2017/01/13 のログ
シャルレ > 「あ?…ちがった?」

猫のつもりで頭を擦り付けてしまった。
なんだか苦しげな声が聞こえてやめた。
顔をあげて心配げに見上げる

頭におかれた手が再びなでてくれると
嬉しいのと気持ちいいので目を閉じて、今度は大人しく胸元に収まる

「洗濯カゴより、スヴェンのほうがいいよ?」

同等と思われたのか、急いで否定する、こっちが寝心地がいいと示すように
ぎゅっと抱きついて

スヴェン > 心配げな表情が此方を見上げれば頭を撫でていた手がするりと降りて頬をふにり、と摘む
ふにふに、と彼女の頬を緩く摘みながら愉しげな表情を浮かべて

「…いや、シャルが労ってくれようとしたのは判ったよ」

そんな風に返せばまた彼女の頭を撫で始めた
彼女が胸元に収まれば、するり、と長い髪を撫で下ろしながら腕を背中に回して
ぽふん、と規則正しいリズムで彼女の背中を撫でるように叩き

「ふふん、洗濯籠ほどに役に立つ男もそうはいないだろうな」

自分の方が良い、という言葉に得意げに鼻を鳴らしてそんな冗談を彼女に返す
彼女の腕に力が篭り、ぎゅ、と抱きしめられれば冷えないようにしっかり毛布を引き上げて
背中を撫でる手をそのまま動かしながら、寒くはないか?と問いかけながら穏やかな表情を浮かべ首を傾げる

シャルレ > 「ひにょうふー」(わらいすぎー)

いつものいたずらだ、頬を摘まれて妙な声をあげる。
文句は文句にならず
またなでてくれるのに、文句はもう出ない
規則正しく背中に感じる音に心地よくて

「洗濯カゴ以上、ホントは私の部屋いらないけどー、スヴェンと同じ部屋でいいのにな」

毛布をかけられて気遣いの言葉をくれると
頷き、暖かいと返す。

スヴェン > 「猫の言葉は難しいな」

にやにや、と言葉にならない声に笑みを深めるばかりでいる
背中を撫でればまた言葉数が減るのを見れば、此方も静かに彼女の背中を撫でるばかりで
ぴたりと身を寄せた彼女が身動ぎしたり、何かの拍子に吐息を零したりする様子をぼんやりと眺める

「…そういう訳にもイカンだろ
 部屋をきちんと使えるってのも、勉強みたいなもんだ…
 掃除したり、修繕したり…例えば植物なんか飾ってみたりさ」

と、たいそう立派なことを言いながら内心、自室が暗くて良かった…と思っているのは秘密である
男の部屋は細かな所を見れば散らかっていたり、なんだり、ととてもではないが彼女にこんな事を言える
状態ではないのだ

「…シャル、足…」

それらを誤魔化すべく彼女の足にぺたり、と自分の未だ少し冷たい足を引っ付けるようにしてみたりする
続けて足が寒いから絡めても良いか?と聞いてみたりもした

シャルレ > 「プー」

不満そうに口を寄せて拗ねた声を出すけど、本気ではない
楽しむように笑い、また胸元に収まって

「うーん…わかったあ、植物…ない」

この部屋にも本棚や机はあるけど
緑ものがなかったような…でも暗いし今はベッドの中なので見えない

「足?」

何かと思えば、ヒヤリとしたものが触れる。
自分のほうが少し体温もあったせいか、相手の足は冷たくも絡めて

「スヴェンの足つめたーい」

スヴェン > 胸元へ彼女がまた収まればまた同じように背中を撫でる
ぴたり、と身を寄せてくればやはり彼女の体温が心地よい

「別に植物じゃなくても良いけどな…
 なんか好きなものとか興味あるものとかでも良いし…
 …っても、ネズミやら小動物やらの死骸を陳列されても困るけどもさ…」

なんとなくの猫のイメージ
どこか誇らしげに小動物の死骸を銜えてふんす、と鼻でも鳴らしたげな猫を以前、とある酒場で見たことがある
そんなイメージは脇に置くとして…結局は彼女の裁量で自由に部屋を使わせたいのだ
そうして、彼女に与えられた部屋を管理する術を身につけてもらいたい…という感じであった

