2016/04/11 のログ
ご案内:「九頭龍山脈麓の集落 居住エリア」にリーユエさんが現れました。
リーユエ > 九頭龍山脈にある麓の集落、その居住エリアとされる場所に建てられた建物の一室。
そこに寛いでいる訳でも無く、ベッドに座り込んで窓から外を眺めていた。
今、この部屋には必要最低限の物だけで、いつも手にしていた鞄もない。
二重底に設計され、上に医療具、下に道士としての道具が入っていた鞄。
それも、証拠品の一つとして渡しているからだ。

あれから、集落に戻ってその足で組合長の方へと全てを話した。
直ぐには答えは出ない、それを伝える迄は、今まで使っていた部屋で待機するように言われている。
立場を考えれば、拘束されて、牢屋に入れられて当たり前の筈。
だけど、そうならないのは今までの活動や、自分をある程度理解しているからなのか。
そうであるならば、まさにその通りである。
監視をされている気配も無い、抜け出そうとすれば、それは楽に出来るかもしれない。
だが、少女の性格がそれをさせなかった。
ただただ、伝達を待つように部屋でじっとしているだけだった。

リーユエ > どの様な事になろうと、自分はそれを受け止めるだけ。
もう覚悟は決めている事。
それでも、ちょっとだけ不安が残るのは、気になってしまう事があるからだ。
自分の事であれば、そこまで考える事もなかっただろう。
それが他人の事となるから、こうも影響が出てしまうものか。

「今日は、月が綺麗ですね…」

膝に手を置いて、ポツリと呟く。
今日はまだ決まらないのだろう、それとも、色々と忙しいのかもしれない。
もう少しだけ眺めたら、今日はもう寝よう。
いつもなら、色々と教わった事を纏めたり、整理したり、やる事はある。
鞄が無くてはそれも出来ない、なんだか無駄に時間を過ごしているようで、それもまた不安となってしまう。

ご案内:「九頭龍山脈麓の集落 居住エリア」にアーヴァインさんが現れました。
アーヴァイン > コツコツと廊下を歩く音が響く。
組合長たるこの男の表情はとても曇っていた。
義妹の様な少女の友人であり、専属医にも気に入られ、仲もよく礼儀正しい少女が密偵だったのだから。
この地を与えた将軍にも、北に狙われているとは言われていたが…こうも早く、こんな手段をされるとは思わず、冷静な表情の裏では困惑もしていた。
それでもお答えを一つ決めると、こうして彼女の部屋の前に立っていた。

「…リーユエ、アーヴァインだ、入ってもいいかな?」

ノックを数回すると、ドアの向こうにいる彼女へと問いかける。
それこそ相手は密偵だったのだ、遠慮なぞする義理はないはずだが…だからといって踏み躙るのは心苦しい。
自分に甘いなと嘲笑混じりの言葉を心で呟きつつ、ドアの向こうの答えを待つ。

リーユエ > どれだけの時間が経った頃か、廊下に響く足音に気付く。
自分の部屋に近付いてくる足音、然し、この部屋に向かっているとも限らない。
どちらのものであろうと、自分は只大人しくしているだけしか出来ないのだ。
その足音が立ち止まるのと、過ぎ去っていくのと、半々の期待で扉へと体の向きを変えた。

「…はい、どうぞ」

ノックの音、そして、聞き覚えのある声。
遂に身の振り様が決まるのに安堵と不安を覚え乍、答え、立ち上がる。
その声に彼が扉を開き入って来たならば、先ずは一礼をして迎えよう。

アーヴァイン > 返事が返れば、ゆっくりとドアを開いて中へ入っていく。
不安そうな様子を感じる彼女に、少し眉をひそめて苦笑いを浮かべるものの、一礼にはそんなにかしこまらなくていいと言いたげに掌を向けていた。
部屋に置かれた椅子へ座るように、掌で促すと、自分は棚の横に仕舞われた折りたたみ式の椅子を広げていく。
向かい合うようにその椅子へ腰を下ろすと、一度深呼吸をしてから、神妙な面立ちで彼女を見つめる。

「…色々不安だろうなと思うんだが、先に幾つか聞きたいことがある。リーゼは…知っての通り、良くも悪くも素直過ぎて、騙されやすい娘だ。君は…本当にリーゼを友人と思って、接していたかな?」

処分の話の前に、何故か彼女の友人の話を問う。
騙されやすいというフレーズを語るときには、困った様に笑みを見せながらも、ゆっくりと問いかけていく。

リーユエ > 自分の不安を感じ取ったのだろう、彼は苦笑いを浮かべる。
表には出さないように、そう意識はしていたのだけれど、それだけでは誤魔化せる相手でもなかった。
椅子への指示を受ければ、素直にその椅子へと腰掛ける。
だけど、目の前の相手は仕舞われていた折り畳みの椅子を広げていく。
立場に対しての意識、お互いに、座る椅子が違うのだと指摘はするが…きっとそれは流されてしまうだろう。
向かい合えばやっぱりどことなく落ち着かなくなってしまうが、顔を上げて彼の顔へと目を向ける。

「…不安ではない、そう言えば嘘になりますね。はい、分かりました」

直ぐにその話となるだろう、そう思っていたから、最初の質問に不思議そうな表情を浮かべる。
それでも、質問は質問だ、ちゃんと答えなければならない。
胸元に手を当て、ゆっくりと深呼吸をし、改めて彼を見る。

