2019/01/17 のログ
■ラボラス > (――漆黒の剣、其の刀身が先刻よりも長く、禍々しく魔力を帯びている。
相対する女騎士の携える大剣が、光を帯びた聖剣と化して行くならば、己が漆黒は相反する存在だろう。)
―――成程、冷気には拘らぬか。 其れで良い、俺をもっと愉しませろ。
(直接己を縛り付ける為の冷気では無く、其の身体能力を底上げする為の力、か
多彩な事だ、と嗤う、が。 決して付け焼刃ではない事は、其の力を、練度を目の前にすれば判る事だ。
だからこそ、愉悦を覚える。 己の脅威たる存在が目の前に構えている、其れが何よりも己を高揚させるのだ。
この瞬間だけは、己が軍師で在り、将で在る事を忘れ、唯一人の戦士で在れる瞬間とも言える。
――だが、其の刹那、頭上より飛来する気配に、意識を奪われた。
其れまでは、警戒こそ解かずも、頭上に視線を向ける事すらしなかったが
煌めいた閃光、青き炎の弾丸、其れに対する明確な危機を察知しては、黒き剣で、其の銃弾を切り払い――)
――――――ッ!! ぐ、ぬゥゥゥ!!
(閃光が、奔るだろう。 銃弾を切り裂いた黒き剣が、けれど同時に砕け散る。
其の余波が黒く鎧の全面を、神聖魔法が焼いた箇所を更に穿ち、鎧に明確な孔を開いた
未だ、膝を折る事は無い。 だが、砕け散った黒き剣を再び顕現させようとして
其れが、まるで封じられたように、靄の様な形を成すだけならば。
其れまでの表情より一変し、僅か、忌々しげに二人の女を見据えて。)
―――……随分と、面白い力を隠して居たな、貴様。
■レナーテ > 彼が単純な切り合いに応じ続け、最後までその力を出さぬなら……恐らく勝てると見れる。
けれど、誰がそんな酔狂で命を落とそうか。
反動の強さに備えて、敢えて増幅弾を使わなかったのは正解だった。
着地するだけで、内側から針が胸の周りを貫くような激痛を覚え、脂汗がにじむ。
直ぐにでも蹲りたいのを必死にこらえながら、にらみつける先。
蒼月の光を思わせる青の炎が剣を砕いていた。
飛び散った火の粉も鎧を壊し、火の余波が明らかに穴を開けている。
焼かれた一面には、まるでそこが存在しなかったように再生を阻害するかもしれないが、僅かでもそこを削れば問題なく治せる。
寧ろ、内側から増幅するように治すなら何ら支障はないだろう。
無論、壊れた剣を再度生成するなら、それも抑えることも叶わない。
本来の炎なら、この一面を蒼く染められるだけの力があるが、借り物と足りぬ器では、一発くれてやるのが限界。
「……これは、私の師から借りたもの。古に住まう主に、狂気と封じられた存在の一片です。空にいるあの子もそう、神竜を殺され、怒り狂う従者です。戦うなら……今の一発では終わりませんよ」
気丈に振る舞いながら、狙いは彼を捕らえ続ける。
手が震えないのも、足が震えないのも幸いなことで、痛みで背中はじっとりと濡れて、体中が冷たく感じる。
あと一発、二発目を撃てばどうなるかわからない中、必死の脅しを紡いでにらみ続ける。
■サロメ >
「──生憎だな。こちらにはお前を愉しませてやる余裕はない」
聖なる力を帯びた大剣を両手で掲げ、その切っ先を…砕け、空いた鎧の孔へと向ける
予想外の一撃だったか、その黒き剣も砕け、こちらの攻撃を切り払うことはできない筈──
背後で気丈に魔族の将を睨めつける少女に無理はするな、と目配せする
この距離、相手には気づかれていないかも知れないが自身にはそれがよく伝わる
「だが、そうだな…代わりと言ってはなんだが、地獄に招待するぞ。──ラボラス!!」
しかし今はその好機を逃すことはすまいと、全力を以て石畳を蹴り割る
目掛ける点は、鎧に開けられた孔──そこだけを狙い、迸る聖光の槍が如く、渾身の突きを放った
■ラボラス > (――存在を、消された――いや、焼き尽くされた、と言うべきか。
己が黒き魔剣は、実体を持たぬ魔力の凝縮体。 故に砕かれようと、何度でも再生する。
だが、其の一瞬、其の剣の再生を許さなかったのは、間違い無く爆ぜた青き炎が故だ。
鎧の内面、間違い無く体躯を、熱が焼いて居る。 神聖魔法で脆くなった鎧は
砕け散った剣に比べれば、徐々に修復をして行くだろうが、本来の修復力には遠く及ばない
残る炎を、焼かれた表面を削り取る、と言う手に思い至らなかったのは
偏に、其れだけの猶予を与えられなかったからだろう
――少なくとも、其の猶予を与える様な女では無い筈だ、目の前の、女騎士は。)
――――そうか、其れは残念だ。
だが、歓迎するぞ…俺に地獄とやらを見せて見ろ、人間ども
闘争と戦火の果てにのみ、我が存在価値がある…。
降伏なぞせぬ、ただ純粋に力を以て、このラボラスを叩き伏せて見せるが良い…!!!
