2015/10/21 のログ
■レティシア > (自由気侭に生きている魔族の女は、今日もふらっと男の小屋へと姿を現す。しかし、いつぞやの会話を思い出せば、小屋から少し離れた場所で、すぅっと息を吸い込んで何やら集中するように瞳を閉じれば、直ぐに女の身体の輪郭が歪みだし。次の瞬間、現れたのは、薄金の巻き毛に空色の瞳を持った人間の女の姿。衣装もいつものドレスではなく、白いブラウスに黒のコルセットのベルト、厚手の紺のスカート、ブーツと、森の中を歩くような恰好。自分の衣装に視線を落とし、満足げに頷くと、女は小屋の方へと近寄ってゆく。遠目に井戸の傍で身体を拭いている相手の姿が見えれば、つい喉が鳴りそうになるも、それは堪えて、そちらへと近づいて) …あの、申し訳ないのですが…お水を頂けますか?(魔族の気配は消してはいないから、もしかしたら相手に気づかれるかもしれないが、女の悪戯か、人間の姿で相手の背後から声をかけてみた)
■オーベ > (身体を清めれば最後に、桶に残った水を頭から被る。宮仕えをしていた頃より引き締まったように思う身体には無数の刺青と古い戦傷が刻まれており、かつての戦いを思わせる…人目を気にせず、身体にまとった水滴をぶるり、と身体を震わせ飛ばし、小屋に入って身体の水滴を拭き取り、いよいよ昼寝でもするかな、と思いながら井戸に蓋をしようとすれば、不意に背後から声をかけられる。ひくり、と驚いたか肩を揺らしつつそちらへと振り向き)…悪戯はよしてくれ心臓に悪い。流石に人なら結界にかかればわかる…それが突然、背後に現れたとなれば、同業者か、あるいは―――魔族であろう?(流石に気配だけでは以前に出会った人物だとまでは断定できず。笑いながら彼女の脇を歩きすぎれば、魔術師ならともかく魔族も水を欲しがるのだなあ…と零しながら、小屋の中へグラスか、使っていない水筒の類を取りに行こうとし)
■レティシア > (男に背後から近付けば、その背に幾つもの入れ墨と傷痕があるのが見て取れて、女は今は空色の瞳をスゥっと細めて見つめ。相手へは、いつもとは違う声音で声をかけてみた。驚いた様子の相手に、内心、笑うものの、表情には出さず。しかし、返ってきた言葉に瞳を瞬かせた) ――――――――あら、バレてしまったのね……(はっきりと己を魔族だと言い当てた相手に、面白くないというように肩を竦ませた。しかし、何より、一番、面白くないのは、魔族だと言い当てたクセに、自分だと判らない相手の反応。一度きり出会っただけだから、それで分かれとは無理な話だと言うのに、女は自分だと判ってくれない相手が気に入らないらしい。柳眉の片方を上げると、ツンっとそっぽを向いて) ――何よ、違う恰好で来るのを、楽しみにしてると言ったのは、お前よ?(小屋の中へと行こうとしている男の背へと向けた言葉は、やはり自分勝手なもの)
■オーベ > 突然、背後を取られればなあ…しかも結界の中で。魔族か、魔術士かというのは正直、判りかねたけれど………あ、俺を始末しにきた暗殺者、という線もあったか…恨みは方々で買ってるだろうからなあ…(冗談とも本気とも付かぬ口調でそんな風に言う、どれ、今水を…と小屋の中に向かおうとすれば、背後に掛けられる言葉に歩みを止める)…お…う?そうか、レティか。そうか、そうか、それは悪かった(自分の勘の鈍さにこみ上げる笑いを堪えることなく、くくく、と愉しげに喉を鳴らして、彼女の方へと向き直れば彼女の姿に視線を向けて)…ん、前のドレスも良かったが、今日も綺麗だから安心していいぞ。森の中を歩くには少々品が良すぎる気もするが…(どこぞの貴族の子女ようだ、と付け加える一方で、それにしては供回りがいないのが妙だがな、と細かいツッコミを加え)せっかく遊びに来たんだ、なにか飲むか?今日は良い果実酒がある…貰い物だが…(はて、魔族は酒を嗜むのであったか?といった後で僅かに疑問に思ったりする)
