2016/04/12 のログ
リーユエ > こちらは必死に色々と考えているのに、彼は一人納得して安堵の笑みを浮かべている。
ちょっとだけムッとした表情を浮かべるも、掛けられる言葉には頷いてみせる。

「…リゼさんの影響ですか?それは…その…確かに嫌ではありませんね」

寧ろ、そうなっていると言われるのは嬉しいのかもしれない。
言葉の歯切れは悪く答え難そうにしているが、その顔は満更でもなさそうだったから。

そうしていると、この部屋に新たな客人がやってくる。
何度も見た顔、というよりも教えを受けた事のある方だ。
慌てた様に立ち上がり、挨拶にと一礼をする。
が、そうしている間に、何かを渡して直ぐに出て行ってしまった。
呆気に取られた感で扉を見ていると、その渡した物がこちらへと差し出された。
そう、それはここに来る為に作られた、自分の鞄だった。
それを渡すのだという事は、つまりは…そういう事なのだと理解する。

「…勿論です。その為に、私はここに残るのですから。
でも…リゼさんが、ここを去るのですか?どうして…?」

あれだけ一生懸命に銃の指導をしている彼女が、この場所を去る理由が分からない。
彼ならば、些細な事でも、これといった理由が分かっているのかもしれないから、聞いてみる。

アーヴァイン > 心配してくれるほどの仲になったのを、まじめに怒る様に一層理解していくと、良い友人を持ったなと心の中で呟く。
だからこそ、あの悪い報せが嫌な予感しかしなかった。

「リーゼもリーユエの影響を受けたのか…猪突猛進な行動を控えるようになった、ほんの少しだが」

お互いにいい影響を与え合っていると、満更でもなさそうな彼女に、微笑みながら語る。
そして自由の身へと彼女を開放したのは、問いかけてくる理由にあった。
落とした視線を改めて彼女へと向けると、ポケットから記録水晶を取り出す。
静画や動画を水晶の中に閉じ込める魔導器具の一種だが、それに魔力を灯すと、壁へと映像を投射する。
映しだされたのは魔法銃、ここで訓練する組合員が持っているマスケット銃と似たものや、二連銃身のものではない。
リーゼが持っていたライフルを小型化したような、随分と手の込んだ大きめの拳銃である。

「…魔法銃は、リーゼから何となく聞いているかもしれないが…連射するには熟練の技師が時間を掛けて仕上げた銃でしか出来ない。リーゼが持っているのは、初恋の人に作ってもらった大切な物らしい。そしてこれは…」

銃の説明まではスラスラと語っていたのだが、そこから先の言葉を言い淀む。
瞳を一度閉じて、気持ちを落ち着かせてから改めて彼女を見つめる。

「…何故か…連射式魔法銃がオークションに出回っていたのをみて回収したものだ、後でリーゼに見せたら青ざめた。これは…その初恋の人が初めて作った連射式魔法銃で、世に一つしかないらしい。それも…その想い人の妹に送られた、大切な形見だ」

そんなものがこの王都に出回っていた。
それが何を指し示すかは言うまでもないだろう、だからこそ言い終わるまでの間に言葉に困り、言い終わった今も、暗い表情のまま彼女を見ているのだ。

リーユエ > 「人と人との出会いは、良くも悪くも影響を与えるものです。
私が、本当にその様な影響を与えたのならば…喜ばしい事でしょう」

そして、それは自分もで、彼女から良い影響を受けていたらしい。
お互いに、そう思えば自然と笑みが零れる。
続けるかのように、彼の手が水晶を取り出した。
それは初めて見る物で、映像が壁に投射されれば僅かに驚く。
映し出された銃、それは見た事も無いものだった。
忘れたとかそういうものでは無い、記憶力は悪くはないのだから、確かに見た事のない物だろう。

「…はい、銃に関しては少しばかりお伺いしております。
この見た事のない銃が、リゼさんの持っている銃と共に初恋の方が作った物…そうなのですか」

さすがに細かくは理解出来なかったけれど、大雑把には何とか理解した記憶はある。
こうして見ると、確かに違いが分かる程度にはなっていた。
だけど、これが何なのだろう?そう思っていた処で、言葉は続く。

