2019/04/18 のログ
アマーリエ > 「――……だから、余り変なことはしないように頼むわね」

人世で生きるための道理を弁えていれば、敢えて言うことは無い。
本来であればこの手の不法な侵入も、今は言うまい。此の手の事象は日常茶飯事だ。
狼藉を働くならば、近衛の者達が動かずとも手ずから剣を振るうとしても文句は言うまい。言わせない。
気疲れが増す分だけ、皺が増えているだけ気がして、老いた先がどうなるか、時折不安になるが。

「契約、ね。……あー、出来たら止めて頂戴ね。
 見憶えるだけで済むなんて羨ましいけど、口外するとなったらそれこそ討伐隊を出さなきゃいけない位の事柄なの。

 ……? そうね、動かさないから置いているけど、何か気になることでも?」

記憶術については諜報員等にとって重要な技だが、此処まで来るとまるっと絵に描くように覚えていそうだ。
そんな気がしながら、また一つ心中で大丈夫かと不安が過ってまた一つ何か皺が増えた心地を得る。
思わず虚空を振り仰ぎ、紅茶を口にしながら気を取り直してみれば続く言葉に首を傾げよう。

「残しててもぱさぱさになるから、私の分以外は全部食べて行っていいわよ。
 クリームは徴発してきても良かったけど、自分で食べる分ならわざわざ、ね。」

料理人たちが詰める厨房にお邪魔すれば、権限で徴発してゆくのは容易かった。
だが、元より自分で食べるためだけとなればそこまで手間暇をかけるのは面倒だった。
竜たる少女の勢いであれば、直ぐに食べ終えてしまいそうだったが、逆に自分はゆっくりと食を進めよう。

ラファル > 「あい。」

 ここは、素直に返事しておくことにする。これ、処世術というやつであろう。
 変な事すれば、怒られるから、するつもりはない、それをちゃんと言葉にしておくのが大事。
 ゲンコツとか、剣とか、やだし。

「?あ、うん。
 大丈夫だよ、見て覚えてるだけだから、別にいうような人もいないし。

 ううん、ケーキのお礼。」

 言葉にはしてないけれど、ここの警備の状況とかいろいろ覚えている。
 どこにどんな人物が、何人で、やる気があるかないか、歩く速度……ここ一年近くのデータを記憶している。
 なので、実は歩いて警備をかいくぐって行きたいところに行くという芸当も、できたりはする。
 言わないけれど。

 それは兎も角。
 幼女は、軽く人の言葉ではない言葉で話しかける。
 うんうん、と誰かと話しているようで、それはすぐ終わる。

「うん、精霊さん、ここでグルグルしてくれるって。」

 エンチャント完了らしい。
 テーブルが、魔法のテーブルになりました、効果は、空気の対流と空気の浄化。
 ケーキのお礼。と笑ってみせる。

「えんりょなくいただきまー!」

 もしゃもしゃもしゃもしゃもしゃもしゃ。
 彼女の想像するような速度で、幼女はケーキを食べるのだった。
 時折紅茶をずずずっと、すすって。

アマーリエ > 「見て覚えるだけでも、凄い事なのよ。普通の人間はそうはいかないから覚えておくと良いわね。

 ……嗚呼、後学のために脳喰らいとか呼ばれるような類の魔物には気を付けなさいな。
 竜だから抵抗力はあるだろうけど、記憶や経験とか啜って糧にするそうよ」

若しかしなくとも――才能の塊が自由気ままにうろついているということなのだろうか。
酷く難しい顔つきになりながら、塊になった吐息を吐き出すように息をついて言葉を紡ごう。
誰にも口外しないにしても、口外されられるようになった時のリスクが心配だ。
口外されない機密なぞないに等しいかもしれない? それは、得たものを吟味する者次第だ。
監視網を管理する者の匙加減にもよるだろうが、万一の際のリスクマネジメントまできっちり保証してくれるだろうか?
知るか知らないか気になるが、かつて討伐した記憶のある存在を思い返して。

