2015/10/28 のログ
魔王アスタルテ > (アスタルテは不敵な笑みから、子供のような無邪気な笑みに変わる。
 その口調も軽いものに変わった)
「勘違いしていないから、大丈夫だよー。
 最近ね、魔族の村が人間率いる部隊の襲撃にあったんだよね。
 だからそのせいで、魔族側もまた人間を敵視する者が増えているわけだよー」
(にこりと笑顔で説明する。
 襲撃しちゃったという事は村側も守らなきゃいけないというわけだ。
 襲撃した魔族が本来殺されてもおかしくない状況で、ルシエラは生かして彼等を追い払ったわけだから、その礼はちゃんとしないとだね。
 だから、こちらから仕掛ける事もないよ)

「そっかぁ♪ 君もそういう面で少しは成長しているわけだねー。
 それでその楽しい相手というのは、どれ程見つかったの?」
(きょとんと首を傾げて、ルシエラに質問してみる。

 しかしルシエラは昔のような破壊衝動が収まっていない。
 次の言葉がそれをよくあらわしている。
 結局、君はそういうわけだねー。あはは♪)
「そりゃ残念な事だねー」
(アスタルテは翼を広げて、ルシエラの傍らにふんわりと着地する。
 女性に向けた視線の理由は『この娘もけっこー可愛いかもー♪』という理由だが、
 なんだかんだで、目の前のルシエラの方が可愛いね!)

ルシエラ > 「魔族の村も…まったく、だからそういうのは駄目だっていうのになー
やるんなら強いの同士でやれば良い、だからそういう事になるってのにー」

戦うのも襲うのも、ちゃんとした目的があるならやるのは勝手だ。
はっきりした目的もないのに弱い者まで巻き込むのは、好かない…少なくとも、今の自分は。
…そう考えるのは、きっと自分がそうであったから。
自分の力によって何でもかんでも壊し、その感覚を楽しんでいた、そんな自分。
はふ…溜息を一つ、複雑そうな表情だ。

「私だってまだまだ成長するさ、あー…こっちはあんまし成長してないけどねー?
うーん…飲んで食べて楽しんだ相手は居るよー?」

こっちは、の言葉に視線が自分の体に向いた。
不老不死のように成長をしない体、まあ、これは仕方ない。
楽しい相手に関しては、まだ起きたばっかりだからどれ程って言うほど見付かってないよー?と付け加えた。

「まったくだよー…ちょっと力を使ったら簡単に壊れちゃうし、こう…もっとぶつかれる相手ってのが欲しいものだねー?」

困ったものだよ、と言葉を紡ぎながら頬を膨らませ不満気な表情を浮かべた。
傍らに降り立った相手を視線で追う、何だか見比べられているみたいな感じだ。
間違いなく背負った女性の方が女としては上に見える。
やはり男としても女としても、こういった女性なんだろうなー…とか何とか思う少女であった。

魔王アスタルテ > 「あはは♪
 強い者同士の戦いだけで解決しているなら、弱き者が蹂躙される事もなくてもっと平和だよー。
 王都にしてもそうだよ。
 強い立場にる王族や貴族は策謀を巡らせて自分の地位を確立させようとし、そして弱い立場の平民や奴隷が割を食って蹂躙されるんだよ。

 弱い者は結局、強い者の行動に巻き込まれていっちゃう事も多くなるんだよねー」
(力が全てだとは言わないけど、結局のところそれに抗おうと思ったら力がいるわけだよ。
 悲しい事だけどね、それが現実。
 特に戦争ともなれば、弱い人なんていくらでも巻き込まれる)

「そっちも君はまだ成長している方だよー。
 あたしに比べればねー♪
 君は、食べるのは好きだね。
 お肉が大好物なの?」
(ルシエラの外見もまた幼いけど、それでもアスタルテよりは成長してるよ!
 まあ、目覚めたばかりだと、相手も見つかってないよね)

「この世界には強者は多いからねー。
 ぶつかれる相手は、けっこー見つけられるんじゃないかな?
 最も君からすれば大半が、すぐぶっ壊れてしまうガラクタになっちゃうだろうけどねー♪」
(にっこりと愉快げに笑う。

