2017/01/09 のログ
ご案内:「ルミナスの森」にテイアさんが現れました。
ご案内:「ルミナスの森」にサロメさんが現れました。
テイア > 未だ濃厚なマナを含む、神代の空気を微かに残す、月の女神に愛された森。
樹齢何百年という大きな木々、原種の植物に覆われ独自の生態系を築く深い深い森。
ドワーフが鉱石を打ち、小さき神々や妖精たちが歌い、エルフが踊る。

月が正中にかかり、湖が黄金色に輝くその時間はエルフの女の魔力が最も高まる時間であった。

キィーン…コォーン…

水滴が落ちては水晶にあたり、音叉のように音が共鳴する。
仄かな光を放つ水晶の洞窟の中に女はいた。

独特の光を放つ六角柱の群晶が所狭しと映える空間、その中心に、またその水晶を砕いたもので幾何学的な模様と、文字を書き込んでいく。
魔法陣の中央には窪みがあり、遥か高い天井よりピチョン、ピチョンと清らかな雫が落ちてくる。
そこにサロメの姿はあった。
白く薄い布で胸部と股を覆っただけの姿で。
九頭龍山脈から湧き出し、地層へと染み込み、長い長い年月をかけ濾過され、水晶の中へとまた長い年月をかけて染み出した水が、そしてまた長い年月をかけて雫となって落ちてくる。
そんな一切の穢を知らぬ、清らかな水の中にサロメはたゆたっている。
更にその水の中に水晶を投入して、清めの力を溶け込ませ。

「………。」

じっとりと滲む汗を女が拭う。
準備の段階からかなりの魔力を消費し、そしてこれから行う事への緊張に滲む汗。
女もまた、儀礼用の白い布で作られた衣服を着用しサロメの頭元へと座す。
この空間は、何者にも透視できず何者にも侵入を許さない。
外部からだけではなく、内部からも外に一切の漏出を許さない。
ただ、一人を除いては。
もしかしたら、この儀式においてサロメの命は戻らないものとなるかもしれない。
だから、サロメを案じる一人にだけはここへと入るための鍵と、穢を持ち込まぬための清めた衣服と、清めの水を送ってある。

「では、始めるぞ…サロメ」

水の中にたゆたうサロメに、そう声をかける。

サロメ >  
「───」

鎮静魔法の効果がまだ残ったままのサロメ
かけられた言葉に応える様子はなく、ただ空虚な瞳を薄く開いた瞼の奥で揺らす

近くの樹木に立てかけられた彼女の剣
魔剣ゼルキエスは宝珠に朧気な光を灯す

『………』

宝玉の奥底に映るように、我が主の様子を心配するような表情で見守る少女の姿が揺れる

テイア > 瞳を閉じてふ…と吐息を一つこぼすと、再び瞳を開いていく。
正中にかかる月の光を内包する水晶の輝きが、より強くなる。

「光と闇の中より生まれいずる魂は、今天に昇る、地に還る…開け幽世の門よ。裁定の刻はきたれり」

それは、死者を送る、送魂の歌。
女の指先がサロメの額に触れながら、朗々と声が水晶の中に響き渡る。
ふわっと、体が浮き上がるようなそんな感覚を、サロメは感じたであろう。
気づけば、その意識は魂は、肉体を離れ光の中、闇の中、大空の中、水の中

気づけば目の前には門が見えるだろう。
見るものによって形を変えるその門は、時には豪奢な門として、時には石を組み上げただけのものとして、時には光の輪として――

サロメにはいったいどのようにその門が見えただろう。

サロメ >  
「………?」

その感覚は今まで味わったことのないものだった

「(──何だ、あの魔族の言った通りに…召される時が来たのか…?)」

不思議と、"考えること"が出来た
長い間忘れていたような、感覚が降ってきたように

「(──では、これは冥府への門か)」

目の前に現れた荘厳な作りの門扉
それは見慣れた……というよりも、見過ぎていたもので

「(死に向かう時すらも、私はこの扉を潜らなければいけないのか)」

口元に小さな笑みが浮かぶ
何度見た門扉だろうか、開けばその先には見知った第七師団、その師団長の机があるはずの

その門扉へと、ゆっくりと手をかけ開こうとする

テイア > 肉体から離れた魂が向かう先、幽世の門。
本来であれば、肉体が生命活動を停止した後に体から離れる魂であったが、サロメの肉体は暖かく、心臓は鼓動を続けている。
傍から見ればただただ眠っているように見えるだけだ。