「…ええ、そうですね。私も、リゼさんはそういう所が在るのは、その…何と無くでも、分かっています。
それに、優しい方です。前に襲撃を行った時ですが、敵とはいえ、あのような目にあっていた事に心を痛めていました。
…すいません、止められていた様でしたが、私もあの場に赴いてしまっていまして…
…友人として接していたのか、の問いに関しては、その通りとしか答え様がありませんね」

自分も彼と似たように思っているのだろう、意識はしてないが同じ部分で表情を崩す。
そして、付け足すように答えたところで、それを伝えてなかった事を思い出したのか、ばつが悪そうに俯いてしまう。
一呼吸の間を置いてから、続く友人としての事を答えていく。
あんまり表情をコロコロと変える事のない自分だが、何故かそうなってしまう。
それもまた、自分にとっては不思議に思って。

アーヴァイン > 椅子を広げて準備をしていると、なにか言いたげな様子だったが、それ自体は今は大した問題ではない。
だから思っていたとおりに受け流しながら腰を下ろしていく。
不安と聞けば、それはそうだと思いつつ小さく頷いた。

「…そうだな、優しいところもある。リーゼはティルヒアの戦争で魔法銃使った部隊の隊長をやらされていたことがあるが…殺しは最初の一度だけで、それ以降は自分が死にそうになっても殺せなかったらしい、危ない優しさかもしれない」

自分よりも相手や誰かを思いやってしまい、自分を滅ぼすような娘だと、苦笑いのままに頷く。
謝罪の言葉には気にしていないというように軽く頭を振ってみせる。

「そうか…それなら良かった。リーユエも、出会った頃に比べると表情の変化が多くなって良かったと思う」

最初の頃は緊張に固まっているように見えたが、義妹と過ごすようになってからは、年頃の少女のように表情が解けてきたように感じる。
安堵の微笑みを浮かべながら何度か頷くと、次の質問へと入っていく。

「次の質問だが…リーユエは今から自由を与えられたら…どうする? やはり、故郷へ仕事を全うしに戻るか、それとも、別のことをするのか…それを答えて欲しい」

こんな質問も意味が無いことかもしれない。
故郷に戻らず、伝えずにひっそりくらすと嘯くのが普通の答えだろう。
最初の問いと同じ、神妙な面立ちに戻りながら、改めて質問を重ねていく。

リーユエ > 彼の言葉を聞きながら、確かに、あの優しさは危険だと思ってはいた。
それが、自分に被害が及ぼうとする時にさえ現れているのだと、そう聞けば余計に不安は募るものだ。
やっぱり一人には出来ない、然し、それが出来る立場では…その思いは、どこか落ち込みを感じさせる様に見せるだろう。

「…そう、ですか?あんまり私自身としては、分からないのですが…」

無意識に変わる表情は認識出来ないもの、それは理解している。
それが自分にも出てきているのだという指摘に、難しそうに小首を傾げた。
理解はしても、分からないものは分からないのだ。

「…自由…」

ポツリと呟き、俯く。
どちらかといえば、それを理解するのに少しばかり掛かってしまったかのような、そんな様子。
パッと表情が明るくなったのは、その言葉に僅かな希望を持ったからだろう。

「…いえ、シェンヤンに戻った処で私はもう今まで通りには生きてはいけないでしょう。
違いますね…戻れたとしても、もう戻る気はありません。
ここには、私が初めて友人と呼べる方が居るんです、その方は私とずっと一緒に居たいのだと願っている。
…私も、それを願っています、それが叶うのであれば」

この言葉にも嘘偽りはない。
それだけではない、この言葉には、願いと決意が込められている。
語る内に、真剣味の篭った表情へと更に変わるのが、それを伝えているだろう。

アーヴァイン > 不安とともに浮かぶ、気の沈んだ様子。
彼女が見せる表情の変化こそ、この男を一番安心させていた。
一番最悪の答えはもうないだろう、そう思えるほどで相反してこちらは安堵の笑みを見せるぐらいだ。

「あぁ…これはリーゼの影響だろうな。あの明るさに振り回されるは…嫌ではないだろう?」

喜怒哀楽激しく、楽しいことがあれば彼女を伴って一緒に行こうとしたりと、何かと絡んでいっているのを遠目に見ていたのもあり、楽しげに微笑みながらに語る。
気付かぬほどに、彼女と義妹の間はとても近くなっているのだろうと思うばかりだ。

自由、その言葉に明るくなる表情が見えると、語られたのは義妹の元に残りたいという強い決意。
再び 良かった と、安堵の微笑みで呟くと丁度廊下に足音が響いた。
ノックの音の後、入ってきたのはここの専門医の中年の男性。
二人を見やり、若い娘をあまり苛めるんじゃないぞとアーヴァインに文句を垂らしながら何かを手渡す。
やれやれとつぶやきながら出て行く医者を見送れば、受け取ったものを差し出した。
彼女が使っていた鞄、中身もそのままだ。

「リーゼの傍にいてやってくれ。もしかしたら…あの娘はここを去るかもしれないから、尚更…傍にいてやってほしい」

彼の答えは彼女の臨んだ通りにという決断だった。
ただ、そう応えるたのも、続く言葉に関わる理由もあってのことだ。
去るかもしれない、そう語る時は、表情が曇り、複雑な気持ちが顔に浮かびながら視線を落としていく。