2022/11/26 のログ
ランバルディア > 「しょうがねえなあ……」

見えた影に近づいて、扉を開けて影を招き入れ――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からランバルディアさんが去りました。
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」にエレイさんが現れました。
エレイ > ──温泉旅籠内の、主に宿泊客向けに用意されたサービスの一つが、このマッサージ室である。

その施術室はいくつかの個室に分かれており、客は専用のカウンターで受付を済ませた後、各個室で待機しているスタッフと
一対一でマッサージを受けることになる。

なお、客にどのような施術を行うかは、スタッフの判断にすべて委ねる、というあたりはこの旅籠らしいといった所。
ついでに、各個室内には客に安心感を与え、施術への抵抗感を知らず知らずのうちに薄れさせてゆく効果を持った、
ほのかな香りのアロマが炊かれていたりもする。効果がどれほど出るかはその客次第なのだが。

「──はーいお疲れチャン。また来てくれたまへ」

そんな中の一室から、満足げに出ていく宿泊客を笑顔で見送る、スタッフ用の作務衣姿の金髪の男が一人。
今日も今日とて知り合いからの依頼で、臨時のマッサージ師として仕事に精を出しているのだった。

「ふぃー……こういう普通のマッサージも悪くはないのだが、そろそろ一発エロマッサージでもしたいところであるなぁ」

個室内に戻り、施術用のベッド脇の椅子に腰掛けながらそんな詮無い独り言を漏らす。
今日は現状、立て続けに男の『標的』にならない客の来訪が続いたため、男はごく普通のマッサージ師として
仕事をこなすばかりであった。
男としてはそれもそれでやりがいを感じなくはないのだが、やはり役得の一つぐらいは欲しいところであった。

「まああそれも時の運というヤツなのだが……──おっとと一息つく暇もなさそうだったな」

ボヤキを続けようとしたところで、閉じたばかりのカーテンが開く。
各個室は廊下に面しているため、稀に受付を経ていない誰かも紛れ込むこともあるようだが、それはさておいて。
現れたのは男の『標的』になりうる客か、それとも……。

エレイ > ともかく、男は客を迎え入れ。カーテンは再び閉ざされて──
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」からエレイさんが去りました。
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」に影時さんが現れました。
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 「えーっ、ひっどい。『独り』って何ひとりって!
 私だって一緒に住んでくれるひとくらいいるもんね。
 まあ部屋余ってもいろんな植物育てておけるじゃない?…そうやってそのうち森にしちゃうのかもしれないけど」

最初むくれてからけらっと笑って、片手をひらひらと振って『期待してるよ』と片目をつぶって見せる。
実際城をもらえたなら、あちらの部屋にこの精霊を住まわせてあちらにこの植物を植えて……と結局のところ、城であった意味などなくしてしまいそうだ。
考えただけでエルフの顔がほころぶ。

(これからぼーっとするときはこの妄想を膨らませると楽しいかも)

そうしながら横目で、本意なのか流されるままなのか、彼の庇護下におかれつつある2匹と彼の様子を見る。
本当に彼らが彼の『お付き』になったら、しばらくは楽しい光景が眺められそう、などど100%面白がっている視線。

「だったら足相当きれいにしておかないとだめだよ。花の香りをさせろとは言わないけど…まあ、カゲトキさんが足の指から特殊なフェロモンでも出しているなら別だけどね。
そりゃあねえー、その代わり沢山与えてもくれるから。全体のカタチが見えないと厳しい世界にみえるかもね…」

降ってくる木の実の類に少し顔をしかめながら、エルフは努めて平静なふりで歩みを進める。
昔、里で兄弟から『紫の猫は見物客』だと聞いたことがある。
―――とすると、彼が面白がりそうなことがこの辺りで起こるということだ。この、降り落ちてくる木の実以上のことが。
思わず戸惑って足を止めたエルフの耳が敏感にとらえたのは、森の中で聞こえるはずのない、楽器を使った音楽。
音は遠い。近づいてくることはない。
危険があるのは、『近づきたくなる』という欲求がこちらに起こるから。
エルフが彼に事情を説明しなかったのは、言われた瞬間おそらく彼はその音を反射的に拾おうとしてしまうからだ。

フェアリーリング。
妖精の住む森に住むものなら1度は見たことがある、彼らの宴のあと。
心躍る音楽に誘われて近づけば、その宴に取り込まれ、妖精の時間に囚われ踊りつづける。のどが渇こうと腹が減ろうと、その足をくじこうとも。
踏み入れればこの森の住人でさえ、抜け出すのは容易ではない。それだけ彼らの世界に近い、異界となっている。

