2019/02/24 のログ
ご案内:「タナール砦」に騎士アルダーさんが現れました。
騎士アルダー > 奪い奪われ、其れを繰り返すタナール砦。
一体幾度目と為るのか、人間の占領を狙い騎士達は現れた。

騎士の鎧を身に纏う男性が一人。
法衣を着込んだ少女が二人。
そして、姿を見せぬ何者か。

人間達の目に映っているのは正面に立つ三人だろう。
為らば何故に他に何者かが居るのかが分かるのか。
其の三人に挑み掛かろうとしている人間達を余所に、砦内に残る者達も襲撃を受けているからだ。
とは云えども後に結果だけを見れば砦内での死者は皆無、其れは後々の報告で分かる事か。
尤も魔族の国側へと無謀にも挑む者達は、砦へと撤退する迄に其れを理解は出来ないのだが。

『残り人数から、任務完了迄後数分と云った感じでしょう。
終わり次第に私は撤収致します』
「……そうか、では砦内は任せた」

男性の声に依る念話に騎士は頷き答える。
そろそろ此方に向かって来る人間達が到着する頃合か。
遠目に見える其の光景だが、騎士に慌てた様子は一切無い。
其れは背後に立つ二人の少女も同様で在った。

ご案内:「タナール砦」にレナーテさんが現れました。
騎士アルダー > 向かって来るのは人間の軍勢。
ちらほらと以外の種族も見える処から複数種族の混合部隊か。

『ねえ団長、如何する?
何時もみたいにやっちゃっていいの?』

そう問うのは法衣を着込む二人の内、黒いカチューシャを着けた少女だ。
手にした杖をユラユラと揺らし首を傾け男性を見上げる。

「面倒だろうが其れで任せる」

男性はそう答え、緩やかな動きで身構える。

『ミレー族は団長唯一の弱点だもんね、仕方無い仕方無い』

そう言葉を続けてから、黒の少女も杖を身構えた。

レナーテ > 戦闘が始まる少し手前、慌ただしく何かが砦を離れる。
調理器具と食材を積んだ荷車には、護身用程度にリボルバー式の魔法銃を携えた給仕班の少女が数名身を潜め、御者と護衛を務めるのは4人の魔法銃士隊の少女。
砦を出たところで、信号弾を打ち上げ、空を彩る光の珠が三つ漂う。
それを出迎えるようにやってきたのは、大きな隼と紅のマシコの連隊。
馬車の回収と撤退を任せる最中、殿と偵察を兼ねて、三羽のマシコが砦へと向かっていく。

「……敵が見えませんね」

旋回飛行する相方の背にしがみつきながら、砦内の戦闘を確かめるも、敵影らしき姿はない。
小首をかしげつつも、視線を遠くへとやれば、浮足立つように飛び出した兵士達が魔族の国側へと突撃を掛けているのが見える。
以前の黒騎士が現れたのだろうかと思いつつも、それにしては手口が妙だと腑に落ちない。
眉を顰めつつ、同じ様に旋回する仲間の少女達へ鳥達の念話域を利用して、指示を飛ばしていく。
三羽連れ立って飛んでいたが、一旦散開するように広がっていくと、二羽は砦の周囲を、そして自身は砦の上空を飛び越えて、魔族の国側へと近寄ろうと加速していった。

騎士アルダー > 其の部隊が砦を離れたのは幸運以外の何物でも無いだろう。
念話で伝えられた男性の言葉の通り、物の数分で砦内は沈黙に覆われたのだから。
後に訪れれば、其処には意識不明の人間達が倒れている事だろう。

『それじゃ、残りは団長よっろしくねー?』
「ああ、周囲の警戒は任せた」

そして、魔族の国側では別の戦いが始まる。
黒の少女が杖を振り翳す。
すると、向かって来た人間の軍隊。
其の中に居たミレー族達だけを正確に狙い、光の粒子が覆い始め…其の姿は一瞬で消え去ってしまった。
其れを確かめた途端、男性は地面を蹴って突進をする。
人の目にはとても追えぬ程の高速移動。
反応し切れぬ獲物達へと振るわれる、鞘に収まった侭の剣。
次々とミレー族以外と為った人間の兵士は吹き飛ばされて行く。

『……だ、団長、その…上に、例の部隊…が…あの…三組…』

其の途中に聞こえたのは、控えていた白の少女の声だ。
能力【空の目】で上空を飛び回る存在に気付いたからで。
其の言葉に黒の少女が上空へと顔を向けた。

レナーテ > 砦の上空を旋回する二羽は、特に眼下の状況に手を出すことはなく、行動不能となった兵士に近寄る様子もない。
相手がよくわからない以上、下手に近づき辛く、様子を見ながらこちらに意識を向けさせる事に集中していく。
そして、砦の上空を飛び越えて、攻め込んだ兵士達の様子を見ていた自身も同様で、彼らに加勢することなく様子を見ていると、不意に現れた光が兵士達へと迫る。
無作為に敵を減らしたのだろうかと思っていたが、一緒に光景を見ていた相方は違う事に気付いたようだ。

