2018/09/27 のログ
ご案内:「マグメール王国軍・第七師団駐屯地」にサロメさんが現れました。
サロメ >  
翼竜が舞い降り、その背から一人の女騎士が降り立つ
鍛錬に励んでいた騎士達は一度その手を止め、声高く敬礼を行った

「続けてくれ、今日は様子を身に訪れただけだ」

一言そう声をかけ、部下に翼竜を任せるとゆっくりとした足取りで駐屯地を見回るように歩き始める───

あの遠征で出した犠牲は決して少なくはない
追い打ちのように自身への責任の追求から投獄、第七師団の一時凍結
一先ずとはいえ、よくぞ取りあえずの形を取り戻せたというところだろう
無論、最盛期のそれと比べれば比肩すべくもない規模だが

サロメ >  
形を取り戻したとはいえ、その規模もさることながら練兵も問題も在る
旧第七師団の頃からの団員達…オーギュストの代からの者達は経験も豊富、かつ自分を将としてついてきてくれる気概を持っている
しかし新兵や、他所からの編入で充てがわれた人員はそうではない
──おそらくは、自分に対して不信を持っている者もいるだろう

この国で、女が上の立場に立つということが如何に難しいことなのかがよくわかる

新兵への、対魔族戦闘への経験と修練を与えること…
半壊した第七師団の戦力、主に武具や施設の補修…
タナール砦の保全は今やあったものでもない、
件の"翼"と、新たに出現した"仮面"
そのどちらを相手取るにしても今の第七師団では難しい

対魔族、を謳い上げ、名に恥じぬ戦果をあげて漸く復活を宣言することが出来よう
そのためには立ち止まっている暇もないというもの──

小さく嘆息する

悲しむ暇も与えられないというのは、かえってありがたいことだ

サロメ >  
新兵達の鍛錬を横目に、駐屯地内の執務室へと向かう
全くの素人が集められたわけではない、当然その戦力としては粒揃いの筈だ
それでも尚、相手が魔族となると通常の装備・戦術では遅れをとる
人間相手に戦うという常識からは逸脱した思考、心の据え方が必要となる

その為には───

「やはり、タナールだろうな……」

執務室の机に落ち着き、暫く溜まっていた報告書に目を通してゆく
此処に駐屯する自身の部下が一通り目を通した後ではあるが、念の為
…と、いっても目新しい情報はなく…いつも通りの砦の攻防の報告くらいものだった

サロメ >  
魔族の国への侵攻を再度行うには厳しい側面が多すぎる
かといって、魔族を相手に立ち回るならば
そして第七師団の在り方に求められているものは
考えるならば、タナール砦を今まで以上に落とし、王国軍のモノとするのが一番わかりやすい

「…ある程度の練兵が済み次第、隊を編成し直して…攻城戦を仕掛けるか」

先陣は、自分が切ることになるだろう
大将が切り込んでゆく…馬鹿げた話でもあるが、先代将軍はその背でもって自軍を鼓舞し続けた
自身の小さな背中でそれが叶うかはわからないが……やるだけやってみるのが筋だろう

ご案内:「マグメール王国軍・第七師団駐屯地」にノワールさんが現れました。
サロメ >  
…そして、遠征は叶わずとも魔族の国への侵攻は、必須だ

無論前回のような大規模なものではなく、あくまで小さな規模の…潜入である

「(私自身、まだヤツが死んだとは信じきれていないし、な──)」

小さく溜息をついて、執務室の窓から外を見る
雲行きは、怪しかった
もうしばらくすれば一雨来るかもしれない──

ノワール > 「………はぁ、なんだってこんなことまでしなければならんのか…。」
『貴族に嫌われてますからねぇ、俺ら。ま、あんな連中に好かれても面白くもなんともないですけど。』

違いない、と女は笑った。
貴族から仰せつかった、第七師団駐屯地への視察任務。
こういう面倒なことをするときは大体こっちに声がかかるから慣れているもの。
貴族に好かれたらそんなこともしなくて済むのにな、などと軽口をたたきつつ、馬から降りた。
勿論、槍を構えた門兵にとめられたが。

