2017/09/07 のログ
ご案内:「設定自由部屋」にマティアスさんが現れました。
ご案内:「設定自由部屋」にエアルナさんが現れました。
マティアス > ――ほんの少し、最近涼しくなってきた気がする。

いいことだ。ただ茹だって無気力に床に転がる日々なぞ、ただただ季節の浪費をしているようなものでしかない。
隊商の護衛と書簡の荷運びを請け負って、王都より出て数日。
そのいずれも終えて、フリーになれば後は己の趣味の時間である。
此の近場にある珍しいものを見て回るか。或いは、噂話を聞きつければ、深山幽谷に分け入ることも辞さないが。

「……凍らせた果実を削った氷菓、ねぇ」

はて、と。首を傾げながら、現在行き着いた山間の小さな町の市場を練り歩こう。
時は丁度夜。夕餉を簡単に済ませ、幾らか腹に余裕がある感覚を覚えながら周囲を見回そう。
人の流れはこの時間でもあるのは、隊商などがこの時間帯でも行き交う証左でもある。
物流は人を待ってくれないのだから。
腰の剣を揺らしつつ、眼鏡越しに物珍しいものを求めて進む。何やら、高価な果実を使ったらしいという氷菓の噂を。

エアルナ > 「夏場でも、魔法で氷を作ることはそう難しくないですけど…ねえ」

いつものように白狼を供に、青年のそばを歩きながら頷いて。
噂に聞いた話を繰り返す。

「氷を削ってお酒や果実の汁をかける…氷菓は、わりとみかけるようになってきましたけど。
なんでもそれは、果実そのものを凍らせてから削ったものなので、味がぐっと凝縮されたように美味しいんだそうです」

しかも。使う果実が、また美味で名高いものだそうですと、つけくわえて。
食べてみたくなりますよね?と、悪戯っぽい表情で誘いをかける。

マティアス > 「もちろん難しくはないとも。ただ、それを溶かさずに維持するのが問題でね?」

別段難しい作業でも何でもない。明日の朝食のメニューでも軽く語るように述べ、肩を竦めよう。
問題は、その状態を出来る限りどのようにして保つかということだ。
涼しくなってきたとはいえ、氷が出来る程度の温度を保つとなると相応の施設や備えが居る。
代価なしに為せることではないのだ。だが、故にこそその噂の氷菓なるものは長持ちしない、ということだ。

「興味深い話だねえ。……まあ、まずは百聞は一見に如かず、ともいう。
 拝んでみようじゃないか。て、これはこれは、ちょっと参ったね――……」

何の果実だろうか。食用に適して、なおかつ凍らせて削れるだけの体積を持つものを脳裏に浮かべる。
葡萄やイチゴの類は、どうだろうか。勿論使えなくはないだろう。ただ、手間がかかるのは言うまでもないが。
他は、どうだろうか。林檎、梨、柑橘類、等々。思いつくものには限りがない。

やがて、歩んでいればそろそろ、その売り場があるよと街の住人に聞いたあたりにたどり着こう。
ただ、問題がある。この手の面白い話を聞きつけない人間は居ない、ということだ。

天幕が並んだ市場の一角に、それはある。長蛇の列が並んだ順番待ちの光景。
あちゃあ、と鼻先にずり落ちる眼鏡を押し上げつつ、困ったように眉を潜めて。

エアルナ > 「ええ。屋外では無理ですものねえ、この季節はまだ…あつすぎます」

よい器と、保冷箱のようなものと、それから当然涼しさを保つ工夫をした屋内。
それだけ手間もかかれば、高価にもなるのはやむをえないだろうが。

「…これは、予想以上の人気ですね。最後尾は…あそこ、ですか。
普通なら数時間待ち、になりそうな」

うーん、と軽くうなれば。物陰から、それを見ていたのだろう。
10歳ほどの子供が一人、ととと、っとよってきてにっこり笑いかける。

「お姉ちゃんたち、旅の人だろ?名物の氷菓、食べたいんなら…順番、ゆずったげてもいいよ。
…お小遣い、くれれば、ね?」

最後のところ、小声で言うあたりは…なんともちゃっかりしているが。

マティアス > 「だから、売れるんだろうけどねぇ。……けど、これは予想してなかったな。」

故にこそ今が売れ時、とも言えるのだろう。
発端は幾つか想像もできる。売り物にならないもの、売り物とするための規格に漏れた物を活用する一手か。
合理的である。それだけで売り物と出来るものではなくとも、中身は売り物とそん色ないものだ。
廃棄するならば、いっそ旬の時にしか食べられないものに活用する方が無駄がないに決まっている。

しかし、この列は如何ともしがたい。
いくら自分たちのような冒険者たちが、時に無頼の徒と言われるとしても分別は弁えているつもりだ。
好きに生きることを選んだからと言って、酔狂と強欲は違う。後者を押し通した時のリスクとしては釣り合わない。

胸の前で腕を組みつつ、首を捻って考えれば。

「……――ちゃっかりしているね。順番待ち、してるのかい? 
 こっそりと分かるように現在の順番、見せてくれたらこれをあげようか」

子供が寄ってきて、笑い掛けながら述べる提案に困ったように笑う。
交換条件としてポケットの中を漁り、取り出すのは銅貨と綺麗にカットされた水晶である。
破邪の力を込めた其れは、本来ならば時に使い捨てることもあるものだが、珍しさが子供たちのハートに沿えるか、否か。

エアルナ > 「ジャムなんかも、外見にちょっと難ありの果実を加工してますから…氷菓にしてるのも、そういうのかもですが。
肝心なのは味ですもん、美味しいなら問題なしです」

たぶん魔法で加工したのだろう、今回の氷菓も。
とはいえ、並んだ行列の前のほうへ入る魔法…なんていうのはない。
だから、子供の提案は実にありがたかったりする。

「うん、ここんとこ毎晩並んでるんだよ。けど、ぼくらこの町に住んでるから、今夜しかない旅人さんだったらゆずったげてもいいかな、って。
えっとねーーほら、あそこ。前から10番目くらいの、赤い服の女の子がお姉ちゃんだよ」

指さし、手を振るのを見たのか、その少女が笑顔で手を上げる。手を引いているのは、7,8歳くらいの弟らしい子供。

綺麗だねえ、と子供は水晶に目を輝かせている。
お小遣いとこれならと、乗り気のようだ。

マティアス > 恐らく、術師、ないし、必要な工程を行えるようにした設備の類があるのだろう。
それなりに投資していることだろうが、この繁盛ぶりを思うにその分の見返りはあるのでないだろうか。
商才の類はないが、この繁盛ぶりを思うにそう推察はできる。
氷結術の使い手、ないし、それに類する設備とは有用だ。的確に使えば長期間、食物を保存して置けるのだ。
確かに、と。知識のほどを口にして見せる同行者に頷いて、少年の提案に決断する。

「――いいとも。では、これだけ持っていきなさい。君たちに幸在らんことを」

遠目に見える子供たちの姿を認め、ポケットからさらに人数分の水晶を付けたそう。
無駄に浪費するよりも、綺麗なものとしてお守り代わりに使ってくれればいい。
多少なりとも、邪気を祓うものだ。悪い気配が生む悪夢の類から、きっと守ってくれることだろう。

取り出すものと、少しだけおまけした銅貨を握らせてあげれば、あとはその分の代価の履行を待つだけだ。