2021/08/15 のログ
■グァイ・シァ > 女は少なくとも今、この喧噪に混じろうとは思っていないらしい。
入口で佇む女にちょっかいや軽口を叩く者は少なからず居たが、女は一瞥しただけでまた何か口実を探すように室内へ視線を巡らせる。相変わらず不愛想な奴だ、と言われるのは、この光景も珍しくは無いのだろう。
やがて、食堂へ雪崩れ込んでくる人波も少なくなり、室内はさながら戦場のような喧噪で満たされた。
最早入口の女を揶揄うものも居ない。
それを見計らったかのように女は踵を返し、負傷兵のうめき声やら宴会場から漏れ聞こえて来る歓声やらでこちらも静かとはいえない廊下へと歩み出る。
風にあたるためか、はたまた汚れた身を清めるためか、または今日の所は休むためか
朱い髪の女は居場所を、或いは他の何かを求めるように
砦の中を漂っていく―――
ご案内:「タナール砦」からグァイ・シァさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
■メイラ・ダンタリオ > タナール砦 季節は早すぎた夏を過ぎ、もはや秋へと移り変わろうとする中間のように感じる
他者の鋼の鎧に熱を帯びることはもうないかのような気温の中
天候は曇り 時折の小雨が降る
無駄な日向も 無駄な雨もない代わりに 中途半端な天候が続くタナール砦
現在 人間側の防衛戦の真っただ中にある
「―――■■■っ!! ■■■■■っ!!!」
それがただの巨大な国境の壁だったならば、弓を射かけ、梯子を掛けるそれを叩き落とし続ければいい
一点を穿とうとすることを防げばいい
しかし戦略的建築物の砦は、攻め込み、破壊することなく敵を屠り、制圧することが目的ならば
人間側が魔族側の地点にまで足をかけ、出入り口を防衛することもありえた
黒く長すぎる髪 黒真銀の合金鎧に身を包み 言葉でも声でもない 形を表さない咆哮を上げて振るいあげる重量武器
メイラ・ダンタリオは狂いきった狂戦士のように大剣擬きと呼称する巨人の素槍の穂に、握り柄をつけたそれを振るいきる
紅い瞳は照りを見せることはなく ギザ歯を開けて閉じる瞬間に合わせた力みが、横薙ぎに振るったそれが
魔族側の鎧に身を包んだ二足歩行も 四つ足で駆けてくる獣も選ぶこと無く両断した
首が胴体が 肩口から上が 大剣擬きの力と斬撃の圧を受け泣き別れになる
ぐるんぐるんぐるんと、分かたれた上辺が周り、血雨を上に蒔いて下へ降らせ
そして地面へと落ちる頃には赤の曲線を描いていく
『どっちが魔族だよ……っ』
敵と味方の区別をつけた剣撃といえど、友ある鍛冶師から受け取った鎧を身に纏うメイラは
いつもよりも気質のブレ幅が大きいことを示す様に、剣を怪力でぶちあて、撓む鋼の音と共に肉がちぎれる音
それを間違いなく味方に、敵に届けた。
■メイラ・ダンタリオ > 王都に於いて、正義と寛容の騎士道は既に投げ捨てられている
欲と命令 やれといわれたからやるという不真面目さ 金のための傭兵
そして、闘いたいがために暴れる 結果ではなく過程を求めるイカレ
メイラはイカレに属し、王への貢献という土台があるからこそ揺らがない
大剣擬きの間合いと怪力軌道が、右へ、左へ、薙ぎ払うそれを続けるだけで
一撃ずつが相手を終わらせていく
もっとも、それは大剣擬きの質量とメイラの怪力を耐え切れなかった相手の硬度と質量に拠るもの
魔族故に、人間並みの規格もいれば、人間以上の規格もいる
「ハァァァァァ……。」
令嬢言葉すら出さず、歯列の隙間から臓腑が熱を持ち、吐息を白く濁らせるかのよう
鎧が身体を蝕むように影響させていく
わずかな昂りが続き、わずかな興奮が続き それは脳内麻薬を分泌させ
怪力の継続という上乗せを働かせていく
ガァンッ! ガァンッ! バァンッ!