「第十二師団のものだ、貴族の阿呆から視察が来ると聞いているはず。
ひとまずそちらの団長に話を通してもらいたい。」

フルフェイスの下では、その表情はわからないようで。
そんな報告は受けていないと、新兵でしかもこちらのことを知らないものは言うだろう。
軽く頭を抱えながら。

「(…少しは下のほうに話を通しておけよ……貴族の阿呆どもが。
いや、敬礼されてもむず痒いだけだが…。)
いいから、第七師団の団長に話を通せ。
こっちも面倒な仕事はとっとと終わらせたいんだ。」

サロメ >  
──執務室に騎士が一人、訪れる
どうやら第十二師団の人間が駐屯地に訪れている、という話らしい

「わかった、通せ。……いや、こちらから赴こう」

言いつつ、椅子から腰をあげる

さて…王国軍第十二師団といえば貴族の圧に屈することのない一団として有名だ
交易に携わり監視を行う…という業務の上ならば、それくらいの頑強さがなければならないのだろう

執務室を出てしばし歩みを進めれば、駐屯地の入り口へと辿り着く
外の雲行きは相変わらず怪しかったが、すぐに荒れる様子もなく、少し風が強くなってきただろうか…という程度

「──こういう場で顔を合わせるのは初めてだな。
 王国軍第七師団将軍のサロメ=ディレイン=アクアリアだ」

灰色の長髪と純白のマントを棚引かせ、客人へと騎士の礼を向ける
…随分と大柄な相手、体躯に恵まれない自分とは随分と背丈に差があった

ノワール > こちらのほうに『将軍』が赴くゆえ、しばし待たれよ。
そういう返事をもらってから、かくんと首をもたげた。
どうやらやはり、上からの話は通って胃に用だと確信した瞬間。
貴族の阿呆は、よほどこっちを邪険に扱いたいらしい。
だからどうでもいい仕事をさせて、こっちを王都にいさせたくないのだろう。
そういう時は大体、裏で取引があるときだ。

「……シャノーゼを置いてきておいて正解だったな…。」
『ほんとっすね。ま、なんかあったら伝書鳩なりなんなりとばすっしょ。』

本当に片割れにいるこの男は軽口しか叩かない。
それを是としているこちらがいるのだから、気にもしないのだが。

「ああ、貴殿の噂はかねがねよくよく聞いている。
貴族の阿呆の下卑た笑いがない場所ゆえ、堅苦しいのはなしにしよう。
第十二師団の団長、ガジュール・シュライゼン・フォン・ノワールだ。
長いので、ノワールで結構だぞ、サロメ。」

右手を差し出し、握手を求める。
小柄ではあるが、女にしてみたら並みの男でも小柄になってしまう。
気にしているそぶりもなく、むしろ相手の目線に合わせるように屈んで見せた。

サロメ >  
「良くない噂ばかりだろう?」

苦笑を浮かべつつ、差し出された右手をとり握手する

「声は初めて聞いたが…いや、こんな言い方は失礼かもしれないが、女性の方だったのだな。
 貴族の介入を突っぱねる石頭、どんな人物かと思っていたが」

屈まねば己の目線の高さも合わないその体躯に、前身を覆う甲冑
知らずに勘違いしている者も多そうだ

「では、ノワールと呼ばせてもらう。
 して、第七師団の駐屯地に如何用でおいでか?
 ご覧の通り第七師団は立て直しの最中でな…大きな作戦に動くことはまだ出来ないのだが」

ノワール > 「貴族の良くない噂はいい噂の裏返しだ。
それに、私は第七の部隊は嫌いじゃない。いつも王都を魔族から守ってくれているんだ。
私は、その功績こそたたえられるべきだと思う。」