しかし、魂の離れた肉体は急速に『死』へと向かい始める。
『死』とは本来、肉体が生命活動を終えた後、魂が幽世の門の先へと渡っていく事で成立する。

サロメが見慣れた第七師団の扉を開けば、サロメが見ていた記憶が逆再生されていく。
闇の中、閉ざした瞳、心の中で聞いた声
炎の中でサロメを呼びかける彼の人の面影
楽しかった記憶、辛かった記憶、歓喜した記憶、虐げられた記憶、様々な記憶が洪水のようにサロメの中に流れ、そして抜けて出て行く。
幽世の門は、魂を白紙に戻す門。
希望も、欲も、記憶も、――魂に刻まれた何もかもを剥ぎ取っていく。
真っ新な状態になった魂は、大いなる流れに乗り混ざり合い、一つになってまた生み出される。
その過程を天国と称するものもいれば、地獄と称する者もいる。
――ただ、魂が完全に真っ白になって大いなる流れに身を任せてしまえばそれは完全な『死』を迎えることとなる。

それは、えも言われぬ程の快楽
それは、感じたことのないような心地よさ
それは、肉体から解き放たれ、罪を洗い流される開放感

本来であれば、抗うようなものではない。
その流れに身を任せる事をよしとするか選べるものではない。

けれど、生きた肉体があることが流されゆく魂をつなぎ止める楔になるだろうか。
剥ぎ取られる世界の中、サロメに残るものはあるだろうか。

じわり、と玉のような汗が女の額から浮かぶ。
魔力を総動員して、サロメに肉体を生かしつつ幽世の門の様子を垣間見る。
本来であれば、それは生者には叶わぬ技、許されぬ術。
それでも、呼びかける声はない、女はただ、サロメの選択を見守るしかない。

幽世の門の様子を見つめるアメジスト、そしてエメラルドはこの世に存在する肉体をまた見つめる。
サロメの体を蝕み、命を縮める要因は、魂と肉体の双方に存在している。
肉体の要因を見極めるべくエメラルドは見つめる。
なんらかの証が浮き出てくれば、取り出す術はある。

サロメ > 記憶の奔流
これが走馬灯と言うやつなのか、と
不思議と落ち着いている、自分の"心"の中で想う

心とはなんだろう
魂に起因するものなのか
それとも肉体に依存するものなのか

それはわからないが…
壊されたはずの心は継ぎ接ぎのようになりながらも、流れの中で形を留めていな
いや、記憶の流れこそが…心を繋げ、修復していくようにもみえた

そっとその眼を閉じても、記憶は流れ、渦巻き、瞼の裏をスクリーンに映すように飛び込んでくる

───やがて、魔族の仕掛けたその本質
それが魂と肉体の境目から染み出すように
それとはまた別の束縛を意味するモノも、サロメの薄腹から禍々しい光と伴い紋となって浮き上がる
放たれる光は布を通しても、ハッキリとわかるほどに強い魔力を感じる

テイア > これは大きな賭け

幽世の門の中で引き出される記憶が、壊れたサロメの心をつなぎ合わせることができるか
真っ新になっていく魂の中で、サロメにとって大切なものをサロメ自身が持ち続けることができるか
大いなる流れより、この世に戻ることができるか

確証もなにもない賭け
むしろ、『死』への確信が強すぎる賭け。

もしこの賭けに勝ったとしても、どれだけサロメがサロメとして戻ってこられるかは分からない。

瞳を閉じるサロメの魂から、現世での経験も記憶も流れ出していく。
そして、大いなる流れの一部がサロメの魂を誘うように伸びていく。
それは暖かで優しい母の胎内のように、魂を包み込もうとするか。

「――汝、魂なき肉体に留まること叶わず」

見えた――
肉体と魂の境目から染み出す魔力と、腹から浮かび上がる禍々しい光と紋。
女はそれらに手を翳すと、ありったけの魔力を注ぎ込む。
バリバリと黒い稲妻が弾け、水晶を破壊する。
かざした女の手の皮膚が弾け、血が噴き出す。

「――っっ、ゼルキエスっ、氷結の魔剣よっ主のためにその力を解放せよっ」

立てかけられた剣の真名を叫ぶ。
引きずり出した禍々しい魔力の塊を、その氷結の力で押さえ込めと

サロメ >  
『───無茶をする。
 あの男といい、貴様といい、無謀にも程があるというものじゃ』

剣から鈴のような少女の声が響き、
呼応するように宝玉から冷たい輝きが溢れた

『主を介さず魔力を解放するなど妾とて簡単ではないのだがな』

しかし輝きは増してゆく
軈て凍てつくような蒼銀の魔力の帯が伸びるようにして、テイアの手元へと向かってゆく


───

「(──そうだな…まだ生ききったとは言えない私にも、
  沢山の、いくつもの記憶がある……)」

手のひらで掬い上げるように、洗い流されるきおくの暗視を拾い上げ、胸に抱える

「(……しかし、もう私の追うべき背中はないんだ。
  あの人の背中を守ろうと、共に在ろうと心に誓った我が礎は、いなくなってしまった。
  いくら頑張ってみても空回り、女という身に生まれたことを呪ったこともあったな──)」