 そしてアスタルテはルシエラに歩み寄り、その金髪のウェーブヘアに軽く触れようとする。
 この魔王、可愛らしい女の子が大好きである!
 ルシエラの背負っている女性もまた女としての魅力があるが、ルシエラもまた可愛いよね!)
「君の髪は、とってもサラサラしているねー」
 

ルシエラ > 「分かってはいるけど、やっぱりそうなんだよねー
あー…もう、本当にこういうのって一度考え出すと頭が痛くなってくるねー」
理解はしているのだが、やはり許せない。
とはいえ、結局のところは自分も強者側なのだ。
それだけはどれだけ否定しようとも変わらない。

「あー…うん、なんだか比べる相手が間違っている気がしないでもないけどねー?
もちろん、あの食感とか、味とか、病み付きになるねー」
うん、自分を見て、そういわれて相手を見て…なんというか、何か物悲しい。
肉の話があがれば、思い出してかじゅるりと気が緩んで音を立てる。

「多いのかなー…なんか、ぜんっぜん会えないんだよねー?
まあ、ずっと探していればその内に会えるって期待はしてるんだよー」

うんうんと頷きながら、思いを馳せるように空を見上げる仕草。
…その思いを果たせる相手が目の前に居るような気はしないでもない。
と、伸びる手が髪に触れようとするが…触れられる事に特に警戒はない。
その手が髪へと触れれば、柔らかな手触りを与える。
そこまでしっかりと整えられている訳でもないが、それなりに気は使っているっぽいか?

「んー…?
あっはっはっ、まあ、数少ない自慢出来るところだしねー?」

声を上げて笑う少女、自慢できるところが少ない、というのはちょっと虚しい気がする。

魔王アスタルテ > 「それにしても、君はけっこー強きを挫き弱きを助ける側なのかな?
 今だって、美味しい物のためだとか言って、人助けしていたからねー」
(弱い者は強い者に蹂躙されちゃう事も多いよ。
 だけど、強い者を助けられるのもまた、強者なんだよね。
 強者がいるから、こういう村で人々が暮らせていける)

(幼い外見同士。まあ比べるのは虚しいもので)
「あはは♪ そうだねー、比べる相手になるべきは君が背負っている人の方だよねー。
 わぁー、おいしそうに語るね♪
 あたしも何かお肉を食べたくなってきたよー。
 今日のディナーは、ファイヤーワイバーンのステーキにしようかなー。
 あの食材は貴重だから中々手には入らないけれど、その分ジューシーで舌に蕩けちゃうんだよね♪」
(よーし、今日のディナーが決まったよー。
 貴重な品でも、魔族の一大勢力を掌握する魔王なら簡単に手に入っちゃうよー。
 魔王城のシェフに、ファイアーワイバーンのステーキをお願いしちゃおう。
 最近、魔王の職務で忙しかったからねー。
 自分へのご褒美も必要だよ)

「いずれ君を満足させてくれる強者とも邂逅できるんじゃないかな、多分。
 まあ運が悪いと、ずっと力を出しきれないままかもだねー」
(ルシエラの目の前にいる強者たる魔王アスタルテ自身、そして魔王軍四天王はこの際ノーカンと数えている。
 まあ『それあたしだよ! あたし!』と名乗っちゃってもいいんだけどね。
 それは、ルシエラに次会えた機会でもいいかな。

 女の子の髪っていいよねー。
 ずっと触っていたくなっちゃう手触りだよ)
「そうかなー?
 ルシエラちゃんは、他の部分もステキで可愛いと思うなー。
 成長していない身体というのも、ちっちゃくて愛らしいものだよ」
(と、ちっちゃい幼女が仰っておりますが。
 アスタルテは、ルシエラの髪を離して、にこりと手を振る。
 このままルシエラをいじめて可愛がっちゃう展開にしたいけど、残念ながらアスタルテはまだ魔王の職務が残ってるんだよねー。
 だからルシエラを可愛がっちゃうのも次の機会かなー)