握手した右手を離し、部下に手で合図する。
各々に散っていった部下たちは、羊皮紙を片手にいろいろと聞きだしを始めていた。

「ああ、男と思われていたならば結構、私も狙ってやっている。
そうやっておけば、貴族の阿呆が近寄っても来ないんでな。」

その気迫に押されているとは思っていない。
大女は笑っているように肩を震わせながら、一歩駐屯地に足を踏み入れようか。

「…視察、という名ばかりの厄介払いだ。
どうやら近々、また大きな取引があるようだからな、十二師団が邪魔なんだろう。」

いつものことだ、と右手を上にあげて払った。
視察といえば聞こえはいいが、ただの大きな取引を邪魔されたくないがための厄介払いだと。
それをわかっていつつ、いろいろと聞きたいこともあるということだ。

「ああ、あとかなり遅くなったが祝辞をな。
第七師団の副団長からの昇格、一応おめでとうと言っておこうか。」

サロメ >  
いい噂の裏返しだ、と切り替えされれば苦笑は深まるばかり
その後に続いた言葉は、第七師団として長年努めたサロメ自身にとっても嬉しい言葉だった

「成る程な。確かに、男と思われていたほうが都合の良いことも多そうだ。
 ──して、厄介払いか。懐柔できないと見れば仕事を与えて遠くに追いやる…わかりやすい話だな」

王国貴族としてみれば、いつもの手口である
それだけにこのノワールという人物が貴族から見て一筋縄でいかぬ相手だというのも伝わってこよう

「──祝辞か、ありがとう。
 まだその言葉を素直に受け取るには、私自身が足りていないという自覚もあるが…。
 なに、こうやって旗をあげ剣を掲げるんだ。どの道いずれ覚悟を決める必要はあった」

それでも早い交代だったとは思うがな、と付け加え、少しだけ寂しげに笑う

ノワール > 話を聞いている部下に目をやれば、記録もそこそこに談笑などに発展している。
どうやら彼らも、まじめに仕事をするつもりはないらしい。

「本当にな、そのうちシェンヤンにでも行ってこいなどといわれそうだ。
こっちは仕事以上に仕事をさせられていて、いつさぼってやろうかと毎日考えているよ。」

ひとしきり笑って、そして肩を落とす。
本当にめんどうなんだよな、なんてぼやきが聞こえてくる。

「…サロメ、貴殿は本当にオーギュストがなくなったと考えるか?
私はどうも…そうは思えない節がいくつもある。
……王都の内部にもかかわるゆえ、少し二人だけで話したい。」

ここから先、少しだけ込み入った話になるから、人祓いを頼みたい。
同じく貴族に嫌われている者同士だから、腹を割って話がしたい。
それゆえに、二人っきりになれる場所ができればほしいと頼んだ。

サロメ >  
「お互い、王国貴族の干渉には苦労するな。
 ──…ふむ、そうだな……それについては私もいくつか…
 ああ、ではこっちへ──」

奥へ、と促す
簡素な建物ではあるがしっかりした造り
騎士団の駐屯地らしい建物の中央に位置する執務室へと案内する

部屋の中は小ざっぱりとしていたが、机の上の報告書の枚数が多忙を物語っている
椅子を用意し、机を挟んでその対面へと促す

「入り口を守るのは私の腹心の一人だ。この部屋なら周りを気にする必要はない。
 ──オーギュスト前将軍については…戦死したという報告を受けた、それだけだ」

無論…その後に騒ぎになったタナール砦での仮面の騒ぎも知ってはいるが
あればかりは不確かな情報が多すぎる
それの確認も含め、準備が整い次第砦へ出兵するつもりであった

ノワール > 十二師団の執務室も似たようなもの。
書類の多さは、たぶんこちらのほうが上だろう。
まだ再編成もままならないというのに、この多忙さは確実に飼い殺しにするつもりなのだと女は悟った。
そして盛大に、フルフェイスの下でため息をついた。