「そりゃあ、もう冷え冷えだ…
 寝る前に湯でも沸かせばよかったな…」

寝台に横になってしまえばそんな気も最早起きないのだけれど
彼女が脚を絡めるようにすれば暖かいなあ…とか言いつつ体温をお裾分けしてもらう

シャルレ > 「…あ、だめ?…じゃあ別のにする」

好きなものと思えば、心を読まれてるように言われて少し考える
外でとってきたものを、スヴェンのこの部屋にも並べようとしてたのを
先に止められて、自分の部屋にも何かないかと探す楽しみも増えた

「ひえひえ、温める」

足を絡ませて冷たい相手の足に自らの体温を伝えるように
体もぴったりと寄せる、伝わる暖かさに、小さいあくびをこぼし

スヴェン > 「…やっぱり、そういう性質はあったのか…」

もしや、と思っていたが的を得ていたようで…彼女の返事が帰ってくれば、なんとも言えぬ苦笑が浮かんだ
捕らえたネズミや小鳥の死骸を並べて得意げに此方を見上げる彼女になんと言葉をかければ良いものか、
想像してみたりするが結局、適当な言葉は思い浮かばなかった…狩りに行くのであれば、
せめて食べたり出来るものを狩ってきて欲しいものである。と言っても、彼女が弓矢で武装して
森を駆け回る姿はこれもまた想像は出来なかったのだけれど…

「頼む…ぴったりくっついてくれ…」

彼女が小さく欠伸を零すのを見れば、眠くなってきたかな、と思い…寝入ってしまう前に小さく彼女の名前を呼ぶ
彼女の視線が此方へ向けば顔を彼女の額に近づけ、そっとそこへ口付けようとするだろう

シャルレ > 「…だって、飾るの喜ぶかと思った」

まあ猫の感覚、嫌がるのならしないし
他の物に替えようと決めた
なにがいいか考えてたけど、名前を呼ばれて顔をむけると
額に触れるキスに
お返しと背伸びをして届かないから頬に触れるキスを送ろうとする

「あったかい……また、おふとん入ってもいい?」

寒い季節一人で寝るよりも2人で眠る暖かさと安心感を覚えて
同じ部屋にはなれないけど、寒い季節に紛れ込むのはいいかと

スヴェン > 「ううーん…シャルが狩りが上手なのは判ってるから」

なんと言ったら良いものか、と困りながらもそんな言葉をひねり出す
力を借りたくなったらその時はちゃんとお願いするから、とも付け足した
彼女の額に口付けを送れば頬へそっとお返し、と彼女の唇が寄せられる
なんだか自分が小さかった頃の母とのやり取りを思い出しこそばゆい思いもしたが悪い気はしない
ありがとう、と礼を告げればぽふぽふ、と軽く頭を撫でるようにして

「…ん、寂しかったり眠れなかったりしたら何時でもおいで
 どうせ、この部屋じゃ俺も1人で寝てるだろうし…ドアは開けておくから」

ゆるゆる、と規則正しく彼女の背中を撫でるのは辞めない
彼女の言葉に頷き返事を返すと、大欠伸を零してきゅ、と背中を撫でていた腕が彼女を緩く抱く
彼女の頭に頬を寄せれば、すり、と何度か頬ずりをして

シャルレ > 抱きしめられて眠る、こんなに落ち着く夜はない
触れるキスを送りあい、撫でられる

瞳を閉じれば感じる暖かさと
ドアを開けておいてくれるという言葉

優しい言葉をむけてくれることに伝えきれない感謝
きゅっとコチラからも抱きつき返し

「スヴェン、ありがと」

相手の隙をみて、寒い夜や心細くなったら潜り込もう
優しく受け入れてくれる場所をお気に入りにして

撫でられていると、次第に意識は夢に落ちるように手放して
穏やかで静かな寝息にかわる

スヴェン > 「もっと感謝をするように…」

彼女の感謝の言葉にへらり、と笑いそんな風に返す
きゅ、と強く抱いた彼女から寝息が聞こえてくれば腕を少し緩めて彼女の寝顔を眺めつつぽふぽふ、と頭を撫でる
気持ちよさそうな寝顔をしてくれて…なんて思いつつ、しばらく頭を撫でながら寝顔を眺めていれば、
彼女の寝息と体温に誘われるように眠気が訪れる…じ、と彼女の寝顔を見て、寝入っている事を確認すれば、
なんとなくふに、と鼻を摘んでから満足げな表情を浮かべれば、小さな声でおやすみ、と彼女に告げて
彼女が冷えないよう、しっかりと毛布を掛けてやり身体を彼女に寄せて、収まりの良い場所を見つければ
そのまま、すとん、と意識を手放すのであった―――……

