2019/01/19 のログ
黒須 > 「…ったく、めんどくせぇな…。」

(肉山に吹っ飛んだ魔族と戦闘をすることに言っているかのように文句を呟いた。
だが、彼の言った言葉の矢先は肉山であった。
死んでも元人間、後でしっかりと埋葬しないといけないなっと思っていたが、今はそんな優しい事は呟けず、いつも通りの調子でめんどくさいっと言った。)

「どうした?かかってこいよ。それとも…てめぇは死肉を食うだけのでくの坊だったのか?」

(挑発するようなことを良いながら片手を差し出して指先を動かし、来るなら来いっと言うような動作をした。
その途端、自分の横に通り過ぎる肉片を自分の鋭い目で見極めた。
横を通り過ぎようとしているその肉片を掴むと、一度回転を加える。
回っている間、掴んでいる手と肉片には赤いオーラが纏われる。
そのまま、再度敵を確認するとそれをお返しするかのように投げ返す。
剛速球並みになった肉片がアクラの顔面向けられ、弾丸のように飛んでいく)

アクラ > 「不味い肉をわざわざ…」

出て行けと言われて渋々従ったのに唯一楽しみにしていたおやつまで奪われ投げつけられた
何なんだこの獣人はと不満が小さな怒りに変わる
飛来する肉片を大口……顎も外れ体の半分の大きさにまで開いた口が飲み込む

「………」

食料を持って帰る、そんな些細な願いも目の前の獣人に邪魔をされた
丸呑みのせいで少し胃もたれそうになりながらも両の手に必要分魔力を集める
深緑の光が漏れ出し煙が広がっていく

「お前はどうせ不味い……だから形はどうでもいい……」

緑の煙に触れた肉山がグジグジと溶け出しガスを放出していく
勿体ない…そう思いながら煙は部屋を充満し唯一の逃げ道である扉の方へと広がっていく

黒須 > 「うるせぇ…まじぃまじぃ言ってんじゃねぇよ…。」

(元人間たちの肉をそう告げる相手に少々不満を持った。
食べる事だけを目的とする相手の心情に少々苛立ち気になりながらも次の一手に眉を寄せる)

「あ?なんだ…。」

(両手に集めた煙に怪しさを感じると肉山が溶け出す瞬間を目の当たりにした。
腐臭させる魔術かと感じるとすぐに扉の方まで広がっていった。)

「こいつは…やべぇな?」

(周りを見ればすぐに煙で充満する室内の中、自分の体にも付着し始める。
肉山同様に表面が溶けていき、地面には自分の血液や溶けた肉などが落ちていく。
多少の痛みを感じると、そのまま膝を付いてしまう)

「うぐ…!ちっ…。」

(声を漏らしながら舌打ちをすると、徐々に毛や革も溶け出し、半分ゾンビのような状態になった。
その瞬間、相手を掴もうと腕を伸ばすと、再度握り拳を作った。
白い炎に包まれた腕に時計の魔法陣。
自分の背中にも同様の魔法陣が展開されると、時間が逆再生されたかのように肌や毛が戻っていく。)

「…一応言っておく。俺は元貧民地区最強っと言われてたんだぜ…?」

(余裕ようにつぶやくと今度は自分の体が赤いオーラに包まれる。
膝を付いたまま立たずに少しじっとしていると急にアクラ向けて一歩前に出る。
地面を凹ませるほどの強烈な蹴りをし、加速した巨体が飛んでいけば壁まで飛んでいき、押しつぶすかのようなタックルを相手に喰らわせようと仕掛けてきた)

アクラ > 「不味いものは不味い……」

実際に不味かったのだから仕方ない
これで相手が人間だったらやる気も出たのだが

「うん……?」

このままグズグズになるまで溶かし殺す
そう思っていたのに目の前の獣人は勝手に燃え上がり身体が治っていく
おかしい、目の前の減少は魔法の中でも異質だ

「そんな魔法、しらなっ……」

言葉を言い切る前に圧倒的な質量に叩きつけられる
身体を硬化させた自身ごと壁に押しつぶされ…腐食でもろくなった壁は想像よりも簡単に突き破られる
ゴロゴロと転がるアクラとそれを行った黒須、煙は開放的な外に出ればあまり役に立たないとアクラの魔法が止まる