「…本当に、お互い貴族の過干渉には苦労させられるな。
まあ、連中は……。」

いや、この先は言うまいと口をつぐんだ。
不確定要素を語らないサロメに合わせている、ということだろう。

「………サロメ、本心を語ってもらいたい。
はっきりといえば、私はオーギュストとそれと時を合わせるようにして現れた仮面の魔将。
関連性がないとは、私にはどうあっても考えつかん。」

そもそも、もっと根本的な問題も考えている。

「…なぜ、貴族の阿呆どもは魔族討伐という、人類最大の敵を屠る部隊をこうしてないがしろにする?
嫌っているからか?…自分たちの身が危うくなる可能性が高いのに?
嫌いというだけで、対魔最強の第七のをなぜ?」

サロメ >  
貴族への言及、その続きに口を噤むノワール
不確かな情報は口にするものではない、それには願望や色々な不純物が混ざるからだ
察したようであればその先を追求するような無粋はせず、本題へと
しかしその本題こそが、私的な願望、その多くを含む話なのだったが…

背もたれに背を預け、天井を仰ぐ
さて…どこまで本心を出したものか
女としての本心など弱さばかりだ
そんなものを表に出していては、将軍などは務まらない

「…多少、私の願望的な話も混ざるぞ」

そう前置きした上で、静かに言葉を続ける

「私が直接確認したわけではないにしろ、
 オーギュスト・ゴタンは戦死したという報告を奴の直衛の者から受けている。
 それ自体に疑う余地は残されていない。自らの将の生を諦め逃げ帰るような者達ではない。
 ……オーギュストが死んだ、という事実はおそらく揺るぎない」

僅かに言葉は震えるが、それをはっきりと肯定する言葉を向け…

「仮面の魔将と呼ばれる存在については報告の通りを受け止めている。
 あくまで可能性の話というならば、蘇生したと見ることもできるが…私にはヤツが何者かに操られるタマとは思えない。
 蘇生したならばしたで、王国に還らず魔族についている理由がわからない」

以上から不確定な情報であることも含めて、
関連性を否定はしきれないものの、そのまま鵜呑みにもできない…といった扱いであることを明かす

「──次の質問についてだが、それの答えはシンプルなものだよ」

一呼吸おき、窓の外へと視線を移す
とうとう天気は崩れ始めたか、黒い雲から雨が降り始めていた

「王国に干渉する魔族ひいては魔王がいる。
 干渉するものそれぞれだろうが、その中には魔族と人間の戦いをよく思わず、中を取り持とうとする者達もいる。
 ──後者、それ自体は咎められるものでもないが、現実的ではない。
 まぁ…多くは利潤の問題だろうな。あくまで私達には掌の上で動いてもらわねば困るのだろう」

ノワール > 「…………。」

女は、フルフェイスの仮面を外した。
長く伸ばした髪を軽く払い、しっかりと前を見据えられるように。
白日の下に、この赤い瞳が露になるのは珍しいこと。
ここに部下がいれば、きっといらぬ言葉をかけられるだろう。
人がいなくてよかったと、そう本気で思えた。

「私はその理由を、少しだけこう考えている。
オーギュストもまた、貴族に対してはあまりいい感情を持っていなかったはずだ。
とても口には言えぬが、貴族とかかわることが多い以上、そういう噂も流れてきているんでな。」

あの男はとても部下に慕われていた、女としても敬意は抱いていた。
故に思うことは、人間への復讐心があるからではないだろうかと。
ただの精神論で語っているがゆえに、あまり大きな声では言えない。
嫌われているからこそ、こういった場では本心で話せるというものだ。

「…還らないのではなく還れない、という可能性も私は見ている。
だが、噂通りの男ならばおそらく…生き恥を曝すような男ではないんだろうな。」

軽い笑みを漏らした。
あいにく面識がない以上、故人を思うことはただの冒涜であろう。
だからこそ本心をさらけ出していた。

「ああ、その点に関しては私も同意見だ。
第十三師団を知っているが、ああいうものは別としておそらくは、内部に貴族とつながっている魔族がいるだろうよ。
取引の中にも、魔族との物が時折含まれているのでな…。」

