2020/09/06 のログ
■ミミック > ミミックとの対峙は冒険者が一度は通る登竜門ともなる。
真正面から戦えば勝てるモンスターが不意打ちで襲い掛かった場合の危険度、その多彩でもないが本体ではなく武具に致命的なダメージを与える特殊攻撃。
強さで言えばゴブリン以下。
いざとなれば誰かが助ければ良いし、冒険者であればソロで行動することは少ないはずで、比較的安全に多彩な攻撃を実地で体験することが出来ることから、という意味合いでの登竜門。
実際初級の新米冒険者向けクエストには家畜を襲うミミックの退治は選ばれることがある、パーティー推奨ではあるが。
だが逆に言えば単独行動中にミミックに不意打ちされる状況は大変危険である。
木の幹にたやすく食い込ませる多脚、その鋭い足先。
シルエット通りの生物であればあるはずのハサミの代わりに存在する甲殻が筒状になっている前足から伸びる触手による首絞め、獲物を弛緩させる麻痺毒に女性限定となるが媚薬毒、特にこの毒が非常が問題でクエストによってはこの毒を採取しろというのがある。
口内の毒針。
これを採取するには非常に難易度の高い解体するか、自ら打ち込まれるまでに追い詰められたふりをして、ミミックに毒針を伸ばさせて、その際に毒針を切り落とすしかない。
ともあれだ。
雑魚であれモンスター…妖精の森はモンスターの出没率は低い。
でも今宵は各自に出没率が低いはずのモンスターが茂みで獲物を待ち構えているのであった。
ご案内:「妖精の森」にレリィさんが現れました。
■レリィ > 妖精の森。
そこには魔法の触媒に使用されることもある妖精が多数存在しており。
冒険者への依頼として、それらの捕獲が張り出されることも多い。
報酬もそれなりに高額で、凶悪な魔族などは見かけないこの森ではあるが。
それでも、危険が非常に高くなる可能性がある。
それはこの森によく生息している、冒険者の認識としては雑魚に分類される魔物の存在だ。
確かに真面に戦えば武器に熟達していない冒険者でも勝てる程度の魔物だが。
装備を溶かし、更に女性に至っては…生息地域にて、行方不明となっていることも多い魔物
本来は屈強な男性冒険者や探査の魔法を使える…これも男の魔法使いなどが挑戦することの多い依頼だが。
この日は急ぎの妖精捕獲の依頼が出され。更にたまたま、それらに該当する冒険者がいなかった。
だから、ギルドの中でも…厄介な依頼を回されるとある女冒険者に白羽の矢が立った。
そして、妖精の森に来てみたはいいものの。
中々目当ての妖精が捕獲できず、時間がかなり経過してしまった。
早く帰らなければ、不意打ちを常套とする魔物相手でこの暗闇と霧雨は非常にまずい。
ただ、ここでまた問題があり…人間の身体というのは無限に動き続けられるようにはできていない。
森を抜けようと走り続けても、どこかで休息を取らねばならない。
「っ、ふーー……、まったくもう、体質のせいとはいえ、嫌になるなー…」
偶然とはいえど…ミミックが潜む近くの木に背を預け休息する女冒険者
軽いながらも丈夫な装備の上からではわかりづらいだろうが、体は内側も外側も成熟しており。
更に走ってきたためか、若干体温が高くなっている。少し水を飲みながらぽつりとつぶやき
しかし、そこは危険な依頼ばかり回される冒険者らしく油断なくダガーは構えてはいるが…
夜闇と霧雨によって、潜んでいる魔物の紅い瞳も、冒険者は捉えられてはいない。
■ミミック > 闇夜に浮かぶ真っ赤な眼は霧雨で下がる気温の中、夜行性の鳥ではない、ましてやオオカミや野犬の類でもクマなどの天敵でもない、ヒトの体温をハッキリと捉える。
ただ通りかかっただけの人間であれば、霧雨で体温が下がり、ミミックの眼をしても若しかしたら逆に捉え辛かったかもしれないが、幸運なことに或いは不幸なことに通りかかったヒトは体温が高く、茂みの中で地面に伏せて土と刺激の色に甲殻を染めて擬態化し、不意打ちを狙うミミックの眼にはハッキリと見えた。
