2015/11/17 のログ
ご案内:「山中」にレティシアさんが現れました。
■レティシア > ……やっと、見つけた……(男が住む小屋へと顔を出せば、相手は珍しく留守にしていて。待つ事という事ができない女は相手の気配を追って、山中へと足を踏み入れた。足場の悪い山道に顔をしかめつつ、最終手段は蝙蝠の翼で森の中を低空飛行。やっと男の確かな気配を見つければ、地面へと降り立ち、シュンッという音ともに、翼は背中へと仕舞う。相手の気配に近づいていけば、もう1つ、人間とも魔族とも違う気配が一緒にいる事に気がついて。首を傾げて、そちらへと近づいていく。相手の姿を見付けると、一緒にいる翼獣の姿も目には入り、女は菫色の瞳を丸くさせながら、木々の合間から姿を現し)…あらあら…随分と仲良しなのね?
■オーベ > (フードに飽きれば、次は杖の先に付けられた小さな鉱石に眼をつけたようで、それを強く引っ張られれば、一瞬、身体が浮き上がりそうになった。流石に魔物の類である…根本的な力比べで言えば「一般的」な筋力しか持たない自分など、到底、勝ち目はない)ヤメろって、美味しくないぞ…(杖目掛けて突こうとする嘴の威力が並ではない。それを疲れた身体と幾らかの知恵でかわしていれば不意に声を掛けられ、1人と1匹がそちらへ視線を向けた)…いや、まだ知り合ったばかり…これから仲を深めようか、というとこ…わっ、ちょっと待て…(見知った人影に一瞬、安堵したかその隙を突いたように杖の先端を突かれ、ひょい、と引っ張りあげられてしまう。なんとか立ち上がって、杖を取り返せば、ひどく疲労した表情で息を吐き、彼女に近づいていく…背後にグリフォンを引き連れて)…偶然だな、こんな山ん中で…(顔の泥は幾らか拭ったが男の衣服は泥だらけの埃まみれ…ドレス姿の彼女に近づけば余計にひどい格好であるのがはっきりとするかもしれない)
■レティシア > (男がグリフォンにより、身体を引っ張り上げられる様子に、遠慮なしにクスクスと笑う。相手が後ろに翼獣を従えてこちらへとやってくれば、盛大に汚れたその衣服に気が付いて、女は顔を顰めつつ) お前、それ、本気で仰って?偶然な訳ないじゃない。小屋を訪ねてもいないのだもの…気配を追ってきたのよ……それにしても、ヒドイ恰好ねぇ…(まるでストーカー?と突っ込み入れられそうな事をサラリと述べてから、相手の恰好を指摘して。男の直ぐ傍まで近づけば、躊躇いもなく、グリフォンの口元へと、つぃっと手を伸ばしてみたりして)
■オーベ > …仕方ないだろ、俺は普段のレティが何をしているか、さっぱり知らないし、例えば山中に分け入るような勤めがあるのかもしれない、と思ったわけ………淫魔だからといって、毎日、欲望を満たすためにフラフラしているわけでもないだろ?(思えば、この令嬢は日頃何をしているのか、という事を全くもって自分は知らない。淫魔ゆえの乾きを満たす為に動くのは当然だが、それ意外で彼女が何をしているのかは知る所ではなかった…存外、机と向き合って領地経営でもしているのだろうか)…悪いな、さっきまでソイツと組んず解れつその辺を駆けまわっていたもんだから…(す、とグリフォンと戯れる彼女の脇で、遠慮無くドロや埃を叩いて落とせば幾らか見られる姿になるだろうか)
■レティシア > (男から返ってきた言葉に、瞳をパチパチと瞬かせる。いつもの、落ち着いた隠者然とした口調とは違い、本日の相手の言い分は、何だか、自分の立ち位置まで相手が下りてきたような気がすれば、自然と口元に笑みが浮かぶ) …こんな山の中で偶然、逢えたとしたら…それはもう運命よねぇ…。あら、毎日、フラフラしていてよ?(「欲望を満たす為に」…と男の言葉をそのまま、繰り返して、ニンマリと笑いながら、指先でグリフォンの口元を撫でていて。相手が、衣服に付いた汚れを落とせば、満足したように、「うん」と頷いてみせ) …今日は随分と活動的なのね…いつもはもっと…(年寄り臭いというのは口内に留めたが、男には察しがつくかもしれない)