「? っ……あ、ありがと。遣ってくれるのは嬉しいけど、釣り合わないわね」

こてん、と首を傾げて何事か言葉を虚空に放つさまを見れば、続く言葉の意味を察してカップを落としかける。
エンチャンテッドテーブルの誕生だ。対価となるかどうかが思わず悩みながら、自分の方に用意したケーキの半欠けを譲ろう。
4つに切り分けたケーキの3/4だ。金銭的な価値を思うなら、足りないほどだが。

「御茶のおかわりもあるわよ」

そう言いつつ、猛烈な食べっぷりを見遣ってポットから自分のカップに茶を注ごう。

ラファル > 「あーい。
 脳喰い?記憶とか経験をすするの?怖いなー。
 どんな形のやつなの?」

 後学のために、と言われた言葉、知らない魔物、未知には興味が強く浮かぶのは子供故か。
 記憶とかなんとか吸われるのは怖いけれど、どんな形なのだろう、姿なのだろう。
 興味を向けて問いかける。

 姿を知らなければ警戒も何もあったものじゃないという理由もあるのかもしれない。


「それ、人の感覚だからでしょ?
 ボクは……少なくとも、あの子達は、アマーリエが大好きだから、やってくれるって言ったんだもの。
 感謝するなら、たまに、魔力を注いであげるといーよ?」

 魔法のエンチャントではなくて、精霊のエンチャント。
 そこには、精霊の意思が介在し、精霊がやる、と言えばやってくれう、精霊がやだといえばやらない。
 それだけの話であって。
 そこに、金銭のやりとりは必要がない。

 人の感覚で、金銭で言えば、どれだけになるかは、知らない。
 竜の目で見れば、確かに、価値のあるもの、と出てくる。

「わーい!ありがとー!!」

 お菓子とお茶で一本釣りな、幼女は嬉しそうにさらにもらったケーキをもしゃもしゃもきゅもきゅ。

アマーリエ > 「触手が髭のように生えた魔法使いのようないでたちの人型の魔物よ。
 そうそう見かけるものじゃないけど、気を付けなさい」

調べればすぐに分かるかもね、と。そう言い添えながら膝を組んでソファに深く腰掛けよう。
頻繁に見かけたくないものではあるけれども、駆け出しにはあまりに荷が重い類であろう。

「そうね。人の――私の感覚だわ。
 魔力を分けてあげるくらいでいいなら、お安い御用だわ。テーブルに魔力を少し流す具合でいいのかしら?」

元より価値観やものの考え方が違う以上、とやかくは考えない。
思った以上の思わぬ拾い物をした。その程度で考えておけばいいだろう。過剰のより多くのものは強欲が過ぎる。
特に風というものは気紛れなものだ。優しい微風が時に荒々しい暴風にもなるのだから。
小さく肩を竦め、片手をテーブルの上にポンと触れて魔力を少し流そう。程良い具合は施術者でなければ、分からない気がした故に。

「ふふ、この位で良いならお安い御用だわ。誰かに食べてもらう機会なんてそうそうないものね」

自炊というのも大袈裟だが、最近遣る手料理なんて自分で消費する範囲ではないのだ。
こんな風に喜んでくれるのなら、少しは嬉しくなる。
勢いよくもしゃもしゃする姿を眺めつつ向こうの茶器に茶を注ぎ、程良く腹が満ちた具合に息を吐く。

ラファル > 「触手が髭……魔法使いのような、人型……きしょいなー。 うん、覚えたよ!
 気をつけるね!!」

 うねうねうじゅるうじゅる、髭が職種のように動く魔法使いみたいな人型の魔物。
 こっちに来たら即効退治の対象になるだろう。
 気をつけないとダメだねと、幼女はうなづいた。

「うん、そー。
 魔力をそっと流せばいいよ!
 そうすれば、精霊さん元気になるから。」

 もしゃもしゃもしゃ……ごくん、と飲み込んで。こくこくこく、と質問にうなづく。
 精霊も魔力が必要だしねー、と軽い様子で。
 彼女が流した魔力、それを眺めてうんうん。と。