「貧民地区最強の獣人…お前は覚えておく……
旨そうじゃないけど…」

立ち上がり、背を向け跳躍する
砦の壁を蹴りつけ勢いもそのまま森の方へと駆けていく
一切後ろを振り返らず全力で去っていく…逃げた、と言った方が正しいか

黒須 > 「んっ…。…やべぇ、ちと大穴開けちまったか…。」

(砦の壁ならば強化もそれなりに施されていると思い、全力の体当たりをしていた。
綺麗に受け身を取って立ち上がり、開けてしまった穴を見ては後で治さないとなっと思い、頭を掻いた。
同時に、転がったアクラを見ると、立ち上がった姿にまた妙な技でも来るかと構えればそのまま消えていった。
追いかけようとするも、今はその場から離れてはいけないと優先順位を決めてそのまま見逃していった。)

「…ったく、妙な奴に出くわしちまったな…。」

(そのまま、自分も壁をうまく使ってよじ登り、穴に入り込む。
開けてしまった穴を魔術で直し、今度は溶けて液体した元肉片たちを眺めた。)

「…あ~…。めんどくせぇ。」

(深いため息と共に、バケツとモップを持っては一滴も逃さずに回収し、近くの地面に埋葬した。
今起こったことをしっかりと頭に抑えながら確認を終え、そのまま砦から一時撤退していくことにした)

ご案内:「タナール砦」からアクラさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」から黒須さんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にエルディアさんが現れました。
エルディア > 「たなーる、ここー?」

砦近くの崖の上にひょっこりと異形の姿が現れた。
眼前には先の戦いでボロボロになった砦と
その少し外に掘られた塹壕や防御柵などが敷かれており、
その周りをちょろちょろしている人の姿が見える。

「ついたー」

頭についた葉っぱや木の枝をフルフルと頭を振って吹き飛ばすと
ぺたんと座り込み、小さく伸びをする。
この辺りは森が深く、思いのほか長々と歩き続ける羽目になったので
広い空が随分と久しぶりな気がする。実際はそうでもないが。

空を駈ければあちらから此処まで
そう長くはかからなかったはずなのだけれど、
そこは気兼ねない一人旅。
途中で温泉を見つければそこに浸り、
野牛の群れを見つければそれを狩り、
未踏の花畑を見つければそこで戯れ
――要は道草でも大魔王をしてた訳で。
花なんか積んでしまうといつものような高速移動はできない。
そうなればとことこ徒歩移動という事になり、
実際山の中を歩いてやっとこの場所に辿り着いた。

「んしょ」

背中の片腕が牛を掴みなおし、
自身の両腕に抱えた花束もぎゅっと抱きしめる。
結果道中拾ってきたお弁当やら花束やらで
”手持ち”はいっぱいいっぱいになっている。

エルディア > 「ふゃぁー……」

とりあえず腕一杯に抱えた花束に本日何度目かといった様子で顔を埋める。
砂糖菓子もかくやという様な薄く繊細な花弁と
胸を満たす爽やかで甘い香りが心地よく、
顔を上げ満足げな吐息を吐き出すととろんとした瞳で空を見上げた。

「いい、におい」

なお彼女は積んできた花が
その可憐で儚げな白い見た目と柑橘類のような爽やかな香りとは裏腹に
甘い香りで周囲の生物を引き寄せ中毒にした後
自身の生息地で力尽きさせることで養分とすることで
コロニーを形成する毒草であり
大の大人でもたった数株で前後不覚にするような成分を有する事も相まって
地元の住人には「鬼曳花」と呼ばれる花であることを
未だ、知らない。

「くうき、うまい」

まぁ魔族かつ毒耐性の高さ故にそう大した影響もない。
周辺に住むネコ科の魔物にはむしゃむしゃされていたりもするわけで。
平気なモノだってそれなりに居るのだから不思議ではない。

