2021/05/07 のログ
ご案内:「タナール砦」にギデオンさんが現れました。
■ギデオン > 魔族との戦い、その最前線がこの地であると聞き及び、騎士風のその男は次の戦場…つまり、己の売剣稼業の働き場所をこの地と定めた。
折よく、砦への増援と補給物資の荷駄隊が出立するとのことで、その護衛の任を兼ねて、男は砦へと向かうこととなった。
昼夜兼行の強行軍の果て、砦へと辿り着いたのは既に深夜といってよい時刻。
何度目かももう、数えられぬ攻防の果て、王国軍が奪取した砦の防備を固めるために、補給物資と増援が送られることとなった。
男は、その増援と補給物資を無事に砦へと届けるための、護衛…という名の捨て石とされる傭兵部隊に今回は剣を売ったのだった…。
黒いマントの下、真紅の鎧を涼やかに鳴らしつつ…重い音を響かせる荷駄隊の馬車に伴い、男はタナール砦の城門をくぐった…。
■ギデオン > 夜営に立つ、疲労の色濃い兵達の間を縫い、荷馬車は砦の中庭へ。
夜を徹して灯される篝火と、そこから投じられて揺れるいくつもの影。
男にとり、夜の闇はどこまでも安らげる安らかなヴェールである。
例え、忌まわしき祝福の晴れた身であろうとて。
夜の闇の只中にて、いかに魔族とて男に気取られることなくして忍び寄ることは叶わない。
その、ヴァンパイアとしての超感覚が、今宵は敵する者が近くにはいないと告げていた。
とはいえ、眠りすら要することのない身であった。
真紅の鎧を鳴らして男は、そのまま砦の城壁の上に立つ。
森を抜けて吹き寄せる風の心地よさに身を晒し、疲労の色濃い兵達をどこか気の毒そうに眺めつつ…男はいつまでも城壁の上佇んでいた。
東の方に曙光が弾け、血塗られた地を照らすまで…。
ご案内:「タナール砦」からギデオンさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にジギィさんが現れました。
■ジギィ > 「―――ーぅわ…」
霧雨が降って来た。
物見の塔のひとつで見張りに付いていた女は用意されていた外套を引っ張り出して頭から被ると、松明の様子を伺って鼻息を漏らす。
砦を奪還してから2日目。
今日も上々の首尾で魔族軍を更に押して戦線はやや遠い。
それでもいつ、それこそ魔族のことだからどんな搦め手が来るか知れない。
だから、見張りを離れる訳には行かない。
(こういう雨って濡れるんだよねえ…)
外套からはみ出たくせ毛が白く雫を纏い始めている。
背後の砦内へ続く階段からは、祝勝会らしき浮ついた騒めき。
「…―――――」
女は自然、独りぶすっとした顔になって
手摺り、というには武骨すぎる石壁の淵に凭れかかった。
退屈そうにくるくるとはみ出た髪の毛を指に巻いて、いっそのこと忍び込む輩とか見付からないかしらん、などと不謹慎な事を考えながら。
ご案内:「タナール砦」に影時さんが現れました。
■影時 > 雨の好悪は――その時次第だ。
闇と雨に紛れて潜入するには丁度良いものの、守りの側に立つとなると少々厄介が過ぎる天候である。
巷を巡れば雨乞いの術は多いが、意外と雨「払い」の術はトンと聞かない。
ふと、そんな仕様もない思考を過らせながら、砦の通路を影めいた姿は歩む。
特段潜入しているわけではないが、不思議とその気配がおぼろげなのは生業の所為であろう。
砦の警護の依頼を冒険者の身分として請け、巡回・警戒に当たる先行の同輩と交代したのだ。
「……この雨は、長くなりそうな匂いがすンなぁ」
ぽつ、と。そう零しながら、歩む姿はこの辺りで見かける姿ではない。
腰に佩いた太刀と夜陰に紛れる青黒色の羽織を帯びた姿は、知る者が見ればこう云おう。忍び、と。
その名の如く、足音は僅かに。そして、気配も薄く周囲に目を配りながら、足は物見の塔の階段に至る。
気配も足音も静謐に、そのまま進んでいくならばやがて、先客らしい呼吸を悟る。悟れば、こう告げてみようか。
「いよゥ、御同輩。調子はどうかい?」
――と。不意に響く声とは、きっと心臓に悪いに違いない。