2022/12/25 のログ
ロブーム > 尻を揉んで行く事で、少しずつではあるが、彼女の好きな責め方を理解していく。
膣やアナルなどの"強い"性感帯から離れた場所は、何処が敏感かに個人差が出てくる。
やわやわと優しいものから、強めにこね回すものまで。
彼女の身体を、少しずつ理解していくが、

「胸の方も、後でじっくり触らさせて貰うよ。
だが、先の話はともかく……」

言いながら、男が再び、ベビーパウダーを摘まみ、今度は尻肉の間に重点的に振りかける。
そこは、感覚が鈍い臀部の中で、例外と言っていい程に感覚が強い場所だ。
そこを、指先で尻肉の間を掻きわけるようにして揉んでいく。
上から下に、尻の谷間の間を指で弄る男だったが、下に下にと指を少しずつ動かしていくと、粘膜の感触が微かに指先に伝わる。

「……後孔か」

無論、変にそこを弄ってしまわない様に、慎重に揉んでいたから、痛みを与えるような事はない筈だ。
だが、此処で男は思案顔で、その場所に視線を集中させる。
一旦、手を止めて刺激を止めた事で、彼女もその場所に視線が行っている事は分かるかもしれない。

「本格的に責めるのはまだ先だが……しかし、今の君の身体がどれだけ敏感になっているか、それを測るにはよかろうな」

パウダーを人差し指にまぶし、それから、後ろ孔をゆっくりと、汚れを落とす様にゆっくりと撫でる。
普段なら、前戯としても弱いものだが、丹念に愛撫を積み上げ、感じやすくさせた身体には、また違った感覚がある筈で。

シーリーン > じっくり一か所を徹底的に刺激されるよりも、目線を変えて
あちらこちらと刺激の目標を変えてくれた方が今回の賭けは対応しやすい。
そのために、胸に水を向けてみたのだが、その程度の策に気づけない相手ではないようだった。
まぁ、そうよね、と知れていた事なので、そこまで落胆もなかったが。

そうしていれば、尻肉の間、脂肪の薄い所に重点的に降りかかるパウダー。
そこを刺激されれば、そこまで鋭くはないものの、
尻肉に帯びた熱が少しずつ移ってくるようにも錯覚される。

「……っ……ふ……」

まだ、息をつめたり、ちょっと吐息を漏らす程度の反応に留められていたが、
続く言葉と次の刹那、後孔を撫でる指先。
尻肉から、その間へと移ってきていた熱が、一気に押し寄せてきたかのような錯覚を感じる。

「……っ……ぅん……」

声は器用に殺したが、体にぐっと力が入った事は見て取れただろう。
そして、撫でる指先に、少しこなれたような後孔が
軽くキスをするように吸い付いたようにも感じたかもしれない。

少なくとも、後孔での行為の経験がある事がそこで悟られただろうか?
直線的に攻めたてれば、交わすのは然程難しくない娼婦も、
回り道をされれば快楽にこなれた箇所を曝け出す。
それは、ロブームの巧みな指が導いてきたともいえるだろう。

ロブーム > ここに来て、ようやく彼女が明確な反応を見せた。
まだあくまで"反応"だ。普通に愛撫していれば、とっくに得られていた結果ではある。

だが、これでいい。
何故なら、優しい攻めでも反応を見せたという事は、快楽を制御する事が難しくなっているという事だからだ。

「おや、随分と身体を固くしてしまったね?
ココが、そんなに良いのかね?うん?」

意地悪く聞いてくる彼の指は、未だに尻穴を優しく撫で続けている。
刺激は一定のリズムで、だからこそ慣れてしまいそうなもの。
だが、前とは違い、今度は力が入ってしまっている。

無理に入った力は、刺激に慣れてしまえば当然、抜けてしまう。
その瞬間を、彼は見計らって。

「おっと」

ず、ぶ、と後孔に撫でていた親指が埋まる。
身体の緊張が解けたのを見計らった挿入だ。
実際、彼自身、力は殆ど使っておらず、彼女の解れた尻穴に、多少力を入れて指を押しあてただけである。
尻穴を丹念に愛撫したのもあって、痛みは殆ど感じまい。
だが、

