2018/07/17 のログ
バルベリト > 「忙しいのが良いっていえる様な器じゃないからな。……騒乱は放置して置く訳にもいかないからな。……泣きを見るのは住人だけじゃないだろ?
生きるために賊になり、征伐される側も被害者でもあるからな。」


相手からすれば余計だったかもしれない。ごたごたがあるからこそ、彼女達がすんなりと村落に潜入出来る隙があったのだから。
ただ、それでも。領民の事を慮る彼女と同じ様に、此方は此方で民への心配も有った為の動き。
予想以上に早い収束を見せたのは、実は他師団の働きも大きいのだがそこは伏せる事にした。

何故、彼女の目的を笑うことが出来るだろう。その目的が高い位置の目標で、自分からすれば盲点とも言える両者が食べていける作物の研究。
――何故、笑えるだろう。上目遣いの彼女の目に浮かんだのは。さながら子供の満面の笑みを浮かべた中年の顔だっただろう。
腕の中、彼女の華奢とも言えるような体躯を抱き寄せながら囁くような声音かもしれない。イタズラを思いついたような声だ。

「そうだなぁ。タダで、とは言えないかな?少しの間こうして――アルテリエが今此処にいる存在感が、夢では無い事を感じ取らせて欲しい物だな。
共犯者、か。良い響きだな――戦以外に。争い、血肉を流す以外の道。
もしかしたら神に用意されたかもしれない道に抗う意味で共犯者かもしれないが――。アルテリエとの共犯なら楽しくなりそうだ。」

腕の中の感触。体温という意味ではひんやりとしたものだが、存在感という意味では大きなものだ。
其処にある感情の根底はいろいろなものが混ざり合いすぎている。
勿論、彼女に抱く劣情も否定は出来ない。
それ以上にだが。自分が一時とはいえ揺らいだ事が恥かしくなるほどに彼女は真っ直ぐに。曲がらず、ブレず。
その道を歩み続けていたことへの眩しさがあった。今の自分の顔を見られたくないのはあるだろう。どうしようもなく頬は朱にも染まり、目の端は充血しているのだから。

「――領地に、遊びに来いよ。アルテリエ。お前に俺と仲間の土地を見て欲しい。」

アルテリエ > っはは。仕事人間には見えないな…確かに。
――そう、だな。長引くと、ロクな事がないというのは。正直身に滲みているよ。
終わらない争いなど、誰にとっても損しかない。
……今回の、光。あれこそ、神の罰、とやらなのか。それとも――神気取りの仕業なのか、だが。
結局損をするのは、此処の様な、辺境の民なのだから。

(神に対する共犯。なるほど、在り得るのではないか…とすら思えてしまう。
其程に。人と魔の争いは、何時始まったか、何故始まったか、など知れず。
そして何時終わるとも…如何にすれば終わるとも。恐らくは誰にも解らないのだから。

そんな中で、己は、謂わば落とし処を。少しでもマシにする方法を探している。
如何なる生き物も、衣食足りて礼節を知る。生きる為積みに身を窶さざるを得ない…彼の言葉は、人以外にも当て嵌まる。
せめて餓えを減らす所から。それ故に苦しまずに済む所から。
もともと、農業くらいしか取り柄のない領だから。出来る所から始めれば、自然とそういう選択肢となった。

――彼は。何処迄先を考えているのか。信じているのか。
恐らく、人にも魔の身にも余る、それこそ、神などと言う言葉が出て来る程の遠い先。
…きっと、それは酷く大きい願いに違いない、と考えてしまったのは。
抱かれた腕が、己よりもずっと太く長く、遠くへと伸ばし得る物で。
包まれた胸板が、己よりも遙かに広く大きく、多くを受け止め得る存在だったから、か。)

…あぁ。取引も、良いな。何時になるかは分からないが…
それを目当てで、行き来出来るようにもなれば良い。
経済的にでも、何でも…戦で、ぶつかるのとは違う形で、遣り取りが有れば…
――――って。…は…あは。そっちか。今の、事か…
その位で良ければ。今日一晩有るんだ、幾らでも――  ……?」

(また。台詞を、途中で止められてしまった。
つくづく、この男は…彼は。予想を超えてくる。その癖、芯を突いてくる。
将らしからぬ笑顔で、らしからぬ優しさで。
もう一度、その胸に額を。いや、今度は頬も。頭全体を預けるように。
見上げられない…見返す事が出来無くなってしまうのは。此方も、同じだ。)