知っているエルフでも、耳に捉えてしまった音楽は足取りを鈍らせる。
彼なら、耐性はありそう、だけど…

影時 > 「城の一つや二つは色々見たが、どれもこれも独りで住むにゃ広過ぎるモンだぞ。
 ……本当でござるかー?と言ってしまいたくなる仕儀だが、なんだ、ここは住まわせてやろうか、とか云う処じゃねえのかよ。
 
 で、だ。ジギィ。全部草花で埋めちまうのは、持て余し過ぎた結果とか言わねえかね」
 
最終的に植物の海に沈めてしまうのは、それはもはや城というよりは廃城、城址同然の有様ではないだろうか。
思わずもったいねえ、と云わんばかりの顔つきを、覆面を超えて滲みそうな位にありありと見せつつ、虚空を振り仰ぐ。
同居人のカウントが出来るくらいの草木、植物で埋めてしまえば、寂しい云々はないかもしれない。
だが、そうやって空間を埋めてしまうには城というのは兎にも角にも大きい代物である。
それこそ、故郷の忍びたちの一党で占拠してしまっても、十分すぎる位におつりがでそうな位と思えば、なおのこと。

「……とりあえずこいつら、名前つけておかなきゃならねぇかな。そのまま呼ぶにゃ、雇い主の名前も重なって具合が良くねぇ。

 街に居るときは、毎日風呂入って全身くまなく洗っているぞ? 身なり整えておかなきゃどうにもおちつかん。
 厳しいか甘いかは、単に見る側の主観でしかねえからなぁ。
 最初から“そう”である側にとって、厳しかろうが何であろうが、かくあらなけりゃ儘ならんだろうよ」
 
おまえ、おまえら、リス、モモンガ――使役するというよりは使われる側になりかねないが、決めておかねば不便なことがある。
名前の問題だ。ひとまず己のコトバはわかるらしいとはいえ、呼んで来てくれなければ何かと困る場面は多い。
進みつつ思考を傾けながら、体臭やら清潔云々については、心配ご無用とばかりに肩を竦めて応えよう。
出先の修羅場は兎も角、一日一回はちゃんと風呂に入るか、身体を清めておかねばどうにも落ち着かない。

酒精の匂いでマスキングされる点こそあるとはいえ、余分な臭いをまつわりつかせるのは、仕事の面で何かと困る。
獣狩りの冒険者たちが、悪臭を放つ獣と対峙した際に匂い消しを使うと聞けば、すぐにその作り方を調べにかかったほどだ。

――だが、さて。生きて戻れて、報酬を受け取って、ひと風呂浴びれるかどうか。その雲行きが少し怪しいか?

「…………おいおい、ッ――」

何の冗談、だ? なぜ、森の中で、誰も他にいなさそう なの に。きこ えて。 くるんだろう?
“それ”を聞いた途端、思考がぶつ切りにされて、引き抜かれそうな感覚に思わず足を止め、首を横に振る。
こういう時は、どうするか。
口の中で呪いを唱えつつ、右手の中指と人差し指を揃えた剣指で、虚空に格子を描き刻むように打ち振る。
臨兵闘者、という発音を連ねつつ、皆陣列在――前と締めくくる早九字の呪法を以て、精神を整える。囚われかけた自我を固める。

「なぁ、ジギィ。……こーゆーときに、早々に抜ける方法は知ってンかね?」

周囲を見回しかけて、止める。余分なものを見て、一層囚われてしまいそうな気がしたからだ。
だから、連れ添いの方だけを視界に捉えるようにしながら、問う。

ジギィ > 「ほんとほんと。(ユニコーン×3に、バンシーでしょ、トロールでしょ…)
 えーっ、住ませてあげてもいいけど、家賃取るよ。植物(と動物)のお世話できるなら割引いたげる。
 …目的を以て森に沈めるんだから、持て余したとは言わないと思うけど?」

住人の心当たりを指折り心の中で数えて、彼から与えてもらうというのに不穏な言葉を返す。
労働を増やすために他人にものをあたえるものなどいるのか、ということは一切過ぎらない顔。そして草花で埋め尽くす事に何の疑問も感じない、むしろ『何か変?』という顔。

「ん?モモンガって名前の知り合いでもいるの?
 へええーそうなんだ。気にして無かったけど…わたし埃っぽいかおりのする人とか嫌いじゃないけどなー」

そう言葉を返して振り返ると、本当に香らないものだろうか、と彼の首筋の辺りを嗅ぐふりをする。

――――それが、彼が心を奪われかけて、とりもどした頃合い。
ごく自然に、エルフが彼の耳元に囁ける瞬間。

「―――気にしちゃダメ。聞こえなかった振りして、ふつうに歩いて。
 『解ってる』っておもわれると、いっぱいからかいに来ちゃう」

スカーフに隠れて聞こえづらかったかもしれない。
兎も角そう告げると、エルフは身体を離して、また彼の服の裾を引いて歩き始める。

「この森のコなら『カレンデュラ』っていう花の香り好きだよ。寝床においてあげると喜ぶと思う…」

エルフの語尾が掠れる。
音曲からは無事遠ざかれている様なのに…瞳の端、ちらちらと木洩れ日の合間を舞っていた蝶が、蝶の羽を持った小さなヒトにみえはしないか?