ご案内:「私室」からシャルレさんが去りました。
ご案内:「私室」からスヴェンさんが去りました。
ご案内:「ルミナスの森」にテイアさんが現れました。
ご案内:「ルミナスの森」からテイアさんが去りました。
ご案内:「ルミナスの森」にテイアさんが現れました。
テイア > コォーン…

 キン

  コォーン…


高い水琴の音が響く。
雫がおちては、水晶を打ちそして音叉のように響く

月の光を内包する水晶、その群晶が一面に生える洞窟の中は明るい。

ピチャン……

天井の水晶から落ちる水は、洞窟の中心の水に落ちて波紋を広げる。
その水の中で、波紋の感覚に暗い淵から女の意識が浮上する

(――………)

自分の存在が曖昧になる。
ここにある意識は誰のもので、自分とはなんだったか


…ピチャン…

波紋が広がる。
九頭龍山脈から湧き出し地中に沈む、長い時間をかけて濾過された水が再び時間をかけて水晶に含まれて地に姿を現す。
そして、また時間をかけて水晶から滲みだす水。
時間の感覚すら曖昧な意識の中で、波紋が広がる。

体は水の中を揺蕩い、意識もまた水の中

自分すら曖昧な意識の中にあるのは、…覚えているのは強烈なまでの憧れの感情

光り輝く、聖なる王と忠節なる騎士たち

光は、光のまま輝き続け世界は光に満たされる――そう思っていた

光は闇をまた生み出し、光に翳りが生まれそして闇に覆い尽くされていく

慟哭、悲鳴、流される血、失われる命

怨嗟の声は止まず、悲しみの声は途切れない

違う、そんなものを望んだわけではない…
違う、そんな世界に惹かれたわけではない…

目を閉じ、耳を塞ぎ、何も見ずに、何も聞かずに…このまま…

テイア > 澄んだ水の中に女の体は揺蕩っている。
流れ出た血は、一時は水を紅に染めていたがそれも水晶に吸い込まれ、水底の水晶たちがかわりに紅色に染まっている。
血の気もなく、ピクリとも動かぬまま水に揺蕩う体は、けれど命の気配を感じさせる。
九頭龍山脈から伸びる龍脈が、魔力が尽き朽ちていこうとする体を癒し命を繋いでいる。


『ここは……』

ふ、と瞳を開けば目の前には門があった。
荘厳な石造りの門。
見たことがある
覚えている
あれは、世界がまだ光に満ちていた頃
世界へと歩みだして、初めてみた門、叩いた門

触れると門は、重い音を響かせながらゆっくりと開いていく。

『――光だ…』

門が開かれたその先は、光で満ちている。
憧れた世界のままに、痛みも苦しみもない――否、痛みも苦しみもあった。
あったけれど、それらに意味があった。
人が人の営みを精一杯生きて、生きて、生き抜いていた時

ふらり、と足が門の内側へと動く。

門の中へと足を踏みだせば、急速に記憶が失われていく
現在から過去へ、逆再生するように記憶が流れていく

帰りたい
返りたい
還りたい…

母の腕の中に
母の胎の中に

光の中に
流れの中に

テイア > 水の中に揺蕩う体から、急速に命の気配が、温もりが失われていく。

あたたかい流れ
それは、まだ母の中に命として宿るもっともっと前
意識も何もない、個もない魂の流れ

ゆっくり、ゆっくり流れゆく中で、混ぜられ一つになって

他人に傷つけられる痛みもない、人と触れ合って感じるさみしさもない

このまま真っ白になってしまえば、その流れとひとつになれる

涙が溢れた

それは、母なる流れへと還る歓び

それは――の悲しみ

『――――』

『声』が聞こえる
それは、光の中から 流れの中から

――否

門の向こう、闇の中から

テイア > 振り返った瞬間から、光は遠ざかる。

うつし世からの声を認識した瞬間から、意識は肉体へと戻ってくる。

こぽり…

唇からこぼれた気泡が水の中を揺れながら、水面へと昇り弾け、波紋を広げる。

   キィン…


     コォン…

  コォン…

月が沈む

月の光を内包する水晶は、仄かな光を湛えて沈黙する。

水琴の響きの静寂のなか、水の中で女は眠り続ける。

ご案内:「ルミナスの森」からテイアさんが去りました。
ご案内:「ルミナスの森」にテイアさんが現れました。
ご案内:「ルミナスの森」にイーヴィアさんが現れました。
テイア > 深い深い森を見渡す高台に建つ、まるでガラス細工のような城の中。