「…」

聞き終わり、沈黙が訪れる。
はっきりとしてではないけれど、それとなく理解は出来たからだ。
そんな場所で見付かったという事は…そういう事なのだろうと。
だから、彼女が取ろうとする次の行動も何となく予想が出来た。
成る程、だから自分は自由になれた。
それはそれで喜ぶべき事だけど、それを知り、喜ぶべき事はもう一つ出来たのだ。
顔を上げて笑顔を彼に向け、深々と一礼。

「…私のやるべき事、それを成せる場を作って頂けた事に感謝致します。
大丈夫、ご安心下さい。
その時が来たならば、私が必ずやリゼさんを守ってみせましょう」

アーヴァイン > 「本当だ、今までだったら許せないと思うと突撃したがるのが…今は抑えている」

古い友達の危機に後先考えずに飛び出すことを控えたというのは、彼女がいてくれて本当に良かったと心から思いながら頷いていく。
そして、銃の意味を伝えていくと彼女から沈黙が答えとして返された。
それは何を言わずとも、その意味を理解したと受け止めていたのだが…笑顔と共に紡がれる勇ましい言葉に、苦笑いを浮かべて、必要ないというように頭を振ったのだ。

「リーゼが…仇を討つと飛び出すならまだマシだ。首輪でも着けて引っ張り戻せばいい…。だが、その妹さんはリーゼの古い友達で、つい最近ティルヒアから王都へやってきたそうだ。仕事に困っているという手紙に…王都なら仕事があると、リーゼが誘い、今回のことが起きた」

旧友に危機が訪れた理由も、リーゼにあると罪悪感に潰れそうな事実を伝えると、水晶に改めて魔力を注ぎ、写真を切り替えた。
それはリーゼが使っていた魔法銃とよく似たものだが、作りかけの銃だ。
木製フレームと銃身は完成しているが、肝心の中央部分が途中になっており、塗装も施されていない。
ストックに刻まれていた文字は、Erste Liebe Erfüllung、初恋の成就という意味。

「…あの妹さんは、リーゼに今度会うときにどうしても渡すものがあるといって、それまでは会うのを控えていたそうだ。リーゼが妹さんの住所を知っていたので、そこに踏み込んだが…これと、リーゼに会う日までにこれを完成させるという日記の一文が残っていた。そのために結構無茶な仕事もしていたらしい」

旧友の危険の引き金を起こし、自分の魔法銃のために無理をさせたという二重の引き金となってしまう。
罪悪感を沢山に煽るだろう足跡を伝えると、すっと写真を消していく。

「仮に妹さんが亡くなっていたとしたら…リーゼが魔法銃に携わるとは…到底思えない」

そして見たくもなくなるだろう。
ここにはそれが溢れてしまった、だからここを離れてしまう。
それが彼が予想する最悪な結末は、銃を捨ててここを去るという、戦うことすらも選ばない活力を失った未来だった。

リーユエ > 自分も気付かぬ所があった、だが、彼にも気付かぬ所があったようだ。
その事の成り行きを目を閉じながら聞いていく。
写真が切り替わった時には一度目を開いて見はするが。
言葉が終わり、一呼吸したところで、顔を彼へと向ける。

「…何もリゼさんから敵を退ける事だけが守る事ではありませんよ?
私は、リゼさんにそれを教えられたのです。
…危うく、彼女達を手に掛けてしまうかもしれなかった私に、救いの手を差し伸べてくれた…
そんな彼女を、今度は私が助けたい、そう思うのはいけない事でしょうか?」

彼女が救ってくれたのは、自分の心。
今、今度は逆に彼女の心が救いを求める番なのかもしれない、そう思ったから…
だから、守ってみせる。
未熟なのは分かっている、そんな自分がどこまで出来るか分からない。
だから彼女をそのままにするなんて事をしたら、一生後悔するだろう。

アーヴァイン > すべてを伝え、彼女はどうするだろうか。
ミレーの時とは違い、リーゼに活力が無くなってしまうだろう出来事。
しかし、決意固く語る言葉に少し驚いたように目を見開くも…なるほどと一人納得した様子で微笑む。

「いや…リーユエの言葉が正しい。俺が思っていた以上に、リーゼを気にかけてくれて…大切にしてくれてとても嬉しい」

ここを離れることだとか、すべてを捨てて去ることよりも、ただどんな形であれ守りたいという言葉のほうが、一番正しく聞こえる。
彼女のほうが義妹によく接してくれるだろう、安堵しながらも短い合間に自分の元から巣立たれるような、そんな心地で笑みが少し淋しげになった・