「それじゃあ、あたしはそろそろ行くねー。
 またねー、ルシエラちゃん」
(まず背後の魔王軍四天王諸君が、転移魔術で姿を消す。
 最後にアスタルテの身体が闇と化し、その場から消えた)
 

ルシエラ > 「よく分からないけど、結果的にそうなっちゃってるみたいだねー?
だってほら、強い者が美味しい物を作ってるなんて見た事ないしー?」

人間にしても、魔族にしても、力を持つ者が雑用をしているとか聞いた事がない。
中にはそういうのを好む変わった者が居るかもしれないが…少なくとも、自分は見た事がない。
そういう者が居るのならば…自分はそう見られない事も起こったかもしれない、そう思う。

「………うん、そうだねー
んふふー…世の中には隠れた美味しいものもたくさんあるのだよー?
ちまっとした見付からなさそうな隠れた良店とか探してみるのがお勧めだよー」
小さな村とかも巡るようになってから見付けた意外な発見。
大きな有名店も良いけれど、人の目に触れないような小さな店も良い。
家庭料理とかだって案外美味しく感じるもの。
なんか後ろに従者を従えている立場っぽいし、と、その手のものもと伝えてみた。

「まあ、会えるも会えぬも運次第、ってやつだーねー?」

ああ、うん、自分で言ってたんじゃないか。
それならば、きっと会えると信じよう、そう心に誓っておいた。

「私の素敵で可愛い部分、ね…うーん…」
復唱し、ちらりと目の前の相手を見る。
あれ?それってむしろ目の前の君の方が当てはまってなくない?
なんかそんな事をふっと思った、でもまあ、その相手がそういうのだから…多分、そう?
なにやら良からぬ事の対象にされているみたいだが、心の中まで読めるものでもなし。
きっとそれは、前の会話も踏まえて次に何かあるのかもしれない?

「おっと、それじゃ、また会おうねー」

ひらりひらりと手を振って、消えていく者達をお見送り。
消えた後、女性をちゃんと村の者達のところに届けたら、自分も帰ろうと。

そして、ふと思った。
………そういえば、私、結局は相手の名前を思い出してなかった気がする、と。

ご案内:「ある小さな村」から魔王アスタルテさんが去りました。
ご案内:「ある小さな村」からルシエラさんが去りました。
ご案内:「ワルセイのアジト」にワルセイ・イダーヤさんが現れました。
ワルセイ・イダーヤ > (カリカリカリ……呼吸音以外無音のワルセイのアジトに筆音が響く。男は、カルテを作成しつつ、今日来る大切な客について考えていた。)

……シャロン……か。

(そう、先日自分の命を救ってくれた少女。今日は彼女に礼をするために色々準備をした。がたりと席を立ち、男は客室に入っていく。そこで、あらかじめ爽やかで胸のすっとするお香をたいておく。このアジトは男にとっても少々…実際はかなり薬草臭い故。そして、味がよく、リラックス効果の高い薬草を乾燥させた薬草茶葉で茶を作っておく。少女にとって初めてくるであろう男の居住区で、緊張させないように…そして、殺風景なアジトの客室に、一輪の花の花瓶を置いておく。少しはましになるだろう。)

……っふ。

(俺は何をしているのだろうか。そう言う自傷の苦笑が浮かぶ。そして、男の目は、客室に大きく飾られている、自分の妹の肖像画を見上げる)

聖女症候群…命を助けてもらった相手に恋のような気持ちを持ってしまう心の迷い…か。

(無論、男は少女に感謝の心以上のものは持っていない…と思っている。だが…)

もしかしたら、お前を彼女に重ねちまってるのかなぁ……なぁ、ナピ。

(そんな妹への裏切りと、少女への侮辱かもしれないような気持ちがあるのかもしれないと思ってしまう。考えが堂々巡りになる前に頭を振って)

さて、もうそろそろか……

(男は懐中時計を見て、扉がノックされるのを待つ。)

ご案内:「ワルセイのアジト」にシャロンさんが現れました。
シャロン > 釣瓶落としの如くに日は落ちて、宵闇は深く街を包む。ぼやりとした明かりの見える中、少女はゆっくりと進んでいく。――アジト、というからには目立たぬほうが良いだろうと青を隠す外套を纏い、密かに人払いの術式で人目を避けての道行き。やがて地図の通りの建物の前までたどり着くと、手紙に目を落とす。入り方は、確か――。