■オーベ > 運命と言うにはあまり、容貌がよろしくないのが残念だがな…かと言って、山野に埋もれた隠者にあまり、華美を求められても困るのだが…(まあ、このくらいが妥当な運命であろう、と微苦笑を浮かべる)…それは、羨ましい話だな、寝食に困らぬというのは結構なことだ(ニンマリ、と笑みを浮かべる彼女に、市井で暮らす大変さの1つも口喧しく言ってもバチは当たらぬであろうが、生憎と彼女は魔族である。人間の市井の事など語った所で何処吹く風であろう。一先ず、彼女に合格点を貰えれば、そうか、と頷き。出掛かった言葉に、まあな、と苦笑交じりに頷いて)…そういう事もある、持ちつ持たれつというヤツでね…(グリフォンと戯れる彼女を眺めつつ、樹木により掛かるようにしながら事情を話す。知己である樵の仕事場がこのそばであるということ、そこにそのグリフォンが目撃されなんとかならんか、と頼まれた事…泥だらけになり山野を駆けまわった末、グリフォンを調伏したこと…幾らか脚色も交えつつ、面白おかしく語って聞かせた…つもり)
■レティシア > …あら、あたしがいつ、お前に華美を求めて?…まぁ、でも、せめて清潔にはしていて欲しいものだわね。(獲物の器に拘る淫魔らしかぬ言葉を相手へと返す。相手には、自分の獲物の好みは告げていないから、寝食に困らぬと言われれば、ひょいっと小さく肩を竦ませて) …それは結構、困るのよ?好みの獲物がいないと…妥協はしたくないし。(呑気に人間の男と、自分の獲物=人間の話をする女。きっと2人の会話は噛み合っているようで、噛み合っていないかもしれない。当の本人達は気づいていないかもしれないが。グリフォンの鼻づら、口元を撫でてやれば、スリっとこちらの指先に擦り寄ってきて。女は瞳を細めて、そのまま撫でながら、時折、クスクスと笑いつつ本日の男の仕事の成果を聞く。ふと、グリフォンから離れ、樹木の寄り掛かる男に近づくと、つぃっと指先を伸ばして、その頬へと付いてる汚れを拭おうとしながら) …オーベ…まだ、ここが汚れてるわ…。
■オーベ > ドレス姿の隣に、泥にまみれた男では絵にはならんだろうな、と言ってるだけだ…華美さを求められたら俺は手のうちようがないよ…(続く彼女の言葉に、そりゃあそうだが、と頷きながら、グリフォンの唾液に濡れたフードを被ろうとして、指先に感じた湿りにその手を止める)いっそ、イチから自分で育ててみたらどうだ?探しまわるより遥かに楽だぞ…?収穫まで何年かかるかは知らないが…(何となく互いの会話の齟齬に気がつけば、呆れ顔で肩を竦めてみせた。ようやく、泥だらけになった顛末を語り終えれば、ふ、と短く息を吐き、「まあ、そんなところだ」と締めくくろうとすれば彼女が不意に近づき、指先が伸びてきて)…待て、教えてくれれば……(彼女の指先が汚れる、と言葉で遮ろうとするよりも先に彼女に汚れを拭われてしまえば、言ってくれれば…と小さく呟き。彼女の指先を幾分綺麗な、シャツの裾で拭おうと手を取ろうとして)
■レティシア > …もぅ。あたしは、別にそんなの気にしなくてよ?(相手の顔を上目使いにねめつけながら、少し怒ったような口調で言葉を返す。しかし、相手の育ててみては?の提案に、思わず小さく吹き出して) 自分で育てろなんて…その元になる苗はどうしたらいいのよ?…それに、あたし、収穫を待ってる間に干からびてしまうわよ、きっと。(それでは本末転倒だと言うふうに、大仰に頷いてから、却下と告げた。相手の頬の汚れを指先で拭えば、満足げに笑う女。その汚れた指先を相手に取られ、シャツで拭ってくれる様子を見つめながら) ねぇ、オーベ…あたし、ちょっと南まで行ってくるわ…(まるで、ご近所に散歩に行ってくるとでもいうような口調で言葉を口にして)