もちろん、仄かに光る赤い眼は心臓の鼓動すら視覚として捉えている。
獲物は心臓の鼓動が早く、ミミックの眼には疲労している様子として映り、本能はその鎧を着こんだヒトを獲物として認識、すぐさま喰らうべく動く。
食用のための肉か繁殖のための肉か、それを判断するよりも早くミミックは動くのだが、獲物は木を背にしているためか得意の背面よりの強襲が難しいために一瞬だけ動きを躊躇うが、茂みより飛び出し正面より冒険者らしきヒトと対峙する。
眼にはハッキリと敵対の意思を見せ、筒状の甲殻で出来た前足を持ち上げ、その甲殻すら冒険者の前で擬態色から鈍い鋼色へと変化させて、己の甲殻の硬さを誇示するように前足を持ち上げて威嚇する。
キチッチチチチ、と鋏角同士を打ち鳴らし、音でも冒険者を威嚇し、口端からは金属や布のみを溶かす唾液を溢れさせ、じっとその場から動かない、するのは音と前足をあげての威嚇のみである。
通常は擬態し隠れているミミックは絶対に正面より挑むことはない。
それでも霧雨降る森の中で冒険者と正面より対峙しているのは――…冒険者の頭上、木々の幹にもう1匹ミミックが張り付いている、同族が獲物を狙い身を潜めているのを察知しているからであった。
威嚇の音は同族への知らせ。
群れで行動することは稀なミミックであるが協力して一つの獲物を狙うことすらある。
狙う獲物が妖精であれば連携などありえなミミック自体は非常に独占欲が強いモンスターである。
しかし巨体の家畜やヒトを襲う際は稀ではあるが今現在のように連携をとる場合があり1匹が獲物をその場に釘付けにして1匹が不意をつく、それがまさに行われようとしている。
不意がつけないのであれば、欲望を抑えてまで獲物の共有の可能性があっても、確実に獲物を捕らえようとする。
脆弱な魔物には何度もチャンスが訪れない。
だからこそミミックは必死にもなるのだ。
■レリィ > 水分も取り、息も整え。
さあ、この森を抜け出そうかと脚を進めたところに。
聞きたくなかった音が、冒険者の耳に届く。
「―――――!!」
すぐに、さ、とダガーを構えて音の方を向く反応は慣れたものだ。
そして、目の前に…本来正面切ってはあまり戦わない魔物がこちらを威嚇している。
ただ、姿を現していても…溶解液や毒針を受けては本末転倒。
この森を抜けてもまだ先は長く他の魔物と遭遇しないとも限らない。
だからこそ、警戒は正面の1匹に強く向けられていて。
もちろん、警戒していないというわけではないが。
ミミックにとってはいつも通り、音を殺せば…頭上の1匹が気づかれることは無い。
そして、女冒険者の頭には…
弱いとはいえ厄介な相手だからこそ、速攻で片づける、という考えが浮かび。
彼女の認識としてはミミックは群れをつくるというよりも捕らえた相手に群がってくる…というような認識であり。
だから最初の一匹をどうするかが重要だと思っていて。
この一匹に苦戦していれば、他の仲間を呼ぶかもしれない。
だから、すぐに殺すべく…冒険者は眼前の魔物に向かってダガーを構え、突進。
それを突き刺し、魔物を殺すべく狙いを定める。
それは、眼前のミミックにとっては恐怖かもしれない。
だが、樹上のミミックにとっては…動いてはいるものの、獲物が背を向けている状態だ。
ミミックは、彼女も戦ったことのあるモンスターだから、急所は熟知している。
ダガーの一撃が妨害されず刺されば、眼前の一匹を殺すことは叶うだろうが。
前と上、それらのミミックがどう動くのかに、女の運命はかかっている。
■ミミック > ダガーを構えた突進。
対峙したヒトの攻撃に対して正面に立ちふさがり威嚇を続けるミミックには恐怖でしかなかった。