「……こう、でしたよね。――それにしても、人とお茶を楽しむというのは久しぶりです」

ノックの音を引っ微かせてから待つ最中、懐の包を確かめる。任務の合間に焼きあげておいたクッキーだ。包からは僅かに甘いバターの香りが漂う。どちらかと言えば固めの、ビスケットに近いそれは戦場のお供にする保存食。――若干バターを奮発してしっとり目には仕上げてあるが、それでも単純な菓子よりは随分固く日持ちもする。そのようなものを選んだのは単純、少女にとって最も得意な菓子がこれだったから。付け合せのジャムを数瓶、クリームを二種類、それらも道中に買い足してきたからお茶をするには十二分のはず。ともあれ。

「さて、後は彼に案内してもらうのを待ちましょう。――もうそろそろですし」

戦場に慣れ親しんでいるがゆえに、気配の察知も敏感で。扉向こうの人が動く感覚を見つけると、自然と佇まいを整える。少女も女の子――男性には綺麗な姿を見せたいのである。

ワルセイ・イダーヤ > ……来た、か。

(男は、ノックの音が聞こえると同時に、客室の扉が少女に渡した地図にある入り口とつながるのを感じて、椅子から立ち上がり、扉を開ける)

……ようこそ、シャロン。俺のアジトに。

(そう言いながら、少女を客室内部にエスコートして。扉をくぐれば、あらかじめたいておいたお香の爽やかな香りを感じられることだろう。そしてもう一つ、目に入ってくるのは、男の妹の大きな肖像画で。)

……さ、座るがいい。

(言葉は少ないが、きちんと昔たたき込まれた貴族のエスコートの仕方で。少女をソファに座らせて。)

……ふむ…なかなかに良い香りではないか。

(爽やかな香りや薬草の香りに慣れた男には新鮮なバターの香りを感じてそうつぶやきつつ、男は、扉に内側から鍵を使ってカギをかけるて)

では、何もないところで済まぬが、茶を持って来るからくつろいでいてくれ。

(そう言って、男は茶を用意し始める。)

シャロン > 「えぇ、こんばんは。お招きに預かり光栄ですよ」

柔らかなスカートの生地を爪弾いて、軽く持ち上げ一礼。そしてそのまま、中に入ると、彼のエスコートに身を任せた。導かれた客室は瀟洒な作りで、調度品も程よい渋さがある。――そして何よりも目を引くのは、大きな少女の肖像画。恐らくはあれが、彼の妹なのだろうという推測を付ける。死に際に思い起こすような相手が大切でないわけがないのだ。ついで視線を落とすと、彼の言葉には一度頷くと、ゆっくりとソファーに腰を掛ける。上質なスプリングの感触が柔らかくて心地よい。

「あぁ、そうですね、こちらを――戦場での保存食になる固めのクッキーですが、少しばかりバターを多めにしましたからお菓子として食べられるかと思いますよ?ジャムとクリームも買ってきましたから、簡単な御茶会には十分堪えられるかと」

くつろいでくれ。そこの言葉には有りがたく従い、ソファーの感覚を楽しむ。体重をかけると沈み、力を入れると浮き上がる。なんとなく楽しくなって、ぽふ、ぽふ、と体を揺すりながら、満足気に微笑んだ。案外子供っぽい面もあるらしく、彼が戻ってくる間際まで、束の間の遊びにふけるのだった。

ワルセイ・イダーヤ > ……っふ、ソファの柔らかさがお気に召したかね?