――――……っは。また唐突だ。……でも、良いな、それは――――

バルベリト > 争わずに済む道は難易度としては高い。――ただ、神の教典に必ずしも魔族は滅ぼすべし等という一文は無い。
それに、先日の聖女とされる教会の少女もまた、魔族に対しての嫌悪感は薄い物がある。
立場の差、種族の差と超えてでも、まだ判り合える、手を取り合える余地がある、残されている。
きっと一朝一夕。今すぐに出来る様な物ではないだろう。ただ、後世へ和平への道筋を残しておくのもまた一つの重要な事ではあるから。

考えているのは。信じている、願う未来は遠く彼方にある。
ただ、足元を固め道を一つずつ作っていく事を忘れてはならない。――信用、信頼を一つ積み重ねられた幸運な出会いもあるのだ。
もし、神がいるなら。その出会いを与えたことに感謝もしよう。――相手が変わらず居てくれた事にも感謝を向けよう。

「葡萄酒、紅茶。年単位で保存の利く穀物。――経済的には競争力はあっていいかもな。お互いが、お互いに負けないように努力していくんだから。
人も、魔も。心ある存在だから尊重し合えるんだ。――戦っていくだけが俺達の未来だなんて、そんな悲しい事はきっと無い。させねぇ。
――書面だけで見るよりも。実際に土地を見てどう活用しているのかを見て行く方が参考になるだろ?
……俺自身が、何よりアルテリエに来て欲しいと思っている」

ただ、抱き寄せてしまうと否が応でも彼女の体に。少しの男としての反応を示す部分が出てしまうのは仕方が無い話ではある。

「一人で来ているのか?もし複数なら――少し窮屈だが、荷馬車に入って貰う事になるが。一人なら、俺の翼竜で領地まで一緒に飛べるが――」

アルテリエ > (己は、彼程理想が高い訳ではない。
寧ろ、足元だけで精一杯で。だから、そんな地盤に邁進しているだけだ。
彼以外の相手には、他の充分に富んだ領土には。こんな取引成立しない。
最初の一歩と呼べるかどうか…一歩、と呼べる程大きく出来るのか。
それすら己には見えないが。
只、出来る事位はしておかねば。やるべき事だけは逃げずに居られば。
己が、己でなくなってしまうのだ。
その過程か、行き着く先か。彼の願いと繋がる所、重なる所が存在し。
何れは、一助なり一部なり…叶える事に繋がるのなら。
きっと、悪い話ではないだろう。

ただ、神が居るなら。…否、己が思い浮かべたように。神を気取り調停者めかす何者かが居るのなら。
彼の存在に、如何なる目で見られる事になるのか。其処は警戒してしまう。)

…今は。向こうの国では。保存を利かせるより、如何に早く市場に載せるか、に苦心していたんだ。
時間を掛ける事が、より良い出来に繋がる技法は……魔の国は、奇行も何も一定しない。
出来る場所が、かなり限られる物だから。
――っふふ、まぁその辺は。貴君よりも詳しい者が居るのかもしれないけれど。
どうせだ、道すがらにでも聞いてくれよ。

(取り敢えず。この侭では居られない。何もせず、通り過ぎるのを待つだけでなく。
出来る事を探すと。やるべき事を進めると。決めた。
必ずしも地方の、領の、在り方に限った話ではない。ずっと大きく二つの種族の未来も。
…逆に小さく、今この瞬間の、己個人に対しても。
そ、と押し当てていた頬を離せば。…僅かに、一呼吸二呼吸だけ、意識を整える間を置いて。
腕の中、近すぎる場所から。今度こそしっかり彼を見上げ。)

私の部下は優秀だよ。きちんと、悪い事はさせずに、戻らせるさ。
だから――――私は。貴君と。共に行ければ、それで良い。
…だけど。まぁ、今日の所は。……村の皆の好意を、無駄にはしてやるなよ。
明日にでも…出発、出来たら良いな?