■レティシア > …一体、どうしたら、そんなに恨みをかうのかしらね……(相手の物言いに、呆れるように呟きを漏らした。男の背へとかけた言葉は既に己の正体をばらしてしまうような物。それにより、己の正体が判ったらしい男が、何やら可笑しそうに笑えば、益々、女の柳眉が上がり) 何が、そんなに可笑しくて?…もぉ、今日も綺麗とか、そういう問題じゃないの。魔族だと判ったのに、何故、あたしだと判らないのよ、もぉ…。(依然、憤慨した様子で笑う相手の顔をねめつける。フルっと頭を振れば、薄金の巻き毛が銀色へと変化する。ついで、瞳も空色から菫色に。衣装もいつものドレスへと変わってゆき) ……頂くわ、喉が渇いているのは本当なの。(男の誘いに、コクっと頷くものの、その声はまだ、いささか拗ねているようにも聞こえるかもしれない)
■オーベ > 生きてりゃ恨みの一つも買うと思うがね…望むと望まぬに限らずな(肩を竦ませて告げる。かつては国の中枢にあった身であるから致し方ないことだとは思っているのだけれど)そりゃあ………綺麗なご婦人に心当たりは幾らもあるからな。そう拗ねるなよ…果実酒を一口すれば、不満も吹き飛ぼうものだがなあ(彼女の声に、はいよ、と返事を返せば。小屋の中から、南方で手に入れたグラスを二組と、瓶に入った果実酒を手に持ち、麻のシャツを羽織って戻ってきて、グラスと瓶を差し出して)すまんが手酌でやっててくれ、ご婦人の前で裸は落ち着かん(シャツのボタンを止めながら、小屋の軒下に置いてあった少し背の高いテーブルを彼女のそばまで運べば、酒瓶とグラスを置く場所を作り、片方のグラスを手に取れば、俺にも一杯頂けるかな?と首を傾げて)
■レティシア > …お前の場合は、一つではないのでしょう?それこそ、両手どころか、足の指を入れても足りないのではなくて?……あぁ、そう…綺麗なご婦人とやらの心当たりも足の指を入れても足りないのでしょうねぇ…(男の言葉は、逆効果だったらしい。にっこりと笑って、果実酒なんかで、騙されませんとでも、辛辣な言葉を口にした) ……別に、あたしはオーベが裸でも構わなくってよ?(グラスと果実酒の瓶を受け取れば、テーブルの上へと並べて、自分のグラスへと注ぐ。グラスを差し出す相手の顔をチラリと見てから、果実酒を注いでやり…。果実酒のグラスへと口を付ければ、喉を鳴らして飲み干して。本当に喉が渇いていたらしく、更にグラスへと果実酒を注いで) …美味しいけど…これで騙されると思ったら、大間違いよ?
■オーベ > そうかも知れんが誰も彼もに好かれて生きていけるほど器用ではないからなあ………そりゃあ、元は平民出の宮廷魔術師だしなあ、物珍しさもあったろうが、当時はそれはもう(前半は幾らか渋い表情であったが、ご婦人、という単語には辛辣な口調に冗談で返して肩を竦める)…レティは男の裸を酒の肴にするのか?あまり良い趣味ではない気がするが、人間の尺度で測るべきではないかな…(ちらり、と彼女の横顔へ視線を向ける。彼女がグラスに酒を注げば、ありがとう、と礼を告げてくぴり、と軽く唇を湿らせる。森の香りを運んだ風がそっと吹き込む)…ふむ…これ以上にないほど饗しているつもりなんだがなあ…さて、機嫌を直してもらうにはどうしたものだろう?(グラスに残った酒を半分ほど飲み干せば何の気なしに彼女に向けた視線が彼女の柳眉を捉え、綺麗な形の眉だな、とぼんやり思ったり)
■レティシア > そりゃそうよ、皆が皆、仲良くできれば、戦なんて起きないしねぇ………当時はそれはもう?なぁに?(相手の冗談にも、女は首を傾げて笑みを浮かべて、先を促した。相手が続けるとは思ってはいないけれど。果実酒の入ったグラスをユラユラと揺らして、香を楽しみつつ) …あら、あたしは淫魔よ?その質問は愚問だわ。何なら、全部、脱いでくださっても構わなくってよ?(こちらへと視線を向けた相手に気が付けば、こちらも菫色の瞳を相手へと向ける。軽く首を傾げながら) えぇ、このお酒は気に入ったわ。…さぁ?どうしたら良いのかしらね?(相手の問いには、女も問いで返した。こちらを見つめる相手に、すっと顔を近づけてみたりして) そうね、オーベを味見させてくれたら許してあげてもいいわ?