「君のような娘がリーゼの友だちになってくれて安心した…リーゼをしっかり守ってくれ。必要なモノがあれば何でも行ってほしい、俺がしてやることで二人が助かるのは、多分それぐらいだと思う」

心に深く接していくことを彼女へと託した。
託せるだけの存在なのだと、これで全て確かめることが出来たのだから。

リーユエ > 言葉の後、彼は表情を驚きに変え、納得したように微笑んだ。
続く彼の言葉に、笑顔を浮かべたまま答える。

「…ご理解に感謝します。
貴方が思っている以上に、きっと彼女は強いですよ。
それでも、人はどこかで躓く事があるかもしれない。
…私は、その時の為に在りたいのです。
きっと、彼女は自分が強いなんて、そんな事はないと言うでしょうけどね」

褒めれば、どうしてもその部分を照れ隠しか誤魔化そうとする彼女。
その姿を思い出したか、クスリと笑う。

「…周りからもそう思って頂けると嬉しい限りですね。
はい、分かりました。
とは言いましても、今、必要としているものは二つだけです。
一つは、リゼさんに早く私が自由になった事を報告する事。
もう一つは、その…私の我侭ですが、いつでも傍に居れるような場所が欲しい処でして…」

きっと、この先、色々と助言とかを求める機会もあるかもしれない。
思いは強くとも、お互いにまだまだ未熟だから。
そう思い乍、彼の言う必要なモノを伝えていく。
一つ目は考えずともすぐに浮かぶもの。
そして二つ目は、少しばかり言い難そうに伝えた。
自分の立場は自由となったが、ここに住む方達と共にやってきた彼女と比べるとかなり違うものだろう。
そんな自分が、こういう贅沢を言うべきか、言わざるべきか…律儀な性格ゆえの悩みである。

アーヴァイン > 「そうかもしれないな、戦争が終わる頃、リーゼを守りながら過ごしていたせいか…どうにも子供扱いしてしまうみたいだ。でも、いざという時に落ち着きのあるリーユエがいてくれるなら…リーゼも安心だろう」

続く言葉には確かに謙遜しそうだと笑みを浮かべて頷いていく。
恐らく、彼女が浮かべた想像と全く同じものが浮かんだのだろう。

「皆そう思ってるだろう、うちの弟はその内二人がくっつくんじゃないかと宣ってた。 あぁ、戻ったらすぐに伝えよう。場所か…それなら拠点内の居住区に来るといい、リーゼの部屋だけかなり大きくてな、前にリーユエが来ればいいのにと寂しそうにしてた」

ここは商業区などに関わる人々が使う居住スペースであり、誰でも出入りができる。
組合の施設が詰まった奥のエリアには、組合員用の今日中スペースも別途準備されていた。
日頃のぼやきを微笑みながらに伝えていくと、ポケットから小さな羊皮紙を取り出すと、指先に魔力を集中させ、表面を焼き焦がすようにして文字を書き込んでいく。

「…これを組合のエリア前にある警備員に見せれば中に通してくれる。正式な証明書は後ほど渡すとするが…うちの所属にしてよければ、それで作っておくがどうする?」

差し出した羊皮紙には、彼のサインで出入りを許可するサインが書かれていた。
何時もは専属医や他の組合員と一緒に入ることで証明は不要だったが、これで一人でも自由に出入りできることになる。

「さて…一足先に戻ってリーゼに報告するとしよう。断ることはないと思うから、引っ越しの準備をしておいてくれ。スペースも二人で過ごすなら十分ぐらいだろうしな」

それからすっと立ち上がると椅子をたたみ始めた。
ご希望のいつでも傍に要られる場所、それはリーゼとの相部屋という提案で答えようとしていく。

リーユエ > 「…育ての親の気持ち、みたいなものなのでしょうね。
私がこうあれるのは、リゼさんのお陰であり、その逆も然り…そういうものですよ、きっと」

親になった事はないので分からないけれど、親にとって子はいつまでも子。
それに近いものなのだろうと、自分はそう考えていた。
自分在っての彼女、彼女在っての自分、その言葉はそうありたいという思いも込めてのものだ。