エルディア > 「しょっと」

再び小さく伸びをした後、ぴょんっと跳ね起きると再度砦へと目を向ける。
篝火が所々焚かれているそこは今はヒトが占拠しているようだ。
魔に連なるものの多くが夜目がきく。
見えているのにわざわざ火を焚かなくとも問題ないし、
対人で侵攻に加わる者の中には火を恐れる者すらいる。
……ちなみにあまりそういった連中は好きではない。
そういう連中は往々にして水っぽいというかべたつくというか
ぎとぎとしてたりべちょべちょしていたりと
とにかくよく張り付く上に(性格含め)ジトッとしているものが多いのだ。
まぁそれはともかくと脱線しかけた思考を戻すと砦よりも魔族領域に寄った部分をじーっと見つめる。
よし、あそこは具合がよさそう。

「ルート、ルート」

崖の淵へと近づき下を見下ろしてみる。
切り立った崖は足場になりそうな場所がほぼ無い。
登攀に慣れた者でもロープや金具が無ければ
降りるにも上るにも苦労するだろう。

エルディア > 「よゆー」

トンっと地面をけるとそのまま自由落下。
落下してきたものの衝撃で
崖下に砂埃がもうもうと舞い上がるも
その真ん中ですくッと立ち上がる。
苦労するのはヒトやミレー族、その他もろもろの話であり、
その中に自分は含まれない。

「♪」

背中の腕で持っている牛を振り回して付着した土を落とし
そのまま自身の腕で軽く足をはたくと悠々と歩きだす。
目指すは砦の近く、掘られた塹壕の中だ。
欲を言うと水場が近くにあるともっといい。

エルディア > 此方の姿に気が付いたのだろう。
俄かに砦が慌ただしい雰囲気を帯び、走り回る姿がちらほら。
武器を持って走り回る者達の殆どの表情に緊張と戸惑いが張り付いている。

「?」

緊張は判るけれどなんで戸惑っているのだろうと小首をかしげる。
先に魔王級の魔族と八百長会話があったりそのすぐ後に別魔族による襲撃があったりしたことで
流石にもう続きはしないだろうという希望的観測があった事など
残念ながら彼女は知る由もない。
変なのと思いつつ足元の人の頭ほどの石を拾い上げる。
とりあえず変な筒で此方を観測していると思わしきヒト族に

「ゃん」

投げつけた。
当たったかの確認はしない。
こっちを覗き見するのさえ邪魔出来ればそれでいい。
何だかじろじろ見られると恥ずかしい。

エルディア > 臨戦態勢の緊張感と、幾分かの悲壮感が漂う砦をそれ以上気に掛ける事無くのんびりと歩き続け、砦の防衛線まで辿り着く。
投石は十分な攻撃行為であり、射程ギリギリまで引き付けて迎撃されても可笑しくはないのだが
砦側はなんの理由か此方に攻撃する事なく、固唾をのんで此方を伺っているようだ。

「ぉー」

そんな空気を完全に無視してそのまま通り抜け
お目当ての場所に辿り着くと小さく声を上げた。
塹壕の近くにお目当ての物……小さな水場と火の跡があったのだ。
ヒトは此処を野外調理場という。

エルディア > 「おっべんとおべんと」

小さく呟きながら散らばった薪を拾いあつめ、
適当な量を確保すると指を空に躍らせる。

「ふぁいぁー!」

破裂音に似た音と共に火の手が上がった。
普通に食べ物を焼くには少々熱すぎる炎術式でこのままだと触れた物が灰になって御仕舞だが……
下に積んだ薪に火が燃え移る。
しばらくすれば火が落ち着いて良い具合になるはずだ。
正直最初に見た時に思ったのだ。この塹壕……

「まるやきに、さいこー」

めちゃくちゃ調理しやすそうな形だなぁと。
何だかいい具合に壊れたり埋まっていたりするせいでこう、
熱が逃げにくそうだし焼いている間に
のんびり待っていられそうな場所がたくさんある。
此処を作った奴は天才かとほめてあげたい。
ありがとう何処かの誰か。