■オーベ > …獲物の良し悪しに拘る割に細かい部分は大袈裟なんだな(此方に向けられた彼女の表情とは対照的に笑い笑顔を向ける。吹き出す彼女に肩を竦めて)そこいら中で戦争してるんだ、将来有望そうな孤児なんてどこにでも転がってるだろ?痛ましいことだとは思うがね…何、育ててもらった礼に夜の伴をする、程度なら感謝こそされ、恨まれる程ではないと思うがなあ…(冗談交じりにいっそ、孤児院でも開いたらどうだ?と口にした。―――彼女の手を取り、シャツの裾で彼女の指を拭いつつ彼女の言葉に頷く)ん…そうか。危ないらしいから気をつけてな…俺が老い朽ちる前にまた顔を見せとくれ…(指を拭えば、綺麗になった、と笑顔を向け、外套の内ポケットを漁り、小さな琥珀色の鉱石が散りばめられたアミュレットを取り出す)…師匠が、俺が宮廷で初めて役職についた時に貰ったお守りだ、貸してやろう…因みに大した効果はない………そのなんだ、気休めだ(「300ゴルド程らしいぞ?」とか、冗談交じりに聞かせれば彼女の掌にそっとそれを置けば、握らすように彼女の手を包み)
■レティシア > …あら、そぉ……オーベがそう言うなら、そうしても良いかしらねぇ…。そうね、好みの若い殿方を選り取り見取り…でも、そうなると、もうお前の所を訪ねる暇が無くなるかもしれないわね?(相手の冗談のような提案に、女は大仰に頷いてから、業とらしく真摯に検討でもすると頷いてみせる。言葉尻、にっこりと笑ってみせもして) …えぇ、そんなに長く行ってくる訳じゃあないわよ。直ぐに戻ってくるわ………ん?(指先を拭ってくれた相手が、己の掌へと何やら握らせる。女は不思議そうに首を傾げながら、男の表情を見つめて) …でも、オーベの大事な物ではなくって?…悪いわ……(珍しく、遠慮するような言葉を口にすれば、己の手を包むような相手の掌に、アミュレットと押し返すようにしながら、大丈夫よ?とも笑ってみせる)
■オーベ > …そうさな、出来の良さそうなのが居たら養子にくれ。俺の技術を一通り、教えてみたい…というよりは、あれだな、教える過程を楽しんでみたい(暇がなくなるかもしれない、と言われれば、寂しいことだ、と肩を竦め、耐え切れずに結局、笑ってしまい)…そこらの土産物屋でも売ってそうな物だ、気にすることはない。それに、だ…貸してやるだけでくれてやるとは言っとらん…この先、飢えるような事があれば最後にはそれを古物商辺りに売りつけて食事にありつくことになってるからな…(押し返すような動きをする彼女の手から早々に自分の手を離し)土産話を聞かせてくれるついでにでも、返しに来てくれればいい(らしくないな、と遠慮する彼女に笑みを向ければ、軽く彼女の頭を幼子にでもするようにぽふぽふ、と撫で)…さて、我が家に帰るか。腹が減ったし、グリフォンの今後も考えにゃならん(そっと、背を預けていた樹木から離れれば、グリフォンの脇に立ち、歩くよう促し、彼女の方へと視線を向ければ、寄っていくだろ?と首を傾げる…彼女が応じれば、山道を下っていくはずで)
■レティシア > …だったら、子供でも作ればいいじゃない?あたしとお前の子なら…それは強い魔力の子が生まれそうだわ?(養子にくれと言われれば、キョトンとするのも一瞬、自分の掌に拳をポンっと打ち。まるで名案を思いついたとでも言うような表情を浮かべて、とんでもない事をサラリと口にした) …もぉ…無くしても知らないわよ?…コレ、本当にそんなにするの?(相手へと返そうとしたのに、早々に己の手を離れ、そこに残ったのは男が大事にしているであろうアミュレット。女は大事そうに掌で、きゅっと握りしめると、それをドレスの隠しへとしまい込む。己の頭を撫でる男を軽く睨みつけるものの、抗う様子も見せずに好きにさせるようで) …えぇ、お邪魔するわ…そうね、あのお茶を煎れて頂戴。ジャムを入れたの……(男の誘いにコクンと頷くと、女も一緒に歩き出し…人間の男と魔族の女とグリフォンと…奇妙な2人と一匹が山をのんびりと下っていって――)