水の中を揺蕩っていた体は、今は柔らかなベッドの上に横たわっている。
シルキーによって清められ、清潔な夜着に包まれた肌は魔力の枯渇と血の喪失から普段よりもさらに白く、青ざめているといっても過言ではない。
瞳を閉ざし、静かに横たわる姿はまるで事切れたあとのよう。
ただ、静かに、確かに上下する胸の動きが生命としての息吹を感じさせる。

イーヴィア > (――何時から、そうしていたのか。
女の傍らには、椅子に座って、其の姿を静かに見守る影がひとつ。
左の掌を、死んだ様に眠る女の、其の血の気の失せた掌へと重ねた儘
時折、思い出した様に溜息を零す其の後姿を、シルキー達はもう何度も見ているだろう)

―――――――。

(誰に、何を言えば良いのかも判らない。
ただ、言葉も無く、彼女の姿を静かに見守り続けて居た
目覚める其の時を、願って)。

テイア > 水の中にどれくらいの時間揺蕩っていたのだろう。
痺れを切らし、シルキーを問いただした男が洞窟へと足を運んだ時も女はただただ水の中を漂っていた。
九頭龍山脈から伸びる龍脈は、まるで羊水のように女の体を優しく包み込み、傷ついた体と枯渇した魔力を少しずつ癒していた。
そのおかげで、ベッドに横たわる女の体に傷はなく古い傷跡が残るのみ。
魔力の枯渇から、体の組織の結合すら保てなくなっていた体もまた、それくらいの魔力が癒えていることを示し水から引き上げられ城へ連れ帰られたあとも、出血もなく落ち着いている。


意識が少し浮上する。


体がひどく重い。
母の羊水に抱かれているような、優しい浮遊感は消え去りただただ肉体の重さがひどく不快だ。
もっと、安らかな場所にいたような気がする。
もっとあたたかな流れに触れていたような気がする。
苦痛も悲しみも、さみしさもないそんな場所に。
ぴくっぴくっと女の瞼が震える。
そして、うっすらと二色の瞳が姿を現す。
男がその色を見るのは、どれくらいぶりとなるのだろう。

「―――っ……ぁさん…あたま、いたい…」

掠れた声が、女の唇から漏れる。
うすぼんやりとした視界が回る、ずきんずきんと重い痛みが頭の中で響いている。

イーヴィア > (――初めは、女が其の脚で戻って来るのを静かに待つ心算だった
だが、城の主たる女が、何日も帰って来る事が無いのは、己にとっては異常な事だった
シルキーも、本来聖域たるあの洞窟に、己を入れる気は無かっただろうし
女からも、恐らくはそう言う指示を受けていた筈だと思う
其れでも、最終的には足を踏み入れる許可を得られたのは
恐らくはシルキー達も何かしらの異変を感じていたからではないだろうか
其の辺りを、細かく問い質す余裕は…残念ながら、無かったが。)

――――……っ!

(それは、不意に。 見詰めていた女の表情が歪み、反応を示す
思わず椅子から居り、女の傍らへと身を寄せて様子を伺えば
程なくして、発せられる、其の声。
漸く、目を覚ましたと安堵し、大きく吐息を零したなら
その、薄らとした視界へと、二色の瞳へと、見下ろす己を写しながら)

――――……おはよう、テイア。 ……気分は?

(――かける声は、出来得る限り相手の鼓膜へと触らぬ声音で
何か…僅かな違和感を、感じはしたけれど。
けれど、目覚めてくれた、それだけで兎に角安堵して
そっと、其の頬を柔く、掌で撫ぜようとするだろう)。

テイア > 左手を誰かが握っている。
大きな男の人の手だ。
冷たいと感じる世界の中で、そこだけが温かい。
視界が歪む、ぼやけてよく見えない。
薄く開いた瞳が、何度か瞬きを繰り返す。
ぼやける視界の中に、紅い色が見える。それは恐らく人の顔。

「……ぅん…なんか、あたま、いたい…」

――さんかな。
男の人の声――さんじゃない。
――さんが外から帰ってきたのかな。今日は狩りにいくといってた。
明日は連れてってくれるっていってた。

すぐにも閉じてしまいそうな瞳は、閉じかけては開いてと微睡むように繰り返す。
ぼんやりとした思考と視界の中に入ってくる声。
左手と同じ温かさが頬に触れる。
ふっと安心するかのように、女の唇から吐息が溢れる。

