2020/05/07 のログ
ムラサキ > (がやがやともう日付も変わる頃だというのに静まらぬマグメールの一角。依頼斡旋所、冒険者ギルドにも近しい存在であるこの酒場はそんな遅い時間だと言うのにその喧騒を鎮めようとはしなかった。

店の中ではめいど服、なんていうのだったか。愛らしいえぷろんどれす姿の女性が忙しそうに走り回り、注文を頼む男どもの声が止むことなく響き渡る。厨房ではつるっと頭頂部を丸く光らせた店主が忙しそうに動き回る。
反対に、依頼の受付を担当する方は割と静かな方とはいえど、時折仕事を終えた冒険者が仕事を報告する様子がちらほらと見て取れる。すでにどこかで飲んできたのか少々顔を赤くしながら自分の武勇伝を語り、めんどくさそうな絡みをしたり、酒場にて酒を嗜む団体がそのめいどさん、とやらの身体を触れたり淫らな言葉をかけたり、なんていうせくはらももはや聞き慣れたものである。

そんな騒がしい酒場の一角。そこに一際目を引く少女が一人酒を嗜んでいた。その体躯は小さく。されど胸や尻といった女性的な部分は豊かに育ち、少女と呼べるだけの外観を残しつつもぷかぷかと煙管から紫煙を吐き、くぴぐびと盃を傾けながらはぁ、と妙に妖艶な吐息を吐く姿は童顔と言えるだけの可愛らしさを持ちながらも大人の色気というものを獲得しつつあるように感じられるだろう。
何よりも特徴的なのはその額から生えた二本の鬼の角であるか。存在しない訳ではないものの、この辺りでは比較的貴重とも言える鬼の血族。それを表す立派な角が少女からは生えていて存在感を殊更にに主張していた。

そんな目を引く鬼の娘であるが、相方などは特にいないのか、椅子に座りぷらぷらと足を揺らしながら一人酒を嗜んでいて。)

ご案内:「王都マグメール貧民地区 酒場」にアルヴィンさんが現れました。
アルヴィン > その時。賑やかな酒場の喧騒が、更に騒々しいものへと変じたのを、その場にいた者が皆、感じ取ったことだろう。椅子が倒れ、テーブルが揺れる。そして、酒の瓶が…もったいないことに…割れる音も。
怒号が響き、明らかに酔った荒くれ者の何人かが立ち上がり、一人の若者を取り巻いていた。

そしてその若者は…困ったようにぽりぽりと、呑気に口許を掻いている。

あまり、このあたの酒場では見ぬ顔なのだろう。
そしてまた、貧民街にはあまり似つかわしくない風体でもある。
いかにもな騎士然とした、その姿でどうやら、喧嘩を売られたものらしい。

気に食わねぇと、そういう理由である。
問答無用というわけだ。腕っぷしにものを言わせ、金で場を収めようというならそれはそれ、ちょっした小遣い稼ぎでもできようと、酔った頭で考えでもしたのだろう。

少し脅せば、言うことを聴こう。
なぁに、ちょっとばかり撫でてやればいい、と。

そんな気配を噴きつけられても、騎士は困ったようにその口の端に、幽かな笑みを過らせるのみ…。

ムラサキ > (長年連れ添ったあの人のことは未だ忘れられないけれど、思い出してもふさぎ込んだりすることは大分減った。酒に逃げている、なんて言われれば否定はできないけれど、これは昔からの好物なのでそんなことはない、と思いたい。
我ながら丸くなったもの、とは思う。昔であったのなら・・・態々金を払って酒なんて飲まずに普通に適当な酒場を襲って、酒を略奪してただろうに、今ではこうしてきちんと金を払ってのんびりと酒と食事を楽しむ程に。 

そんな本能を理性で抑えつけ、一個の鬼ではなく、一個のヒトとして、街に溶け込んでいた鬼の少女であるが、その耳に一つの喧騒の種が響き渡る。
めんどくさそうな顔を浮かべつつ、その音の主の方を見ればいかにもガラの悪そうな輩に囲まれる若者の姿。まぁ、ここは荒くれ者と酔っぱらいの集う店だ。自分もそのうちのひとつでもある。

酔っぱらいに囲まれた若者。それを助けようとするかといえば、無論――)

あぁ、そこのめいどの人。おかわりいただける?