「…はい、居住区ですね?分かりました。
そうでしたか、それなら、これでちょっとでも寂しさが紛らわせると良いですね」

どの辺りだったか、この集落の地区の位置を思い出し乍、羊皮紙へと目を向ける。
大きな部屋、というのがいまいち想像出来なくて、小首を傾げる。
でも、兎に角これで彼女と居れる、それは嬉しいものだった。

「…私で宜しければ、是非お願いします。
所属は、その…出来ればリゼさんの傍に居易いものを希望で…」

それは、後にこちらから頼もうとしていた事。
相手側からその話が出れば、勿論と言わんばかりに頷いてみせる。
そして、やはり自分の事を頼む時には少なからず躊躇してしまう様で。

「…あ、はい。直ぐに終わります」

言葉の通り、準備は時間を掛ける事がなかった。
道具は全て受け取った鞄の中、後は持ち込んだ服が数着程度だったからだ。
彼が椅子を畳み、部屋から出ようとする頃には、準備万端な少女の姿が見えるだろう。
…扉の前に立つと、部屋を振り返る。
頭を下げて、ありがとう御座いました、と世話になった部屋へと律儀に礼をして。
そこまで終えれば、やっと向かおうと。

アーヴァイン > 「そうだな…多分そういったものだと思う。お互い様というところか…仲良くて何よりだ」

父親をティルヒアで亡くしてから、彼女の傍にいた参謀も支えてくれたが、ここに来てからは自分が頼られる役を引き受けている。彼女の言う通り親心なのだろうと、年寄り臭い自身に困った様に笑う。

「あぁ、拠点の中に入って直ぐのところにある。十分紛れると思う、安心するといい」

部屋の大きさは敢えて大雑把に言っていたのだが、首を傾げれば30平方メートルと数字で応える。
畳で言うなら20畳とかなり広く、それとは別に収納や他の設備がついた部屋もある。
少女一人で休むには少し寂しいぐらいに広い空間だろう。

「ありがとう、これからもよろしく頼む。勿論だ、そのように配属する」

即答と言った様子で頷くのをみやり、おずおずと切りだされれば遠慮しなくていいと言葉を添えて微笑む。
身支度も椅子を畳んで部屋を発とうとする頃には終わっており、礼儀正しいお辞儀に真面目だなと微笑みながらも、彼女を伴って拠点へと向かうだろう。
戻って程なくして渡された証明書には、彼女の名前と水晶で取った静画が貼り付けられ、所属の記載もある。
Beacon所属、基本は医療について携わってもらうと思うが、所属に添え書きがあり、リーゼロッテ専属の護衛とも記載があった。
それからリーゼの部屋へと案内されれば、スイートルーム程ではないが広く、調度品も殺風景にならない程度に整えられた室内があり、ベッドまで大きい。
一人で眠りには寂しそうだが、彼女を見つけて飛びついてきた友人と眠るなら、ちょうどいい空間となるだろう。
良い夜をと囁いてから、彼は後手にドアを閉じて自室へと戻っていくのだった。

リーユエ > 準備は整い、後は向かうだけ。
そうなると、必要も無いくらいに緊張してしまう。
何せ部屋の大きさを正確に聞けば、予想を超えた大きさだったからだ。
そんな場所に、今まで一人でいた彼女の事を考えるのと。
今日からは自分もそこで過ごすようになる、という考え。
遠慮は要らないと言われても、どうしてもこの気持ちは起こってしまう。

「…はい、こちらこそ宜しくお願い致します」

改めて、案内をしてくれる彼にも頭を下げる。
後は彼に付いていき、彼女の部屋へと行くだけだ。
受け取った証明書は直ぐに目を通し、その記載に専属の護衛と見付ければ、自然とまた顔が緩む。

彼女の部屋に到着し、先ず思うのは、広い…という感想だ。
幾つかの宿とかで部屋を見てきたけれど、こんなに大きな部屋は初めてである。 
そして、いつもの如く初めての部屋に礼をしている処で、彼女に飛び付かれるのだろう。
これからの夜は、ずっと安心してぐっすりと眠れそうだ。

ご案内:「九頭龍山脈麓の集落 居住エリア」からアーヴァインさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈麓の集落 居住エリア」からリーユエさんが去りました。