エルディア > 火が落ち着くまでの間、牛についた土を落とそうと水場に近づく。
大き目の瓶と大きなお皿になみなみと蓄えられている水は十分飲食に耐える水質のモノ。
どうやらここのものは精製術式で水を生み出すタイプのよう。
これなら魔力さえ切れなければ周囲の土壌から幾らでも水が組み上げられる優れモノである。
ありがとう何処かの誰かリターンズ。

「ふっふー」

この水量なら水浴びもできるかもしれない。
これは今夜は快適に眠れそうだなぁと
何やら騒がしい一画は完全に無視しつつ
牛にじゃぶじゃぶと水をかけて汚れを落とし、下処理をしていく。
臓腑や血は仕留めた時に処理してあるのでそこまで苦労はしなかった。

「……かみは、いた」

しかも手ごろな所に鉄槍まで落ちている。
もうこれはガイアがここでご飯にしなさいと囁いている。
帰ってきたありがとう何処かの誰か。

エルディア > 鉄槍に牛を刺すと火にかける。
同時に周囲の土や廃材をドーム状にして空間固定。
熱が内部に帰る様にミラー系統の術式を展開。
確かヒト族の言うオーブン形式というやつ。
やっぱり丁寧に掘られている地面が良い仕事をする。
後は焼けるのを待つだけ。焼けた所からこそいでもぐもぐすればいい。

「じゅるり」

じぅじぅという音と共に肉から染み出た油がてかてかになった表面を零れ落ち、
火の中に落ちては食欲を擽る音を立てる。
美味しい肉が焼け始める良い匂いが漂い始めていた。
この調理法は時間がかかるので移動中は使えず、
もう一匹は生でもぐもぐごっくんしたのだけれど
目的地周辺についた今、そんな事は気にしなくてもいい。
そういえば……

「おふろ」

お湯沸かせるじゃんと小さく手を打つ。
水もたっぷり、時間もたっぷり。
昨日は天然温泉だったが此処で沸かさない手はない。

エルディア > そうと決まればまず湯舟である。
幸いにも適当に埋まっている塹壕のいくつかと廃材を利用すれば作れなくも……

「!?」

視線の先、崩れた土砂の下に視線がくぎ付けになった。
そこにはテント等に使われる防水布が埋もれていた。
しかも防火性のかなり良いもので、軍用という事もありかなり大きいもの。
此処を作った者はあれだろうか、此処に住めとでもいうのだろうか。
まるで神の如き采配に軽く戦慄を覚える。
まさか私がここに来ることを見越していたとでもいわんばかりの準備の良さ。
ありがとう何処かの誰か。おかわり。

「んふー♡」

思わぬ拾い物に歓喜の声を漏らすと少し変な踊りを踊る。
これがあれば湯舟がかなり簡単に作れる。

ご案内:「タナール砦」に紅月さんが現れました。
エルディア > 適当な場所の地面を全部の腕を使って均し、
浸かれるだけの深さと広さを確保するとシートを丁寧に張り付けていく。
この作業をどれだけ丁寧にするかで入り心地が変わるので手は一切抜かない。
コツは隙間を作らない事。
周りに石を並べシートを固定し、注ぎ口を作ったら湯舟は完成。
後は適当な鉄の盾を拾い……
裏面に加熱の魔法陣を爪先で刻み込み、

「ぇぃ」

真っ二つに折る。
それを二つ三つと作り上げて水場に届くだけの枚数を用意する。

紅月 > 砦の中は絶望と、恐慌と…
こんなにも連続して強力な魔族が波状攻撃の如く仕掛けてくるなんて、誰が想像しただろう。
"砦"と言っても常に最上級の将軍が滞在している訳でもなく…つまり、言ってしまえば防衛力は運次第な所もあって。
特に今、対魔族の代表とも言える師団の長が絶賛魔界遠征中である。
…運の悪い本日の指揮官が縮み上がってしまうのも、無理からぬ事。
頭がそんな状態で士気が高まる訳もなく、王国陣営は現在進行形で大混乱に陥っていた。

