2022/10/30 のログ
影時 > 「それはちぃと違う、な。何処かに待たせて俺だけ良いものを見る――というのは、公平じゃあるまいよ。
 どうせ旅に出るなら、一緒に同じものを見たい。見せたい。それでこその連れ添いだろう?
  
 ……そこまで行くと立身というよりも、場所盗り、国盗りみてぇだぞ?」
 
改めて言葉にしてみると、成る程。こういう心地か。そうとなると連れ添いやら何やらが出来ぬはずだ。
強さ云々は兎も角、己についていけるだけの何かを向こうに求めてしまうのか。
見聞きしたものを伝えることはできなくもないにしても、物語るよりも、きっと同じものを見たい、見せたいのだ。
己が心躍る瞬間とは、その瞬間(とき)だけのものであるが故に。
再度また叩かれながら、覆面の下で浮かんだ困った顔を察するかどうか。

国盗りは兎も角――貴族の地位を運よく、あるいは投資などをして買って、という下りは不可能ではない。
その実例などは、今まで、そして今も関わりや縁のある繋がりを経て知りうることができる。

「さようか。……いや、シモの世話も確かにそうなンだが、酒場の残飯とか迂闊に食って腹を下すのも不味かろ。
 おやつ程度でもイイから、食っても問題ない奴は仕入れとかなきゃダメだな、こりゃ」

背負子の底は揺れそうだが――もしかしたら、思っていた以上に揺れないかもしれない。
派手に動くときは兎も角として、肩を揺らさずに歩き進む人間の足取りだ。緊急時以外は平和かもしれない。
スモモを抱き枕のように丸まる二匹のコンビは、一応自分の言葉は理解している、らしいのだろう。
獣に伝わる音と響きが歌のように、短い音律として響くが、何ということか。
これは男にもわかる。眠いから寝る!と言わんばかりに、ゴローンと寝入る仕草に、あー、と虚空を振り仰ぐ。

「犬とか鷹を飼うんじゃなくて、猫でも飼っている気分になりそうだなァこりゃー…………。
 ジギィ、知っているか? 猫を飼っている人間は実は飼っているんじゃなくて、猫がヒトに養わせてやっているんだそうな」
 
その言葉にならないコトバは、実のところ正しい。正鵠を射ている。
この先請け負う機会が多い学院の講師とは、事前の準備などなければ、ぶらりと遠出することを抑止するだろう。
冒険者仲間の話で、猫を飼っている者は何人か覚えがある。そのうちの数人のコトバを引用し、両肩を思いっきり上下させる。
とりあえず、長く定宿にしている処の主にはあらかじめ話を通しておくことが必要だろう。
雇い主の厚意、雇用条件で衣食住は負担してもらっているが、その範囲に収められるかどうか等は、己がすべきことである。

「ああ、さっき分けてやったヤツだな。……食べ過ぎで太らせるワケにもいかねえし。半分こで割るくらいが丁度いいか多分。
 馳走にはなったしな。それに、さっきの龍みてぇな奴か。形はどうあれ、頼まれごとを預かってもらっただろう?」
 
――頭を下げンわけにはいかんだろう、と。そう言いたしながら、歩を進めてゆく。
こういう場所があったのか。植生の変化が歩けば歩くほど、顕著に見て取れるようになっていくのは興味深い。
太い幹の連なりは神殿の柱めいて。緑の天蓋は壁はなくとも、旅の中で見た神殿の遺構をふと、想起できてしまう。
巨大な神の住処でもあれば、きっと斯様な風情になるかもしれない。
そんな感慨を得ながら、摺り足で進める歩みの手ごたえを確かめ、噛みしめながら――、

「……嗚呼、だからちょっと焦ってンのか」

いたずらというのは、こんな風に毬栗めいた木の実がぽと、ぽとりと転がってくるコトなのだろうか。
微かな落下物の気配を感じれば、一歩、二歩と歩みを先に進め、右腕を振る。
自分とエルフに落ちてゆく茶色い塊を振り払い、手の甲で叩き落す。ついでとばかりにぼとぼととどんぐりの類が落ちてくるのは、どうしたものか。

ジギィ > 「あーそれはちょっとわかるな。
 すごい綺麗な景色とか、独りで見るのも別に悪くないけど、共有できたほうが後から思い出話出来て2度おいしい、みたいなことはあるかも。
 いいじゃんいいじゃん、やってみてよ、国盗り。お城取れたら遠慮なく貰ってあげるからさー」

エルフがふふふ、と、ひひひ、の間くらいの笑い声を漏らすのは、困った顔を解っているからだ。
それからまた彼の律儀な、2匹の養育環境についての話に一瞬きょとんとして
今度はもっともらしく眉根を寄せて顎に指を当て、一緒に真剣に考えるふりをして見せる。

