2022/10/29 のログ
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」に影時さんが現れました。
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 「そうお?
 大概のヒト、というか、生きる上でコミュニケーションを基本的にあるものとして成り立ってる…ううん、言い方難しいな。
 ―――とにかく、寂しいって気持ちを持っちゃう生き物は、作ろうとして作ってたりすると思うけどな。
 …まあ、相手が鳥だったり毛玉だったりするかもしれないけど?
 
 えーそれそもそも連れてくる気ないじゃん。つまんないのお」

ぶーたれ顔で鼻の頭にこじわを寄せて見せてから、けらっと笑って済ます。
そもそも乙女でないと一角獣の眼鏡に叶う以前の話になる。そのうえで彼が恭しく乙女など連れてきたら…うーん、それはそれで歌になるのかも、などとどんぐり眼をぐるっとまわして考えたりして。

その視線を戻せば、彼はいたく土龍のほうにご執心らしい。

(まあ、なんかそっちのほうが『らしい』よね)

その視線を追うようにして、エルフも土龍が潜っていった跡を眺める。
「龍」と冠されてはいるが、実際あの生態はいわゆるミミズと同類だ。ごくごく単純な身体の構成をしていて、知能も高くないし捕まえようと思えば簡単につかまる。
ただ、それは大きなものの一部で、本当の『頭』は何処かにある。
彼らは沢山いるが、同時にひとつのように機能して、如何にしてか知識を共有している。

―――とか言うともっと聞かれる気がしたので、エルフは取り敢えず今黙っておくことにした。
コイバナ以外は今はあとまわしにしてよい。

「ほんとうに世話焼きの性分だわねえ。
 ―――――そうね、どうする?」

彼に続くように背負子を見下ろし、エルフは唇をすぼめて鳴きまねをする。
それが通じたのかどうだか、底でくつろいでいた毛玉たちはいっせいに上を振り仰いで
一匹、また一匹とぞろぞろと這い出しては、今日の寝床は李の樹ときめたようなものと、元のねぐらに変えるのか草原を森の方へ行くものと
三々五々に散っていく。

最後に、おなかが重くて起き上がれないらしいモモンガと栗鼠をのこして。
よくよく観察すれば、それは途中で彼の頭に鎮座した2匹だと気づくことができるだろう。
2匹は開き直ったように、小さな口で欠伸をこぼしたあと、仲良く転がってすうすう寝息を立てはじめる。

「―――――ぶふ…」

エルフが背を向けて、肩を震わせたのは言うまでもない。

影時 > 「ヒトと云うか、……知性があり、雄と雌があって番いを作れる生き物全般は、じゃねぇかねそりゃ。
 もう少し簡単にあれこれ考える必要もねえンだったら、もっと容易いんだろう、
 だが、自然より離れてしまえる生き物の場合、易くはならねぇ――といったところか?
 
 鳥とか毛玉の類は、ジギィよ。そりゃ番いというより愛でて寂寥をごまかしたい類じゃねえかなあ……。
 いつか云ったみてぇなお姫様のようなのを連れ添いにしてたら、と考えろ。どれだけ大変と思う?」
 
この手の考え方は、この土地に来てあれこれと知識を取り入れる機会が多くなったからかもしれない。
詰まりは忍びの務め――忍務やら何やらに気を遣らず、策謀に関わらず、離れて心に余裕ができたから、だろうか。
独り身を良しとする人間は色々あるが、概して本能に直結と云うよりはその逆のものの考え方になりがち、な嫌いがある。
異性と接する機会がない、または遠ざけているか。さて果たして己は――となると、肩を竦めてごまかしておこう。
ここに連れてくる誰かが居たとして、それは随身など余計な人員がない方があれこれと気楽でよい。

そっと吐息を零し、例の土竜(もぐら)ならぬ土龍とも呼ぶべき何かが潜り去っていった痕跡を暫し眺める。
地上を跋扈する“動く森”のような異形と違い、此れはもともとのもの、土着のものか。
積極的に害をなすような類ではなかったため、腰の太刀は最終的に反応を途切れさせた……という判断になるだろうか。
ガイド代わりである筈のエルフが黙しているところを想えば、帰途の妨げになるような重視すべき事項ではない。そう思っておこう。

「世話焼き――、かぁ、ねぇ。
 期せずして転がり込んできたものを、無碍にしがたい心持ち、というだけだが」
 
それよりも、今はこっちだ。背負子に入れたものを抱えて帰れないわけではないが、さりとて、全部すべて、というのはどうしたものか。
毛玉たちに通じるような鳴き真似をしたエルフのコトバやら号令が、通じたのだろうか?
きゅ、きゅきゅ?とばかりに毛玉たちは身を止め、ぞろぞろと這い出してゆく。その有様に、おお、と声を上げて思わず目を見張る。
一匹は先ほどの李の樹、もう一匹はどこぞとやら、といったことの繰り返して散っていったあとには、あ。何か残ってる。