(どうでもいい。喧嘩するなら勝手にして頂いて結構。そんな騒ぎいつものことであるから、鬼の娘はマイペースに酒のおかわりなんて頼んでいて。メイドの方も慣れたもので、彼らを遠巻きに見ながら鬼の娘の注文を受け付け、厨房の方に向かっていて。 ・・・逃げたとも言えるかもしれない。

やんややんやと焚き付け、煽る外野。店や他の客に被害が出るようであればムッキムキの店主が出てくるであろうが、そうでなければいつものこと、とばかりにスルーされるだろう。ここはあらくれ共の店。揉め事なんていつものことなのだから。)

アルヴィン > 平民地区のギルドから、このギルドへと使いを頼まれた。
鎧を新調したばかりなのだ。小さな依頼でも受けておいて、懐は少しでも温かくしておきたい。
…それが、このようなことになろうとは、と。騎士の慨嘆も相当長閑ではあった。
そこへと、『なぁにボケっとしてやがる』と、いかにも酔って前後も見境も不覚になってしまった大男が、ついに若者に殴り掛かった。
そんな大振り、酔ってなくても当たるまいなあ、と、若者でなくとも思うような、そんな攻撃だ。
であるから、当たってやる義理もない。
そして、当然のように騎士に避けられた男は、そのまま見事にたたらを踏んで、よろけて、もつれて…そして。

きちんと金を払って、襲撃もせずに行儀よく飲んでいた鬼のテーブルを…その上の酒と料理ごと、吹っ飛ばした…のだった。

「…なんとこれは」

おれが謝った方がよいのかなあ、と。やはり若い騎士は呑気に倒れた男とそのテーブルつにいていた鬼とを、交互に見つめてのたもうた。

ムラサキ > ・・・。

(ガッシャーン!と、大きな音を立てて男は倒れ込む。料理はひっくり返り、先程注文したばかりの酒は盃に注いだ分を覗いて床にぶちまけられることになって。たまたま口元に持っていた盃に注いでいた分を覗いては全てがぶちまけられることになって。
そうなれば、まず反応したのはこの鬼の少女を知るものはそそくさとその場から逃げ出していったのだ。普段は温厚、といえる鬼の娘である。が、その本性は鬼。そう、鬼なのだ。)

・・・ねぇ。

(ギロリ、と向けられたのは殺気の籠もった瞳。容姿が整っているだけにその視線は恐ろしさがこもるだろう。ぐびり、と盃に注いだ酒を飲み干し、近くの無事の机の上に起き、ガラン、と音を立てながら携えていた大剣を手に持ってガリガリと床を引きずりながら件の下手人に近づいていく様は死の恐怖さえ覚えさせるか。)

うち、うちな・・・亡くなったあの人との約束やし、人への危害はなるべくせんように気をつけてたんな。せやけどな、酒を嗜んでいた所を邪魔されて黙っていられる程寛容じゃないんよ、わかる?

(普段は見せない訛りの混じった口調で怒りを滲ませながら件の下手人の首根っこを掴み、自分の身長よりも頭一つ分以上大きい酔っぱらいの男を片手で軽々と持ち上げてぎちぎちと締め上げて)

ヒトが食事している所邪魔したらあかんって教わらんかった?なぁ?そんなんもわからん使えない脳味噌ならいらんやろ?そんならここちょうど良い事に食事処やし?そこのマスターにあんたの使えない脳味噌、美味しく調理してもらおか?