『我が同胞だけが消されている。気配が綺麗に消えた』
「ミレー族だけ……ですか?」

何故ミレー族だけを消したのかは分からないが、何かしら意味があるのだろう。
兵士へ突撃した男の戦ぶりを見るに、恐れる理由もないように見えるが……確かめる必要ぐらいはあるだろうと考える。
ケープの内側から、シェルパウダーを閉じ込めたような弾頭を持った増幅弾を取り出すと、指の合間に挟みながら銃を構えていく。
銃口に赤い魔法陣が広がると、トリガーを引き絞る。
炸裂音と共に自身の周囲へ赤い光球が周囲に三つ浮かび上がると、後退した銃のボルトを金具を押し込んで手動で止めてしまう。
排莢され、新しい増幅弾を飲み込む前に、排莢口から先程の弾を滑り込ませると、金具を開放して装填していく。
そして、再び銃口には赤い魔法陣が少し大きく広がっていった。

「……」

パァンッ!! と、先程よりも派手な炸裂音が響き渡り、銃口が少々跳ね上がった。
同時に放たれるのは巨大な炎の玉であり、先程浮かべた光球からも全く同じものが吐き出されていく。
四つの巨大な焔玉が飛んでいく先は、地上で暴れる男の方角。
そのまま飛んでいき、20m程の距離まで迫るか、撃ち落とそうとした瞬間に、玉は弾けるように仕込まれている。
砕ければ、無数の炎の矢となり、軍勢が放つ火の矢衾の様に彼へ緩い追尾を掛けながら迫る二段構え。
ミレー族に対して何か弱点があるなら、これをどうにかして阻むだろうと、全力の初手を放つ。

騎士アルダー > 近付かないのは正しい選択だっただろう。
若し近付いた為らば、撤収前の一人の男性に依って砦内の人間達と同じ運命を辿っていたのだから。
尤も外での戦いが終わる頃には、其の男性も戻った後なのだが。

一方、砦外でも一方的な戦いと為っていた。
重厚な鎧を身に纏っているにも関わらず、其の動きは異常。
更に的確な剣の鞘に依る衝撃が襲い掛かり、みるみる立っている者達は半数以下と為った状態だ。

然し、其処に外部からの妨害が入ろうとしていた。
上空に浮かぶ点々とした赤。
其れをジッと見詰めていた黒の少女だが、其の瞳が隣の白の少女に向けられる。

『魔法を返してあげてもいいけど、あれってミレー族だよね?
後で怒られるの嫌だし、上は交代するからあれお願いっ』
『あ、え…う、うんっ…』

短な言葉で意思の遣り取り、能力を解除する白の少女に代わって黒の少女が上空の確認に廻った。
そして、白の少女は手にした棍棒を両手で掲げて祈る様にして集中をする。

『ガンバンテイン…お願いっ…』

途端に棍棒が薄っすらとした輝きを放つ。
何らかの力が戦いを続けている者達を覆うのだが、其れを正確に何かと感じ取る事は出来ない。
只解るのは其れがあらゆる魔法を無効化するものと云う事だ。
20mと云わず更なる広範囲。
つまりは、炎の玉の時点で其れ等は消滅をしてしまった。

レナーテ > 「……っ!?」
『魔法が消えたな…』

放った魔法が何かの力に掻き消されていく。
恐らく、男と一緒にいた少女の二人の内……動きを見せた片方が、何かをしたのだろう。
金色を見開きながら驚くも、一瞬の間に何かを思いついたのか、鞄の中から竹の柄で作られたメイスの様な装備を取り出すと、柄の部分を魔法銃の銃口へと差し込む。
起爆準備を終えたそれを、改めて構え直すと何をする気だという相方の脳裏の声に表情を変えぬまま、狙いを先程の少女へと変えていく。

『ちょっとした魔術を見せるだけです』

何を言っているという様子だったが、彼らには聞こえぬ声で仕掛けを伝えていけば、相方は嗚呼という様子で呟いた。
狙いを定め終えると、本来魔法でなければ発射もできないはずの魔法銃から……火の粉の魔法陣を浮かび上がらせ、何ら変わりなく押し込んだ装備を発射する。
風切羽の付いたそれは、まっすぐに少女の方へと飛翔していき、何かにぶつかれば内部の薬液が爆発を起こす擲弾だ。
そして……再び火の粉の魔法陣を浮かび上がらせれば、火炎の弾を連続して少女の方へと放っていく。
熱も破壊力も本物のそれは、仕掛けを知らなければ奇術とでもいうようなものだろうか。

騎士アルダー > 上空での動きを確かめ乍に黒の少女は思考を巡らす。
間違いなく隣に居る白の少女の力の効果は気付いた筈。
魔法は使ってこないだろう、為ら此方へと向けたものは何か?