■オーベ > そう、上手くはいかないから面白いのかも知れんがな………レティの想像に任すよ、淫魔とはいえ退屈な夜だってあるだろう?(関わりのなかった人間の過去に思いを馳せるのも暇つぶし位にはなる、と続けて笑い)…断る。ご婦人の前で裸になるのはベットの上だけにしておけと、師匠にキツく言われてきたからな。(菫色の大きな瞳がこちらに向けられる。こんな色をした鉱石を旅の途中見かけた事をぼんやりと思い出していれば、ぐっ、と顔が寄せられるのにワンテンポ遅れて気がついて)ダメだ…味見して気に入らなかったら、やっぱり許してくれないんだろ、それ(手に持っていたグラスをテーブルに置きながら間近に見る彼女の顔に、今更ながら尖った耳に気がついたり、機嫌の悪い時のほうが眉の形が良いのだな、とひどく個人的な感想を持ったりする。マジマジと彼女の顔を眺めていたから僅かにこちらから顔を寄せるような姿勢になったかもしれず)
■レティシア > 逆に上手くいってしまったら、それは退屈な世界になるでしょうね………ちょっと、気になって眠れなくなったら、どうして下さるのよ?(笑う相手を女はマジマジと見つめる。この男は判っているのだろうか、暇潰しどころか、常に男の事を考える羽目になるという事に。女の中では、目の前の男は無自覚天然のタラシだと勝手に認定。呆れたように小さく溜息を零して) これじゃあ、綺麗なご婦人とやらも納得がいくわ……。む。オーベの師匠もいらない事を教えたわねぇ…(相手へと距離を縮めても、何だか、今日は反応が遅いような気がする。それはチャンスだと思ってか、女は菫色の瞳を細めて、相手を見つめて) …おバカさん……気に入って、味見だけじゃガマンできなくなった時の事を考えなさいな……(こちらもテーブルへとグラスを置くと、更に相手へと表情を近づける。引き寄せられるように、そのまま相手の唇へ、自分のそれを重ねようとし)
■オーベ > ………そんなに真面目に考えるような事か?他人様の過去なんて(彼女がこちらへ視線を向けながら告げた言葉に一瞬、驚きぽかんとする。彼女が小さくため息を零せば、真面目な魔族もいるのだなあ、と笑い混じりに口にして)よくわからないが、納得したなら結構なことだよ。…そうか?口煩く奥ゆかしい割に冗談も口にするような方だったがなあ…(清廉だったとは言いがたいが、とらえどころのない面白い人であった、と僅かに表情が緩む。そんな隙を見抜かれたか、不意に唇が寄せられれば、す、と重なりそうになる己の唇と彼女の唇の前に人差し指を割り込ませ)…吸い尽くされて殺される事を思えとは、酷いことを言うのだなあ…(苦笑を浮かべれば、人差し指をおろし、その手を軽く彼女の方に添え、そっと、掠める程度に彼女に口付け、僅かに顔を引けば、いかがかな?とでも問たげに顔を僅かに傾ける。互いの顔の距離は未だそれほど離れてはおらず)
■レティシア > ……お前、鈍いとか、女心が判ってないとか、言われた事なくって?(笑う相手に、女は瞳を細めながら、問うてみた。やはり、自分の認識は間違っていないと確信した女。相手との会話がどうも噛み合わない事に、喉を鳴らして笑い) …本当に面白い男よね、お前…。(相手の唇へと触れようと瞳を閉じた所で、間に人差し指を差し込まれ。女は、むぅっと不満げな声をあげ) …本当に鈍いわ……あたしは殺したりはしないわよ……(人差し指が離れ、一瞬の口付けに女の菫色の瞳が瞬く。あっけない程の瞬間に女はこれでは足りぬと言うように、、まだ間近にある相手の表情を、両手で包み込むと、今度はこちらから、しっかりと唇を重ねて) ……バカ…それじゃ、判らないわ…。(一瞬、唇を離すと、間近になった相手に囁きを漏らしつつ、相手へと寄せてゆき)
