2018/07/16 のログ
ご案内:「魔族領に近い村」にバルベリトさんが現れました。
ご案内:「魔族領に近い村」にアルテリエさんが現れました。
■バルベリト > 先日の混乱から立ち直った村の一つに立ち寄ったのは偶然。
たまたま仕事から抜け出し。書類から逃げ出す為に思いついた巡回警備の一環が理由だった。
まだ耕作地は完全に戻る事がなくとも、住民が安定して生活して税を納め、幾分かは商人等に売り渡せるくらいは余裕が戻っていた。
「んじゃ最近安定してる?山賊やら野盗やら、モンスターとかの被害も無さそう?」
村長はどうやらこの村に訪れている客人と面会をしているとの事で、村長代理の青年が対応してくれていた。
自分の容貌が容貌だったので、最初山賊と間違えられかけたのは内緒だが。
■アルテリエ > (…そろそろ。人の王国の外れ、この辺りも落ち着き始めているようだ。
混乱しているからこそ、行き交う人の中に紛れ、こんな所にもやって来る事が出来る。)
――潮時。かな、ぁ…
(村の奥にある、とある家屋。目の前で机を挟んだ初老の男が首を傾げた。
はたはた、と軽く片手を振ってみせ。)
いや。何でもないよ?唯――長居するのも悪いかなと。
ほら、何だか。きちんと王都の方から…警備軍?そういうの、来たって言うから。
邪魔しちゃ悪いかなぁと。
(…勿論、実際の所は。
最近地方を巡回しているのが、れっきとした王国軍である事を聞き囓っていて。
万が一出会し、その上人外である事が露呈すれば。間違いなく面倒になるからだ。
この村でも先日同様。別の領から視察に来た、酔狂な貴族の跡取り、だとでも。
何も知らない村人には思わせていたのだが。)
だから…ありがとう。充分参考になったよ、…村長。
■バルベリト > 「材木の切り出しとか住居の建て替えについては、陣力が必要なら言ってくれて構わねぇぞ。
遠慮される方が辛いっつーか、警備してる連中も賑やかさなり人気を取り戻していく村を見るのが何よりの励みって奴もいるから。」
村自体は其処まで広くないが、日当たりがさほど良くない痩せた土でも育つ芋や豆、茸といった産物が基本。
蚕の成育から糸を紡ぎ、意図を原材料として様々な物との物々交換に使われたりしていた。
一応自分の領地から麦や養蜂も伝えたのだが、麦は土に合わず養蜂をするには花を咲かせる植物が不足していた為に成功しなかったらしい。
「んー、この土地は俺の領地じゃねーから税の軽減とか手助けは出来ねーけど。なんか食い物とか不足したら教えてくれ。
出来る事はすくねーけど、食料とか酒くらいは少し分けられる。」
青年に向けた言葉。次の村に向う予定は無いが、陽も傾きかけている時間帯。
村の空き家に一泊していくか聞かれたが、自分達の判断だけでは難しい。客人との面会中との事だったが、無礼を承知で一度村長に面談して此処で一泊していくか決める事にした。
自分だけ馬から降りて青年と共に村長の家へ。他の護衛兵数名は、少し力仕事を手伝うことにしたらしい。
『村長、来客の所すみません。第8師団の方から挨拶と宿泊場所の相談が有るとの事なのですが。』
青年がそう前置きをした、村長は齢60を超えた様な風貌だが、彼女との会話はどこか娘と話をしている気になっていたようだ。
笑みを浮かべながら頷き、もう少し彼女を此処に引きとめようとしていた矢先の青年の声。
入ってもらいなさいという言葉とともに、扉が開かれるのは数秒の後。
「どうも、第8師団長バルベリトです。復興最中に申し訳無いのですが、村の外れにでもテントを張らせてもらえない……………かと……?」
■アルテリエ > 取り敢えず。――あぁ、矢張り苦労は有るんだな。確か、この辺りの土地は……これだけ国境に近いと――
と、いや。地質に問題が有るんだろう?それでも、此処迄村を拡げたんだ。大した物さ。
(人間達は大凡が気付くまい。此処は――この村は。正直、人外の領域に近すぎるのだ。
王都からの加護は弱くなり、反して、魔の国から…微弱なりにでも、瘴気が影響を及ぼす。
必然、野性の獣は剣呑な性を持ち。水と大地は人にとって決して優しいとは言えない物となる。
そんな土地でも、出来ないなら出来ないなりに。栽培可能な品種を見出し、生み出し。一角の農村迄築き上げた。
つくづく人という種の生き様は。短い故に濃いのか、儚い故に目映いのか。
この点に関しては素直に、人を称賛しよう。もちろん、人が大地に種を蒔く、その諸々を学んでいる、という事が本題だが。)
だから勉強になったよ。勿論お代は――ぁあ、余所様の領だから、主への訴えは無理にしても。
今からでも届けられる金子は、大凡――
(奇しくも、似たり寄ったりの話をしている者達が居ると。そんな事は知らぬ存ぜぬ。
ましてや当人達も亦、この家に近付きつつあるという事など。
…これが、この村で最後の一杯だ。そう決め込んだティーカップに手を伸ばした、丁度そのタイミング。)
―――― っ、 …は …?