『ちょっ、ちょっと、こっちに来たこっちに!
コリン、あれやってあれーっ!』
『え?…え?…こ、こっちじゃなくて、あっち?』

間違いなく魔法的では無い物理的なもの。
黒の少女の指示に、白の少女は少しばかり慌てた様子で意識を別にも集中する。
アレとかコレとか言葉では理解出来ようもないか。
多重分裂思考に依って可能とする、複数同時魔法発動。
本来は黒の少女が使う其れは、ある能力に依って白の少女も行使可能と為る。
戦場を覆う力を自分達の周囲のも覆わせ、更に其れを覆う様に強固な物理障壁を展開したのだ。
二重に張った理由は念の為で。

此れも又、向けた攻撃が防がれれば相手に理解されるだろう。
其の様は年齢相応な様子を見せる少女達だが、其の実力は確かな脅威と成るものだと。

そんな遣り取りをしている間にも戦の場は続く。
とは云っても残りも僅かと為れば浮き足立ち始めるもの。
最早男性に対する戦意は失われているのは見て明らか。
決着は既に付いたと云え様か。
大した時間も掛けずに立っているのは男性一人だけと為ろう。

レナーテ > 障壁へと迫っていく弾頭は、その強固な結界を突き破ることはなく、表面に広がるように爆風を広げていく。
その結界が物理的に攻撃を防ぐものであるなら、追撃の炎を止めることは出来る。
だが、それが物理的な現象にだけ作用する結界であったなら、炎は一切の干渉を受けず、棍棒を握る少女へと降り注ぐだろう。

『……ついでの情報収集としては、十分だと思います。退きましょうか』

恐らく、先日の黒騎士と同じかそれ以上の怪物というところなのは、今の攻撃で把握できたところだ。
改めて3人の姿を確かめた後、脳裏に焼き付けながら旋回していき、九頭竜山脈の方面へと撤退していく。
砦で旋回していた二羽も同様に、合流した後は空気の破裂する音を響かせながら、一瞬にして姿が遠ざかる。
道中、既に下がっていた馬車の一団と合流しながら、仕事が増えたと小さく愚痴をこぼすのだろう。

騎士アルダー > 如何やら上空からの妨害は此れで終わりらしい。
其の反応は今の攻撃を最後に旋回し、砦上空域から撤退する。
直ぐ後を追う様に地上での戦いも終わった様だ。
能力を解除して二人の少女は一息吐いた。

「成る程な、あれが報告に載っていた新しい小道具か」

倒れた人間の部隊の者達を一瞥し、戻って来る男性が呟いた。
此のタナール砦で以前使われた物、名前は流石に知り得ていないが。
存在自体は監視をさせていた者から伝えられていたのだ。
其れを聞けば黒の少女が頬を膨らませる。

『団長ひっどーいっ、知ってたんなら教えといてくれてもいいじゃない?
そうすれば事前に対策だって取れてたのに、ビックリしちゃったよ?もうっ』
「すまない、あの者達は勝ち戦にしか大概姿を現わしていなかったからな。
今回現れたのは何らかの偶然だろう、タイミングが悪かった」

困った様な表情を浮かべ乍、宥めに掛かろうとする男性。

『あ、あの…取り敢えず、その…戻っては…
お姉ちゃんも、ね?えっと…それくらいに…』

其れを見かねたか、白の少女が横から声を掛けた。
機嫌が直ぐに戻る事も無さそうだが其の言葉に渋々乍に頷く。
手にした杖を再び振り翳せば、今度は三人が消え去る。
タナール砦や其の魔族の国側周辺に倒れた者達は其の侭に。

ご案内:「タナール砦」からレナーテさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」から騎士アルダーさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にカインさんが現れました。
カイン > 数刻前まで激しい戦闘の起きていた砦。
今は王国側の旗の翻る門の前で、億劫そうな表情を隠しもせず番をしている男の姿があった。
幸い死傷者はそう多くはない物の、先ほどの戦闘で被った被害はそれなりのようで、
結果として外様の傭兵までもが門の前に駆り出される始末である。

「……しかしこいつは、まずいんじゃないかね?」

そう独り言を漏らす物の、それを聞く者は誰もいない。
騒々しい声の聞こえる砦の内側に視線を向けると、
多くの人影が右往左往している所が見て取れる。

「砦をとったはいいにしろ、維持できないんじゃお話にならんなあ」

カイン > 「ま、そうなったら殿でも買って出るか。
 他にできそうなのも数がおらんだろうし、
 今の国軍に手練れが居るならそれでいいんだが」

雇い主が消えてしまっては報酬がおじゃんだし、
何よりも肩を並べた相手がくたばるのは目覚めが悪い。
仕方がないと流す程度の感傷とはいえ、酒が不味くなるのは宜しくない。
顎に手を当てながら剣を軽く叩くと、息を吐いて少し気合を入れる。
何せ相手は魔族である。何を仕掛けてくるのか分かったものではない。

カイン > 「…お、交代要員か。遅かったな?
 全く、このまま一日中立たされるものかと思ったぞ」

漸く現れた二人組の見張りにそう声をかければ手を挙げて、
そのまま横に振りながら入れ替わりに砦の中に去っていく。
持ってきた酒でもとりあえず飲んでしまおうと頭の中で算段立てながら。

ご案内:「タナール砦」からカインさんが去りました。