イーヴィア > (――彼女の、声。 聞き慣れた、優しい声だ。
けれど、何処か幼げに聞こえるのは、矢張り目覚めたばかりだからだろうか
当然だ、アレだけの消耗をしたのだから
人並み外れた魔力を其の身に内包する筈の彼女が、其の全てを使い果たす程の、何か
――実際あの場で何が起こったのか、己は知らされていない
ただ、此れだけは嫌でも判る。 彼女は死に掛けていた、間違い無く。
其の、死の淵からこうして、戻って来たのだ。)

――――――……疲れてるのさ、無理はするな。
……良かった、本当に。

(触れた其の頬は、まだ元の体温を取り戻したとは言い難いのだろう
指先から熱が奪われて行くのは、今は少し不安だけれど
其の目元を柔く親指で撫ぜてやりながら、額へと唇を寄せれば、触れさせる口付け)

―――――………もう暫くしたら、シルキーが見に来る。
だから、のんびり休んでな。 ……落ち着くまで、な。

(取留めも無い、言の葉。 彼女へと、安心させる様に。
そして自分を、安心させる様に。
この広い城内、呼びに行かなくとも、定期的にシルキー達は見回りに来る
其れまでは…如何しても、離れ難かった)。

テイア > ――さんの声
――さんの声?

聴き慣れた声だと思っていたその声に、違和感を覚える。
――さんの声ってこんな声だったっけ?
――さんの声ってこんな口調だったっけ?

でも、温かい、でも、優しい…。

浮上した意識は、肯定と否定と疑問を繰り返す。
目元を撫でられれば、瞳を閉じて視界が暗闇に覆われれば眠気が蘇ってくる。
おやすみのキスのように、額に触れる唇の感触。
でも、何か、違う…。

「しるきー…?」

――さんじゃなくて?
絹貴人の妖精の名前がどうして出てくるのだろう。
疑問に睡魔が晴れていく。
ぱちぱとと何度も瞬きを繰り返し、次第に二色の瞳の色がぼんやりしたものから鮮明なものへと変化していく。
そして、しっかりと男の紫を見返した。

「――…………おじさん、誰?」

暫くは、じっと男の顔を凝視していたことだろう。
男が口を開くのと同時か、少し前に女の口からそう問いかけが投げかけられる。

イーヴィア > (まだ、目覚めたばかり。 或いは、其の儘再び眠りに就いてしまっても不思議は無かったし
己も、決して無理をさせる心算は無かった
だから、彼女が再び瞼を鎖すならば、其れを静かに見守るだけ
――そう、思って居たのだけれど。

其の瞼が、再び開かれて、今度は先刻よりも己をはっきりと捕えたなら
僅か首を傾げ、そして、微笑いながら、如何したのだと静かに問い掛けたのは、きっと同時に)

――――――……は?

(――ちょっと、残念ながら意味を理解出来なかった
彼女の唇から毀れた言葉が、何を意味する物なのか、暫し硬直しては
――いやいや、まさかそんな。)

――――……あーと…、……覚えて、無いのか…?

(起きたばかりで、混乱して居るんだろうか。
彼女の其の二色の瞳を、じっと見返しながら瞳を瞬かせ
それから…不安、ぶわっと再浮上、僅かに頬が引き攣った)。

テイア > 見知らぬ人が目の前にいることに、意識が一気に浮上する。
誰?
誰?誰?
知らない、この人誰?

問いかけと問いかけが重なり、そして沈黙が訪れる。

「おかあさんどこ?おかあさん?!」

覚えてない?なにを?
覚えてないもなにも、この人知らない。
一気に不安に染まった二色が、忙しなく動く。

「――っ…」

がばっと勢いよく体を起こせば、視界が回る、気持ちわるい。

イーヴィア > (誰? 誰とは、俺を? 忘れて仕舞って居る?
頭が回らない、或いは、考える事を、理解する事を放棄していたのかも知れない
けれど、一瞬目の前の彼女の表情が、怯えた様に変わるなら
刹那、弾かれた様に、硬直が解けて)

―――――………落ち着きな、テイア。
大丈夫、怖がる事は何も無いさ…、……ほら、横になりな。

(――勢い良く身体を起こした彼女を、制するかに其の肩へと掌を乗せて
再び、ゆっくりと寝台の上に寝かせてやろうとしながら、其の瞳を覗き込む
――変わらない、二色。 けれど、其の唇は今、おかあさん、と叫んだ
彼女の両親が、存命なのか如何かは己は知らない
けれど、まるで幼子が母を呼ぶような、その怖がり方は、何なのか
――いや、違う。 まさか、ような、では無くて。

今の叫び声が聞こえたなら、きっとシルキーが大急ぎで此方へと向かっている事だろう
辿り着くまで、そう時間も掛かるまい。
彼女に無理をさせる心算は無いが、けれど、どうしても
確かめておきたい事が、ひとつ。)

―――――……テイア…、……キミは…。
……今、何歳だい?