これがゴブリン或いはオークなどであれば回避や防御行動を取るが、初戦は蟲型のモンスターである、勢いのある行動に対して素早い行動を取ることが出来ない、出来れば雑魚モンスターという認識はされないだろう、だからミミックは容易く屠りさられる。
それを冒険者の頭上で木の幹に多脚の鋭い足先を食い込ませて、甲殻を樹の色に幹の模様に変えて擬態したミミックは――…見過ごした。
理由は想像にたやすい。
獲物を独り占めにする為である。
冒険者の正面で威嚇していたミミックはそこまで知恵が回らず、もう1匹の同族がこうなる前に行動を起こすと考えていた、が裏切られ、威嚇のために前足を腹部を持ち上げていたためにダガーを甲殻のない柔らかな腹部で受けてしまい、ダガーの突き刺さる傷口より生臭い紫色の体液を吹き出しながら地面に仰向けに倒れて、口から泡を吹く、少なくとも冒険者にとってひとつの脅威はさった。
だが、その状況を作り出したミミックがいる、この個体より小賢しいまでに知恵の回る個体が存在し、その一連の出来事が終わる間際、冒険者が屠った同族のミミックに意識が向いている中で動いた。
木の幹に食い込ませていた脚の力を緩めると、その木の幹を蹴り加速し、一度も地面に脚をつけることなく、その速度と体重、それを十分に乗せたまま無防備な冒険者の背後へと木の幹を突き立て自重を支えていた脚を大きく広げて飛び掛かり、その背よりも多少下がった腰の辺りをその多脚で挟み込むことでしがみ付く。
それから間髪入れず、そのくびれた腰をしっかりと甲殻に包まれた多脚で挟み込んだままギチギチと腰をへし折らんばかりに力を込めてから、筒状の甲殻で出来た前足からだらりと伸ばしている左右二本の触手を伸ばして、冒険者の首にそのヌトヌトにヌメる軟らかく強靭な触手を巻き付かせて、首を締めあげようとする。
此処までがほんの数秒。
まるで狙いすましたかのように手慣れた狩猟行動。
最初からそれを狙っていたかの如くであるが、同時に同族をわざと犠牲にしたようなタイミングでもある――…実際にこのミミックは同族を犠牲にしてまで、冒険者を捕らえて独り占めにしようと。
■レリィ > もし雨が降っていなければ。
もし、夜でなければ…もし、疲れていなければ。
頭上も注意を払い、ミミックの策略を躱すこともできたのだろう。
ただ、既に冒険者は動いてしまった。
「―――――――っ!!」
気合と共に突き出した刃がずぐん、と魔物の急所を貫く感覚。
擬態することで人を騙して襲う魔物だからこそ、厄介ではあれど戦闘力自体は低い事を冒険者は知ってはいた。
泡を吹いて目標が倒れれば1つの疑問が湧く。
(どうして、擬態してなか…っっ!?)
そう、それは当然の疑問。
なぜ戦闘力が低い魔物が威嚇などしてわざと位置を報せたのか。
これもまたあと数秒あれば…ミミックの狙いに気づけたかもしれないが。
その前に、冒険者の身体に衝撃が襲い掛かる。
感触からして、魔物。人ではない、と即座に判断すれば
例え腰に激痛が走ろうとも背中のそれに一撃加えようとする、が…
「か、ひゅ、っ、ぅっ!?」
その瞬間にまたも見計らったかのようなタイミングでの首への締め上げ。
呼吸が一瞬止まり、そのショックでダガーが取り落とされる。
なんとか、力の入らない腕を背中に回し、ミミックを取り除こうとするが…当然その多脚の力に敵うはずもなく。
「――――っ!、っ!、っ…!………、」
そして、息が止められ続ければ当然。
意識が急速に朧げになってくる。ただ、死ぬ寸前までミミックが加減をし、気絶に留めるなら…
彼女に施された魔法が発動することはない。
やがて、かくん、と力が抜け…ミミックがぶら下がっているからか、仰向けに倒れてしまい。
その後、何をされようと…仲間すら犠牲にするミミックの自由となるだろう。
ご案内:「妖精の森」からミミックさんが去りました。
ご案内:「妖精の森」からレリィさんが去りました。