(村長が、声の有った方を向いていて良かった。
思わず眉を寄せ、吊り上げ、噛み付かんばかりの面持ちになってしまったのだから…
その名前には聞き覚えが有った。有り過ぎた。驚きに驚いた故に崩れた顔を、どうにか取り繕ったのと。
扉が開いたのが、ほぼ同時。)
―――おやおや。客というのは、君の事か。
暫く会わない内に、出世も果たしたようだね…この前の勲功かな。…おめでとう。
(二人の客を見比べた村長が。一瞬呆気に取られた後。なるほど知り合いか、と勝手に納得。
元々此方は彼等をだまくらかし、遊興貴族を気取っているのだから。
どちらも王都からやって来た、向こうの方で知っていたのだろう…と。そう勘違いしてくれるなら好都合。
彼が、何かを言い出す前に。村の者達に見えぬ角度で、片目を瞑ってみせようか。
……無論。此方も、平然としているのは上っ面だけだ。みしりと不穏な音を立てる、握り込まれたカップの柄。)
■バルベリト > 「お、おう……奇遇だな。出世って言える様なモノかはわかんねーけど、書類に殺されそう。
あぁ、そうか、今そっちはこの近辺で調査と研究してた……んだったか?」
名前を出して良いか少し悩んだようだ。相手の、まだ少女とも思える顔立ちの相手がなんとも言えない表情になっていた。
下手に名前を出してしまっては、そこから彼女の活動の妨げになるかもしれない。
少なくともこの村は活力が戻りつつあり、魔族の侵攻や侵略とは無縁に思える。
何よりも――彼女が。必要もなしに村の人間に悪行をするとも思えない。それくらいに砦での短かったとは、顔を合わせ盟約を守った相手への信頼は高いものだった。
「あ、あぁすまねぇな村長。いや旧来の仲でな。俺は騎士の道を選んだが、この娘は武力じゃない方で人の役に立ちたいってな。研究と調査の方に道を進めたんだ。」
取り敢えず、こういっておけば大丈夫だろうか。研究と調査目的であれば彼女がどういう行動をしていたかは不明だが、まぁそこまでの齟齬は生み出さないはず。少し疑問があるとしても、個人的興味で切り抜けられる範疇だろうと、彼女の之までの行動を推測して言動に出していた。
一応自分も騎士であり貴族である、相手が身分を偽ろうと、貴族でも研究をする人間は多いのだから大丈夫、だろう。
「久し振りだな、元気そうで良かった。――良けりゃ俺らと一泊しねぇか?結構時間も空いたし――少しだが酒もある。飲み明かさないか?」
相手の方目を瞑ったのを何かを伏せろと言う意味で受け取った。だから――不自然にならない範疇で誘いを向ける。
相手ほど美味くはできないが、不恰好な片目を瞑る動作を向けながら――此方も事を荒立てるつもりは無い事を精一杯伝えようとしていた。
持ち込んでいる食料と酒の半分は元々村への支援物資だ。
残りは自分達の分の食べたり呑んだりする為の物であり、道中で倒れている人間を救助した時等に備えて少し多目に持ち込んである。
彼女が増えても、問題は無いだろう。
■アルテリエ > 出世は出世だろう?権利も増えるし、義務も増える。そういう事さ。
此方は――まぁ、その通り。うん、我々の領でも…此処の様な物なら。作れるかもしれないから。
(効率の良い嘘とは、真実と混ぜ合わされた物だ。
どちらか一方だけでは信じられない、或いは受け容れられない物も。
適度に誤魔化されれば、何となく納得してしまう場合が多々。
…この場合の、真実に当たるのは、最後の言葉。
微弱な物とはいえ、瘴気に負けずに育つ作物と。それを生業とする村とを知りに来た。
謂わば貴重な情報源なのだから。それを態々潰すつもりなど毛頭ない。
…だからか。此方が連れている部下の気配は感じられない筈だ――少なくとも、村の中にはだが。)
そうそう。……まぁ、年の離れた従兄妹?の、ような?