(そう、少女の年相応の反応が新鮮かつこの間の力強い様子とはまた違って面白く。ふっと口元を柔らかくしながら男はティーセットの乗ったトレーを持ってくる。)

この薬草茶は緊張をときほぐしてくれる効能のあるハーブを中心にブレンドしてある。そなたの口に合えばいいのだが…

(そう言って男はティーカップに薬草茶を注ぐ。色は爽快感のある緑で、香ばしい芳香が漂う。そして男は自分のカップにも茶を注いで、少女の向かい側の椅子に座る。)

……では、始めようか。俺の、そなたへの感謝を込めた茶会を…な。

(そう言って、ティーカップを掲げ、一口飲む。うむ、男にとっては飲みなれた香ばしくどこか甘味のある薬草茶の味だが、少女にとってはどうだろうか…そう思いながら少女の反応を見て。)

シャロン > 「うぐ……バレていましたか?――良いではないですか。普段は堅苦しすぎて、こうして寛げないんです」

彼が茶を淹れてくる間に、少女は少女で開いた包みの紙の上に何枚ものクッキーを並べて、その上にジャムやクリームを乗せていく。濃厚なクロテッドクリームや酸味のあるマーマレード、香り豊かなアップルなど、多種多様な果物のジャムを一枚一枚に塗りたくる。花畑のような情景を机の上に作り上げたと同時、肝心の茶がやってくる。――色味は爽快感があり、ミントかその類だろうと当たりをつける。とは言え、その割には匂いが鋭い訳でもなく、むしろ丸く香ばしい。どこか不思議な気配のする茶だった。

「ふむ、何種類かのハーブが混ざってるようですから、私の鼻では嗅ぎ分けられそうにないですね――では、頂きます」

一礼して、略式の祈りを捧げると、そっとお茶に手を付ける。口元に運び、まずは人啜り。甘く香ばしい液体が口の中を満たし、熱さとともに喉奥へと抜けていく。少女にとっては、今までに味わったことのない味だった。かわりに、と少女は広げたクッキーの中から、りんごのジャムを塗ったものを差し出す。僅かにシナモンの掛かったそれは、アップルパイを髣髴とさせる風味。問題は、生地が固めということ。かじればさくさく、というよりはざくざく、といった印象を受けるだろう。

ワルセイ・イダーヤ > …っふ、どうだ。悪く無い味であろう?

(そう言いながら、男はアップルジャムの塗られたクッキーを渡されれば、ざく、ざくとかじって。歯ごたえは固めだったが、男には好ましい感じで)

……うむ、旨い。クッキーなど久方ぶりだが、こうも旨かったかな?何分、作ってくれる相手がいないし、そもそも甘味を食わぬ故な。

(そう味をほめつつ、お茶を再び一口。)

ふぅむ、料理や菓子についての知識はからっきしなのだが、こうもいろいろあるとどれから食べようか迷うな。さ、そなたも遠慮せずに食べるがいい。

(そう言いつつ、男は並べられたクッキーを一種類ずつ口に運びながら、茶会の始まりを楽しむ)

……しかし、こう誰かと茶会をするなど何十年ぶりか…

(そう感慨深げにつぶやいて。もともと社交的ではない男にとって、女性と茶を飲む機会など、ここ数十年無かった。)

シャロン > 「えぇ、すっきりしているかと思えば、暖かく包むようで――不思議ですね。ですが、美味しいです」

未知との遭遇ではあるが、美味であるのが好ましい。普段は加護による毒味などもするのだが、今日の所はそのような構えた所は全く見せない。――相手に悪意がないのはわかっているし、仮にあったら自分の見る目がなかっただけだ。故に、少女は信頼を示すためにも、疑いを持たずに茶を嚥下する。暖かなお茶が体を温め、わずかに火照りを帯びてくる。頬が朱に色づくのは、ほわほわとした温もりに包まれたからなのだろう。

「お口にあったようなら良かったです。何分、元が保存食なので中々不安だったのですが……あぁ、クリームを塗っても美味しいですよ?」

勧めながら自分も一枚。固めのクッキーは歯に心地よい。ざくざく、ざくり。噛みしめればジャムの酸味が、クリームの甘味が、それぞれ伝わってくる。――とは言え夜、あまり食べると女の子としては若干不安になるのが玉に瑕だった。

「――おや、そうなんですか?其れならば、ゆっくりと楽しみましょう。素敵な御茶会ですからね」

一杯を飲み干すと、どこか夢見心地に一息吐く。街道で出会った時と違い表情豊かなのは、警戒する必要がなかったからだった。

ワルセイ・イダーヤ > (男は、茶をほめられればほっと一息。少女の少々緩んだ表情を見れば、いろいろ手を回して、貴重な薬草を集めた甲斐があったというもの)

