2019/06/27 のログ
ご案内:「平民地区 訓練所」にスバルさんが現れました。
スバル > 平民地区の一角、冒険者たちが訓練する場所がある。
 その一角で、ひとりの少年が周囲をキョロキョロと見回していた。
 その少年は長い前髪で己の目を隠していて、表情を伺わせない。
 服装はこの国では一般的に売られている服で、子供服である。
 しかし、一般的ではない所が幾つかある。
 少年の腕には、魔法の力の込められたガントレット、少年の腰には東洋のサムライが使うような脇差。
 とはいえ、子供が持つにはやや重すぎるものだった。

 そして、少年は誰もいないことを確認するように、きょろきょろと、先程から人がいるかどうかを確認した後に。
 誰もいないと安心したのだろう、少し息を整えて、柔軟を始めるのだ。
 誰もいないところで、こっそり訓練したいお年頃……なのかも、しれない

スバル > 「…………」

 暫く柔軟をしていれば、体が暖まってきて、体が柔らかくなってくる。
 運動するのに大切なのは柔軟性であり体が硬いと、こけて大怪我してしまうのだ。
 少年は先ずは……訓練所を軽く走り始めるのだ。
 走り込みは、体力をつけるために必要なことである、基礎的な体力をつけないと、そもそも何もできなくなるだろう。
 力とか付けるにしても、基礎的な体力がなければ訓練も続かないからである。
 とことこ、とそんなに早くない速度で走るのだ、すぐにへばってしまうが、頑張って走る。

(……今日は、怖い人たちいなくてよかった。)

 走りながら考えるのは、冒険者たちがいないことを安堵する思考。
 彼らのじゃれあいのようなからかいの声も、少年にとっては恐怖でしかない。
 キョロキョロしていたのは、そういう冒険者がいないかどうかを探していたのであった。

 訓練しているものの、少年は基本的に臆病で、弱気、なのである。

ご案内:「平民地区 訓練所」にサヤさんが現れました。
サヤ > 今にも振り出しそうな雲行きのなか。
久しぶりに訓練所で鍛錬でもしようと訪れる。

「予想通り、誰もいなさそう……でもないか」

この時間であればほかの冒険者も少なく、悪い意味で顔が割れている自分にとって落ち着いて鍛錬ができる環境でもあった。
はずなのだが、グラウンドの上を走り抜ける人影。
しかもよく見ればそれが自分の息子であるとわかると小さなため息をつき。
グラウンドの隅で相手が一蹴してくるのを待ち。

「ずいぶん熱心ね。
 息はもう切れてるみたいだけど?」

腕を組みながら、優しい口調でからかうようにいい。

スバル > 走る、走る、走る。最近の気候は、湿度も高くなり、じっとりと気持ちの悪い汗がにじむ。
 気温のせいですぐに熱も上がり、体力も余計取られていく。
 家族の皆に比べて、ひ弱だと言っていいだろう少年。

「……ひぅっ!?」

 ぐるぐると、一週、二週と走っていたのだけれども、不意にかけられる声。
 少年は、その声に驚いて、しゅばばっと、離れた。
 そして、おもむろに近くの打ち込みだいの影に隠れるのだ。
 今までゼハゼハ言いながら、周回していたのが嘘みたいな速度であった。

「……おか……さ?」

 恐る恐る、台から、顔を出し、荒くなった息を吐き出しつつ、立っている人物を確認する。
 そして、自分の母親だ、とようやく理解

サヤ > 声をかけた瞬間の動きはまるで目で終えるようなものではなかった。
あれが実践で出せれば父親と張り合える強さになるだろうと苦笑を零しつつ。

「えぇ、私。
 こんなところで何してるの?」

訓練所なのだからほかにやることもないだろうが。
普段気弱な息子がこんな荒くれが集まるような場所で訓練していることが不思議に思い。
小首をかしげて訪ねてみて。

スバル > 残念ながら、性質とかもろもろのものを含めても、少年の才能は逃げたり隠れたり料理したり、に向いているのだろう。
 ちなみに、さっきの逃げの動きをいつでも出せるとしても、父親には張り合えない。
 父親の方は、そもそも人の限界のレベルなのである。

「…………訓練………。」

 母親の質問には、ちゃんと答える。
 父親が基本的にいないので、父親の代わりに、おかーさん達を守るんだ、と言う理由。
 それともう一つ、恋人を、守りたい、という理由が追加されているのだが、それはちょっと年頃の男の子には恥ずかしくて言えなかった。 

サヤ > 「訓練ね」

そういえば物心つくようになってから家族を守るんだとか何とかいっていたような気がする。
自分もそれなりの腕を持つが色んな意味で体が弱いため、その覚悟は母親として嬉しくもあるのだが。

「でもまだまだね、私が声をかけて怯えてるようでは野良犬にも勝てないよ?」

そっと隠れ気味の相手に近づき、手ぬぐいを取り出せば流れる相手の汗を優しくぬぐってやり。

スバル > 「ぅ………。」

 母親の指摘は、的を得ている。
 少年は気が弱く内向的なので、戦闘にはあまり向かないのである。
 すぐに怯えて逃げたり隠れたり。
 それはそれで才能であろうが……それでも、守りたいもののために奮起する。

「でも……訓練は。
 そういえば、お母さん、剣は、得意、だよね?」

 汗をぬぐってもらいながら、少年は思い出したように問いかける。
 姉に、剣を教えている様子を思い出して、じ、と髪の毛の間から見て返答を待つ

サヤ > 「ん?そうね、人並みには扱えるよ」

息子の質問に対しては小さく頷いて答える。
何となくそのあとの質問が予想出来たため、相手の目を見て小首をかしげ。

「なに?教えてほしいの?」

一応息子にも自分の物より小ぶりな脇差は持たしている。
だが、内向的な息子は戦いに向いていないだろうと判断してあまり積極的には教えてこなかったのだが。
息子が教えてほしいというのであれば、基本を教えてあげるのもやぶさかではなく。