そんな状況に陥っていると砦内の非戦闘員…救護室の医療班の耳に入るのも時間の問題で。
其所にたまたま訪れていた紅娘は頭を抱える。

「……厳戒態勢なのに戦が始まらないから、何かと思えば…もうっ、意気地無しっ!
ホラホラ、退いて退いて…」

砦の上から来訪者を見下ろす。
…見下ろした、のだが。
どうみてもキャンプしに来てるようにしか見えないのは気のせいだろうか。

「……ん~、よし…よいせ、と。
…そこのお嬢さん、何してーんの?」

ポンと砦から飛び降りて、からん、と下駄の音を響かせながら着地すれば裾の埃を払いのけ。
何とも緩い調子で声を掛けてみる。

エルディア > 「……」

近年稀にみる真剣さで丁寧に盾を並べ、傾斜と長さを調整する。
この塩梅が匠の技であり肝。
とにかく、この部分が難しくここをいかに調整するかで全てが変わるといっても過言ではない。
この傾斜を強くし過ぎるとお風呂がぬるくなるし、
かといって傾斜を浅くし過ぎると流れてくるお湯の量が安定せず、
熱かったり寒かったりする。
良い湯加減のお湯を適当な量流すための最適な角度と長さ、加熱量、
そしてそれらをコントロールする魔力。
じゃぶじゃぶしている時にお湯が零れてなくなるときのあの虚しさを味わうか否かは
全ては此処にかかっているのです。
……誰が匠か。

「んーゅ―……」

正直、これ以上に情熱を傾ける事は戦闘以外思いつかないというレベルで
お風呂づくりに注力している。
時に遊び(存在価値)以上に大切な事もあるのです。おっとなー。
そんな事をしている間に牛はじうじうと香ばしい音を立てながら焼けていく。
そして砦から飛び降りてくる人影にも今は気を取られない。
大人の女は仕事中は集中するもの。おっとなー。

「おふろ」

気分は完全に匠になりきった少女は
話しかけてくる相手に視線を向けることなく言葉少なく答えながら
目は真剣そのもので盾の傾斜を細かい石などで調整している。
一方で砦の面々は困惑を隠せない御様子。
『え、え?何どういうこと?挑発?』
『何だか寛いでるけど……ここ戦場なんだが』
『私の頭がおかしいのかな……』
『魔族が考える事はわしには判らん』
全員が共通するのは、何でこんな場所に来てくつろいでいるのかという疑問。

「できた」

そんな戸惑いもどこ吹く風で
お風呂づくりに熱中していた少女は厳かな口調と共に立ち上がった。
其々の魔法陣を起動し、瓶から水を零れさせると
水の蒸発する音と共に白い湯気が立ち上る。
それが落ち着くころには即席の湯舟に丁度良い暖かさのお湯が溜まり始めている。

「……なんという、ことでしょう」

これが噂の理想のマイホーム(仮)か。

紅月 > 「そっかぁ、お風呂かぁ…
今日は特別冷えるもんなぁ…」

からころ、のんびりと歩み寄って…彼女の隣に。
そして『できた』らしい辺りを見回す…調理場、炊事場、風呂場。

「これが魔族式"夢の(略式)マイホーム"か…いや、何か……あっ、寝床がないや」

のほほんとした調子で何気無く零した感想…の後、ポンとひとつ手を叩く。
次ぐ、発見と指摘。

「…お嬢さん、お泊まりしに来たの?一休み?」

一休みだけですぐ立ち去るなら寝床は不要だろうから、わざと作っていないのかも知れない。
そう思い、隣の魔族に顔を向け…首を傾げながら問う。

エルディア > 「これが……てんさいか」

初めてやったけどなんかすごい奇跡的に丁度いいお湯加減。
このまま溜まれば楽園(トロイメライ)はもう目の前。
これが情熱努力による勝利と静かに拳を握ると

「ぶぃ」

なんか近くに来ていたシラナイヒトにどやぁしてみる。
超好戦的と言われる彼女が戦闘行為を起こさない程
お風呂づくりが上手くいったことに上機嫌。
……そんな輝かしい勝利の余韻は長くは続かなかった。
激しいお湯の零れる音と共に盾の数枚がひっくり返り、
湯舟へのお湯の供給が止まる。

「……」

後ろを振り向いてそれを確認した少女の顔は僅かに膨れて見えるかもしれない。
やはり匠の技は気分だけでは成立しないもの。
そして彼女は基本素人だった。やり方知ってるだけで。