……っふ、保存食とて馬鹿にはできぬというわけだな。

(そう言って男は勧められたクリームの塗られたクッキーをかじり、お茶を飲む。実に温かい、久方ぶりの茶会。少女が茶を飲みほせば、茶を注いでやって)

……っふ、夜に茶会に誘っておいてあれだが、飲みすぎると眠れなくなるぞ…まぁ、その場合は、軽い睡眠薬か、眠気取りの薬草を処方してやろう。

(少女の表情豊かな姿を見て、いくら騎士でも、まだ少女なのだなと改めて感じる。そう、これくらいの少女はこれくらい表情豊かなのがいいのだ…もう表情すら変えられない、我が妹の状態は、間違っている。そう改めて思う。そして、ゆっくり楽しもうといわれれば。)

あぁ、無論だとも。お互いに楽しめなければ、礼にならぬからな。なぁ、ナピよ。

(そう、この時、男の気も、茶によって緩んでいたのだろう。だから、口を滑らせる。シャロンの名前を、妹と間違えて言ってしまって、しまったという表情に…)

シャロン > 「ふふ、私の一番の得意料理ですからね。ついでお鍋と炒めもの――保存食や大勢で食べるものを作るのが得意なんですよ。騎士団で活動する時は大所帯ですからね?」

飲み干した杯には新たなる茶を。不思議とあと引く味のお茶は、みるみるうちに少女の中に消えていく。飲み過ぎると眠れなくなるらしいが、そもそも睡眠時間は短いほうだから支障をきたすわけでもない。――4時間も眠れれば良い方である。それでも若さゆえの活力で日々を乗り切っているのは秘密だった。そしてついうっかり食べ過ぎてしまうクッキー。これは運動をしなければなるまい、と後悔する量だ。――もう少しお肉がついたほうが男受けする、等と言われることもあるが、少女からすれば今の体が軽くてちょうどいい。帰りは走りですね、と内心で結論付ける。

「えぇ、そうですね――ん、妹様はナピさんと仰るのですか。――あぁ、もしも聞かないほうが良かったのなら、聞かなかったことにしておきますよ。誰しも秘めておきたいことはありますから」

彼にとっては何よりも大切なのだということは、肖像画を見るだけでも分かる。――可愛らしい少女。其れが彼の生きる理由なのだろう。であれば、そのような大切な物に安々と踏み込むわけにもいかない。故に、少女は彼が忘れてくれというなら、心の底に閉まっておくつもりで居た

ワルセイ・イダーヤ > ……すまぬな、シャロン…つい、な。

(男は、名前を間違えてしまった非礼を詫びて。少女が聞かなかったことにするといえば、正直そのほうがあり難いと思えて。だが……)

……なぁ、シャロンよ。これから、少し俺の懺悔に付き合ってはくれぬか?

(そう、男は言ってしまって。)

せっかくのそなたへの礼を込めた茶会を台無しにするのは心苦しいが……だが、せっかくだから聞いてほしいのだ。俺の、罪と、妹が生きていたという証拠を…

(せっかくの機会だ。男は、自分の妹…ナピの話と自分罪の話、それを聞いてもらうことで。気持ちに区切りと整理をしようと考えた。シャロンの清らかな心優しさなら、受け止めてくれるのでは…そう考えたのだ。)

……っふ、つくづく俺は弱いようだ。そなたの優しさに甘え、罪を吐きだして楽になろうとしている。

(そう自傷気味に、痛々しく笑って。)

シャロン > 「――ふむ、構いませんよ。騎士である前に神官です。懺悔する者を拒む訳にはいきません。それに……」

彼が胸に秘めたものを吐き出したいのであれば、其れを受け止めるのも自身の役目だ。重荷を背負うのが辛いならば、その半分を分かち合うのも時には有りだろう。行き詰まる時に座って、休みながら考えるのも有りだろう。時に凪、時に止まり木、時に夜。辛さに直面した者には、その分の安らぎを。故に、彼にも与えよう。そんな思いから。

