2019/10/01 のログ
ご案内:「タナール砦」にアマーリエさんが現れました。
アマーリエ > ――失われたからには、補填しなければならない。

辛うじて拠点として確保している限り、その砦の指揮官は先への進出は兎も角、維持することが常に求められる。
時には死守すらかならぬ圧倒的な攻勢があれば、放棄するという状況判断だって必要だろう。
しかし、英断ともいうべき事例をとんと聞かないのは気のせいだろうか。
偶に我ながらひねくれているとも思うことをふと、脳裏に過らせながらかの砦に兵たちを運ぼう。

「開門なさい。第十師団が補給を運んできたわよ」

夜のタナール砦の王国領側の門、最低限の兵たちで辛うじて守られているその場に声が響く。
地上からではない。それは夜気を裂いて低空を縫うように飛来し、砦の門の上空で滞空する竜の上からだ。
白い軽装鎧と長い金髪、そして携える騎槍に結わえられた小旗の意匠を見れば知るものは知るだろう。

程なく門が開かれ、後続の騎兵と竜騎士たちで護衛された荷馬車が、続々と砦内に運ばれてゆく。
荷馬車から降りた兵たちが嗚呼疲れた、また此処かよ等とぼやきながら、荷物を運び、引き渡し等を行ってゆく。
その情景を見遣りながら砦を為す胸壁の一つに飛び降りれば、鞍の側面に槍を固定した竜が大儀そうに砦の上空を舞う。
上空監視をお願いね、と告げれば一啼きする。頷いて、まずは諸所の対処を行いに向かおう。

アマーリエ > 目的を果たせば、その旨の伝達、報告は必要だ。
遊びではないのだ。形式上の問題であったとしても、書類としても残せるように事を為すのは大事である。
何せ何の悪戯か、倉庫に蓄えられていた武器や食料等が失せていたということを耳に挟んだことがある。
不心得者の兵が為していたとなれば、それは一大事だ。
小遣い稼ぎ程度であったとしても、それで財を成していれば厳罰に値する。
兵も何もかももタダではない。在庫が底をつくことが頻繁になれば、この先が思いやられる。

砦の現在の指揮官に挨拶を終え、補給と引継ぎが滞りなく終えるまでは暫く居るとしよう。
そう思いながら、一旦砦内から外の胸壁への方へと出よう。
風通しが悪いのか、饐えた具合のする空気よりも矢張り外の空気が美味い。

「――必要なコトだけど、手間といえば手間よね。
 やらないよりも、やっておく方が後々面倒がなくていいのは間違いないけれど。少しは話の分かる者が今の砦の頭で助かったわ」

形の良い唇から吐き出す言葉は、少々ぼやきが混じった風情の物。
魔族領側に面した胸壁に寄り掛かりつつ、かの地を遠く眺めながら思う。
率先して集団の頭となるものが正しくことを成さねば、部下に示しがつかない。故に面倒でも必要なことには手を抜かない。
現状の所、攻勢の気配が不鮮明であるが、斯様に兵を動かせる余地はあった。それだけが幸いと言えるか。