「むぅ」

これは作り直さないといけない。
その前の牛の様子を見よう。
……あれ?誰かいる。誰だろ。
今更ながらちゃんと目の前の誰かを認識し、ぱちくり瞳を瞬かせる。
何だか変わった気配がする相手だけれど、すごぉくのんびりしている。
……遊んでくれそうな雰囲気じゃない。残念。

「える、あそびにきたよ」

砦の方を眺めながら答え、再度石を拾う。
寝床かぁ……忘れてたなぁと思いつつも火の近くで丸くなればいいし、
寝れるような穴は此処いっぱいあるしでまぁ適当な所で寝ればいいと思う。
目下の所は……

「ゃん」

軽く振りかぶり
こっちをまたしても筒で見ている監視人に石を投げつける。
当たったかは気にしない。
乙女の柔肌をのぞこうとはいい度胸である。死すべし。

紅月 > 何だか凄く嬉しげな彼女の様子に、ついつい釣られて「…ぶい」なんて、完成を喜んでしまったけれど。

「…あー、お湯の重みに耐えきれなかったか。
溶接はしなかったのねー…なら、もっといっぱい石を組んで間を泥で固めなきゃダメよ?」

ガランゴロンと転がる盾と魔族の少女のムッスリ顔に苦笑して。
観察されるのもお構いなしに、しげしげと風呂だったモノを観察…するついでに、簡易的な壁の作り方をアドバイスしてみる。

「ん、える?お嬢さんはエルってお名前?
私はコウゲツっていうの。
……遊びに、かぁ…どんなお遊び?それができたら満足?
なんかね、ここのヒトたちが『あの子が何しに来たのかわからない』って困ってるみたいなのよ」

名前らしきものと目的を聞けた故、とりあえず自分も名乗り返して…放物線の先でカーンとイイ音がしたのを目で追い確認する。
どうやら盾で防いだらしい。
改めて魔族の少女に向き直れば、とりあえずお喋りしてくれるみたいなので事情を説明してみる。

エルディア > しかしこのヒト?は何をしに来たのだろう。
匂いに釣られてやってきたのだろうか。
もしくはこの夢のようなマイホーム(仮)の素晴らしさに気が付いたのか。
誰に断って家作っとんじゃわれぇおどりゃすどりゃ的な。
こういう時どう対応すればいいんだっけ。
ぽくぽくぽく……ぱいーん

「……うし?する?」

指を一本たててずいっと前に出す。
牛は別に一人で食べる必要はないのでそう困らない。

「おふろ?する?」

二本目の指を立てる。
お風呂が問題ならそこは考えないといけない。
みかじめ料なるものを徴収するヒトがいると聞いたことがあるけれど
戦場でもそれは適応されるのだろうか。
その割には割とのんびりした印象を受けるけれど
これが”いんてーりやくーざ”なるものなのだろうか。

「それとも、わたし?する?」

最後の自分の胸元を指さすと
僅かに首を傾げて様子を窺うようにじっと目を見る。
わぁ、はじめて本物みた。
そしていんてーりやくーざさん(仮名)はお風呂を選んだ様子。
この人凄く良い人。
もし次があればアドバイス通り泥も有効活用しようと思う。

「こーげつ」

いんてーりやくーざさん(仮)はコウゲツという名前らしい。
やくーざさんだと呼びにくいので名前で呼ぶことにする。
良い人だし。

「んー」

流石に自分の遊ぶが他の人の遊ぶとだいぶ違う事は理解している。
特にヒト族は遊びの内容を聞くと戦慄した表情を浮かべ
魔族も大体武器を構える。

「いっぱいいっぱいたたかうの。
 ヒト、もマゾクもリュウも。
 ぜんぶとね、たたかえなくなるまで」

けれどそれでもかまわないとにっこりと笑顔で続きを口にする。
結果として死ぬことがあるだけで殺すなんて一言も言ってない。
とは言えそれを聞き咎められて戦う事になれば……

「おねーさん、あそんでくれるの?」

それこそ本望なのだから。