その魂が、揺らいでゆく

ご案内:「ルミナスの森」にオーギュストさんが現れました。
オーギュスト > 男は静かに現れた。
普段の軍装ではない。
清められた服と、神木で造られた大剣。
それに、清めの水を持ち。

「――――」

静かに、サロメへと近づく。
この神木の大剣を用意するのに、随分と時間がかかった。
神域に持ち込めて、かつ、魔の力に対抗できるだけの力を持つそれを。

静かに、魔力の塊に向け掲げる。

テイア > 「――っっ、全くだっ」

バリバリと黒いイナズマは、水晶にヒビを入れ、砕きながら暴れまわる。
対峙する女の肌を切り裂き、血を噴出させ押さえ込もうとする力を跳ね除けてサロメの体へと戻ろうと足掻く。
魔剣から放たれる声に苦笑の混じった声が返る。

悠久を生きるエルフの知恵者、テイアが大婆様と呼ぶ者にもそう言われた。

我らにとって、ただ数瞬のあいだに生を受け、生を終える者に肩入れしすぎだと。

それは、サロメだけのことを指した言葉ではない。
その意味も女は理解していたが、それでもこうやって彼女を生かそうと命を削っている。

「できなければ、主を亡くすだけだ。」

風が魔力の塊を圧縮する。
そこに氷結の力が加わり結晶の中に魔力を封じ込めていく。

と、そこに影が生じる。
人の形の影が。
誰かを問うまでもない。
ここへと入れるのは、一人しかいない。




エメラルドが見据える現実と、アメジストが見つめる幽世の門。
アメジストの瞳が見開かれる。

「――っ駄目だっ、サロメっ」

揺らぐ魂に声を張るが、その声は届かない。
追うべき背中は、まだここにある
走るべき体は、走れる足はまだここにあるんだ。

サロメ >  
『長らく賭けなど縁遠のいておった。
 我が主は、賭けを嫌う性格であったからのう───』

魔剣の宝玉は輝きを増し、氷結の魔力もまた力を増す
普通の氷ではない、溶けることのない氷獄の魔力


───

今、誰かが呼んだだろうか
それとも、気の所為だろうか

歩みをすすめる、流れるままに
思い出へと背を向けて

──もう十分頑張っただろう
女だてらに副将軍を張り、騎士として、彼に仕えて
追うべき目標であり、反発すべき相手でもあり……
そんな男はもういなくなってしまった、自分と第七師団を残して
時には、諦めも肝心なのだろう

オーギュスト > 魔力に対峙しながら、ちらりとサロメを見る。
まったく、随分と会っていない気がする。
最後に言葉を交わしたのは――いつだったか。

「サロメ」

低い声で語りかける。
言葉は少ない。もとより、気の利いた言葉など言える性格ではない。
だから――ひと言だけ、彼女に。

「帰るぞ」

次の瞬間。
男は猛然と魔力の塊へ向け駆け出す。

テイア > 「たまには賭けに興じるのも悪くない、勘が養われるからな…ただ、命をベットにした賭けはそう何度もやりたくはないものだっ」

風の圧縮と、氷獄の魔力にどんどんと魔力の塊は圧されていく。
それでも、負けじと黒い稲妻が走り魔力は再び膨らみ女と魔剣の魔力を跳ね返そうと抗う。
力は拮抗し、押し、押されと繰り返す。



「―――」

それは禁忌を超えた禁忌
アメジストとエメラルドをほんのわずかな間、一瞬だけ繋げる。
大いなる流れに身をまかせ、流されてしまいそうなサロメにその『声』を届ける。
その声すら、届いたかどうかわからない。
届くかどうかすらわからない。
声が届けば、諦めの中にいるサロメの魂に小さな小さな一石を投じ波紋をひろげることができるだろうけれど。

サロメ >  
"サロメ" "帰るぞ"

ハッとしたような顔で、流れに逆らい振り返る
聞き違えようがない、気のせいである筈もない
こんなぶっきらぼうで粗野な、飾る気もない言葉を適当に粗暴に投げかけてくるような人間
自分の周りでは常に一人しかいなかった

