええい、余計にたちが悪いなったく」

あーだこーだと言い合う姿とは、傍目からすれば面白いかもしれない。
本当に煩いのだと、面倒なのだと思っていれば、ずげずげとこの店主は言ってくる。
店の外で何やらと騒がれるのが一番の営業妨害であるが、今のところはそうではないからこそ、茶々を入れていないのだ。

もっともそれは――、仕事の対象ができた、ということも何より大きいだろう。

毛玉たちは飼い主からも、たまに風呂ついでに洗ってやってもいる。
同じ部屋に住む同居者でもあるからこそ、ちゃんと彼らの手入れの手伝いも一緒に気がけている。
まさか、自分の髪の心配なども思っているかまでは知る由はなかったが。

――だからってお前なあ俺がそんなにどーこ―だれかれかまわず嘗め回すように見て品定めしているとか次誰犯そうかぐへへとかおもっているとか言うつもりか促すな目線誘導させるなさりげなく見るっていうのは意外と大変なさぢょうであるのだぞ

そして、そう。これである。
表情と唇の動きだけで語るのは速読どころか喧々諤々の会議場で語られる内容を、圧縮して伝えるなども訳ないであると思うくらいの勢いである。
余程お気に入りになったのだろうか。何らかの少しでもきっかけから、コイバナに繋がりそうな要素を引っ張り出したいに相違ない。
その位想定できる、思考をトレースできてしまうのは、嗚呼。やはり付き合いが長いお陰であろう。
やれやれと息を吐きながら、向こうの手元をついつい眺めてしまう。手に残るものは、口以上に多くを語るものだ。

「おにぃさんと呼んでくれてもイイんだがねぇ。俺はカゲトキという。改めてお世話になる」

肘で小突かれつつ、長躯を曲げて頭を下げよう。
そうして、エルフの招きがあれば、肩をぺちぺち遣ってから、伸ばされた腕をとったかたーと伝って走るリスの姿を見送ろう。
ちょっと少し後ろに下がり、胸組みしながらまずは見届ける姿勢を作りながら、耳を傾ける。

NPC > 「そゆこと。こういうのなら、ちょっと自信アリアリよ。魔法もね?」

“こういう”コトと、細指を何かを握るように構え、顔の前に掲げてゆく仕草をディアーヌと名乗った女は見せる。
剣の類を扱うとしていれば、実に堂に行った仕草である。
少なくとも何らかの師に学び、訓練を経てなければ、そうはきまらない。男の目が向くのも当然である。
針の傷もそうだが、掌や指に残るものは、奇麗なものばかりではない。

「カゲトキおぢさまね。……向こうの服も面白いんだけど地味よねえ。赤くしたり色入れたりしない?
 で、この子達か。んー、ちょっと手をあげたりしてくれる? ごめん、前足かな。そうそう、そんな感じ」
 
とりあえずは用意はできたのだろう。スケッチブックのまっいろな紙面を開き、カウンターの上に来る二匹の小動物をぢーとみる。
ようやく名乗った男を視線をずらして一瞥し、エルフの姿も共に比べるように見やっては、ぽつとこぼす。
傍らに置いた布地の配色の対比のリストまでついつい開きつつ思うのは、本人の赤が好きな色、なのだろうか。
そう思わせる言葉と共に、二匹の毛玉を木炭筆を執って、しゃっしゃと音を響かせつつ、スケッチをしてゆく。

動きを要求するのは、実際に着せる――という用途を踏まえてのことだろう。
リスの動きもだが、モモンガのほうについてはぐるぐると視線を変えて見回しつつ、むむむ、と唸るのである。
どう着せるのか。それとも、マントやらケープやらでシルエットを変えるの方がいいのか、などと思案げに。

ジギィ > 【次回継続】
ご案内:「富裕地区・商業エリア」からジギィさんが去りました。
ご案内:「富裕地区・商業エリア」から影時さんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 戦士の森」に幸龍さんが現れました。