面倒な話しだとつづけた。

サロメ >  
「…!」

ノワールが仮面を外す
その素顔を曝け出す意味は…──腹を割って話す
互いに隠し事はなし、ということでもあるだろう
何にしても、珍しいものを見ることができたというものだ

「王国貴族への復讐である、と。
 成程、大なり小なり、王国軍に身を置く者なら貴族達の身勝手に据えかねているものはあるだろう。
 ──が、アレはやられたらやり返すの信念はあれど復讐という負の感情で動く男ではない。
 仮面の魔将の正体が仮にそうであるというなら……私には…──死に場所を戦場に求めているだけのような気もする。
 大きな声では言えないが、そもそも彼は王国の人間の為や平和の為などという青臭い理由で戦っているわけではなかったからな」

死した筈が死にきれずに魔に身を窶した上でなお、戦うことに意味を見出している
僅かながら、そういう予感がしていた

「生き恥など、いくらも晒したものだぞ?
 ん、まぁ第七師団の外に漏れていないことも多いが…まぁ、彼の噂、武勇に傷をつけるようなことは口にするものではないか」

そう言って小さく笑う
常にあれの背中をもっとも近くで見続けてきた故に、生き恥なんて生易しいものでは済まない姿すらも見ていた
勇猛、武勇──他の王国軍にそう思われていたのならそれは誇らしいことなのだ

「王国貴族は臆病だ。自らの命と財産を失う可能性は塗り潰しておかなければ気が済まない。
 例えそれが悪魔に魂を売るような行為であったとしても、だ。
 ──そういう人間がいるうちは、人間と魔族の友好など絵空事に過ぎない。
 実際前回の魔族の国への遠征にあたってもそれを掲げる連中からの多くの介入があった。
 魔族と恋に落ちた人間、魔王と子を成した男、色々だが……どれも私から見れば特例、特別な者達だが…。
 ──国を守ろうという組織で在ること、この国でそれを貫くのはなかなかに骨が折れるものだな」

言い終わると肩を竦める
人と魔族、平和であるならそれが一番である
しかしそうも言っていられない状況に王国があるということ──
で、あるならば第七師団は先頭に立って魔族を駆逐する矛であらねばならない
時には権力者の掌を離れてでも、である

ノワール > サロメの様子から察するに、本当に彼女はオーギュストを慕っていたのだろう。
軽い笑みを伴いながら、その言葉を聞いた。

「王国軍の連中で、そんな気位があるようなものはもう残ってはいないだろうさ。
貴族への賄賂や、いかにして取り繕うかというような考えしかないものだけが残る。
…だが、不思議なものだな…。そういわれると、しっくりと来てしまうよ。」

以下に、第七師団前将軍が慕われていたのかもだが。
戦いに身を置き、戦いに散っていく男の生きざまを、すぐ後ろで見ていた女。
そのまなざしを見ればわかる、彼女が将軍という以上に、その男を慕っていたのかが。
聞きしに勝る悪男、それが貴族たちの噂だった。
だが、この第七師団では男ほど、英雄と呼ばれるにふさわしい男はいないのだろう。

「その通りだ、サロメ。
オーギュストという名前の男がどれだけの功績をあげたのか、私のような小娘でもよくわかるつもりだ。」

少なくとも、女は貴族のように悪男という概念で、オーギュストを見ていない。
勇猛果敢に魔族に戦いを挑んだものとして、たたえられるべき存在だと思う。

「…自分の身を守ることだけ執着している阿呆どもなど知ったことか。
悪魔に魂を売ったものの末路は相場が決まっている、おとぎ話でもわかることさ。
…昔、とあるミレー族に言われたことがあるよ…、人間と魔族の違いは何なのか、とな。」