■オーベ > …指摘されるのは初めてだな。レティがそういうのであれば、まあ………そういう事なんだろう。世の中には理解できない事が多すぎる…(女なんてその最たるものだろう、と苦笑交じりに零し)褒められてる気はまったくしないけど、聞こえは悪くないな、それ…(面白い、と彼女に言われるのは二度目だったと思う。自分ではよく判らないが、そう評されるのは悪い気はしなかった。掠める程度の口吻では満足できなかったのか、間を置くことなく唇は重ねられ)…判った、じゃあ、覚悟を決めるか…(こちらも囁くような声で彼女に応えれば、寄せられる唇に応じるように此方からも寄せていき重ねる。彼女の方に添えていた手先がするり、と動けば唇を重ねながら人間のそれとは形の違う耳に触れようとして)
■レティシア > …あら、誉めていると、この前も言わなかったかしら?(女は十分、目の前の相手を誉めているつもり。彼女にとって、重要なのは、面白いか、面白くないかなのだから。覚悟とやらを決めたらしい相手の囁きに、女は嬉しそうに菫色の瞳を細める。しっかりと唇が重ねれば、啄むような口づけから、舌先で相手の唇の隙間を刺激して、更に深い口づけを交わそうとする。しかし、相手の指先が、己の魔族の耳へと触れれば、フルっと身体を跳ねらせる。小さく吐息を零しつつ、相手の腕の中へと体重を預けようとしながら) ……オーベ…やっぱり、味見だけじゃ満足できないわ……(小屋の中、男のベッドへと連れてゆけと、お返しとばかりに相手の耳元へと囁いて)
ご案内:「小屋」からレティシアさんが去りました。
■オーベ > それじゃあ素直に喜んでおくことにする(もう少し判りやすく褒める言葉を彼女は幾らも知っていそうなものだが…この辺りも種族間の差異なのか、価値観の差異なのかまでは判りかねるのだが。誘うように彼女の舌先が唇の隙間をなぞれば、こちらも舌先を重ねて絡め合わせるようにし、緩く吸い上げていく。久々に触れる女の柔らかさと体温に少々驚いたように方を震わせた。耳に触れた指先に彼女が震えれば、そのまま銀の髪に触れ梳いて、そのまま彼女の背中に流れていき寄せられる体重を抱きとめて)…ドレスには些か不似合いな寝室でもよろしければ?(耳元で囁かれれば吐息が擽ったい。そのまま、屈むようにして彼女を抱き上げれば、若干、覚束ない足取りで小屋の中へ彼女を招待するのだった…)
ご案内:「小屋」からオーベさんが去りました。
ご案内:「リージェンス家の邸宅」にゲーデゼックさんが現れました。
ご案内:「リージェンス家の邸宅」にユージニアさんが現れました。
■ゲーデゼック > 「ふむ、ふむ…。」
(東方に領を持つ王家、リージェンス家が王都マグメールに構えた屋敷。その一室に案内された宮廷魔術団に属する男…ゲーデゼックは、用意された椅子の一つに深く腰を下ろした姿勢で、羊皮紙に記述された内容に目を通していた。)
「ふむ、これにて採点は終わりました。
知識量だけを見れば、学院の3年度の中ほどまで、というところでしょうか。」