昔は彼にも、色々教わったものだけれど
(調子に調子を合わせ、でっちあげ万歳。
幸い、中央の事、特に各貴族の細かい家名だの家系だのを知る筈もない村人達は。
素直に信じてくれたらしい。
「道理で、既知が来た途端笑うようになった」、等と村長に言われると。思わず首を竦めてしまうのだが。)
…うぅん。そうか、どうしようかな――
(予期せぬ申し出だった。少し考え込んでしまいかけた…のだが。
それならば是非ご一緒に、質素ですが宿も準備いたします、等と。
村長達が、それはもう朗らかに言い出すものだから。
断るタイミングも、その口実も、結局見出せず終いとなった。
あれよあれよと、手元を離れて話が進む。
引き攣る口元を隠すように、カップの中身を一息に干せば。)
は、は。それなら、是非旧交を温めさせて貰おう、かな。
………そうだ、折角だから…
(慌ただしく動きだす村人達を尻目に立ち上がる。部屋の外へと向かいつつ。手招き。
表情は朗らかだがそのジェスチャーが示す所は。
所謂、「ちょっとツラを貸せ」、という奴に他ならない。)
■バルベリト > 「―――増えた権利。倍増する義務。あれおかしいな、義務と権利が等価交換になってねぇ…」
軽口を叩いておけばまさかまさか、魔族と騎士の間柄など疑う人物もいないだろう。
あの時、戦場で2度顔を合わせたときも師団の兵士は後方に控えていた筈だ。少なくとも、今こちらの僅かな手勢に彼女の顔を知る者はおらず。
また、戦闘力自体も高くなく、魔力も高くない人種が大半を占めている以上、村の中に彼女の部下がいたとしても気がつくことはないだろう、自分以外には。
「すまねぇな、村長。少しだが食料と酒を持って来たから、少しでも足しにしてくれ。
必要な物資が有れば後で書き起こしてくれたら、次には持ち込むようにするからよ。
ハイ、ナンデショウ」
村長に向けた言葉の後。ツラ貸せ的な呼び出しに棒読みになりながら後についていく。
相手への信頼なのかどうなのかはわからないが、警戒心を微塵も見せないのは結界の内側だから、なのだろうか。
兎も角部屋の外に出る。陽はすっかりと沈み、星空が木々の間から垣間見える。虫の鳴き声に遠くからは獣の吼える声。
伝令兵には村の青年が伝達に向ってくれているらしい。少なくとも、今自分達の周囲には人間はいなかった。
■アルテリエ > あー……それは、仕方ないな。何処の世間も、比例関数的な増え方なのは、仕方がないんだ。
(しみじみ、頷いてみせた。端で聞いている者も。よもや、二人の語る世間が、同一の物ではないのだ…などと気付きはすまい。
そして村人達だけでなく。よしんば彼の連れて来た中に、多少なり魔の力を気取れる者が居たとしても。
今彼等の団長と向き合っているモノについては、気付く事もないだろう…
それだけ、己の力は。抑えられているのだから。)
此方の返礼は、然るべき使いを寄越すから。
先程話していた苗は、その者に持ち帰らせて欲しい。
私は、先に種だけ頂いていこうと思うから――
(序でに此方も用向きも村長へ。
二人一緒に語るのだから、ますます、彼等は疑う余地を無くしていく事だろう。
と、いう訳で。流石に貴族達を、キャンプで済ませる事は出来無いらしい村人達から離れ。部屋の外迄彼が着いて来たところで。)
――――……っ、~~~…っ!