ご案内:「山中」からオーベさんが去りました。
ご案内:「山中」からレティシアさんが去りました。
ご案内:「設定自由部屋」にサダルスウドさんが現れました。
ご案内:「設定自由部屋」からサダルスウドさんが去りました。
ご案内:「大図書館・閉鎖書架」にサダルスウドさんが現れました。
ご案内:「大図書館・閉鎖書架」にオリエさんが現れました。
■サダルスウド > 「本は良い。綴じられた事実は勿論のこと、その佇まいから香りに至るまで素晴らしい逸品だ」
「今後どれだけ利便性に富む魔具が現れようと、アタシが本を手放すことはないだろう……」
そこが地上なのか地下なのか、そもそも先程まで在った図書館の中なのかさえおとないびとは知ることはない。
本の香りが満ちる薄暗い書架。その天井の高さは、壁一面を敷き詰める書物の蔵書量にそのまま比例する。
発光する草が活けられた花瓶が幾つかだけ。それが明かりを守る広々とした空間。
その中心には簡素なテーブルを挟んで席が向かい合う。
読書用ではなく相談用の卓である。両肘をついて乗り出すならば、若き司書は勝ち気な笑みを浮かべて眼鏡の奥の瞳を爛々と輝かせた。
「――さて」
「ご無沙汰しております、男爵閣下。本日はどのような本をお探しで?」
組んだ指に顎を乗せ、にまりと笑みを浮かべてみせた。
四角四面に着込んだ服に、溌剌とした肉体を押し込みながら。
様々な噂飛び交う眼前の女性に対しても、何ひとつ臆することのない微笑が「商談」の如何を問う。
彼女の望む情報に対して、それに見合った対価を請求する。
即時提示できるものもあれば、日数を頂戴する場合もあるが、その正確性が「図書館」の評判に一役買っているのは間違いない。
■オリエ > 「本に書かれてある知識は何者にも勝る……」
「ーーという貴女の考えには多少なりとも賛同いたしますが、相変わらずの本好きのようですわね」
まるで陰気臭い話をするために設けられたような薄暗さに、
馴染みの行かないオリエは、然し自室に似た本の香りの雰囲気だけはそれなりに気に入っていた。
以前訪れた時よりも壁の棚が一つ増えていることを知れば、如何に彼女の商売がうまくいっているのかを知らしめていた。
薄暗さの中で爛々と輝く瞳に、芳醇したワインのような瞳は訝しげな視線向けた。
彼女との『商談』とは、他人の素性調査…所謂ところの探偵業のようなものだった。
「今日は、そうね……最近私の周りをちょろちょろと嗅ぎまわっている方がいらっしゃるようで……」
「その方が一体何を考えているのか、調べていただきたいのです」
しかし、探偵と一口で言っても彼女の解決策はやや特殊なものだった。
実態の知れぬ魔術を使い、相手の思考と過去を知ることが出来るという特殊な術を使うこと。
閉心術を持ってしても彼女の前では通用しない。全て、本のように読み解かれてしまう。
気品さというよりも神経を逆なでするような静かな猫なで声で、オリエは探しているものを尋ねた。
本来図書館で本を探すのであれば、肝心の著者を口にしなければならないというのは、
この場所を幾度も利用している彼女は認知している。
然し、サダルスウドを伺う欺瞞に満ちた紅い瞳は、まるで臆すことのない微笑みを睨んでいた。
■サダルスウド > 「それはそれは……」
「さて懐の中身は問いますまい、ですが此方の書架の本は貸し出しにも相応の額を頂きますし……」
組んだ指の上に顎を乗せて、上目遣いをするように眼前の令嬢を見返した。