「そおねえ…どっちかっていうと貢がれ体質だと思うから、お腹空かせる心配よりダイエット計画練っておいた方がいいかも。
 酒場で注文取りとかしてもらう?注文票に印付けて貰ってそれを運んでもらうとかー…あー、栗鼠とモモンガの手紙配達とかー…
 ―――うぶふ……」

エルフに取ってはまあまあ案の定、手前の体調を優先して取り敢えず眠りにかかる2匹にまた肩を震わせる。腹筋がとても鍛えられる日だ。
それから猫のくだりを聞くと、また涙目になっている瞳の端を指先で拭いつつ顔を彼に向けて。

「あー、街の猫ね。聞いたことある。
 そこまで遺伝子に沁みついたような貢がせ体質ではないだろうから、猫には敵わないと思うけど…まあ、悪くない気分でしょ?
 …えー 土龍は大丈夫だよ。だってあれ、彼に取っては餌だもん。むしろ解りやすく運んであげたんだからお礼があっても良いくらい」

全く律儀だなー、と言葉を付け足して彼をちらりと振り返る。
――――と、そこにぽとりと

「―――った。
 ……ん、まあそうかな。――――」

頭上に落ちてきた毬栗は、エルフのくせ毛にからまってさながら髪飾りか何かのように右後頭部に絡まる。それを取ろうと右手を伸ばして―――その恰好でエルフの足取りが止まる。

エルフが足を止めた理由はすぐわかる。数十歩先、大きく盛り上がって隆起した根太の上。
紫色の毛足の長い猫がねそべっている。

相変わらずぽとん、ぽとんとどんぐりが降り落ちる音の中、ごろごろと喉を鳴らす音が響いて来る。
脚をとめて暫く黙ってみつめていると、その紫色の猫は大きく口を開いて笑いかけてから
すう、とその姿を降り注ぐ陽光に溶かして消えた。

「…―――カゲトキさん、ちょっと、方向変える…」

エルフは振り返らず、手を伸ばして彼の衣服の裾を握って歩む先を変える。
くせ毛からはみ出た長耳が少し揺れる。
まだ遠く。どんぐりが降る音に混じって、森の中で聞こえる筈のない『音楽』が聞こえて来る。

影時 > 「そういうこった。……絵心ある奴なら、何か描き留めてみせンだろうが、それもまた見たものそのまま、じゃないからなぁ。
 あの王国以外でなら、というコトにしておいてくれ。
 って、お前な。城持ってどーする。独りで棲むにゃ広過ぎるだろうに」
 
簡単な図面、似顔絵程度はどうにかできるとは思うけれども、絵で描くのも何か違う。
見たもの、感じたものを全てをシェアできるとするには、その時その場でまったく同じものを見る。それに勝ることはないだろう。
しかし、国盗りをキメたところで、城をもらってどうするのか。
自分が持っても居室を持て余すのは必至とはいえ、己一人で住むには広過ぎる。幾つも所有し、維持するには金がかかる。
誰かと住むのか? そうと考えるなら、多少はつじつまも合うのだろうが。

「――……奇遇だな、俺もそんな気はしてた。
 最低限働いてもらうんだったら、そだな。どちらもアリか。地下と貧民街区以外なら、踏み入っても差支えはなろうさ。
 ついてくる以上餌と寝床は整えてやるから、多少はその分応えろ。イイな、おまえら?」
 
そんなにツボに入ったのか。笑い声が絶えぬ有様に大げさに肩を揺らし、背負子で寝こける二匹に告げておく。
街で聞く“してぃあどべんちゃぁ”の舞台となる領域にまでは、流石に遣いなどには出せない。
少なからず治安の行き届いた場所、安全が確保できる場所でならば、二匹一組の冒険は許可できるかもしれない。
問題はちゃんとその気があるかどうか、だ。寝ぼけ眼をしてそうなことを想えば、聞いてないかもしれないが。

「この先寒くなるなら、足先とか温まりそうな心地はあるわなお陰様で。
 って、アレ餌扱いなのかよ。森に生きるのも楽じゃねえ――と、ッ……」

癒し効果めいたものに加え、寝床で被る毛布のナカや枕元が温かくなりそうではある。その点については、ありがたいかもしれない。
食料については、暇なときに採取の仕事も散歩がてら受けておくと、運動不足の解消にもなるか?
そう思いながらも、そんな思考と言葉に挟むように落下物が続く。
どんぐりは背負子の篭に落ちるのはありがたいが、毬栗はちょっと背負子の底の客には痛いだろう。
何の仕業か、と思えば、エルフが足を止める。その姿が見る先にあるのは――、

(……山猫? いや、普通の猫、じゃねえか?)

――猫である。名前などは流石にわからぬ。ごろごろ喉を鳴らして、すぅと消えゆく姿は幾つか脳裏に思い浮かぶものがある中で。

「心得た」

短く答え、羽織の裾を握る手にひかれて進路を変える。
背負子の紐を引っ張り、腰の刀の鞘を揺らして、足元に横たわる根を踏み越え、続く。
またどんぐりの雨だれが落ちる中、聞こえてくる“音色”に思わず周囲を見回す。これは、一体?

