2019/03/10 のログ
ご案内:「タナール砦」に徒綱さんが現れました。
徒綱 > 魔族と人間との戦いの最前線たる砦の一角。
ここは取ったり取られたりを繰り返す。ころころと主が入れ替わる場所として一種の危険地帯。
そこを見上げながら、やけに涼やかな格好をした男が一人、周囲を見やる。
腰に下げた大小の刀に手をやるでなく、虚空に視線をやる。
周囲から聞こえていた喧騒が、ほとんど聞こえない。その原因は言わずもがな。

「やれやれ。闇にまぎれての不意打ちか。戦うのは結構だが、今はここが崩れると困る」

肩をすくめてつぶやくように声を上げながら、懐から取り出すのは漆黒の鉄塊。
聞こえ始めた魔族の声音に、ゆっくりとそれを掲げ、虚空に照準を合わせる。

「ここを守るのはただの個人都合。誰に認めてもらう気もない。なればこそ」

かかってくるならば、死を覚悟せよ。
薄く薄く笑みを浮かべ、砦に迫らんとした魔物の別働隊をにらみつける。

徒綱 > ふう、と息を吐き出す。つぶやく様に漏れる詠唱の声。
からりと音を立てて、手の中の鉄塊にたまる雷光。
周囲を油断なく睥睨するその視線に負けたのか、一匹の魔物が飛び出す。
小柄な体に雑多な武装。ゴブリンに視線と手先を向け。

「―――奔れ、雷光」

宣言。同時に光がほとばしり、ゴブリンを貫く。くるくると回って打ち倒される魔物に、周囲からざわめきの声が上がる。
やっていることは何と言うことはない、ただの雷光の呪文。
普通の冒険者ならばそこそこ使うこともできる、特に珍しくもないものだ。

しかし。

「―――さて。ひとさし踊るとしようか」

宣言。同時に懐から取り出した短剣を放り投げる。
さらに襲い掛かってきたゴブリンを雷光で黙らせ、投げた短剣は三つほど空中を漂う。
ここまできて、魔物たちも気がついた。
詠唱から発動までの魔法速度、その速さと正確さに。
確かに弾速という面において、雷光の呪文は他の追随を許さない。
しかし、その分詠唱がそこそこ面倒で、しかも放てるのは一度の発動に一発というのが常のはず。
しかし彼は、その詠唱を片手間にこなしながら連射しているのだ。

徒綱 > 「砦の近くならば色々と問題はないかと思ったが、少しばかり楽観が過ぎたか」

薄く笑みを浮かべながら、斥候部隊とおぼしきゴブリンに雷撃を見舞う。
実は自分の仕事場がこの近くにあり、砦からあぶれた連中がこちらに迷惑を及ぼす前に狩りに来た、という具合なのである。
無論、踏み込んできた相手に対して蹴散らす準備は十分にある。
だが、そういう手間を惜しんで蹴散らせるレベルを超えた相手が突っ込んできたら目も当てられない。
ここらで一度派手に暴れて、魔物たちを牽制するという意味も兼ねていた。

ちなみに、人間たちのほうについては一切気にしていない。
並みの相手に、防備を突破できるとは思っていないからだ

「しかし、最近は仕事のほうに精を出していたせいか、なかなかに新鮮だな」

逃げようとしたゴブリンを雷鳴で貫きながら、久しぶりの戦闘に心を躍らせる。
自然、表情にも笑みが浮いていた。

徒綱 > やがて周囲が静かになり、ふう、と息を吐き出す。
ゴブリンで構成された斥候部隊は残らず壊滅したようだ。
夢中になってやりすぎたかと思うが、まあこれは庭の手入れなどとさほど変わらないかと気分を切り替える。
そのままゆっくりと歩き、転がったゴブリンのなきがらをつかんで、森の中に放り投げる。
わかりやすく言えば証拠の隠滅。ここで自分が暴れていたことはあまり知られたくない。内容が内容だし。
あくまでも自分は物作りを生業としたいのだ。冒険者として名を上げるのはあまり好ましくない。
素材の調達というのならばまあ、ともかくとして。

「たまにはこういうものも悪くないか。さて、戻って一杯やるとしようかね」

薄く笑いながら、もう一度周囲を見やる。全身に心地よい疲れがあった。
派手に暴れるというのも、なかなかに気分転換になるらしい。

徒綱 > そうして薄く笑みを貼り付けたまま、ゆっくりと男が歩き去ると。
後にはただ、風が吹くばかりであった。

ご案内:「タナール砦」から徒綱さんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にカインさんが現れました。
カイン > 数刻前まで激しい戦闘の起きていた砦。
今は王国側の旗の翻る門の前で、億劫そうな表情を隠しもせず番をしている男の姿があった。
幸い死傷者はそう多くはない物の、先ほどの戦闘で被った被害はそれなりのようで、
結果として外様の傭兵までもが門の前に駆り出される始末である。

「……しかしこいつは、まずいんじゃないかね?」

そう独り言を漏らす物の、それを聞く者は誰もいない。
騒々しい声の聞こえる砦の内側に視線を向けると、
多くの人影が右往左往している所が見て取れる。

「砦をとったはいいにしろ、維持できないんじゃお話にならんなあ」

カイン > 「ま、そうなったら殿でも買って出るか。
 他にできそうなのも数がおらんだろうし、
 今の国軍に手練れが居るならそれでいいんだが」

雇い主が消えてしまっては報酬がおじゃんだし、
何よりも肩を並べた相手がくたばるのは目覚めが悪い。
仕方がないと流す程度の感傷とはいえ、酒が不味くなるのは宜しくない。
顎に手を当てながら剣を軽く叩くと、息を吐いて少し気合を入れる。
何せ相手は魔族である。何を仕掛けてくるのか分かったものではない。

カイン > 「…お、交代要員か。遅かったな?
 全く、このまま一日中立たされるものかと思ったぞ」

漸く現れた二人組の見張りにそう声をかければ手を挙げて、
そのまま横に振りながら入れ替わりに砦の中に去っていく。
持ってきた酒でもとりあえず飲んでしまおうと頭の中で算段立てながら。

ご案内:「タナール砦」からカインさんが去りました。