「……ただし、このお話は神ではなく、私への懺悔にしておきましょう。貴方の抱える罪は、神によって有無を決められたいものでもないでしょうから」

お茶を含み、嚥下する。普段、懺悔の前に行うような儀礼はせず、ただ静かに言葉を待つ。それで彼の心が少しでも楽になるのなら、力になろうと決意しながら。

ワルセイ・イダーヤ > ……感謝する。

(男は、少女の気高い心に感謝し、椅子から移動し、少女の前で膝をつき、手を組む。古き貴族の懺悔の姿だ。)

神官シャロンよ。俺には一人の妹がいた。名前はナピ。とても優しく、明るい子だった。俺の、大切な宝もの以上の存在だ。彼女はいつも俺に言っていた。いつか、大きくなったら騎士さまのようになるんだと。俺はそれを応援していたよ。

(妹のことを語る男の表情は優しく暖かで、いつものしかめっ面は想像できないほど。だが、段々と険しくなっていく。)

……だが、シャロン、ちょうど妹がそなたくらいの年の時だった。妹は謎の大病を患ったのだ。足のつま先からだんだんと感覚がなくなり、肺か心臓に達すれば死に至る、なぶり殺しのような病に…それでも、あの子は気丈夫にも笑っていてな…それが、俺にはつらかった。だから俺は、医者になった。妹を助けるために…だが、現実は厳しくてなぁ。妹の病魔が体の半分まで行っても治療法は見つからなかった。

(そして、男は、絞りだすように話す。)

…だから、俺は罪を犯した。妹を攫い、同意を得ずに冷凍保存したのだ。あの子の体を。いつか、あの子の体が直せる時代まで肉体を保存するために…もう、六十年以上前になる。これが、俺のひとつ目の罪だ……っぐ、ごほ、ごほ…。

(男が、自分の罪を告白するのと同時に、男は咳き始め…小瓶から乳白色の液体を飲む。もし、嗅覚が鋭ければ、それが人の乳であると推測できるかもしれない…)

シャロン > 「……謹んで承ります」

彼が感謝したいのであれば、其れを受けるのが情だろう。見覚えのある懺悔の姿勢は、古き貴族のもの。――60年、と言っていただろうか。目の前の彼が跪く。その様子を見ながら、話に耳を傾ける。その表情は真剣そのもの。彼の言葉は齢14の少女には重いものばかりではあるが、しかしそれでもしっかり抱える気だった。

「――ん、貴方が妹様を大切にしていたのは、よく分かりますよ。えぇ――それで……?」

そっと話しの先を促す。穏やかな彼の表情が、話の内容とともに少しずつ険しくなっていく。――つま先から感覚が無くなる病。神官の間でも未だに治療法が見えていないという病ではなかっただろうか。法術でも進行を遅らせるくらいしか今だに出来ない大病。或いは勘違いかも知れないが、想像するだけでも、その絶望は計り知れないものだろう。歩けていた自分が歩けなくなり、ひいては全てを頼らなければいけなくなる。それでも笑顔を浮かべていた彼女は、何を秘めていたのだろうか。そこまで考えて、ふと思考が止まる。――人の感情を決めつけてはいけない。故に一度、思考を戻す。

「……罪、ですか。――其れほどまでに、貴方は妹様を失いたくなかったのですね」

彼はひとつ目と言っていた。ならば其れ以外もあるのだろ。目の前、慌てて飲み込む液体は乳白色。僅かに甘い香りは懐かしさを感じさせる。――其れが母乳であるとまでは判断できなかったが、母を思うような懐かしさから連想することはできていた

ワルセイ・イダーヤ > (男の咳きこみが止まれば…男は再び苦しい笑みを浮かべて。)

……っふ。俺は妹が再び元気になった姿を見たい。だが、それまで生きてはいられないだろうことはわかっていた。だがら、様々な薬品や、魔導道具で肉体を改造し、今の若さを保っている…その代償に、母乳を定期的に摂取しなければ肉体が崩壊する。

(そういって、男は瓶を見やって)

