2019/08/30 のログ
ご案内:「富裕地区の公園」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ご案内:「富裕地区の公園」にクレマンスさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 王都の屋敷に落ち着いてから二週間程経っただろうか。
忙しなく公務と政務に勤しみ、時には港湾都市や辺境へと出向き、休む間も惜しんで火急の案件を片付け終わったのが昨日の事。

そうして、漸く得た休日。恋人と約束していた"共に出掛ける"という約定を果たす為、歯切れの悪い口調で彼女を外出に誘ったのが昨夜の事。

とはいえ、市井に疎い少年が悩んだ末に思いついた出先は、屋敷からそう遠くない富裕地区の公園。
居住する住民が貴族や富豪で占められている事もあり、ちょっとした庭園の如き様相を誇る立派な公園ではあったが、意外な程に人は少ない。散歩に来ている老夫婦や、見学に訪れている平民が数組いる程度。

だからこそ、落ち着いた時間を過ごす事が出来るのだと噂を耳にしたが故の選択。富裕地区のどの場所にもアクセスの利く此の場所ならば、次に出掛ける場所へも動きやすい。

問題は、彼女が此の場所を気に入ってくれているかどうか、なのだが――

「……晴れて良かった。是で雨など降られた日には、神聖都市へ圧力をかけることも辞さなかったぞ」

初めての外出がこんな場所で良かっただろうか、と悩みながら、共に歩く恋人へ声をかける。
その為、些か彼女の様子を伺う様な、そんな口調であったかも知れない。

クレマンス > 一方、まだ王都の生活に慣れていない聖職者は生活のペースを掴みきれないでいた。
もう少し経てば近隣の教会に出向き、できる範囲での仕事を見出そうとしたりするのかもしれないが、
今はどちらかと言えば恋人の生活に合わせており、なんとなく王都に来る前に比べると己の存在意義が曖昧な気もする。
そんなふわふわとした日常に差し込まれた、恋人との初デートというイベントに気持ちが浮つかないはずはなく。
まだ真上に上がりきっていない日差しを眩しそうに受けながら、珍しくオフモードといった様子の恋人に微笑みかけるのだった。

「あら…無神論者のギュンター様でも神に頼ることがおありなのですね?」

うふふと笑い声が混じって仲睦まじく歩く様は、もしかしたら傍目には恋人ではなく少女同士の気晴らしにでも見えてしまうのだろうか。
彼の衣装は男物だとはいえ、その容姿は華奢な少年を通り越して少女と見紛うものだから。
それでも近辺に住み、ホーレルヴァッハ家を知る者であれば子息だということは明白。
共にいる女性が恋人に見えるのか、それとも使用人や側女がせいぜいなのかはわからない。

「穏やかで良い場所ですね。どこかに腰を落ち着けて休みませんか」

さすが富裕地区の一角と言うべきか、よく管理されて治安の良い美しい公園。
ベンチも芝生もあり、どちらを選んでものんびりと過ごせそうだ。
彼女は彼女で、恋人のエスコートを期待するあまりその反応を見つつ。
己も初めての経験だというのに、それ以上に己のために悩んだり選択したりする彼の様子を見るのは楽しいらしく。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「私の望む事を、私の望む通りに行う存在がいれば神でも悪魔でも構わぬさ。それを敬うつもりはないがな」

鈴の様な笑い声を上げる彼女に軽く肩を竦めて見せる。
とはいえ、浮かれた様子の彼女を見て先ず胸を撫でおろしたのもまた事実。それが彼女に悟られぬ様、普段通りの高慢な態度を崩さずにいようと努力しているのだが。

そんな己と連れ立って歩く彼女の私服に改めて視線を向けると、清楚な色使いでありながら彼女の華やかさを引き立てる服装に感心した様に息を零す。
女性というものは御洒落に敏感なものだと、知古の商人も良く言っていた。今度、服でも買いに行こうかと思いを馳せながら歩みを進め——

「…ん、そうだな。近くに東屋がある。良い日差しではあるが、お前の肌を不必要に陽光に晒す事も無い。そこで少し休憩するとしようか」

元より運動不足でおしゃべり好きな住民達の為に、此の公園はそこかしこにベンチや東屋が設置されている。
色とりどりの花々や丁寧に整備された芝生の広場を眺めながら、落ち着いて話をする事が出来るだろう。

そうして東屋へと歩みを進める最中。
時折擦れ違う者達が彼女に好色めいた視線を向ける事もある。――が、しかし。隣に連れ添う己の視線に気が付けば、そそくさと離れていくのだろう。

クレマンス > 「もう。お忘れですか?私は聖職者ですよ」

聖職者を隣に歩かせて、悪魔と組しても構わないとはよく言ったもの。
膨れたふりをしてわかりきったことを強調するも、本当にそれは“ふり”だ。
むしろ彼の返し方はいつもと同じと言って良い。
どこか緊張している様子を感じ取ったりしていたのだが、勘違いだったのだろうか。
指定された東屋へと視線を移し。

「……ふふ。ええ、そうですね」

思わず笑ってしまったのは、陽光に晒しては拙そうな肌を持つのは己ではなく、彼だと思ったから。
だというのに随分過保護なことで、なんだか嬉しくも、面映ゆくも。
少女のような容貌の彼にまるで番犬のような役目をさせてしまっていることには気付かず、
聖女は東屋に辿り着くと、早速と手にしていたカゴをテーブルに置き、何かせっせとし始めた。

彼が気付いていたかは定かではないが、朝早くから屋敷の料理人に手伝ってもらいながら軽食を準備していたのだ。
育った神聖都市では料理をする機会は多くなく、民への炊き出しも他の修道女がメインとなって動いてもらっていたため、その腕は素人以下。
それでも玉子を茹でたり食材を切る程度は人並みに可能で、
見守る料理人をひやひやさせる場面はあったとしても――こうして怪我もなくサンドイッチは出来上がった。
来たばかりだというのに食べさせようかと準備し始めるのを見るに、聖女自身早く食べてもらって感想が聞きたかった。
つまり、多少なりとも浮かれていたという証左であり。

「今日召し上がって頂こうと思って、用意したのですよ。
 恋人同士というのはこういうこともするようですし……
 民のためというのも良いのですけれど、好きな方のために作る楽しさというのは実際に経験してみて初めて知りましたわ」

布巾でテーブルを軽く拭き、布を敷き、彼の分のサンドイッチを並べる動作に淀みがない。