(一通り目を通し終えた男は、羊皮紙を丸め、上質なオーク材で作られたテーブルの上にそれを置く。
テーブルの上にはほかにも、男自身が持ち込んだ羽ペンやインク、数冊の書物、箱に収められた水晶玉などが置かれていた。)
「基礎的な魔法行使は可能、なれどまだまだ伸びる目がある、そういったところです。
念のため、改めて。現在、使用が可能な魔法について、教えていただけますかな?」
(さて、と視線をこの屋敷の住人の一人……王家の血を引き、そして神殿の巫女でもある、ユージニア様へとむける。
先ほど丸めた羊皮紙は、彼女に魔法について講義するにあたって、知識量の確認に行ったテストの回答が記されたものであった。
テスト自体は、知識量だけではなく、テーブルの上におかれた水晶玉を用いた魔力量や相性の確認なども行っていたが、もっとも大事であったのはこの知識量についてのテストであった。
何を教えるか、というのが表面上の理由ではあるが、同時に如何に自らを信頼させるか、その手段の模索のため、である。)
■ユージニア > (邸宅の客間の一つ。品がありながら華美ではなく、実用性を重視した調度品のある部屋で、宮廷魔術師の採点を緊張した面持ちで待っていた巫女姫は。
下された判断に、ほっとしたように表情を和ませ、改めて背筋を伸ばす。)
「採点、ありがとうございます。
精霊神殿での修行で…回復魔法については、失明を元の状態に治すなど、それなりにできるようになっております。
水と大地の魔法、光の魔法もいちおう使えますが、火と風は苦手…です。
あとは、精霊神の加護で…動物への変身術を少々。」
(聞かれたことに素直に答えていく、その合間には。
茶の替えを運んできた侍女が、恭しく部屋を出入りしていき)
■ゲーデゼック > 「なるほど。こちらのオーブで確認した素養を考えれば、身体の損失回復の奇跡も行使は可能でしょうな。」
(実例として行使した経験があるのであれば、それは信じるに値しよう。この場で虚偽を吐くような人物ではないことは、先日、当主殿にお会いした際にも話したことで理解している。
素質としては、彼女が口にした通り。魔力量は自分には及ばずともかなりのもの…将来を考えればそれ以上とも考えられなくもない。加えて神の加護ともなれば……地位も考えれば、一時の楽しみだけに使うには惜しい、か。)
「実用の域に達しているのであれば、魔法行使については、即戦力になる技術はさしてありませんな。
ゆえに、魔法行使については、長期的に教えていくことに致しましょう。そのため、基本は知識の蓄積、理論の説明が中心になりますが…それだけというのも味気ない。」
(ゆえに、と一呼吸を置いたのち。テーブルの上に置かれた水晶玉の収まった箱に手を伸ばし、その水晶玉…オーブを手に取って見せる。)
「本日は、呪文と呪い、そしてそれらに抗する手法を教えることに致しましょう。
こちらのオーブを、触れてみていただけますかな?」
(オーブをかざして見せながら、オーブに自らの魔力を少量流し込む。相当なレベルの術者でなければ気づかぬ量。しかし、触れれば違和感を感じるほどに、オーブが暖かくなっているのがわかるだろう。)
■ユージニア > 「はい――かなりの力を必要としますゆえ、気軽には使えませんが」
(まだ未熟者でもありますので、と気負いなく認めるのは素直さであり、育ちの良さを反映したものでもあり。