「…………――おまへら。」

栗鼠とモモンガのコンビ(?)であった。しかも毛並みやら体形にはしっかり覚えがある。先刻、頭の上に鎮座していた個体である。
背負子の篭の底でごろ寝する様に、思わずしゃがみ込んで顔を覆う。そのしぐさもきっと、エルフの笑いを誘うに相違ない。

ジギィ > 「えー。意外としっくりくるかもしれないじゃない。
 お姫様がカゲトキさんみたくなってもいいしー、カゲトキさんがお殿様みたいになってもいいしー。
 …隠密が得意なお殿様とか、お話つくれそうね。うん。悪党貴族の前で、じゃーん!みたいな。
 うん、そうしなよカゲトキさん!」

ぶつくさ言っていたエルフは、急に想像をたくましくし始めると目を輝かせて悦に入った。
その勢いでバシバシと彼の肩を叩こうとしたりもする。

取り敢えずすんなりと土龍を見送ってくれた彼が、お次はとばかりに見下ろした背負子。
エルフ自身も覗き込んで囁きかけると、大半は誘いに応じるように散って行ったものの。

「んぅふ…   ん・んっ
 あー もうこれはもうご縁てやつだわね。2匹くらいなら問題ないでしょ?ウチの森の子はたくましいから、そんなに迷惑かけることも無いと思うよ」

ひとしきり背を向けて肩を震わせた後。
視線を戻してからの彼の様子に再度吹き出しそうになって、エルフは慌てて咳払い。
涙目もはどうしようもないので、声だけでも努めて業務伝達らしく穏やかに言う。

―――――私と別れた後の、森の出口までの案内もできるだろうし。

と、これは内心掠めた思い。

「さーいこいこ。
 あ、2匹のためにスモモ少し入れておいてあげよっか。
 ―――来た所とはちょっと別方向から帰るからね。
 わざとだから、べつに道間違えているわけじゃないから安心してちょーだい」

エルフはちらばっていたスモモをふたつほど、彼の背負子に放り込む。
中で『彼ら』が上手くキャッチしたらしい、スモモが背負子に当たる音はしなかった。
それからくるりと身体を返して方向を示して、妙に言い訳めいた事を背中越しに伝える。
なぜ別方向か、までは言わなかった。言わずとも、エルフも『彼等』と彼をもう合わせたくない。彼も『彼等』ともう一度遭遇したいとは思っていない筈だ。

鼻歌まじりにさくさくと低い下栄えを踏んで、広い草原から再び森の中へ。
今度は背が高く、まっすく聳えた木々が立ち並んでいる。一歩入れば途端に緑の香りが濃くなり、高い梢から零れ落ちて来る陽光は光の帯となって根太の這った地面に降っている。

影時 > 「……詰まり、忍びの技を修めたオヒメサマとやらと何とやら、と。
 そこまで立身する気はさらさら無ぇっての。俺は俺が思うままに、何処にでも行きてェだけだ」

そんな御仁やら誰やらに会うのか、会えるのか。
思わず考えると、かなり条件が難しい気がしてならない。

素質が先天的にあるものなら、まだいい。己が修めている武技、特に忍術の類は何もない人間が学ぶ場合、死を覚悟する必要がある。
多くの子供を集め、身体を改造するかの如き、それほどの過酷を経て忍者となる者が何人残るか、といった選別めいたものだ。
この国に赴いて、そういった素質を持ち合わせたものは今のところ、一人くらいしか見ていない。
其れを貴族の子女やら何やらに求め、己がそれと連れ添う構図というのは――物語としては面白いかもしれないが、はてさて。
肩を叩かれれば、痛そうな素振りを表情に見せながら、くしゃくしゃと己が髪を掻く。

結局のところ、それだ。見るべきものは一通り見たので落ち着こう、という気にならない。
まだ冒険がし足りない。未知を満ち足らすまで、好奇をしゃぶり尽くせていない。

「――こっちのコトバで言うような、使い魔やら眷属にしてもイイんだったら、考えはするが。
 思いっきり遠出して暫く塒を留守にするなら、餌やら何やらも残しておかなきゃならねえだろう。
 