相変わらず昏い瞳をした女だと思うが、さてそこに探りを入れるよりも下世話な読書に浸ったほうがよほど楽しい。
後の楽しみのためにいまの仕事を終えんとしてその瞳を細めると、肩を竦めて戯けてみせる。
「著者のわからぬ本を提示することもアタシにはちょいと出来かねる」
「調べて欲しいのなら日数をいただく場合もあるが、さて……閣下?」
「少々不躾な問いになるけれど、その鼠に心当たりは? 名前とか……」
身辺調査という意味での探偵業は生憎と専門外である。
指定された者とすれ違う、あるいは遠巻きに視界に収めるだけで蔵書に加えることができる歩く図書館は、
必要事項を問うように、おとがいを軽くしゃくって発言を促した。
■オリエ > 「勿論、何度も貴女の図書館に関しては一切の信頼を置いているつもりですわ」
「ーーええ、そうね。ネズミの飼い主くらいにはおおよそ検討はついています」
一切の表情を崩さない彼女の心裏を伺い知れるわけもなく、疑いに満ちた視線を緩めること無く、ため息を付いた。
当然自分が要求しているのは身辺調査ではないことを承知しているオリエはその鼠を、歩く図書館ではないかと疑っていたのだ。
彼女の秘密は厳重ではあるものの、それが一度依頼に変われば、その報酬に応じて脆弱な金庫に変わってしまう。
他人への欺瞞と劣等感の強いオリエは、疑いの態度を崩すこと無く、然しそれを口にだすわけでもなく話を続けた。
思ってもいないことをスラスラと読み上げるように艶のある唇を開かせて。
「ゴッドバルト伯爵の著書はお持ちだったでしょうか?」
「あのお方の本がどうしても読みたいのです」
■サダルスウド > 「成る程、お目が高い」
指定された著者に対しては打てば響く即応で頷くと、背筋を伸ばした。
次の瞬間、手品のように、錠の施された書物が司書の手に握られている。
乙女の日記のような構造でいて、分厚く物々しい装丁の書物には、何を憚らず赤裸々に著者の全てが記されている魔書だ。
盗むことは能わない。これを読む事は術者たる司書と、それを許された「客」のみ。
それ以外には文字を文字として認識することが出来ないのだ。
「では……」
「拝観料は、これほど」
それを肥沃な胸を押しつぶしつつ抱きかかえながら、細指を二本立てた。
――二百万ゴルド。紛うかたなき大金である。
それは著者の情報を漏らした事によって振りかかる自らの危険を含めた額だ。
だが決してこの司書の蔵書を閲覧するに、高いと言う者はそうそう居ないのは、情報屋としての確実性を物語る。
「お持ちですよね?」
笑みを深める。後払いは認められず、そしてこの問いかけに対して退席という返事も許されていた。
■オリエ > 「……やはり、お持ちでしたか……」
「ええ、勿論。当然持ってきていますわ。もう少し値が張るものだとも、思っていましたが」
男爵家の令嬢とはいえ、その金額は端金と言うには行き過ぎた金額だった。
特に、リンクス家のような過去の栄光しか残っていない家にとってはその金額は十分すぎるほどの金額、
もしくはそれ以上詰まっているだあろう金貨の詰まった袋を、迷うこと無くオリエは商談の机の上へ放った。
そこには彼女の情報が確かなものであるということに限り信頼をおいていた。
「ーーこれだけあれば、十分でしょう?」
笑みを深める彼女に対して、まるで身を切るような大金を惜しげも無く投じる姿は、劣等感なりの意地だった。
足元を見るような商売ではあるものの、彼女に対しての評価は高い。
それこそ疑ってしまいたくなるほどに。
しかし、その視線は肥沃な膨らみへ映る。彼女の魅力はその有能さを持て余すほどの、美しさを持っていること。
それは、生粋の同性愛主義者であるオリエの眼鏡にかなうほどの美貌を持ち合わせていた。