「おっと。随分な欲しがりな後孔だね。
ココを責めるのは後にするつもりだったが、こうまで求められては……少々予定を変えて、此処を弄るとしようかな?」

親指をぐにぐにと動かして、腸壁を……特に、アナルの快楽の元である、クリトリスに繋がる神経の当たりを揉み解す様にする。
当然、痛みを与えない力加減は心得ているし――尻の周辺を丹念に愛撫した事によって、快楽に無理もない。
考え得る限りにおいて、尤も"自然"で、"感じやすい"尻穴責め。

「(この辺りで、一度絶頂を経験させるべきだな……そうすれば、この"後"が、やりやすくなる)」

絶頂の後の身体は、敏感になるし、何より絶頂したという鮮烈な経験が、後の責めの布石になる。
その為男は、無理をさせるつもりもないが、可能ならここで一度絶頂させるつもりで指を動かしていた。

シーリーン > 反射的に反応した体。その反応を見逃す相手ではなかったようだ。
反応したことを指摘してくるロブームの言葉。
知られてしまったことを誤魔化すのは悪手だ。
無理をすることは、結果として自分を追い詰めることにもなるからだ。

「ふふっ……気づかれちゃっては、違うとも言えないわよねぇ……
ええ、元々結構好きなほう、よ。」

優しい動きで撫でられ続けていれば、段々と体から力が抜けていく。
同時に、『力の抜き方を知っている体』だからこそ、
タイミングを見計られては……

「ひぁっ!?」

ロブームにしてみれば、押し当てたというよりも、ちょっと強めに触れた、
と言う程度の感覚だっただろう。
力の抜き方を知っている後孔だからこそ、吸い込まれたのかと錯覚しそうなほどに。

「んっ……ふふっ、本当は、狙ってたんじゃないのぉ?」

軽口を返していくが、巧みに尻穴の中、埋め込まれた指が動いていく。
最初のうちは探すようにしているかもしれないが、
快楽点の集まっている箇所である事に相違はない。

奥を弄られてきゅっ、と尻穴がすぼまるものの、それにつられずに更に丹念に調べていけば、さほど奥ではない場所。丁度クリトリスの裏側ともいえる箇所で特に敏感な反応を示していく。
一度絶頂させようと仕向けてくるのであれば、当然そこを集中的に責めてくることになるだろう。

「あっ……んっ……ぅんっ……ふぁ……指、上手ぅ……」

指の動きに体の力がだんだんと抜けていく。
そして、少し体が震えたあたりで、ポイントを強くぐっ、と押し込んだ時

「んぅっ!……ぁ……くぅ……ぅんっ………!!」

声を張り上げはしなかったものの、体がビクビクっと強く震える。
少し腰が持ち上がり……秘所から蜜が一筋垂れる。
激しいものではなかったが、狙い通り、一度絶頂へと導かれた。

ご案内:「設定自由部屋」からロブームさんが去りました。
ご案内:「設定自由部屋」からシーリーンさんが去りました。
ご案内:「設定自由部屋」にメレクさんが現れました。
メレク > 王都から離れた辺境の地。
魔族領と隣接するその土地を治める領主の館で夜会が催されていた。
控えめに照明を落とした薄暗いホールには管弦楽団による艶やかな音楽が鳴り響き、
華やかなドレスで着飾った男女が肌が触れ合う程に身体を近付け、会話や舞踏に興じている。
そして、灯りの届かぬ会場の隅からは男女の熱い吐息や嬌声が、音楽の途切れる合間に漏れ聞こえてくる。
彼等は皆、一様に仮面を付けており、己の素性が何者であるのかを分からなくしていた。

表向きにはやんごとなき者達の社交の場である不埒な夜会。
だが、その実、この屋敷で行なわれているのはただの乱痴気パーティではなかった。
王国貴族と魔王、二つの顔を持ち合わせ、人界と魔界の各々にて隣り合わせる領土を有する大領主。
そんな彼が莫大な富と権威をちらつかせて集めた客達には人間、魔族、双方が存在した。
しかも、認識阻害の魔法の影響で来客の殆どは仮面の内側の正体が何れであるのかを知らずに接している。