(すぅー・・・と刀と鞘が擦れる音が酒場に響き、少女の携えるその大剣がその刀身を顕にしていくだろう。そうなれば、少女に首を締められつつ持ち上げられた男も恐怖を覚えたのかひっ、とその顔を恐怖に染め、必死に謝罪の言葉を口にして。されど、鬼は止まらず。その視線に殺気を込めて、ずりすりとその刀が抜かれていく。その様子からはこの鬼は本気でやる凄味を感じるだろう。

――結局の所。流血は勘弁してくれ、という店主の必死の交渉により男の首は残された。ふん、と不機嫌そうに男は先程絡まれていた騎士の横を通り投げ捨てられ店の入り口を突き破り、外へ放り投げられて。
鬼の少女はぱんぱん、と一仕事したかのように手を叩き・・・)

それじゃあ、約束の酒頼むわね、マスター?

(男の命と引き換えに得たなかなか手に入らない酒一本無料という思わぬ拾い物ににっこにこの笑顔でそれが出されるのを待つのであった。そのあまりの変わり身の早さには知っているものであればやっと終わったと そうでないものからはなんだあれ・・・と思われることか。

がたがたと崩れた席を治そうともせず、適当に座りやすいように形を整え崩れた机の上に座るという行儀の悪さも見せつけつつ。

なお、絡まれた男についてはその崩れた机に座りつつ)

災難だったわね。

(なんて声をかけたという。)

アルヴィン > 眼の前、展開されたのは一見の価値ある顛末であった。
まず、騎士が目を丸くしたのは、その細腕が軽々と、巨漢を持ち上げたこと。
そして、引き抜かれかけた刃の見事さ。

結句、よそ者の騎士など放っておかれることとなり、騎士は無事にギルドの使いを果たすことが叶ったのだが。
やはり一言告げねば、礼を失すると、そう思ったのだろう。
使いをまずは終えた後に。
その、崩れたテーブルへと歩を進めたのだった。

「不躾ながら…」

酒肴のお邪魔をする、と騎士は告げた。そして、先刻の珍騒動について、自らも一言詫びを入れると共に。
酒場の主からの酒とは別に、先ほど用事を済ませた際に、手配しておいたものをもう一瓶、その崩れたテーブルへと運ばせたのだ。

「これは、お手数をおかけしたお詫びだが…」

そう、告げた後に。何やら騎士は、物問いた気な視線を、その長大な刃に向けたのだった。
そして…。

「…拝見したが、それは…鋳造ではなく、鍛造された刃だろうか…?」

鋳溶かした鉄をただ、型に流し込んで作る剣ではなく。玉鋼を鍛え、鍛造した剣であろうかと、騎士は眼を輝かせ…。

ムラサキ > いいのよ、気にしなくて。あんな頭の軽そうな猿よりもお酒一杯タダで飲める方が大事だわ。

(鬼の少女はそうのたまってご機嫌な様子で盃を傾けて、男の命と引き換えに手に入れた貴重な酒を味わっていて。そうして、追加で男から詫びとして酒を差し出されば)

あら、ありがとう。気が利くわね。なら、ありがたくこれは頂くわ。
(鬼の少女はきらきらと嬉しそうに目を輝かせながらその酒を受け取るだろう。そして、メイドの店員を呼びつけては盃を追加で一枚受け取ってそこにとくとくと注いで)

あなた酒は飲める?飲めるわよね?飲めるでしょ?せっかくだもの、乾杯といきましょう?

(そう半強制的に彼を酒の席に引きずり込み、乾杯を強請る。逃げようとするならばその肩を捕まえて、肩を組みだめなのぉ?と、甘い女の匂いとアルコールの混じった匂いを纏い、騎士の男を誘惑するだろう。いいでしょ?一緒に飲みましょう?ねっ?と。
その無邪気な有様は先程鬼神の如く殺気を放った女とは同一人物とは思えない程であっただろう。)

え?知らない。これその辺でぬす・・・ ・・・ ・・・拾ったのよ。

(鬼の少女は武器にあまり興味はなさそうな様子である。盗んだ、と言いかけたがまぁ、相手は山賊というか違法な商売してる商人だったしまぁ、あの人も文句は言わないでしょ。)