「多く受け取れない、というのであれば確認していただけますか…?」
「それと…どうせなら、サダルスウド…貴女に読み上げて欲しいですわね」
6百万ゴルドは下らないであろう中身の詰まった袋。
サダルスウドが、それに少しでも目を奪われているのであれば、
オリエはまるで子供が強請るようにして、商談の席を離れ、背後から彼女の肩を回し、
彼女ほどではないが、人並み以上の膨よかな質量をむにりと背中に押し付けた。
■サダルスウド > 眉を上げて不思議そうに、眼前に積まれた額から、過分な支払いを成した客へと視線を移す。
それが彼女の虚勢に似た示威行為であることもサダルスウドはそのものずばり「見て知って」いる。
顎を撫でて鑑みてから、レンズの奥の瞳を伏せると苦笑して。
「余分な支払いは受け取れないね。しかし私の蔵書にそこまでの価値を見出してくれるというのなら素直に嬉しい」
「"精算"はカウンターで行って欲しいね、閣下」
手元の呼び鈴を鳴らし、薄闇の中にか細い音が響き渡ると、
書棚の根本の影がずるりと伸び上がり、机の足を蛇のように這い登って、重たい金貨袋を丸呑みし、書棚へと帰っていく。
お釣り、という言葉には重すぎる額をカウンターで用意する旨も既に手配済みだ。
さて、背後に回った事を咎めもせず、背中にくっつく柔みには舌鼓さえ打つ始末。
「おっ……と、いけない。そんなことをされてしまったら、落ち着いて読めないかもしれないどころか」
「あらぬ事をしでかすかもしれないね、どきどきするよ」
「では――伯が、閣下の近辺を探らせた者と、その理由について――ページは――ここだ」
肩越しに振り向いて親しげに笑みながら、手元に視線を改めて戻すと錠を外す。
ぱらりと適当に開いたページの文面。章題の如く綴られたのは十日前の日付だ。
『図書館にて』
「読めるかい……? 男爵、といってもリンクスは中々由緒正しい家柄だ。潤沢な資産、加えて現当主はどうやってかコネクションを広げている」
「そのコネクションかもしくは本人に弱みがないか、要するに強請るタネを探したかったようだ」
「さて本題、その耄碌したゴッドバルト氏は、さる信頼できる情報屋に身辺の調査を依頼したようだね」
「"なぜか"三日前に病に伏してしまったから行動には移せていないみたいだけど?」
「二百万ゴルドと引き換えに思わず興奮して倒れてしまうくらいの情報(ネタ)を提供した情報屋は」
「――――サダルスウド。と言うらしいね……きっと美人で聡明に違いない」
と、挑発的な笑みで、再び背後のオリエを見返した。
■オリエ > 「……あら、用意が周到ですこと。本でこんなことまで、出来るんですのね」
重たげな胸の質量を背中へ寄せ、ドレス越しの軟な胸の弾力を伝える。
咎められないことに気を良くしたオリエは、手のひらを腕へと回し、脇へ滑りこませて、顎を肩の上に乗せた。
彼女がが開いたページを覗き込む瞳は悦を浮かばせて、遠慮無く彼女のスラリとした身体つきを撫で上げる。
「あら、やはりあそこの腐れ当主でしたか……」
「ーーそして、まさか私の周りでそんな優秀な情報屋がいただなんて思いもしませんでした」
「ゴッドバルトは一体どんな情報を、手にしたのでしょう?」
「その美しい情報屋に…なんと、教えてもらったのかしら?」
挑発的にこちらを見遣る瞳へは最早欺瞞といった感情を抱いてはいなかった。
こ挑発してくる相手は決まって、それを望んでいるということをオリエはよく知っている。
唇を耳元へ寄せて恋人へしてやるような甘い囁きで尋ね返す。
加えて、彼女の身体を撫で回す手のひらは、腰へと滑り、その肉付きの良さを確かめるように円周を描くようにして弄って、真意の程を確かめる。
尤も、自分を相手にして逃げ出さないという時点で、こうされることを望んでいるのだろうとオリエは見据えていた上で。