結果、羽目を外した教会の司教が、淫魔の女王とまぐわい、精を搾り尽くされて、
魔軍を率いる勇猛な将軍が、擬似陰茎を身に着けた王族の姫君に尻穴を掘られて嗚咽を漏らす。
普段であれば敵対する人間と魔族が、仲良く揃って快楽に翻弄されて堕落する様を、
会場中央の壁際にて二人掛けのソファに腰掛けた夜会の主は愉快そうに眺めて嗤うのであった。

ご案内:「設定自由部屋」からメレクさんが去りました。
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」に影時さんが現れました。
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 「わぁい たのしみだねえひーちゃんとすーちゃん、肖像画だって!
 なかったら、作ってもらったらいいじゃない。かあわいいだろうなあ。あ、その衣装ついでに運び屋さんするときの制服にしたら?
 女装自体は期待して無いから大丈夫安心して?それみて爆笑したいだけだから、代わりの爆笑ネタ提供で我慢してあげる。そうだなぁーカゲトキさんの髪の毛を貴族風に結ったりとか…」

このエルフの見た目によらす王宮に出入する機会はあったものだから、愛玩動物が衣装を着ているのも何度が見たことがある。モノ自体が市中に出回っているかはともかく、貴族御用達の肖像画描きが何かしら伝手を持っている可能性は大いにあるだろう。
それこれもあって大分費用はかさむはずだが、他人の懐なので好き放題を言い放題だ。ついでになぜか上からのもの言い。

「あはは、呪物ってまで言われたら靴下も大出世だわ。
 地の精霊と仲良くなりたかったら、今の生活では無理だろうねえ。洞窟の中でなあなあのべたべたののんべんだらりを100年くらいは続けないと。
 呪物と言えば、髪の毛だってその類だし…」

彼との軽口のやりとりをつづけながら、何気なく野兎の傍らを通り過ぎたつもりが
進む方向へ戻されたエルフの緑の視線が捉えたのは、変わらぬ風景。―――いや、聊か遠近の錯覚のように、野兎が大きくなったように思える。
再びのリドルに、眉間にしわを寄せて答えようか答えまいかを迷っていると

「――――… なるほど」

強烈な眠気で、満身創痍のはずの彼の答えにエルフがこぼす。リドルの答え自体考える余裕はなかったけれど、考えたとしてもエルフには思いつかなかっただろう。

――――そしてそれは、この森の住人にとってもそうだったのかもしれない。

『ほう? そうなのか?』

思わずエルフが彼に向けた視線を前に戻すと、傾げていた首を戻した野兎はまたすこし、大きくなったように思える。

――――いや

(私たちが 縮んでる?)

視界の端や奥にある風景の巨木は更に大きくそびえてているように思える。
重なって降り積もったようになっているフェアリーたちは、身の丈が子供ほどになったように思える。
そう思うが、確信を得るためにそちらに焦点を合わせる事は出来ない。
もっと油断ならない相手が、言葉を続ける。

『知らなかったな。 そんなものは無いと思っていたのだが。
 あるというのなら、見せてくれないか?』

野兎が、片方の前脚を差し出す。毛むくじゃらのそれは、ヒトの手の大きさと変わらないように見える。
(歌でも眠らなかった、 傍らを通り過ぎるとき違和感も感じさせなかった)

幾ら彼ら妖精の縄張りといっても相当の『何者か』、で、知り合いでも ない。 もともと、個々の住人じゃない――――?