アルヴィン > この騎士は、師の薫陶よろしきを得て、非常に酒精を好んだ。
好んでいるのだが…あまり強い性質ではなかったので、困ったような顔を刹那みせたが、それも一瞬のこと。
崩れ乞われたテーブルに、それでも器用に座り込む。

「あー…」

なるほど。『戦利品』であったのか、と。騎士はまた口許を掻いたのだが。
それよりも、酒だ。
先程、主に頼んだものは、この店でもなかなか良い品であると聞いた。

「では…お言葉に甘えて、おひとつ献じさせていただこう」

まずはこちらがお注ぎしようと、その酒瓶を差し出して。
そして、次に己も琥珀の酒精を満たしたのならば…。

「乾杯」

そう、告げて。
それはもう、美味そうに。騎士もまた、杯の酒精を飲み干した。
舌を灼き、喉を灼き、そして胃の腑を瞬く間に灼いてくれる。火のようなその酒は、赤竜すら酔い潰すという酒だ。

ムラサキ > ふふ、よしよし。いい子だわ。

(大人しく酒の席についた青年に甘やかすような声を出し鬼娘はご機嫌である。その声はまるで子をあやすように。)

えぇ。 ――乾杯。

(そう告げて盃を合わせる。そうすれば、迷うこと無くその盃と唇をあわせ、こくこくとその酒を飲み干していくだろう。火酒、とでもいうのだろうか。舌を焼き、喉を焼き、胃を焼く・・・その刺激の強い酒を飲み干せば)

はーっ・・・! いい、いいわね。美味しい、美味しいわぁ・・・。

(はふ、と酒の匂いを濃厚に滲ませた吐息を零し、鬼の少女は平気な様子で飲み干していくだろう。
平気、とはいってもそのアルコールは少女の理性を溶かしていく。鬼は酒に強い方、ではあるけれどこれまでに結構な量を飲み干している。そこに追撃とばかりにこの刺激の強い酒だ。ふにゃふにゃになって酔っていくのも時間の問題であり、その様子は男から見ても明らかであろう。目元はとろんと蕩け、ゆらゆらと頭を揺らす様子は明らかに、酔っているそれである。)

アルヴィン > ぱちくりと、騎士は瞳を瞬かせた。
あれほどの剛腕で、あれほどかっぱかっぱと酒杯を空けていたその少女が、眼の前でなくとも酔いを露わとしてゆくのは、これはいかんと思ったものか。

「すまぬ、水を…」

今更、チェイサーなど手遅れかもしれぬけれど。それでも水を求めると、騎士は鬼娘へと差し出してみせ。

「良い酒だなあ…。うん、こうして新しい友垣との出会いを、よい酒と共に得られるというのは…」

そこまで告げて。騎士ははたと思い当たり、崩れたテーブルの上で居住まいを正す。

「そういえば、名乗りすらまだであった。おれは…アルヴィンという。遍歴の…草臥の騎士なのだ」

この国には、武者修行の途次に流れ着いたのだ、と。騎士はそう告げ、水だけでなく、その酒杯が空いているのなら、新たな火酒をと、酒瓶を鬼娘へと傾けて…。

ムラサキ > んぅ?

(ちょっとばかし間延びしつつある声は酔が見えるだろう。鬼は酒に強くこそあれ酔わない訳ではなく、強い酒を飲めば当然のように酔う。そして、彼から水を受け取れば)

なによぅ、これ水じゃない!

(水を一口。くぴり、と飲めば不満そうにどん、と思い切り机に叩きつける。むぅ、と口を不満そうに尖らせて)

