2016/04/10 のログ
ご案内:「ドラゴンフィート・チェーンブレイカー施設内」にアーヴァインさんが現れました。
■アーヴァイン > ミレー族を襲った輩の殲滅を行ってから数日後、自らを傭兵と一線を画す存在として民間軍事組合と名乗ったチェーンブレイカーの拠点では、長い時間を掛けての変化が目にできるようになった。
組合長のこの男が空をみあげているのは、なにも青空を見たいからではない。
リトルストームと呼ばれる大きな隼達が編隊飛行で空を舞い、山間に設置された攻城兵器を模したターゲットに一斉攻撃を仕掛ける訓練を見ている。
ターゲットに着弾点を輝かせる魔法弾を撃ちこみ、狙いを決定すると思念通話でタイミングを合わせていく。
高高度から一気に急降下し、風の力をいっぱいに纏ってブレーキをかけるように翼が空気を叩く。
5羽が同時に起こした強力な突風はあっという間にターゲットを粉々に吹き飛ばす破壊力を見せた。
(「…これで怖れてはもらえるようになったか」)
目下、一番恐れなければいけない相手は、この地を与えた将軍だろう。
平和な世界を目指す、そこは同じだが思想がまるで違う。
争いなく、種族の隔たりなく過ごせる安寧の世界。
魔族を滅ぼし、人間の領地を広げて敵を潰すことで安寧をえる世界。
最後に衝突するのは彼らと自分達だろう。
ティルヒアでの戦争で見たワイバーンは特に怖れなければいけない、だからこうして…対抗馬として空の力を得た。
それでも不安なのは変わりない。
兵員も強くなければならない、だからこそ魔法銃の天才と呼ばれた少女を引き入れ、魔法銃の使い手を上手く操った戦術家を仲間に入れた。
視線を下ろすと、今度は光が少々眩しくも見える射撃場へと足を運ぶ。
■アーヴァイン > 別段、将軍と最後の決戦をしようという考えはない。
ただ、決戦を躊躇わせる必要はある。
仮に彼だけを始末できたとしても…多分、あの軍勢は止まらないだろう。
それに副官を悲しませるのも気が引ける。
何より、ここは拠点ではあるが商業地区もあり、争いになれば民間人を巻き込みかねない。
何をどう考えても争う時にこちらにはデメリットが残ってしまう。
全兵力を放り込んで勝てるか否か、拮抗を保てれば彼も部下を失わないために足を止めるはずだ。
最後はお互いの妥協点を見つけて話をつける。
そのためには、彼を躊躇わせる力が必要だった。
そんなことを考えながら歩いて行くと、道中の訓練場からは訓練用の銃剣槍を使い、近接戦のトレーニングに励む声が聞こえる。
里を襲われ、居場所を失った者、奴隷として売り飛ばされ、彼に買い取られた者、身を潜めて己の生まれを呪った者。
大半はミレーの少女が多く、魔法銃との適性の高さもあって訓練の結果、形になるようになってきた。
近づかれた時のため、近接戦闘を覚えていくのだが、槍ほど長くなく、剣のように振り回せない魔法銃の銃剣を巧みに操るには慣れが必要。
既に実戦も経験し、一人前になった少女が他の少女に剣技をレクチャーしているのがみえる。
『構え、撃てぇ~!』
魔法銃の射撃場では魔法弾を掛け声に合わせて発射し、性格な狙いを付ける訓練が行われていた。
ティルヒア戦争時に多く投入されたマスケット型は連射が聞かないのが難点。
魔法銃の講義を受けた少女達は、各々練達の銃技師から専用の魔法銃を受け取っており、それは速射性にも優れている。
同等のレベルを量産するには難しかったが、二連銃身のライフルを完成させてからは、それも解決に向かった。
最大2連射が可能となり、ゆっくり撃てば絶え間なく撃つことも出来る。
ミレーの少女達を中心に作られた魔法銃士隊は、今後偵察や警備に駆り出されるが、いざとなれば戦える戦力となるだろう。
訓練をしきっていた教官見習いが何かあったのかと駆け寄ってくるも、苦笑いを浮かべて頭を振る。
「ちょっと様子を見に来ただけだ、構わず続けてくれ」
そうですかと微笑み、離れていく教官見習いを見送り、手近な椅子に腰を下ろすとその様子を眺めていた。
■アーヴァイン > リトルストームと契約をかわしやすいのも、魔法銃との適性もミレー族の方に人間よりも分がある。
庇護すべき存在として匿っていたが、力を持つことが出来るなら、虐げられた誇りも取り戻せていくことだろう。
後は力に溺れないように…自分達が手綱を引いて導けばいい。
そんなことを考えていると、組合員が一人、彼の元へと走ってくる。
「…あぁ、港の件か。直ぐ行こう」
組合用に船を一隻作らせているのだが、今までの船とは違う者が色々と盛り込まれている。
現場で確認して欲しいと連絡があったのを受けると、胸元に手のひらを当てる。
少女達とは少し異なる紋章が浮かび上がると、遠くから轟音を引っさげて大きな鳥が飛来する。
サンダーバードと呼ばれるそれは、リトルストームが成長しきった姿。
更に希少になるサンダーバードは人も選び、糞真面目な彼だけが契約者として選ばれたぐらいである。
「港のほうだ、あまり飛ばしすぎて俺を落とさないでくれよ?」
冗談のように呟けば、隼は考えておくと冗談で返しながら空へと舞い上がる。
背中にしがみつき、風を切りながら飛行すれば、春風が冬のように寒く感じた。
この先、自分達の夢がどうなるかは…まだまだ見通せそうになかった。
ご案内:「ドラゴンフィート・チェーンブレイカー施設内」からアーヴァインさんが去りました。