(つとめて、穏やかに、不安にさせない様に
予感が、的中しない事を祈りながら…問い掛けてみた)。

テイア > 目の前がぐるぐるする。
どくどくと、心臓がはねてその度に視界が明滅する。

「や、だっ…っおかあさんっどこ?!おとうさんっ」

体力の戻っていない体は、肩に置かれた掌に容易にベッドに沈められる。
けれど、女は触れられることを厭う様に身動ぎして息を乱す。
その体は変わらない。男の知る女のままの体。
けれど、その怯えた表情も、不安にかられる瞳も、恐らくは男の見たことのないものだっただろう。
見つめる瞳に、視線は合うことなく忙しなく二色の瞳は動く。
母を、父を探して。
『両親は、まだ子供の頃に亡くなった』
そう、寝物語のように聞かされた女の言葉が男の中に蘇るのなら、既に女の両親はこの世には存在していないことを示すか。
きょろきょろと、忙しなく巡る瞳。
よくよく見れば、視界に映る全てに見覚えがない。

「――………10歳…」

名を呼び、問いかけが降ってくる。
忙しなく彷徨っていた瞳が、再び男の紫を見たあとふい、っと視線を逸らしながらぽそりと小さな声が答えた。
呼んでも叫んでも、父も母も来ない。
不安に揺れる瞳に涙が浮かび上がる。

「…おじさんだれ?ねぇ。おとうさんとおかあさんは?」

少しの沈黙が流れる。
どうも目の前の男は、自分の名前を知っている。自分のことをしっているようだと、少し冷静になった頭が理解する。
そして、女の口からもう一度、相手の存在へと問いかけが投げられる。

イーヴィア > (――暴れた所で、きっと彼女の今の体では、動く事も儘ならない筈だ
己が掌を厭う様に、或いは怖がる様に身じろぐのも
己を、本当に知らぬ様に、其の瞳が恐怖を宿すのも
考えれば、全て理解は出来る。 ……納得は、出来なくても。
ふと、いつか彼女が語っていた事を、今になって思い出す
彼女が幼い頃に亡くなったと言う、両親の事
なら、其の両親の事を呼ぶ彼女の年齢では、まだ存命だったのだろうか)

―――――10歳、か、そうだったな。
……、……、……俺はな、イーヴィアって言う鍛冶屋さ。
……おじさん、じゃなくて、おにーさん、な?

(暫く、返答へは時間を要しただろう。
今の、この状況を自分の中で、少しでも受け入れ、消化する為の時間が
そして、それから――にい、と、彼女に向けて笑って見せたなら
其のおでこ辺りに、ちょこん、と人差し指を触れさせて、突こうか

二度目の自己紹介
まだ、彼女の両親について如何言葉にすべきか判らなかったから
先ずは、少しでも、警戒を解こうと)。

テイア > もし、常の女の体であれば取り押さえるのも一苦労だっただろうが今はそのちからも体力もなく、おとなしくベッドに沈んでいる。
酸素を求める吐息は、忙しなく胸を上下させ瞳は、男を直視するのを戸惑うようにさまよい、視線があっては弾かれたように逸らされる。

「イーヴィアおじ……おにーさんは、子供をさらう悪い妖精なの?」

鍛冶屋、弓や剣、おなべとかを作ったり直したりしてくれる人だと父から聞いたことがある。
けれど、彼が鍛冶屋であることと目の前にいきなり現れたことは繋がらない。
母が言っていたことを思い出す。
悪い子は、子供をさらう悪い妖精につれていかれる、と。
お母さんのお手伝いをしなかった、お父さんのものを壊して怒られるのが恐くて隠した。
思い起こせば、さらわれるような悪いことをしていたような気がする。
それでさらわれてきたのかと、不安な瞳のなかでぐるぐると考える。
けれど、にい、と目の前で笑みを浮かべる男はそんなに怖い感じはしないのではないか、と合えばそらされていた視線があわされていくか。