(考える時間が)

「カゲトキさん、時間かせいで…」

彼を支える格好も、口元を覆うスカーフも大層都合が良かった。エルフは野兎から視線を外すことなく彼にそう囁いて、眼光だけを鋭くした。
正体を知れば、名前が解れば、突破口になるはず。

影時 > 「……なるほど? 一瞬それはそれでアリかもしれねぇと思ったが、全部真面目に遣ると今回の稼ぎがきっと全部すっ飛ぶなぁ……。
 って、待て待て。大笑いしてぇってならそれは流石に許さんぞ。 
 髪結い程度ならまだいいが、せめて他にマシそうな格好とかは無ぇのかね。それとも、笑いものにする代価としてお前さんが裸同然にでも脱いでくれンのか?」
 
この抜け忍も前職、というほど大したものではないが、食客として世話になった貴族との伝手は細々と残っている。
それまでの繋がりで堂々と王宮に出入りすることもあれば、衛兵や近衛騎士の目を掻い潜って侵入を果たすこともある。
だから、向こうが言わんとすること、示唆する内容は分かるものがある。
愛玩犬が豪奢なケープを羽織っているようなものやら、本当に服を拵えたものがあったが、それと同じノリで考えれば間違いあるまい。おそらく。
メリットはないわけではない。街中で買われている齧歯類の数は知りようもないけれども、区別をつける意味では有用だ。
ただ問題がある。どうしてこのエルフは、そーゆーネタが大好きなのだろうか。
思いっきり辟易した顔を見せつつ、ぢろりとどこか、イヤらしい素振りを籠めつつ、見返してみようか。

「抜け毛より靴下ないしは長靴、か? 地を歩き進むものであるなら、履き物と縁がないとは云えぬだろうさ。
 ……穴居暮らしは、俺には向かんなぁ。土の中を泳ぐだけじゃぁ、向こうから声もかけてくれんだろうし」

革をつづった長靴なら、年月ですり減って穴が開いたような靴下よりも、別の意味でご利益はありそうだ。
地面に潜り、身を隠す土遁の術、そこから派生した仙術紛いの術は心得ているが、それらが地の精霊を惹きつけるか、というのは違うだろう。
それこそ、石に長く向き合った聖人、仙人のような類の心地が必要となるのだろう。
だが、そういった考察や思案を続けていられる余裕がない。余裕と余力は坂道から転げ落ちるような勢いで、削れてゆく。
今でなお、己を保っていられるのは人でありてヒトでないようなあり方、培った氣力、経験そのもの。

「……なぁる、ほど。知らぬ、ご存じないと、見える」

(――化かされた? 否、現在進行形で化かされているのか?)

はて。兎の手はこんなに大きかっただろうか? 世界はこんなに、自分たちにとっては広く、広大であったろうか?
そんなわけがない。世界は残酷なくらいに不変である筈だ。であれば、この認識の相違、間違いはどこにあるのだろう。
まるで、人の手と同じくらいにも見える兎の前足を眺めやりつつ、覆面の下で唇を引き締める。

「しからば、ここに一枚。ここに二枚。綴り刷りてさらに四枚。四枚の次は十六、十六の次は――その眼をひん剥いて御覧じろ」

無茶を言ってくれる、とばかりに息を吐き、羽織の下の懐に手を入れ、その中の隠しから一枚の札を取り出す。
それ自体は白紙、染められていないように見える無垢。
だが、それを両手の間に挟むようにぱん、と打ち鳴らし、口上を垂れるように仰々しく言葉を吐きつつ、術を紡ぐ。
手の中から札が、茶色の紙の時に墨や朱で得体のしれぬ模様にも見える文字が描かれた紙が、紙幣に模した術札が怒涛の如く溢れ、流れ出すのだ。
先ほど述べた価値ごとの印字に沿ったものの複製もあれば、高額の額面であろうものが倍、その倍と目まぐるしく増えて、兎の周りを踊り、回り出す。
幻術の一端であり、幻術から攻撃、一網打尽の暴力につなげるための布石。

ジギィ > 「いーじゃない。ぱーっとやりましょ(カゲトキさんの稼ぎで)。
 えーっ、 そうだなぁ… 古式ゆかしき王子様ルック、ストライプのカボチャパンツとか?
 そーねー、芸術点高い奴だったら着てあげてもいいよ」

実際、歌や演奏で舞台に上がる事があれば、裸同然とまではいかないまでもキワドイ衣装は結構ある。まあしかし、着るのは舞台が薄暗い場合でしか頷かないけれども。
そういうわけで、エルフはしれっと彼のイヤらしい視線を純粋な視線で押し返して見せるのである。