やがて巨斧を持つ洋鬼と、大剣擬きを持つメイラの一騎打ちの舞台があがる
回りが殺し切れる格をお互いに狙い続けるならば、メイラと洋鬼も又同じくだった
鉄塊が、何度も打ちあう音がする 互いに 振り下ろし 振り上げ が何度ぶつかり合ったのだろう
武器を打ちあい続けるそれの中で、互いに隙を探り合う
武器が敗けるか 肩腕が悲鳴を上げるか 互いにパワータイプの重戦士の動きを続けていき
やがて、巨斧の柄を拉げるように狙い変えたメイラが、斧に くの字 を描かせた
「 オ゛ッ ルラァ゛ッ”!!」
狙いは肋骨下から腹筋と皮だけで支える内蔵部位を持つ、腹部
横薙ぎの一撃が決まり、生レバーとモツが吹き飛ぶのを確認する
しかし、洋鬼が死ぬまで動きを留めることがないように、膝を着いた脳天へ向かって
両手に斬りの唐竹割りを鼻に至る深度で割り込んだ
洋鬼の骨密度が、脳天割を半ばで阻止しながらも絶命を確認するや、靴裏蹴りによる抜き取りを行う
胸元から下の鎧を、洋鬼の血を吸わせるような黒鎧
鬼か何かかと言われたのは 魔族か 人間か。
ご案内:「タナール砦」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にタマモさんが現れました。
■タマモ > 人間と魔族の国の境界線、それを示すように建てられたタナール砦。
場所が場所だけに、大体は、人間か魔族かが屯している。
今は…まぁ、人間側が占領しているらしいが。
そんな場所に、魔族の領域から、一人の少女が現れた。
異国風の着物、狐を模した耳と複数の尾。
一見すれば、異質なミレー族と勘違いされそうな容姿。
王国のごく一部の兵士ならば、見覚えのある相手だろう。
しかし、知っているからこそ、分かる事もある。
現れた場所から、今の少女がどちらに付いているか予想出来る事。
後は…この少女を相手にし、死者は出ないが、下手に相手をすれば碌な結果を得られない、と言う事だ。
「おぉ…話に聞いた通り、今は人間じゃな。
さてはて、とりあえず、もぬけの空にしておいてくれ、か。
………ふふ、手段は任されたならば、好きにさせて貰うかのぅ」
今回は、ある魔王が開いた宴に出席し、その帰り。
そのついでに、そうした頼み事を軽く受けてきたのだ。
悠々と砦に近付きながら、ぐ、ぐっ、と軽く体を解す。
そんな少女を前に、果たして、砦の者達はどんな反応を示すのか。
■タマモ > 『あー、あー…テス、テス。
…こほんっ。
さて、砦を守る者達。
すまぬが、今日はこれにて、国の方に戻ってくれると助かる。
大人しく身を引くならば、大人しく見送ろう。
下手に反抗はせん事を、妾は勧めておくぞ?』
そうした状況で、不意に響き渡る、頭に直接掛かるような声。
それは、内容から、明らかに近付いて来る少女から、発せられているもの。
その声に、大半の者は戸惑い、砦のところどころにざわめきが起こる。
今現在、誰が指揮を任されているかは知らないが。
後は、その者の判断で、道は別れるのだろう。
素直に、この砦から撤収をするのか。
それに反し、この少女をどうにかしようとするのか。
もしかしたら、そんな判断を待つ事無く、突っ込んで来る者も現れるかもしれない。
そんな、砦の反応をよそに。
少女は変わらぬ歩調で、砦へと近付いている。
人の瞳でも、目視出来る範囲内、何かしら判断をするならば、早い方が良いだろう。
■タマモ > とりあえず、砦から何の動きも無いならば。
行動を起こすのは、砦の前に着いてから、そう決めておこう。
少女の歩みは、どちらかと言えば遅い。
その場所まで近付くのに、もうしばらくは掛かりそうだ。
さて、相手はどう動いてくれるのか。
言った通り、素直に撤収するならば、手出しはしない。
しかし、相手をすると言うならば…
まぁ、大乱交会を作り上げてしまおう、そんな算段だ。
もしも、誰かが突っ込んで来たら?
そんなもの、当然だが、晒し者になって貰うに決まっている。
己としては、三番となれば、楽しめそうだが。
果たして、そんな勇気ある者が、今ここに居るのかどうか。
そんな事を思いながら、少女は歩み続けていた。
■タマモ > 結局のところ、突っ掛かって来る相手、それは居なかった。
そして、耳を澄ませば、遠く、砦の反対側から音が聞こえる。
どうやら、己を知る者が、上に何か通したのか。
出した答えは、素直に従い撤収する事、だったらしい。
「ふむ…まぁ、つまらんが、正しい選択じゃろうな。
本来ならば、人間はそうあるべき、なんじゃろうがのぅ。
………さて、さっさと戻るとするか」
うんうんと、その結果に頷きながら。
やっとの事で、少女は砦の門の前にまで、到着する。
気を利かせてくれたのか、他に何か理由があるのか。
砦の門は、しっかりと開門されていた。
無駄に力を使わずとも、歩いて素通り出来そうだ。
そう思えば、そのまま、少女は砦内へと足を踏み入れる。
■タマモ > 何ら奇襲も無く、少女は何事も無いまま、砦を抜けて行き。
砦から、王国へと消えて行くのだった。
その後、空き家となった砦は、どちらが取ったのか。
正直、少女にはそんな事、どうでも良かった。
ご案内:「タナール砦」からタマモさんが去りました。