 ……俺は何処にでも行くぞ。人が棲めねえような地獄めいた場所にもな。お前らは、外に出て冒険したい気持ちはあるか?」
 
忍獣、使い魔としてという形であれば、どうにかならないでもない。蟲遣いに鳥獣の眼を借りる術は覚えがないわけではない。
契約を交わして氣を流すのであれば、ただの獣以上に頑健にもなることだろう。
ただ飼うにしたって、ああ、なるほど。これから考えだすことも含め、世話好きの範疇に入るのだろう。
きっちり面倒を見るというのは、責任を負うということである。小さいとはいえ命を預かる責を抱えるのである。
ヒトのコトバを聞けるかどうかはちょっと、ではあるが、一応問うてみよう。己やエルフと同じように、冒険心を持ち合わせているかどうか。

冒険をするというのは、旅先で果てることではない。
見聞きした事物を心に抱え、持ち帰ってこその冒険だ。

「へいへい。あと……兵糧丸食えるのかね、こいつら。
 道筋は、最初の進路は辿れそうな状態じゃねえわなこりゃ。――遠く遠く、地鳴りがしてそうな心地もある。あれはできれば避けたい」
 
森の小動物の食性はどこまでフリーダムであったかどうか。帰りに状態のいい木の実も採取しておこうか。
そう思いつつ、スモモを背負子に放り込む姿を見やる。ごろんごろん、と音がしないのは、あのコンビがキャッチしたのだろう。
器用だなァと息を吐きつつ、その背負子を羽織をまとった背に抱えなおす。
帰り道でも考えるべきなのは、矢張りあの怪異だ。帰途にも遭遇するのは避けたい。報酬を受け取り、折半も何もできていないのだ。
去り際、李の樹が立つ風景に会釈を一つ向け、踵を返して先ゆく姿に続こう。

見えてくる風景はまた違う。闇の森とは位相が逆となった――健全な部位の領域なのだろうか? そう思うに足るのは陽光と緑の匂いから。

ジギィ > 「あ、『女は港』タイプってこと?りょーかい。
 面白いと思ったのになー。長生きなんだし、一回くらいためしてみてよ」

エルフはオヒメサマに対しても失礼な事を言いつつ、それ以上は特に迫らなかった。
多分、少しでも可能性があると実現性を突き詰めて考えちゃうんだろうなーと、バシバシと彼を叩きつつまた彼のことを知った気になる。

「ンー…森から出るのもこのコたちの勝手だけど…
 あ、餌はだいじょうぶよ。虫とか適当に採ると思うから。ただトイレは教えてあげないといけないかな。
 ―――だって。 どんな気分?」

背負子の底でくつろぐ―――というか昼寝を貪ろうとしている2匹に問うたあと、エルフは囀るような音で囁く。短い音から察せるだろう、翻訳しているというより、返事を促しているような調子。

――と言うことは、2匹はとりもなおさず彼の言葉を理解しているということで

覗き込んだ先の2匹は億劫そうに瞼を上げて籠の上を見上げ、ふんす、と鼻息を鳴らし
…再び寝入る体勢に入る。

「…とりあえず今はねむいんじゃい、ってことみたい。
 まあ、あとで聞いてあげて。でもたぶん、主従ってカンジにはいかないかも」

何だったら逆に奴隷になるかも…とまでは流石に言葉にせず。
エルフは今度はぽんぽんと、宥める様に彼の背中を叩く。
足して3で割ったらちょっと間が抜けてカワイイ感じになるかも。とも思ったけれどこちらも言わないで置く。想像して口元だけムズムズする。

「兵糧丸てさっきのやつだよね?大丈夫じゃないかな。大きさはこのコたちむけにしてあげないとね。
 ……大丈夫だってば」

律儀に李の樹へ礼をとる彼を肩越しに見て、後に続く姿に目線で笑って見せる。
それから踵を返して進む森は、段々と太い幹の樹が多くなり、それにつれて緑の天井も高くなっていく。
幾らもせず、自分たちが縮んでしまったかのような錯覚に陥る風景になっていく。
太い幹に絡む蔦植物の這わせる蔦もその葉も大きく、地面を這う根太はうねった丸太のようにさえ見え、時折は視界を塞ぐほどに盛り上がっている。
差し込む陽光の中を舞う蝶があって、それと比べなければ間違いなく錯覚に陥りそうな場所だ。鳥の声は耳を済ませれば、緑の天井の更に上から微かに捉えられる。

「……滅多に通らない場所なんだ、ここ。精霊が多いから、ちょっとでも気を抜くと悪戯されちゃうんだ…」

ぼそぼそとエルフが低く呟いてから、重い雰囲気を誤魔化すように鼻歌を歌いだす。足取りは迷いないが、はやる気持ちを押さえているようにも思えるだろう。