(あーん、もう来ないでよお―――)

それを避ける方向へ、避ける方向へ。
まるで、どこかへ誘導されているようにも思える。

影時 > 「……ちゃーんと人間や同族の頭数入ってンだろうな。なぁ?
 相場通りなら良いんだが。とは言っても、城住まいの相場は知らんが。
 
 ……――植物園とやらを作りてぇなら違うだろう。それなら最初から城じゃなくて、森を買ってしまうほうが早くねぇかね」

ほんとかぁ?と云わんばかりの胡乱な目をしながら、ふと首をかしげる。
最終的に草花で埋め尽くすつもりであるなら、荒れ地の類を最初に買っておいた方が早くないだろうか。
順序を考えると、そう思わずにはいられない。例えばこの森自体を買い上げるのであれば、一番希望に沿うような気がしなくもない。
ドレスで着飾った貴婦人ではなく、人間のように動く草木が跋扈する怪異空間ではなく、植物園めいた処にしたいならば尚のコト。

「いンや、そっちじゃなくてリスという名の御仁なら居る。俺の雇い主だ。
 ……気にされちまうと、何かと遣りづらい仕事が長かったからなあ。
 
 それに冒険者というのは、人と会う生業でもあるだろう?
 どれだけ腕が立っていても、汚い身なりで変な臭いをさせる奴と直接会って話したいたいと思うかね。俺は嫌だぞ」
 
流石にその名前は通り名とするには、何かと困るを通り越して奇異が過ぎる。
覆面の下で苦笑を滲ませつつ、家庭教師としての雇い主の名を口にする。二匹を連れて面会するかどうかは兎も角、呼び名に困るというもの。
実際に体臭を嗅ぐ仕草をすれば、気づくだろう。如何にもな匂いの類が非常に薄いことに。
自分で調合した匂い消しやら香料を入れていない石鹸によるものだ。香るのは、先ほど食したスモモの残り香くらい。

「――心得た。

 かれんでゅら、ねぇ。花屋で売ってればいいんだが。……鉢植えに出来る種持ってないか?」

さて、言葉は聞こえた。短く答えつつ、何は兎も角服の裾を引かれつつ歩き出そう。
ひとまずは世間話めいた体で、尋ねてみながら視界の端で周囲を見やる。
木漏れ日の合間に、青とも黒ともつかない蝶が舞っている――かのように見えるが、さて。何か手足がついている小さな人に見えるのは、どうしたことか。

「……押しとおる手立てはあるか。無ぇなら、ごり押すぞ」

もっと問題なのは、その小さな蝶のようにも見える何かから避けるような動きをとっている筈――という奇妙な引っ掛かりの点だ。
さならが、奇門遁甲の如く袋小路めいた何かに押し込められて、術中にはまってはいないだろうか?
そんな危惧を内心で浮かべつつ、小声でエルフに問う。最低限の遣ることは果たした、筈なのだ。それとも、強行突破が鬼門となるのか。

ジギィ > 「♪~
 …え、やだ、払ってくれるの?
 そうだなぁ、月20万ゴルドでどお?
 
 植物園を作りたいわけじゃないってば。空っぽのところに何で埋めて行こうかなあって言うのが面白いんじゃない」

胡乱な目には口笛を吹いて応える。実際のところ、知り合いはいるが一緒に住もうと思えるとなると全く別だ。
自然と出来上がったものを手に入れるということに、このエルフは関心がないらしかった。
自然の摂理が余り及ばなくなっている所を、すこしずつ還していく。それを良しとする。
このエルフの氏族が街を作らず、外の世界と積極的に交流もせず森に引きこもったままだったのは、それに血筋としてのアイデンティティがあったからだ。

「あー、雇い主さんが同じ名前だと確かにね…
 やーん、フケツなのは別。でもヒトがヒトらしい香りさせてるのは嫌いじゃないよ」

僅かに残っているスモモの香りだけ探り当てて、鼻のあたまに小じわを寄せて言葉を返す。
(こーいうとこ、かわいくない)
と内心思って居たりする。このエルフのカワイイがまともかどうかは兎も角。