……母乳に含まれる、母親から赤ん坊に与えている魔力、俺はそれをすすっている。生にしがみつくために…妹のためといってはいるが、不老が生き物の摂理に反しているのは事実。しかも赤ん坊のための液体を飲みながら…これが、もう一つの罪…さ。

(そう言い終われば、男の目には少し涙がたまっていて)

これが、俺が犯している罪…だ。軽蔑してくれて構わない…だが、わかってくれ。シャロン。そなたは、俺の妹の進むかもしれなかった一つの可能性なのだ…だから、どうしてもそなたに妹を重ねてしまたのだよ…

(そう言い終わると、罪人がさばきを待つように目を瞑って…肖像画は、男からしてみれば冷たくそれを見おろしていて。)

シャロン > 「――そうですか。私は、構いませんよ。貴方の妹様そのものにはなれませんが、私と妹様を重ねて楽になるのであれば」

彼の心の中にある辛さは、体験したことがない故に強烈なのがありありと分かる。それは、聖女として様々な人の悲しみに耳を傾けてきたから想像できること。自ら妹を浚い、氷に封じる苦悩とはいかほどだったであろうか。そして同時に自身が母乳を摂取しなければ自壊してしまうほどに自らを作り変えるのも――。そこまでして愛されているにも関わらず、肖像画の中の彼女は冷たく彼を見下ろしている。其れはまさに、彼女に忍び寄った病魔がなり変わったかのようだった。

「……母乳、ですか。今まではどうやって其れを?――万が一貴方が、子を授かった母を襲いでもしているのであれば、其れは咎めねばなりません。或いは罪なき娘を襲い、孕ませて得るなどという非道をしているのであれば、その罪は刃の下に裁かれることすら有りましょう。其れすら覚悟しての懺悔、なのでしょうけれど」

無論、少女としても情状酌量の余地はあると考えている。だが、それと罪なき多くの人々が悲しみを背負うのは別である。故に少女はまず彼の言葉を待つ。とは言え、一度救った命である。殺すつもりはさらさらなかった。有ったとして、聖銀の刃を突きつけ脅すのが精一杯だ。その程度には、少女も彼の身の上話に絆されていた

ワルセイ・イダーヤ > ……俺は、母乳目的で女を孕ませたことはないし、妊婦を襲ったことはない。ただ、闇医者なんてしていると、娼婦や、奴隷の女の命を救うこともある。その時に対価として、金ではなく、この薬を飲んでもらっている。

(男は、琥珀色のビンに入った薬をとり出して)

この薬は飲んだ対象の乳腺を刺激して、母乳が出るようにする。乳の形を変えずにな。彼女たちは金を持っていないが故に、お安い御用だと喜んで飲んで、俺に母乳を提供してくれる。その母乳で、俺は命を繋いでいるのだよ……っふ、自分でも浅ましいとは思うが、な。

(そう自傷気味に笑って)

すまんな。せっかくの茶会を懺悔の時間にしてしまって…茶を、淹れなおそう。

(そう言って男は再び奥の部屋へと消えていった。まだ、二人の夜は続く…)

シャロン > 「――そういう事でしたら、私は何も言いません。ただ……いえ……その――」

話を聞いて少しだけ迷ったように視線を向ける。そして、ふと呟くかのように。

「……龍の血を使った母乳であれば、貴方の体をより長持ちさせられるのでしょうか?」

それは、裏を返せば、少女が彼の命をつなぐために母乳を作ることを示している。それは、少女が彼のために出来る少ない中の一つのように思えた。おそらく他の娼婦や奴隷などより薬の効きは悪いだろうから、服用した所で一晩が限度だろうが、意識的に加護の出力を抑えれば彼への母乳の提供も可能だろうと思われた。それ故の、提案。そこには彼に何かをなしたいという聖女ながらの感情しかなかった。

「……あぁ、いえ、その……お気になさらず。それではもう一杯だけ、いただきましょう」

恥じらいに頬を染めながら、お茶を受け取る。受け取ればそのまま、そっぽを向いて飲み込んだ。視線を合わせるのは、恥ずかしくて出来なかった。

ご案内:「ワルセイのアジト」からワルセイ・イダーヤさんが去りました。
ご案内:「ワルセイのアジト」からシャロンさんが去りました。