2021/08/10 のログ
ご案内:「タナール砦」にクレス・ローベルクさんが現れました。
■クレス・ローベルク > 砦詰めの兵士というのは、平時にはやる事が殆どない。
その"やる事がない期間"をまるで狙いすます様にして、砦に入るのが蒼い闘牛士服の男のやり方である。
身分としては傭兵に近いため、訓練などにも気が向いた時にのみ参加すれば良く、任期が終われば纏まった金を貰って帰る。
魔族が攻めてくる時期を正確に見極める必要があるが、逆にそうであれば、簡単な肉体労働だけで金が貰える良い仕事――であったのに。
「はぁ!?模範試合?俺が?」
訓練場に呼び出され、防衛隊の隊長に言われた事を、呆気に取られてオウム返しする男。
それに対し、隊長の男は、「おうよ」と返す。
曰くに、『砦に頻繁に来ている先輩として、後輩の手本になる試合をして欲しい』との事。
一対一ならば、闘技場と条件は同じだろうと言う事だが、
「おいおい、ちょっと待ってくれよ。
そんなの契約にもないし、そもそも俺は金も貰わず試合なんか……」
と言った所で、周囲を見れば、そこには砦に詰めている兵士たちの白い視線。
彼らの多くは魔族と命がけで戦った経験のある者たちだ。
どういう理屈かは知らないが、魔族が攻めてこないときに限って現れて金だけ貰って帰るクレスの事は、当然疎ましく思っているのだろう。
「(……此処で逃げたら、後が怖いと。そういう脅しか、これは)」
逆に言えば、実力を見せれば、黙らせられる。
まだ、任期は暫く残っている――彼らにしてみれば、クレスを私刑に処す機会は幾らでもあろう。
ならば、選択肢はない。
「……解った、解りましたよ。
それで?俺は誰と戦えば良いんだ?」
両手を上げて降参のポーズ。
こうなっては、とにかく早く終わらせるべきだと思い、男は隊長格の男に尋ねた。
彼は、にやりと笑い、彼と戦わせる相手の名前を呼ぶ――
■クレス・ローベルク > 現れたのは、筋骨隆々の男だった。
砦でも相当の力自慢という事で、確かにがっぷり四つで組み合えば、苦戦は免れない事はひと目で解った。
――ので、試合開始と同時に素早く懐に入り込み、金的を食らわせてノックアウトした。
「はっはー!俺の邪魔をしたのが運の尽きだったね!
言っとくが、こっちは契約外の戦いを強制されてるんだ。容赦なんかしないよ!?」
倒れたにも関わらず容赦なく金的を食らわせられている兵士を見かねて、慌てて運ぶように指示を出す隊長格の男。
倒れた相手に追撃など、普段の彼らしからぬ行いだが――だが、これは仕方のない事だった。
「(ただ試合に勝つだけじゃ、もう収まりが付きそうにないからね……)」
・・・
既に四回目の対戦である。
此処まで来ると、露骨にこちらを潰しに来ている事は明白だった。
いやまあ、確かに彼らの立場になれば、自分でも鬱陶しく思うだろうが、それにしてもまさか此処まで恨みを買っているとは、と男は思う。
――実際のところ、彼が恨みを買っているのは、自分だけ戦いを避けて砦に来ている云々もあるのだが、それとは別に闘技場での人気やら、女癖の酷さを妬まれてというのもあるのだが、男は全く気づいていない。
気づいていないが、しかしこれは尋常な恨みではないというのも解るため、こうなればとことんやって思い知らせるしかない、と男は思い、
「さあ、次だ!どんどん来なよ!」
ご案内:「タナール砦」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にレフェーリアさんが現れました。
■レフェーリア > 報酬は出すから、とにかく出向いて欲しい。
そんな胡散臭さが垣間見える依頼を受けるがままに、一人の治療師は護衛も付けられる事無く砦へと出向いていく。
中を現在取り仕切っているのが人であろうと、或いは人に仇成す存在である魔族であろうとも出来る事はそこまで変わらない。
尚も争い続けているとなれば当然ながら負傷者も様々であり、治療を施す為の医師も治療師もいつだってほしいというのが現状だろう。
例え相手が人間で無かったとしても。
「……あの、本日依頼の元に、訪れました次第です……」
いかなる種族かも判断のし難い見張りと思わしき存在に、武器も無く手持ちの治療器具しか持っていない、
それどころか衣服自体も薄手という無防備さと女性らしい顕著な起伏の溢れる肢体を晒しながら、開かれた扉の中には何が待っているのか――
自然と胸を高鳴らせて、中へと足を踏み入れていく。
ご案内:「タナール砦」からレフェーリアさんが去りました。