「あまりたくさん上げすぎると。精霊さん進化しちゃうから。」

 魔力が多ければ、ご飯が多ければそうなるだろう。
 進化したらどうなるのだろう、それはラファルにもわからない。
 まあ、彼女のことを好いてやってくれてるから早々悪いことにはならないと、思いたい。

「もぐもぐ、だから、もきゅもきゅ、たまにで、いいともうよ、ごくん。」

 食べるのとしゃべるのを一緒にする幼女だった。

アマーリエ > 「遺跡や、嗚呼ろくでもない召喚術士とかがやったりするみたいね。一応、気を付けときなさい」

大概、魔族の走狗か悪意を持った術者、あるいは術そのものを失敗した結果等が予測される。
えてしてろくでもないことに纏わるものだ、と考えておけばいい。
在り方そのものが生態そのものであるとしても、そのまま放置なぞ出来ない代物だ。

「そうっと、ね。心得ておくわ」

進化、進化かぁと嘯きながら、思わず考えこむ。
進化したら何かをしてくれる――という程都合のいいものではあるまい。
鉢植えの花を育てるのとは似て、勿論違うのだ。
部下に周知する程重要事ではないかもしれないが、一応気を付けておこう。そう心に決める。

「ケーキもお茶も逃げないからゆっくりで味わいなさいな。思い出した時位で良いなら、そうしておくわ」

行儀悪いわよ、と。竜に説いても仕方がないにしても一応そう告げておこう。
気が付けば、カップの中身は空になっていた。あとで湯を沸かし直して淹れようか。

ラファル > 「あーい。……食べたらボクもできるようになるのかな……。」

 ポツリ、と怖いことだろうつぶやく幼女、食べたものの力を取り込み、使用できる能力を持つ。
 もぐもぐごくんしたら、経験とかもらえるようになるのかなー。
 碌でもない考えがよぎる。

「うい。
 今の魔力ぐらいならちょうどいいと思うよー。」

 毎日過剰な魔力を注ぎ続けてなければと、幼女は嬉しそうに笑う。
 まあ、精霊は人の精神には敏感なので、彼女が彼女であれば問題はなかろう。
 気をつけているならなおさら大丈夫なはずである。

『あーい。
 そだね、思い出した時で、いいと思うよ。だって、基本は自然の魔力を受け止めてるし。
 ああ、窓を開けて換気しても、いいと思うよー。』

 もぐもぐ、もぐもぐ、食べる方に集中する幼女。
 今度は器用に、腹話術で返答するのだった。
 そして、皿のケーキと、紅茶が、ついに、なくなる。

アマーリエ > 「腹壊すわよ」

ぼそ、と。そう言い挟んでおくとしよう。
勿論壊さないという確証の方が強いが、如何せん他人から啜ったものが入り混じっていそうなものだ。
そのまま取り込んで利用するとなるとどうなるのだろう。
断定はできないが、何分人の末期の記憶等をそのまま蓄積している可能性もある。
どうにかできなければ、狂った竜が生まれてしまうかもしれない。

「この位でいいなら、覚えておくわ。
 通信魔術も使うから、その時の余分な魔力を吸ってもらう位でもいいかもしれない――なんて手抜きか」

意識して魔力を注ぐのも重要だが、待機中に僅かに散った魔力も糧になるのだろうか。
極端に善悪に偏った意識はないつもりだが、ふと、鉢植えの育て方を聞くような感覚を覚えながら問うておこう。
別段聞くまでもないかもしれないが、部屋中に異様なつむじ風を起こして書類が台無しになった、などというのは避けたい。

「換気はしないとね、息が詰まるのよね。
 嗚呼、本当にあっという間の食べっぷりね。2日分位保つかなと思ったけど」

冬場は兎も角、これからの季節だと窓を開けることも多くなるだろう。
器用な腹話術を見せて返答する様に笑いつつ、食べ終えた様に小さく笑う。味わって食べてくれたなら何よりだ、と。