あぁ、も…う、驚かせるな……何が有って、何をやっているんだ、貴君は――
(にこやかな、穏やかな。物知りだが、世間知らずな。そんな人畜無害なキャリア様を演じるのも、流石に限界。
本当なら相手の襟首でもひっ掴んで、問い詰めてやりたかったが。
流石に、例え掴んだとしても、引き寄せるには身長差が有りすぎる。
それに…気疲れ、した。
丁度良い高さの胸板に、八つ当たりめいた拳を打ち付ける。継いで額を押し付ける。
…無防備と言われればその通りだが。
此方も此方で、この相手にはそれなりの、信用を置いているからこそ。)
■バルベリト > 「いや、俺も驚いた。んー、話せば長くなるんだが。
ちょっとここから少し離れた場所でひと悶着あってな。それで治安が一時的に悪化してたんだよ。
んで、砦の防衛よりは機動力ある俺らが巡回警備とかしてたんだが。
俺がここに立ち寄ったのはほんと偶然だぞ?
―――ん、まぁあれだ。」
なんとなくだが。胸板に拳を打ち付けられても、そこに痛みはなかった。
相手の顔が見られた事が大きい。そして声も。何より、ここの村を蹂躙や支配、征服目的で来ていたわけではない事が確信出来たのが嬉しかった。
――相手は、相手のまま。今も変わらず、人も魔も分け隔ての無い世界の可能性を信じさせてくれていた。
……だからまぁ、なんと言うか。胸板に押し付けられた額。間近にある頭部に腕を回すと、少し強く寄せる様に。そのまま、頭を撫でる様に手のひらが、頭頂部から後頭部に。
再会の喜びからか優しく摩る。
「―――元気そうで、良かった。変わらない姿と、姿勢で。あの時のまま、眩しい侭で居てくれて良かった。」
一時期は揺れたのだ。魔族と人の共存社会が難しいだろうと。
ただ、そこから。とある教会の少女に会った。ちゃんと、足元を見つめ直す言葉をもらった。
だから――今日こうして、彼女が変わらず。今も尚人とも共存しあえるような行動、言動である事が何よりも嬉しく。
零した言葉はほっとした安堵の様な色合いが濃く混ざっている。
「作物を探しているのか。自分達の土地でも育つ物を?」
■アルテリエ > あぁ――あの、件か。
確かにあれは、人の世に向けて、誰かが撃ち放った……らしい、ものな?
いや。いや全く。これが偶然でないというのなら。どれだけの――悪運、だ。
(例え、悪であれ。運だと言い切れる程度にも。彼への信は残っていた。
あの時。約束を守ろうとしたのは、決して此方だけではなかった。
人の側、彼も亦同じだったからこそ、それは成立してくれたのだ。
余計な被害を避け、人死にを減らし、無事に戦から生きて帰る――お互いの利害が一致したからとはいえ。
そして、再開出来ただけでなく。端的ニだが、団長就任という、今現在の様子も知る事が出来た。
…どうやら。魔族に対して日和った等と、糾弾される事は無かったらしい。
そこの所は安心した、と言いたかったのだが。その前に。)
っ、と――余計に勘違いされる、ような事……
……まぁ何だ。…心配、なかったようだな。其処に関しては――
(同じく、良かった、と。小さく小さく呟こう。最低限彼にさえ聞こえれば。それで充分なのだから。
とはいえ。頭を撫でられるなど、まるで子供への扱いではないか。
それに関しては、不当だと言わんばかりに唇を尖らせ。
くすぐったげに震えた後、身を離して真っ直ぐに向き直そうと。)
まぁな。人的損害はともあれ……戦となると、どうしても。
糧食となる物は吸い上げられてしまったから……
冬に備えるという意味でも。作れる物を、増やしていきたい。
それに、そうだな、何というか…
(改めて向き直った癖。
顔を見上げ、瞳を重ねる、というのは。少々躊躇ったらしい。
今から零す己の言葉が、どれだけ気恥ずかしい物か。
…無論、彼なら聞いてくれると解っているが、寧ろそれ故にこそばゆいのではないか。
その辺り、しっかり自覚出来ていた為に。)
…前の、続きさ。
折角なら――人も、魔も。どちらにも喰える物が、有った方が良いだろう?