「(幻聴か? だが──)」

踵を返す
流れに抗って、歩みを進める
幻聴であるならば、その先には幻覚か何か在るだろう
最後の最後に、たとえ幻覚であろうとただ一目、見ておきたい

前に進むたび、その場が白いでゆくのを感じた
暗闇に背を向け、その光に向けて、ただ歩いていった───

オーギュスト > その瞬間、男は一切の意識を消す。
ただ一刀、渾身の力を込めて振り下ろすのみ。

魔力に触れた瞬間、恐ろしい反動が男の腕にかかる。
毛細血管は切れ、逆流する波動が身体を襲う。
だが、男の腕が止まる事は無い。

一撃で一切合財を断ち切る。
上下を表して一次元
前後を表して二次元
左右を表して三次元
この剣はその先、時の魔神の支配する領域、時間を表す四次元までもを断ち切る一刀――

故に、名前を次元断。
実体無き魔力であろうとも、その時空ごと切り裂く一撃。

あらゆる反動をその身に受けながら、オーギュストは魔力の塊を袈裟懸けに切り裂く。

テイア > 「――ゼルキエスっ」

オーギュストが魔力を切り裂く
力の拮抗が崩れる。
女の渾身の魔力の風が禍々しい魔力を包み込み完全に圧縮する。
零から壱を作り出せないように、壱を零にすることもまた不可能だ。
魔力とて同じ、その形を作り上げた者の中に吸収され、もとの流れの中に循環されなければその形は、形の欠片は残り続ける。
それを完全に封じるように、魔剣へと声を張る。
風で魔力はビー玉ほどの大きさまで圧縮されている。
あとは氷獄の力で完全に固め、閉じ込めるだけ。



もう、幽世をアメジストで見ることは叶わない。
サロメの魂の行先を見ることは叶わない。
エメラルドでさえ、視界がぼやけ殆うつし世を見ることができない。

ただただ流れに抗い、歩いていく先
それは光に向かっているようで、闇に向かっているようでもあった。
母なる流れから出るのに、寂しさと不安とを去来させる。
それを超えたその先に、再び第七師団の扉が見えてくるか。

サロメ >  
『──剣づかいの荒い友人もいたものだな』

宝玉が一際大きく輝き、最後の魔力を解き放つ
…それが終われば、魔剣の光は収束し沈黙するだろう

───

「(───…)」

見慣れた扉
その扉に触れると、鉄扉特有の冷たさを感じる
しかしそれは先程触れた扉よりも、少しだけ暖かさを感じて

「(……幻覚でもいいさ。もう一度あの面を拝んでおこう)」

門扉を、開け放った

オーギュスト > カァン――

甲高い音がして、神木で造った大剣が弾け飛ぶ。
同時に、オーギュストもまた倒れこんだ。
魔力の塊は――幸い、消し飛んだようだ。

時の魔神の力を使い放つ次元断は、使い手に大きな負担を強いる。
2、3日は動けないだろう。
後は――サロメが、戻ってくるかどうか、だ。

オーギュストは荒い息を吐きながら、地面に横たわっている。

テイア > コン、コン、コーン…

上からビー玉ほどの物体が落ちてくる。
風で圧縮され、ゼルキエルの魔力で溶けない氷の中へと閉じ込められた禍々しい二種類の魔力。
水晶の地面へと落ちて、跳ねて、跳ねて、転がる。


誰かがサロメの名を呼んでいる。
懐かしい懐かしい、優しい声が

待って、待って、そっちはダメよ、ここにいなさい
ここには辛いことも悲しいこともない
ここにいなさい――と

それは、母の声のようであり、祖母の声のようであり――自分の声だ

扉が開く、その先は光と闇に満ち満ちている。
生まれてから今までの殆どが流れ落ちたその魂が、幽世の門を来た時と逆の方向へとくぐる。

目を開けば、最初にその瞳に映るのはキラキラと輝く月色の水晶の天井だろう。

サロメ >  
呼びかけが聞こえる

「(あぁ、きっと良い世界なんだろう)」

歩みは止めない

「(ダメと言われて、はいわかりましたと。そんな上司の元にはいなかったからな)」

光の中へ───

ゆっくりと瞼が開く
眩い──これが光の正体だったのか
そんなことを考えて身体を起こそうとすると…自分の体とは思えないほどに重い
言いようのない気だるさを感じて、身体を起こすのを諦める

「……ここは?」

誰にともなく、小さくそう呟いた

オーギュスト > 視界が霞む。
体が動かない。
そういえば、ここ1ヶ月ロクに寝ていなかった気がする。
それもこれも――

「――起きたかよ、お姫様」

こいつのせいだ。
まったく、いつもいつも――

減らず口を叩くが、顔は見られない。
なにせ、地面にへばりついて身体を起こす事も出来ないのだ。