魔術師に敬意を払っていることの表れでもあるだろう)
「はい。よろしくお願いいたします――これに、ですね。」
(頷きながら方針を聞いていたが、水晶玉がかざされればじっと眼をこらしてみて…それから、そっと。
右手をのばし、その指先でオ―ブの表面に触れてみる。)
「…暖かい…?」
(その感覚に、思わず瞬く。魔力が動いたのか、とこの段階で気がついて)
■ゲーデゼック > 「ええ。これには今、私が呪い(まじない)をかけております。暖かくなれ、というだけのものですな。
呪いに対して、このオーブは対抗する力を持っておりません。ゆえに、このように簡単に変化してしまう。今度は冷やしますぞ?」
(冷やす、と口にした直後には、オーブの温度がすっと冷たいものへと変わっていく。とはいっても、触れているとひんやりする、という程度の変化なのだが。
…本来であれば、ただ魔力とイメージだけを使った呪いでは、ここまで如実な変化はしない。ただ、魔力測定に用いられるこのオーブは、魔力の影響を受けやすいように、抵抗する力がないように加工されている。そのため、これほどに変化しやすいのだ。)
「さて、ここで大事なのは、ただ魔力に流すイメージを変化させただけで、抗する力のないモノはたやすく変化してしまいます。
ですが、特殊な加工をされていなければ、このオーブのように如実に変化はしない。
であればこそ、呪いを如何に抗されずに通すことこそが、呪術であり、
呪術をよく知ることこそが、呪いを退ける何よりの力となるのです。
…王家の血を引くユージニア様にこそ、これらの技術は必要となるでしょう?」
(意欲は湧きましたかな? そう問いかける男がこれを教えることにした理由は、一つはほかの存在に、この女性を奪われぬためだ。
せっかくの才ある、そして美しい娘だ。自らが喰らうまでに、他に手を出されてはたまらない。
同時に、穴をあけておくためでもある……自らが教えた守りの技であれば、それを出し抜くことも容易なのだから。)
「さて、まずは呪術の基礎からまいりましょう。
オーブに触れたままでいてくださいね?…今度はわかりやすく、私の魔力をユージニア様にまで伝えます。」
(そう告げたのち、ユージニアがオーブに触れていることを再度確認した後、オーブを介してユージニアの手指へと、己の魔力を這わせてゆく。 その濃度は、意識していれば、なんとなくわかる、という程度のものだ。)
■ユージニア > (魔術師の言葉に応じて、暖かったオ―ブの表面がすっと冷たいものへと変化していく。
そのあまりに滑らかな変化に少し驚きながらも、魔術の腕の凄さの片鱗に感嘆の表情がよぎる)
「呪い(まじない)は――やはり抗われれば、効果が薄れるのですね。
わかります、神殿にも呪いで身体が不自由になった方が訪ねてきました…幸いさほどのものではありませんでしたから、
私どもで解呪できましたが。」
(けれど、その理念を知ればさらに適切な対処ができるはず。
ゆえに、もちろん問いかけには迷いもせず頷く。
巫女としてだけではなく、王家の娘としても必要な技だと認めて)
「はい、お願いします……ん、」
(意識をオーブに、自身の指先へ集中する。
ほのかに自分のものではない力――魔力の気配が、そこにあるのが伝わるのがわかる。
体温の違う人の気配、のような感じだろうか)
■ゲーデゼック > 「私の魔力を感じ取れますな?