「あのね、ドワーフの靴下は別次元よ。それこそ一族で地中で都市作ったり暮らしてン年代経つんだから。年期がちがうわよ。
 うーん、泳ぐのでも…ヒトの言葉を忘れるくらい経てばいけるかも。わからないけど」

要するに、ヒトが1代で地の精霊と親睦を深めるよう成し遂げることは不可能だとエルフは思っている。
可能だったとして、それはもうヒトではなくなっている。

眩暈がしそうな事の成り行きと景色。
野兎に視線を注いでいながら、意識は過去を探る。どこかでこんな話を聞いた覚えはなかったか?

(―――あ)

そのエルフの視界にも、舞う紙片たちは当然目に入る。エルフはしきりに瞬きをして、紙吹雪と化したもののむこうになった野兎の瞳を思い出す。
―――お金、関係あったっけ?
彼の仕草を興味深げに眺めていた野兎は、紙片が増えたところで少し身を乗り出した。その姿は、もう見紛いようもなくまた大きくなっている。

『ほう』

紙吹雪の向こうからでもその野兎の声が通ったのはイケボだったせいなのか
そのひと声の後、舞っていた紙幣に見えるものたちはその舞いの終着地としてするするとひとところに吸い込まれ始める。
その先は―――野兎がいつの間にか手にしていた、ティーポット。
最後の一枚が収まると、器用に兎の片手がティーポットにふたを閉めて、もう片手でしげしげと掲げて見遣る。

『うーん、増えたのは解ったけどなあ…
 これは【てじな】というのではないか?
 …不正解と言うのも難しいが、正解というのもむずかしいなあ?』

野兎は本気で悩んでいる様子で、ティーポットをためつすがめつ、もう片手で顎を擦る。
――――もうその姿は間違い様もなく、エルフと彼にとって天をつくような大きさになりつつある。眠り続ける折り重なったフェアリーたちさえ巨人に見える。場合に依っては、その美貌をとくと鑑賞できる良い機会だったかもしれない。
彼には頭にとりついた2匹が、ぎゅっとしがみつく力を強めたのを感じるだろう。

『うーん、
 とりあえず』

野兎が、顎に当てていた手を伸ばす――エルフたちのほうへ降ろして来る。
そして如何なる魔術か、器用に爪先でつまみ上げて

「!ちょ」

まだ考えが纏まらないエルフが声を上げる暇もあらばこそ
エルフの歌の影響で身体がままならない彼ごと、ふたりとも、ティーポットの中へとほうりこまれた。

『…正解なのかな?』

暗闇の中へ落ちていく感覚のなか
蓋を閉じられ光がなくなる前に、野兎の声が聞こえたような。

随分と長い距離に感じる、落ちていく先は果たして―――

影時 > 「……うぉい。聞き捨てならねぇコト聞こえたのは気のせいかゴルァ。
 其れと流石にその恰好は却下だ、却下。きわめて芸術点高い癖に品と布がない奴を押し付けンぞ」
 
ぱーっと遣るのはやめてほしい。
明日の朝食のグレードが下がり切ることは、幸か不幸かはないとしても、活動費の備蓄がすっとんでしまうのはまずい。非常にまずい。
宵越しの銭はもたないのを心意気とする生き方はあるそうだが、何かと滑り止め、万一を考える生活が染み付いている。
よりにもよって、髭剃りを偶に面倒くさがる男に王子様?風恰好とは、何だ。地獄か。
弟子たちが見たら、大笑いで住むのかどうかは兎も角として――、嗚呼、そうだ。
それこそ、財布が干上がる前提で宝石の服、ただし布無しやら等のような代物を引き出さねばなるまい。

「……それ程か。獣毛を紡いだ糸の靴下がそうなる域は……考えるだに恐ろしい限りだ。
 嗚呼、ならやっぱり俺には無理だな。そーゆーのは得意そうな奴らに託して任せよう」
 