ご案内:「腐海沿いの翳りの森」からジギィさんが去りました。
影時 > 【次回継続にて】
ご案内:「腐海沿いの翳りの森」から影時さんが去りました。
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」にエレイさんが現れました。
エレイ > ──温泉旅籠内の、主に宿泊客向けに用意されたサービスの一つが、このマッサージ室である。

その施術室はいくつかの個室に分かれており、客は専用のカウンターで受付を済ませた後、各個室で待機しているスタッフと
一対一でマッサージを受けることになる。

なお、客にどのような施術を行うかは、スタッフの判断にすべて委ねる、というあたりはこの旅籠らしいといった所。
ついでに、各個室内には客に安心感を与え、施術への抵抗感を知らず知らずのうちに薄れさせてゆく効果を持った、
ほのかな香りのアロマが炊かれていたりもする。効果がどれほど出るかはその客次第なのだが。

「──はーいお疲れチャン。また来てくれたまへ」

そんな中の一室から、満足げに出ていく宿泊客を笑顔で見送る、スタッフ用の作務衣姿の金髪の男が一人。
今日も今日とて知り合いからの依頼で、臨時のマッサージ師として仕事に精を出しているのだった。

「ふぃー……こういう普通のマッサージも悪くはないのだが、そろそろ一発エロマッサージでもしたいところであるなぁ」

個室内に戻り、施術用のベッド脇の椅子に腰掛けながらそんな詮無い独り言を漏らす。
今日は現状、立て続けに男の『標的』にならない客の来訪が続いたため、男はごく普通のマッサージ師として
仕事をこなすばかりであった。
男としてはそれもそれでやりがいを感じなくはないのだが、やはり役得の一つぐらいは欲しいところであった。

「まああそれも時の運というヤツなのだが……──おっとと一息つく暇もなさそうだったな」

ボヤキを続けようとしたところで、閉じたばかりのカーテンが開く。
各個室は廊下に面しているため、稀に受付を経ていない誰かも紛れ込むこともあるようだが、それはさておいて。
現れたのは男の『標的』になりうる客か、それとも……。

エレイ > ともかく、男は客を迎え入れ。カーテンは再び閉ざされて──
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」からエレイさんが去りました。
ご案内:「設定自由部屋」にクレイさんが現れました。
ご案内:「設定自由部屋」からクレイさんが去りました。
ご案内:「平民地区。店通り」にクレイさんが現れました。
クレイ >  
「♪」

 鼻歌交じりで夜の通りを歩く。目を引くのも当然だ。取れるものなら取ってみろと言わんばかりにゴルドで膨れた袋を手で持って歩いているのだから。
 こんなことをやれるのは相当のバカかもしくは腕利きか。腰にぶら下げた剣、それも魔剣クラスが2本ともなれば後者だと誰でも見抜けるだろう。
 さて、この通りに来た目的は勿論。

「どうすっかな。折角大量に金入ったし豪勢に行きたいところだが」

 砦を中央突破、上級魔族撃破等。様々な戦果を打ちたてた傭兵は通常の報酬に加えボーナスも多く入る。少なくとも1晩散財した所で使い切れる額ではないくらいの金銭は手に入れた。
 店を見回して。

「逆に天井がねぇと使い道に困るな」

 この辺りの店ならばどこでも自由。そうなると逆に困るという物。これが平時ならばまだ考えがまとまるのだが、なにせ戦場帰り。気も昂っているわけで。

クレイ >  
 戦場帰りなど何時もの事ではあるのだが、今回は病み上がりでの出撃。つまり久々の戦場である。結果いつも以上にテンションが上がっていた。
 とはいえ、どうするか。娼館に行きたい気もする。でも酒も飲みたい。
 両方を満たせる店もあるといえばある。とはいえ、今のテンションでそういう店に行けば間違いなく1日で破産する事は見えている。
 ポンポンとゴルドの袋をお手玉のように投げながら考える。

「どうすっかな……いっそ声かけてきた奴で決めるか?」

 こういう場所をこんな風に金持ってますアピールして歩けば誰かしら声をかけてくる。酒場に声をかけられれば酒場へ。娼婦に声をかけられれば娼館へ。それ以外なら相手に合わせる形でそれぞれ選べばいい。というとんでもないぶん投げ。
 誤算はここまですがすがしいほど金ありますアピールされるとそれはそれで話しかけにくいかもしれないが、それには気がついていなかった。

クレイ >  
「あ?」

 視線を感じる。チラとそっちを見る目をそらされる。

「……」

 違う方を見る。目をそらされる。
 ははーん?

「……逆に警戒されてるなこれ」

 何となく気が付いた模様。今の自分の状態声をかけにくい要素満載だったことに。
 ということで作戦変更。袋を懐にしまい、店を探してる青年を装おう。
 とはいえ、腰の剣がそれを許してくれないわけだが。