此度はあまり悪影響を与えぬために弱いものに致しましたが、本来の呪いであれば、より強い魔力を用いたほうが強力なのは道理。」
(ユージニアの反応に、おそらくは感じ取れているであろうことを悟りながら、言葉を重ねる。
少しばかり、いたずら心をのぞかせたように、魔力が指と指の隙間をすり抜けていく。)
「ですが、強い力…魔力に限らず、威圧的な存在や、武人の語る殺気などを見せては、人は警戒を強めるものです。
そしてそのような心の動きは、魔力なき人ですら、魂の持ちうる、呪いに抗する力を高める。」
(このように、と魔力の量だけを一瞬高めて見せた。一瞬のことだが、その高まりに、部屋の中で待機していた侍女がびくりと震える気配がよくわかる。
しかしその魔力の高まりも、すぐに収め、先と同じく弱い感触だけを伝えることとなる。)
「そのため、本物の呪いは、己の凶悪さ、禍々しさをひそめ、忍び寄ってくるのです。
それに抗するための手法の一つが、このように、他者の魔力を感じることで、己の魔力と、他者の魔力、双方を別のものとして感じることですな。
さて、ではさらに私めの魔力を弱め、代わりにユージニア様のお身体、一か所を包むようにいたしますゆえ。その箇所がどことなるか、感じ取り、あててみてください。」
(これも練習です、と。告げた直後に、指先に伝わっていただろう魔力が、さらに薄れ、感受性が鈍いものによってはまるで消えたように感じられたかもしれない。
だが実際には、弱弱しい魔力が糸のように、オーブを通じてユージニアの腕を通り、肩の上まで通り過ぎて、オーブに触れているのとは別の側の腕を包み込んでいっている…それはまるで、ユージニアの魔力と合一したかのようで、己の魔力というものを意識しきれていなければ、感じ取ることは難しいだろう。)
■ユージニア > 「はい――わかります、確かに」
(弱い魔力では、その影響も弱い。その通りですと頷く間に、
魔力の気配がさざ波のように動く感じがして)
「っ!…失礼しました、」
(そして。一瞬の魔力の高まりに、思わず小さな声をあげてしまい、急いで姿勢をただし、無礼を詫び頭を下げる。
魔術を知らないものでも、今の力はかんじとれるだろう、と)
「…目的に悟られないよう、無害なもののふりをするのですね?
気づかれないうちによってこられないよう、察知するには…」
(講義通り、自分と他者の魔力の判別が大事になってくる。
そして。
オーブの中で触れていた気配が薄れていく…が、消えてはいない。ただ、すごく、細い感じがする。)
「…腕…から、肩…?」
(そう、おぼつかなげに首をかしげた)
■ゲーデゼック > 「突然のことですからな。驚いて当然のことでしょう。
もっとも、こうして驚かせることも、一つの付けこむ手段になりえますが。」
(どこか緊張した様子を見せるユージニアに、少し気を和らげてもかまわないと伝わればよいと思い、痩せこけた顔に笑みを浮かべて見せる。
厳しくも優しい、と。そのスタンスを表していくのが良いだろう。その程度の人心掌握は、相手も心得ていると思うが…。)
「ええ。察知することで防壁を張る。さて、壁の張り方はまた次の機械となりそうですが…。
ふむ。 それでは正解とは言えませぬな。一度深呼吸をなさると良い。」
(腕から肩、それではまだ点数はやれない。 よりまとわりついているのは、オーブに触れていないほうの腕なのだから。
しかしまだ気づかぬとあれば……少しばかりヒントと、自らのなじませるためにも、魔力の質をほのかに変える。……ほんの僅か、魔力の糸で包み込むようにしている、オーブに触れていないほうの腕の感度をかすかに上げる呪いだ。)
「そうして深呼吸をしながら、目覚めたときのことを思い出すのです。
鳥の鳴き声、朝靄の冷たさ、上り始めた太陽の柔らかい光。眠りから覚めたあなたは、他の影響もとぼしく、ただ己である……その瞬間こそが、あなたの魔力がもっとも満ちたときです。」
(睡眠は魔力の回復方法の一つでもある。それが終わる、朝の目覚め。その瞬間こそが己の魔力を感じ取りやすいことから、それを思い出すように…優し気なヒントの言葉にも、ほのかに魔力をこめる。弱弱しいが……先に開設した通り、”気づかない呪い”は受け入れてしまいやすいのだから。)
■ユージニア > 「…はい、覚えておきます」
(言われることはもっとも。筋の通った指導は、神殿でのものにも通じる…
指導者としての力量も充分にあるのだろうと、礼儀正しい魔術師の笑みに素直に頷く。
そして、言われたとおり、ゆっくりと、深呼吸をしてみる――)
「…朝…――」
(ほのかに明るくなっていく光。小鳥のさえずり、澄んだ空気。思いだすうちに、ふと…気がつく。
オーブに触れているのと反対側、左腕に、微妙に温度差のある気配が、存在している)
「…左腕、ですね?」
(今度はわかった、と。アドバイスのためだと、そう思いながら答えを告げる)