なぁに?こんなんで酔ったとでも思ってるのぉ?私、鬼なんだから酔ったりなんかしないんだからぁ・・・。

(――それが遺言であった。ゆぅら、ゆぅらと船を漕ぎ遂には崩れた机の足を背もたれにしてすぅすぅと寝息を立て始めることであろう。きっとこれが一杯目であれば彼と長らく会話することも叶ったであろう。けれど、これは生憎と一杯目ではなく、もう既に大分飲み出来上がりつつあった状態である。鬼の少女は瞬く間に潰れ値落ちしてしまって。名前に関しては・・・本人から聞くことは叶わなかっただろう。ただ・・・周囲の人間に訪ねたのならば鬼の娘はそれなりに有名な少女だ。名前であれば容易に手に入れることができただろう。 あとは・・・あの惨劇を目の当たりにした後平然と鬼と酒を飲み交わす事ができた騎士の青年に お前、度胸あるな・・・という感心したような声も与えられただろう。)

ご案内:「王都マグメール貧民地区 酒場」からムラサキさんが去りました。
アルヴィン > 「…参った」

献じた酒杯もそこそこに、酔いつぶれてしまった鬼娘を見下ろして。
騎士は、残されていた酒を飲み干した。

そして、困ったようにぽりぽりと口許を掻いた後に。
でっぷりと太った酒場の主に声をかけ、喧騒の後始末を頼んだのだった。

壊れたテーブルの代を済ませ。
そして、寝こけてしまった鬼娘を抱え上げ、一夜の寝台を借り受ける。
そんなことしなくても、誰もおっかなくて手なんか出さない、などという声もあったものの。

…どうにも、一人飲んでいる時の寂し気な様子が騎士は、気がかりであったのだから、仕方もない。

そうして鬼娘を酒場に託して騎士は、結局、報酬以上の出費を強いられ、やれやれと溜息をつきつつ、酒場を後にしたのだった…。

ご案内:「王都マグメール貧民地区 酒場」からアルヴィンさんが去りました。
ご案内:「街道」にジェイクさんが現れました。
ジェイク > 王都から離れる事、半日。昼下がりの近隣の村落に通じる街道。
普段から人の往来が多い、その道を遮るように柵が設けられ、
道の脇には幾つかの天幕が建てられ、簡易的な陣営の趣きを為していた。
街路に立ち、通行する馬車や通行人を差し止め、積み荷や身分の検査を行なっているのは、王都の兵士達。
曰く、此処最近、山賊や盗賊の類が近隣に出没するために検問を敷いているという名目であるが、
実際の所は隊商からは通行税をせしめ、見目の良い女がいれば取り調べの名を借りて、
天幕でしっぽりとお楽しみという不良兵士達の憂さ晴らしと私腹を凝らすための手段に他ならなかった。

「――――よし。次の奴、こっちに来い。」

でっぷりと肥った商人から受け取った賄賂を懐に入れて、彼の率いる隊商を通せば、
列をなしている次の通行人に声を掛けて近寄るように告げるのは一人の兵士。
何よりも厄介なのは、彼らが紛れもない王国の兵士であり、市井の民が逆らえない事だ。
その事を理解している兵士達も、御国の為ではなく、利己的に国民を食い物にしている最低最悪な屑であった。

ご案内:「街道」からジェイクさんが去りました。
ご案内:「アケローン闘技場 公開食堂」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 闘技場併設の石造りの食堂は、シンプルな石造りの建物だ。
内装もそれは同じ。大きな机を共有して食事をするタイプの食堂で、おまけに配膳はセルフサービス。
それでも、夕食時である現在、席の大半は埋まっていた。

「あー、今日も働いた働いた」

その賑わいの中で、男が一人飯を食っていた。
食べているのは、魚のトマト煮込みと黒パン。
味は、普通に美味しい――普通、というのは、つまり大衆食堂並という意味で。
だが、それでも男にとっては非常に有り難い食事である。何せ、此処は試合出場者には割引が効く。
試合に疲れて、自分で食事を用意したくない時には便利だ。
それに、

「さて、何か面白い話とか無いかな」

此処は、試合出場者の集う食堂。
となれば、当然有用な情報が雑談として流れる可能性が高い。
故に、男はそれに耳を澄ませつつ、食事を摂るのだ。

クレス・ローベルク > ――男は食事を済ませると、席を立った。
ご案内:「アケローン闘技場 公開食堂」からクレス・ローベルクさんが去りました。