結局、魔族だろうが人間なんだろうが変わらないのかもしれない。
だから裁くのは紙ではなく、人類なのだろう…。
ぎしりと椅子をきしませ、背もたれに体重を預けた。

「…サロメ、私は今から愚痴を言うぞ。
誰か、この王国から貴族制度を廃止してくれるような王は表れてはくれないものかな…。
ではないと、私やサロメの胃に穴が開いてしまいそうだ。」

サロメ >  
「…そう嘆いたものでもないさ。
 前回の遠征の折、普段は違う任務で顔を合わせることも稀な他の師団長達の多くが手を貸してくれた。
 皆思い思いはあれど、この国と民を守ろうという意思だけは前を向いている」

無論、仕事だからだと切り捨てているものもいるだろうが、とこちらも小さく笑みを返した

「貴殿らが聞いた噂は王国貴族達が流したものも混ざっている、魔族と勇猛果敢に戦いそして討ち死にした。
 死後に英雄として利用され持ち上げられる…それを嫌って地獄から戻ってきた、なんて質の悪い冗談まで生まれる始末だ」

清濁合わさった正しい人間としての抗戦の姿こそが、自身の見てきた背中
自分もそう在りたい在らねばと生き急いでみたものの、やはり向き不向きはあるらしい
ならば半壊した師団はある意味ではよい転機──此処からは新たな将軍としての在り方で、軍を作ってゆく──
そして、あの仮面の魔将とも……対峙することになるのだろう

「人と魔族の違い、か。
 物を食べ、娯楽に興じ、働き、体を休め、明日を迎える。
 感情を持ち、楽しみ、苦しみ、嘆き…そこまでは、同じだろうな。
 ──オーギュストはよく言っていたよ。
 力が違う、寿命も違う。やりあえば確実に人間が不利。
 魔族が本気でこちらを潰しにかかれば一瞬だ、明日それが来るかもしれない。
 であれば魔族を恐れるのは自然のこと…人間が生きるには、恐怖を取り除く必要がある、と」

ノワール > 「……そう、だといいがな…。」

同じ騎士団だというのに、どうしても信用できないものもいる。
勿論それに悪いことを言うつもりはない、騎士団に所属しているとはいえ人間だ。
いろんな思いもあるだろうからと、その先は口をつぐんだ。

「あっはっは、むしろそっちのほうが可能性があるのではないだろうか?
貴殿の話しぶりからして、貴族に利用されることを極端に嫌う男だったのだろう?」

こうして話してみても、信ぴょう性はあまりない。
結局は対峙して、戦うことになるのだろう、そしてその方法がより確実なのだろう。
いずれ迎える、サロメと魔将との戦いの火に、きっとすべてが明るみに出る。
女は、そんな予感を今まさに感じていた。

「魔族も多種多様だ、人間を餌にするものも確実にいるだろう。
だからこそ、貴殿屋の第七師団というのは人類の鉾であってしかるべきだと、私も確信している。
貴族は懐柔できない騎士団から、魔族に当て馬のように向かさせるだろう。
…その時は遠慮なく私に声をかけてくれ、蒼剣セフィルブレードに誓って、貴殿らの盾になることを宣言しよう。」

サロメ >  
「希望を持っていたほうが、疑心暗鬼よりは前向きでいれるだろう?」

無論、信じるものは馬鹿を見る…などということも、この王国ではまかり通ることばかりだったが

「質の悪い冗談だと言っただろう?
 そんなことで戻ってきたのであれば説教の一つでもくれてやらねばならなくなる」

副将軍であった頃と同じことをさせられるのは御免こうむる、と笑って

「そうだな…現状は立て直しが最優先ではあるが、再編成が整えばタナールへ打って出る。
 砦の保全を確保できれば少数で魔族の国へと侵入するつもりだ。ヤツの足取りを辿るためにも…。
 その時はまぁ、貴族やれ彼の連中は反対するだろうが、押し切ることになるな…貴殿の言うとおりになるだろう。
 …ああ、その時は王国軍一の頑強さを誇るであろう貴殿らの力に信を置かせてもらおう」