成る程、やはり精霊使いのような才能、センスは自分にはなさそうだ。
長く、永く生きた果てにそうなれるかもしれないにしても、自分が自分でなくなるのは、本末転倒過ぎる。
けれども、そういったある種特殊な才能が持ち主が居ること自体は、面白い。興味深いことであるのは否定できない。
彼ら、または彼女らの目に見える事物とは、己が思い描くものと何が違うのだろう。
五行の運行を借りる等で、森羅万象を御するのとは違う筈。自然が口を利くような心地かどうか。

「――……勅ッ! ……冗談きついぜ。」

そして、だ。ひ、ふ、み、よ、――沢山。幻術同然の増殖を経た紙幣モドキの術符が、やがてするすると、何かに吸い込まれてゆく。
其れは喫茶店でよく見るティーポットである。何故に。そんな疑問を抱きつつ指印を結び、念を発する。
術符のすべては爆裂、爆発力に変換できる。その筈だ。だが、それが伝わらない。無効化されている。
それとも、そういった念をも遮る別のところへと、あの札達は消えてしまったのか。
そんな思案はまずい、と言わんばかりのこれは警告か。頭にとりつくモモンガと栗鼠のコンビがギュッと一層しがみ付いてくるのは。

「おい!?」

そんな自分たちを、ひょいとばかりにいよいよ、巨大化したように見える野兎が摘まみ上げてしまうのだ。
否、その逆だ。摘まみ上げられる位に自分が小さくなってしまったのか。
茶葉扱いはやめてくれ。ジジイのようにしなびた、とは云わなくとも湯をかけて戻るような、ダシが出るようなものじゃない。
放り込まれる先を見れば、抗議の声を上げるのも許さぬばかりに、嗚呼。奈落へと落ちてゆく。

転げ転げて、どこに行くのか。奈落か。それとも。

ジギィ > 「芸術点高いのに品が無いって、それ誰から見た芸術点よ?異論あったら王宮付きの絵師とかに判定してもらうからね」

そしてその鑑定料もコストに反映されるに違いない。

野兎の行動は恬淡としている。
興味を引かれたような様子は見せるけれども、『リドル』への答えはあくまで正解か不正解かだけ。いいがかりのペナルティや反則などを言われなかっただけでも僥倖だったのかもしれない。
そう思わざるを得ない。
この国では特異であろう彼の術をあっさりと封じ込め、無効にし、文字通りひねりつぶそうと思えば動作もなく出来たであろう相手とあっては。
何はともあれ結果的に、こうして五体満足で
――――長い長いトンネルを落ちて行っている。
周囲を見れば、薄暗いながら本が並んでいる棚や『マーマレードジャム』と書かれた瓶などが並んだ棚やらが見分けられるだろう。

「――― あの野兎の恰好したやつ、あの縄張りのヌシだったんだろけど
 思い出せないなー 大概のコは知り合いなんだけどなー」

はったりでもいいから、知り合いの名前を出せばよかった。などと、彼を支える格好のまま―――落ちている今は彼の腕にぶら下がっているようなものだけど――――エルフは呑気に反省を陳べている。
景色が上に去って行っているのだから落ちているのには違いない筈なのに、風圧は僅かしか感じられない。かといって、浮いている様にも感じられない。
だもので、落ちている時間はごくごく長く感じられるだろう。

「あーでもまあ、正解っていちおう言ってくれてたから、 悪い事には――― いった!」

唐突に落下は終了。
エルフは奇麗に尻もちをついて悲鳴をあげる。
果たしてそのエルフに腕にぶら下がられていた彼は無事だったろうか。

視線をあげればそこは

―――――来た時の、森の入口のごく傍。
果たして、時間さえも経っていないのかもしれない。
見覚えがあるだろう、植物を背に生やした大きな獣が、蝶が舞う木洩れ日のなかで昼寝を貪っている光景。
鳥の鳴き交わす声。
ざぁ、と木々を揺らす風と緑のかおり。

「……わー…」

呆然とした声を漏らした後、エルフは彼の様子を伺おうと視線を巡らす。
目が合うのは
彼の頭上に相変わらずしがみ付いている2匹。