バルベリト > 理想が高い人間は足元が疎かになる。
だから揺らぎやすく、その足元を見直す機械を与えてくれる相手と言うのは得がたき存在なのだ。
理想だけしか見ない己からすれば、着実に地盤を固め。固めた地盤を道として歩める相手の方が眩しいのだ。
お互いの目的地に交わる点があるなら。
それは己にとっても。相手にとっても喜ばしい物である事を願うばかり。

「気候に左右されない方法もあるさ。あぁ。そちらの土地にも興味がある。どんな風土なのか、知っているのと知らないのでは大きな違いがあるからな。そちらの作物にも興味はあるし――情報と、技法交換は道すがらと。
――ん、あまり見上げられると、照れる。」

彼女の紅の瞳が見上げてくる。星明りと月光が紅に僅かに宝石にも似た輝きを宿している。
見られるのには慣れない。照れくさい。――が、視線をそらす事を堪えて、真っ直ぐに彼女の瞳を見つめ返す。
目の端も頬も。赤い、充血した物は戻るには時間が足りなかったけれど。
浮かべた笑顔に、穏やかさが戻る位には彼女の存在感が自分に心の安定を齎してくれていた。

「悪い事するような部下はいねぇさ。――アルテリエが見出した部下なんだろ?そこは信頼している。
そうだな――今日は村の皆と。部下達と。あの日のダンスとは違うが今日のダンスはお互いの和を、絆を繋ぐ物として。…何より。
今日、アルテリエと再会の出来た喜びを、素直に――」

そうしていると、遠慮がちに遠くから呼び声が掛かる。宿泊所の準備が出来た事と――持ち込まれた酒と食料で、村の皆と宴会をしましょうという声が。
いくか?と。手を差し出すのは。手を繋いでいこうというのか、エスコートしようとでも言うのか。
また『あの時』の様に。お互いの手が繋げる、握れる事を期待するように――。

アルテリエ > (己は知る由もない。彼に、唯見上げるだけでなく、もう一度足元を見下ろす事を…手の届く周りを見回す事を示唆した、人の聖女の事は。
只、己がしてきたのは、彼が当初忘れていた事で。
彼が目指しているのは、己が遠すぎて届かぬ物だ。
二つ合わせれば丁度良い、等と。あまりにも都合の良い台詞を吐くつもりはないが。
結果としてそういう見方が出来る様になるのであれば。
それは、決して悪い事ではないだろう。
己にも。彼にも。…そして、争いが続く事を望まない、より多くの者にも、だ。)

少なくとも、この村で教えてくれた物は。きっと、強い――魔の地にも負けないさ。
……ん…そうだな。それは長くなりそうだ。どれだけ遠くまで飛ぶとしても、退屈させずには済みそうだな。

………照れる、ね。…それだけで済む程…子供でもあるまいに。

(あまりにも近い所から、見つめ合っていた。決して長くは無い筈なのに。とてもそうとは思えない時間。
…やがて。そっと唇を綻ばせ、苦笑めかせ。身を離した。
擦り付け、少し乱れた前髪を指で梳き…その間だけ、掌が夫婦を隠す。
明らかに朱を帯びてしまった、その目元に。頬に。気付かれなかったなら良いのだが。
…何せ、本当は気付いていたのだ。血の気配。巡り、集い、滾り。
その収束が牡の主張を意味していたのだという事に。)

嗚呼。だから、貴君の――っと。バルベリト…そう、呼ばなくてはな。
其方の部下の事も、心配はしていないさ。
それにどうせ、今から顔を合わせる事になるんだし。
……あぁ、そうだ。一つだけ、頼みが有った。
血の混じらない、人の、酒の飲み方を。酌み交わし、踊り歌い、愉しむ術を。
今後の為にも、御教授願いたいものだ――

(村人からの声が掛かる。遠く響き始めた賑やかな声は、村の者達と、彼の部下達とが。
酒宴の準備を整液って…一足先に、愉しみ始めているのかもしれない。
差し出される手。それに乗せ、繋げる手。…自身思っていたより、ずっと自然な仕草だった。
彼に引かれて歩み出す。人の中、その輪の中へ。
……あの日果たした約束の、続き。それが待っている場所へ。)

バルベリト > 「おじさんは何時の時代でも子供なんですー。……思春期、て意味合いでもあるけどな。
ん、そういう事なら任された。――そういうのは――得意そうな顔をしているだろ?人生を楽しむ事なら、負けない自信はあるからな。」

そうして。繋いだ掌を先日とは異なる力強さで握り返す。優しく包み込む様な反面。
この繋がれ、築かれた絆を離してなるものかと言う様な力強さにて。
火を囲い、踊りや歌を楽しむ傍ら。酒や食べ物についても少しずつだが意見交換も交わすだろう。
之はどうだろう、あれはどうだろう、というように。
少しずつでも、お互いの味覚を。文化を手探りとは言え明かしあうかのように――。

ご案内:「魔族領に近い村」からバルベリトさんが去りました。
ご案内:「魔族領に近い村」からアルテリエさんが去りました。