「ン?種でいいの? いーよ。そのコたちに免じておまけしてあげる。
 …言ったでしょ、押し通しても、どっかで『お返し』がきちゃうんだってば。もうちょっと出口に近付いたら…――!』

彼の問いに、肩越しに鋭く囁きを返したエルフの足が止まる。
ちょっと目を離した隙、肩越しに彼に視線を投げて戻した、その前に一匹の野兎が佇んでいる。

大きさは、野兎にしてはやや大きい。
只それだけで、茶色の毛並みに真っ黒なつぶらな瞳でこちらを見詰めて、前脚を前で揃えるようにして居る様子は『普通の』野兎そのものだ。

―――それが、声を発するまでは。

「なんで、大鴉は机に似ている―んだ?」

(……駄目だ)
エルフは覚悟を決めたような吐息を零す。こうなったら、とことん付き合うしかない。
彼が何か言おうとする気配を出したならそれを制すように握っていた裾を引いて、エルフが野兎に応えようと、息を吸い込んだ時ーーーー

『ニンゲン!ニンゲンだあ!』
『ねえねえねえねえ!
 あなたたち、付き合ってるの?』
『ニンゲン、ニンゲン!!』
『ねえエルフ、歌ってよ!』
『コイバナ聞かせて!』

先ほど辺りを舞っていた蝶たちが一斉に纏わりついてきて、周囲を飛び回りながらまた一斉に話しかけて来る。
もう確り確認できるだろう。華奢な身体に薄い衣を纏い、虹色に透ける蝶の羽を持つ
フェアリー達だ。

影時 > 「嗚呼、入ってねェわけだ。
 って、高ぇよ。――俺のシゴトの日給を月額に換算しなおしても、それでもキツいわい。
 
 発想はわからんでもねぇが、その用途だと物自体も売り手がつくかどうか怪しくねぇかなー……もっと違うところ考えないか?」
 
まったく、と。案の定な有様につい空を仰ぐ。
忍者の家庭教師の日給が400ゴルト、そして雇い主から衣食住の保証を受けている。
その保証込みで月当たりの額を勘案しなおしても、示される金額というのは高い、と。そう思わずにはいられない。
複数の置き場所、空き部屋という空虚を何かで満たしていくというのは、想像すると面白いのはわかる。
だが、最終的にそうやって出来上がった城という名の森は、傍から見て喜ばれるのかどうか。
荒れ城やら放棄された砦、城址、もっとミニマムに考えるなら、別荘や館の類からなら、現実性は高いのだろうか?

「そういうこった。……ン、浮かんだぞ。
 モモンガのお前がヒテンマル、ちっこい栗鼠のお前がスクナマルというのは、どうだ?
 
 ははは、だろう? 感想に悩む言葉だが、そういう匂いやら香りをさせると困る生業が長くてなぁ……」

当地の言葉は知らぬところがある。だから、おのずと由縁とするのは故郷の言葉である。
気に入るかどうかは兎も角、長い付き合いになるなら、名もつけておかねばいざ招くときに困るというもの。
その意味が気に召すかどうかは兎も角、記号の有無は大きい。
背に声をかけたのち、見える仕草にひょいと背負子を背負う肩を揺らし、覆面越しに頬を掻くのは是非もない。
匂いというのは、見た目と同じくらいに何かと困るものだ。特に犬のような鼻の利く獣は、忍びの生業で常に対処に困るのだ。
故に少しでも露見しないよう、匂いの対策に苦慮したものである。それは抜け忍となった今でも習慣づける位に。

「ああ、助かる。切り花を飾るより、鉢植えで置いておく方が宿暮らしとはいえ、きっと良いだろう。
 よもや――この森を抜けても追っかけてくるとでも云うんじゃあるまい、なぁ?!」

勿論、その手の種を売っている店は探せば多いだろうけど、ここはエルフに頼む方がきっと良い。
有難いと頷ける――という暇もない。押し通す暇も与えず、間髪入れずに何かが来た。
エルフの視線を追ってみた先にいたのは、一匹の野兎。
野兎といっても、油断ならぬ。何せ、その前歯で獲物の首を刎ねてみせる獰猛なウサギもいるという噂だ。

「ッ、ぉ!?」

何かの謎かけ<リドル>か。口を開きかけた処を制するように裾が引かれる中、声が続く。響いてくる。
蝶のように見えたナニカたちがまつわりついてくるのだ。
いっせいに、一斉に。歌うように囀り躍るフェアリーたち。どうしたものか、とばかりに足を止め、くしゃくしゃと髪を掻く。