スバル > 「…………。」

 人並みに使えるという言葉、少年は母の武器を見る。
 刀という東方の武器であり、熟練を必要とする武器である。
 重さではなく、速度と技量で切り裂くための武器。
 それを人並みというレベルは、普通に上級と言えるだろう。

「……うん。」

 内向的な少年、逃げ隠れが得意な少年。
 そのために、仕掛けガントレット……魔法のクロスボウを身につけている。
 隠れて撃ったり、逃げて撃ったりが得意なのであった。
 でも、それではダメだ、と思うので、母に願うのだ。
 教えて欲しい、と。

サヤ > 「……わかった」

息子の返答を聞き、覚悟を確認するように暫く沈黙が周囲を包んだあと。
しっかりと頷いて見せれば手ぬぐいを近くのベンチに置き。
相手の後ろに回って。

「まずは基本の構えから、抜いてみなさい」

その目は優しい母の物ではなく、一傭兵として新兵を鍛えるようなもので。
短く鋭い言葉で相手に腰の脇差を抜くように指示し。

スバル > 「……っ。」

 母親の雰囲気が変わるのがわかる。
 少年はこういう空気の変化に敏感であり、ビクッとしそうだったが我慢。
 そして、母親の言うとおりに、腰の刀を……脇差を抜く。

「ん……。」

 刀の塚を左手で握り、右手は添えるように。
 構える形は青眼の構えで、中段に。
 恋人に教えてもらった、基本中の基本の構え。
 それだけしか知らない、少年であった。

サヤ > 「……うん、基本はあるみたいね。
 どこかで習ったの?」

刀を使える人間は自分だけではない。
基本的に放任主義で育てているので自分の知らない間に誰かから持ち方くらいは教わったのかもしれない。
そんなことを考えながら後ろから相手の手に触れ肘や肩の角度を調整し。

「足も、もう少し開いて。
 視線は刀ではなくその先、常に敵を見るように意識しなさい」

内側から相手の脚を軽く蹴って肩幅に開かせ。
耳元で静かな声で語ってからゆっくり身体を離し。

「そのまま素振り!まずは50回!掛け声を忘れないで!」

スバル > 「……うん、一応。でも、もっと、早く強くなりたい、し。」

 ただ、彼女の武器はレイピアだった、使い方のイロハを学んだだけである。
 母親の腕が自分の体に触れて、自分の体を修正していく。
 調整するような動きにあわせて、体を動かしていく。

「こう…………?」

 足を開き、構えるのはともかく。
 常に敵を見る―――少年にはそれはとても辛い。
 人の目を見るのも人を見るのも苦手なのだ。
 なれた相手で漸くと言う所なのである。

「――――つ!?
 一つ!二つ!三つ!」

 素振りという言葉、自分の知っているものの攻撃の型……即ち、突きを攻撃したのだ。
 それは、人を殺すために、躊躇なく、首をつく動き。

サヤ > 「ん……?」

自分の中で素振りと言えば上段からの切り落としだったのだが。
息子が選んだのは突きの動き。
確かに刀の基本は突きともいえるが、何となく息子に武器を教えた人間の得物が想像できる。

「ま、いいか」

そもそも刃渡りの短い脇差では攻撃というより防御の武器なのだ。
ならば下手に型を教えるより、まずは息子に攻撃本能を教える方が先だろうと判断して口を出さず。
息子が指定回数の素振りを終えるまで見守ることにして。

スバル > 「……23……24……25……!」

 母の疑問を気にすることができない少年は、必死に突きの動きを繰り返す。
 少年は攻撃の型というふうには聞いていない、守りながら攻めるための型と聞いていたのだ。
 刀がそのまま盾になり、その盾のまま攻撃をするという形。
 それに、刀剣の攻撃のなかで最速は、やはり突きなのである。
 母の疑問と納得に気がつくことができぬままに少年は突きを放つ。
 一回、一回。
 突きを放つたびに少年の額に汗がにじみ、たらりとたれていく。

「48……49……50!」

 素振りでは、少ないであろう数の50回。
 その回数でも、少年は、それなりに疲労していた。

サヤ > 「いいよ、じゃあ次は踏み込みの練習。
 そこの打ち込み用の木型に向かって突きでも切りつけでも何でもいいから。
 私がいいというまで続けなさい。」

息子の疲労は目に見えていたがだからと言ってそこで手を抜くほどは甘くなく。
すぐに木人に対する攻撃の訓練をするように指示する。

そこから数刻、息子が根をあげるまで訓練は続くのだろう。

スバル > 「はぁ……はぁ……ひぅ!?」

 まだ、呼吸は整ってないのに、母親はすぐに次の訓練を指示する。
 しかし、自分から言い出したことであり、少年はそれを投げ出すわけには行かない。

 力不足なのだ。
 恋人を守るにも、家族を守るにも。
 なら、ここで弱音を吐いていいはずもなくて。

 「―――ぅ!」

 少年は歯を食いしばり、木人に向かって刀を向ける。
 そして、訓練は続くのだ、母親の訓練メニューはまだ、終が見えないのだろう。
 そして、終わったら家に帰って、倒れるように寝るのだろう―――

ご案内:「平民地区 訓練所」からサヤさんが去りました。
ご案内:「平民地区 訓練所」からスバルさんが去りました。