2021/11/09 のログ
エレイ > ──九頭竜山脈のとある山の麓付近にある、やや寂れた感のある小規模な温泉宿を、男は訪れていた。
ロケーション的に立ち寄りやすい場所ではあるものの、あまり目立たない隠れ家的な
建物ゆえか客は殆どおらず、人気もあまり感じられない。
食事を済ませ、ひとっ風呂浴びようと露天風呂まで足を向け、脱衣所で服を脱ぎ
タオル一枚を携え、浴場へと足を踏み入れて。

「いつもの旅籠の温泉もいいのだが、たまには違う風呂も楽しんでみるのが大人の醍醐味」

などと得意げに独り言ちながら、目前に現れた露天の岩風呂を眺め回す。
見慣れた旅籠のそれとは違う趣に、表情を緩めて。

「あっちよりは出会いの期待値が低いが、まああそこら辺はしょうがな──て、おや?」

その視界に、先に湯船に入っている人影を捉え、男は意外そうに目を丸めた。
てっきり自分以外は居ないものだと思っていたので驚きだ。
そう思いつつ、タオルを腰に巻くと湯船にゆるりと歩み寄って行き。

「……やあやあドーモッ。湯加減いかがですかな?」

と、緩い笑みを浮かべながら、片手を上げつつ気安く声をかけてみた。

エレイ > その後何があったかは、当人たちだけが知ることで──
ご案内:「九頭竜山脈 山中の温泉宿」からエレイさんが去りました。
ご案内:「とある山小屋」にロイスさんが現れました。
ロイス > 依頼で、とある山の生態調査を行っていた男。
仕事自体は終わったのだが、帰りの道中で小規模のゴブリンの群れを発見した。
依頼の条件に彼らの討伐は入っていないが――しかし、村が近い。

その為、"生態調査"として、彼らの巣を割り出し、速やかに麓の村に伝える事にしたのだが、見つけたのは既に日暮れ頃。
流石に、このままの探索はリスキーということで、街道近くの山小屋で一夜を明かす事になった。

「(本当は、あのまま討伐してしまった方が良かったのかもしれない。
だけど、今回はあくまで生態調査が名目だ――こっちから手を出す訳にはいかない)」

だから、理想の流れとしては『村にゴブリンの存在を教える』→『村からの依頼を受けつつ、一度帰って生態調査の報告を終える』→『ゴブリン討伐に取って返す』とするのが最適である。
勿論、その間に村にゴブリン達が押し入らない保証など、何処にもないわけだが――

「(ゴブリンたちは無手で、明らかに食料を探していた――そして、あの足の汚れ方からして、かなり遠くまで歩いているはずだ。
おそらくは、まだできてから間もない群れ。なら、最初は山で生活基盤を整えるはず)」

それでも、村の様子を見て、あまりに戦闘能力のない村人ばかりならば、横紙破りをせざるを得ないだろうが――
何にせよ、村を助けるというそれだけの為に、此処まで回り道するのは歯がゆいものだ。

「……っと。しまった、考えすぎていたな」

そういう事は、今は考えなくていい。今は、食事の時間だ。
そんな訳で、持ってきた保存食と水を用意する。
普段から野外で食べている、味気のないものだ。
それでも山小屋のテーブルに並べれば、多少は印象が違ってくる。

「それじゃ、頂きます……と」

ご案内:「とある山小屋」からロイスさんが去りました。
ご案内:「何処かの布の中から」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 「んっ… む、んく… ―――――んんっ…?…んっ…っ」

小さな身体の小さな薬師が、
まだ眠そうな目をうとうとと開いて身悶えする。

しかし、その華奢な手足は伸び切ることができずに周囲を包む布でせきとめられ、
ぱっちりと開いた赤い瞳も、ほぼ暗黒に近い視界を移すばかり。

しばらく呆然と、ここはどこで、自分はどうしてこんなところで目覚めたのだろう…と思案してみる。


ここは自分の自宅であるテントの中の寝袋で、寒くなってきた夜に己の毛布に全身くるまったのだろうか、

それとも、街や旅先で出会った誰かと寝床でも共にして、二人分の毛布にもぐりこんだのだろうか、

はたまた、何者かに捉えられて布袋の中にでも押し込まれたのかもしれない。

もそ、もそ、と、おそらく卵の殻や繭のように小さな薬師を包む布を外側から見れば、
そこに包まれた中身が少女のような顔を外に出さんと、
かぶった布の出口を探して今にも少女のような顔をぷは、と出さんと、もふもふうごめいていた。