■バルベリト > 「色々有った、変わったことも有るが。……名前を呼んでも大丈夫か?」
ふと。今更ながらに相手の名前を呼んでも大丈夫なのか確認を取る。
彼女は平和的な目的で此方側の領土に足を踏み入れているのだろう。
それだけに、もし名前を呼ばれるのが躊躇われるなら、此方で名乗っている偽名などが有ればそれで呼ぼうと。
頭をもう少し撫でる時間は欲しかったが、身を離されるなら仕方が無い。
所在なさげに手は戻されて行く。
向き直る相手、だが視線は絡まらなかった。――ただ。続けられた最後の言葉。
人も、魔も。変わらず食べられる物を模索するといった言葉。
――どれだけそれが、重い意味合いを持つか。相手の言葉は自分達だけの視点に収まらず、対面側の視点にも立った物だ。
「……もしもう少しこっち側に滞在する予定があるなら、作物から加工物を作る技術や知識を渡すか?
俺達の作った作物や加工物は俺達の口には合うが、そっちの口には合わないかもしれない。
だが、そちらがそちらの口に合う物を作って交換し合って――両方が美味しいと思える、楽しめる食品、酒。菓子。そういうのは有った方が良いだろう?」
だから。出した提案は相互協力とも取れる物だ。
お互いの口に合う物が出来れば、お互いの話の場が出来る為の歓待の準備が出来るならば。――遠い目的地にも、会合や会談をもう少し気軽に行なえる段階が、道筋が見える事につながるかもしれないから。
それと。――これはもう完全に私情だが、腕を伸ばすと彼女の身体を自分の側に抱き寄せようとした。
――相手は。何故こうも輝かしい言葉を言えるのだろうかと。
■アルテリエ > 忙しくなった。らしい、ものな?
――寧ろ呼ばない方が。あーその、何だ。…怪しいだろう。
(咄嗟に色々と重ねてしまった嘘。至極身近な関係だと、もう村人達には信じられているだろうから。
なので、呼んでも大丈夫だ、そう頷いて。)
正直。今貴君の語った件で、この辺りもごたついているというのは、分かっていたんだ。
いや、寧ろそれだからこそ、潜り込めていた訳で。
王都の兵が騒ぎを収めに来た段階で、もう、戻るつもりだったよ。
…それなのに。どうした物か、なぁ…
(正直、これでやって来たのが彼ではなく。彼の師団ではなく。
まるで知らぬ者達であったなら。当然、速やかに脱していた。
正体を知られれば、例え村に一切の危害を加えていなくとも、それを信じてくれる筈もないのだから。
…そんな場所に、わざわざ来た目的。
どうやら彼は。疑わないというだけでなく。笑わずにもいてくれたようだ。
安堵した。そう言わんばかりに息を吐けば、上目遣いに彼の表情を覗き上げ。)
でも。そう…だな。とても、魅力的な提案だ。
無論此処でも色々教わってはいるんだが…種類は。作物も、料理も、それ以外も。
数が多いに越した事はない。
…ふふ。勿論、タダとは言わないし…其方も、言うつもりはないだろう?
(願ったり叶ったりではある。最初だけの繋がりでは終わらず。
その後も継続した関係が続けられるというのなら。
…初めは交換からで良い。其処から或いは商売が、競合が、提携が…様々な形で繋がる事が出来るなら。
少なくとも、戦だけではないと。奪い奪われるだけではないと。
よい証明になるだろう。
自領を、民を護りたい。全ては其処に帰結するのだが。結果として、人の側にも。…彼の側にも。
役に立つというのなら。)
……ふ、ふ。これも前に言ったじゃないか。
仮に貴君を招く事にでもなれば。…血を飲ませる訳にもいかないだろう?
なぁ、共犯者―― ……、っ ?
(にんまりと、笑ってみせ…きる、事が出来無かった。
その前に再び腕が伸ばされて。抱き寄せられ、包み込まれている。
先程の額だけではない。もっと広く、躰全体で、感じ取る。……彼を。彼という、個を。
初めは瞬き。息を飲む。それから瞳は左右に揺らぎ、見上げる事を忘れ。耐えきれない緊張に喉を鳴らして。)
――――貴く …バル、べリト……?