ラファル > 「……それはやだなー。」

 本当にお腹を壊すのだろうか、食べたこと無いから判らない。
 悪食ではあるが、それは無敵の胃というわけではないのだ。普通の竜のそれよりは強いだろうけれど。
 取り込むのはまずは能力であり、それも時間制限的なもの。
 そこで経験を、記憶を手に入れたときはどうなるのだろう、未知である。
 彼女の懸念が当たる可能性も、大きいのであるが、どうなのだろう。

「それでもいいんじゃないかな?
 だって、魔力だもの。」

 魔力は魔力であり、そこに違いはないはずである。
 魔力を燃料として使い、魔術が発生する、と姉から聞いたことがある。
 あまり詳しくはわからないけれど、そんなものなのだろうと素直に考えていて。

 魔力が濃くて、力を与えすぎたらそんないたずらをするのかもしれない。
 逆に、ちゃんと制御できていれば、外からの風で、飛びそうになった書類をとどめてくれるかも知れない。
 それは、精霊のみぞ知るのだが。

「寒い時換気すると、こう、冷たくてやになるよねー。
 ごちそーさまでした!とっても美味しかったよ!」

 半裸とも言えるような格好で何を言っているのだろう幼女。
 それよりも、甘いデザートを食べ終えて、満足した様子で笑った。

「じゃあ、ボク、そろそろかえるね?
 またね!」

 そう、言うが早いか、換気のための窓を開けて、そこから跳躍。
 ばさり、と翼を広げて、バイバイ、と手を振って、去っていく。

 風のように自由な子供であった。
 その姿は、闇夜にすぐに溶けて、消えていった――――

アマーリエ > 「記憶を取り扱う奴は自分を見失って狂うこともある、らしいわね。気を付けときなさい」

学説か、あるいは俗説か。
此れは定かではないが少なからずそう考えると記憶喰らいの魔物が、気狂いのように振舞ったりする理由にはなる。
自分が何なのかという個の境目すらわからなくなって、ぐちゃぐちゃに入り混じるからだとすれば。
そう考えるとやはり、その手の魔物は厄介だ。優先的に滅ぼさねばならぬと心に決めて。

「そうね。魔力には違いないわ。
 火を焚くと匂いが籠るから適度に風入れないと困るのよねぇ。

 美味しく食べてもらえたなら何よりだわ。って、そこから帰るのね……。気を付けて、というまでもないけど、用心して帰りなさいな」

高空の寒さと地上の寒さは違う。それを知っているからだろうか。
半裸じみた装いはさておくなら、そう考えると辻褄は合うか。
笑う姿に答えていれば、幼女めいた姿が窓から外に飛んでゆく。
あ、と止めるまでもなく手を振って翼を広げ、去って行く姿を見届けてば、窓を閉めて茶を淹れ直す。
一息ついて片付ければ、明日の仕事に備えて部屋の明かりを消そう――。

ご案内:「執務室」からラファルさんが去りました。
ご案内:「執務室」からアマーリエさんが去りました。
ご案内:「薬屋のテント」にタン・フィールさんが現れました。
タン・フィール > 王都の空き地に建てられた、6畳ほどの広さのテント…。
其処は、少年薬師の店にして住居。

テントの外で焚火と鍋を用意し、今日調合を終えた薬を湯で溶かし熱して成分を活性化させ、
順に便に詰めていく作業を行っていた。

「んー…いいにおい。 我ながら、良い出来…!だいせいこう!」

トロトロのハチミツのように蕩ける、琥珀色の薬湯からは、
チョコレートとハチミツをミルクで溶かしたような、子供受けする甘い香り。

そのままでは飲みにくい諸々の薬を、飲みやすいシロップ状にして売ってしまおうという子供らしい発想で、
けれども、味までもホットチョコレートのようなそれならば、
ちょっとした発明であろう、と胸を張って、今か今かと煮詰まるのを待っていた。

周囲には、ここはお菓子屋さんかパン屋かと勘違いするほど、
芳醇で美味しそうな香りが立ち込めていて。