(更なる青き弾丸など、脅しにもならぬ。
闘争にこそ、歓喜を見出すのが己と言う存在だと、高らかに咆哮し、構えれば
剣を持たぬ、ただ、右腕を振り上げ、女騎士へと正面より立ち向かう。
突っ込んで来る其の小さな体躯を、渾身の力で叩き潰さんとする拳が
光帯びた大剣を掠め、其の顔面へと迫るだろう、が――
恐らく、遅い。 砕かれた鎧の内側、恐らくは、決して無傷では済んで居なかったのだろう。
冷気に四肢を縛られた時の如く、女の、迷い無い踏込に追い縋る事叶わぬ儘、其の頬を掠めて。
――光が、黒鎧に開いた孔へと吸い込まれる様に突き刺さり、そして
女騎士の手に、肉を貫く、或いは、女にとっては余りにも慣れた感触が、伝わるだろうか。)
――――――…………。
(一瞬、静寂が流れた筈だ。
そして、一拍の間を置いて、今度は右腕が、女の胴体を大きく薙ぐ。
それは、叩き潰そうと言うよりも、押し退けようとする意味の方が強い物。
そして、其れが適うならば。 向き合う女二人より、幾歩か、たたらを踏む様に後退し。)
―――――……足りぬ。 ……まだ、まだ…食い足りぬ。
貴様等と言う極上の脅威を、まだ、喰らい尽くさねば気が済まん…。
――戦略的撤退だ…貴様らに、束の間の勝利をくれてやるぞ…!
(――幾度か、濁った声が響く。
そうして、口から血液か、其れとも魔力の構成物質かも判らぬ黒き液体を吐き出しながら
心底、楽しそうに、嗤うだろう。
そして、次の瞬間、快かにて暴れて居た魔族の軍団が、一斉に砦の外へと飛び出し始める。
それが、言葉通りの撤退、で在ると――はたして、理解出来るだろうか)。
■レナーテ > (「蒼月の炎でも怯まないなんて……っ!」)
この世の魔を呪いすぎて封じられた存在の力、それだけの力をぶつければ、相手も多少は身を引くだろうと考えていた。
しかし、それ以上に闘争を求める咆哮は、脅しの言葉が逆作用になった証拠。
ぞわりと悪寒を覚えながらも、目配せに頷ける余裕などない。
一歩間違えば、二人揃って死ぬ可能性が十分にある。
「っ!? 駄目ですっ! ただ力をぶつけるだけではっ」
穴を開けたところを狙い、彼女が突きを狙って駆ける。
炎のダメージを好機と見たのかもしれないが、恐らくあの一発で怯まぬなら、普通のダメージでは致命傷は難しい。
相手の動きを封じねばと、側面へ回るように駆け出し、射角を維持しながら地面を滑り、構え直していく。
顔面を殴ろうとする彼の膝を狙い、再度月明かりの様な光の魔法陣を銃口に広げる。
しかし、ダメージが彼の動きを鈍らせ胸を貫くなら放つことはない。
ただ、幸運だっと安堵しながらそれを見守るのみ。
「……」
つかの間の勝利、敗北を認めながらも微笑う狂気に表情は引きつる。
前回の衝突など、大した意味もなかったと思わされながら飛び立つ魔物達を視線だけで一瞥していく。
今宵の幕が下りるなら、此方としては上出来だが彼女はどうするだろうか?
逃がすかと斬りかからない事を祈りつつ、構えたまま彼を狙う。
■サロメ >
「──……第七師団、砦の各経路の状況を確認後、修繕と周囲の哨戒に入れ」
一息をつき、胸元から取り出した魔法石に向けて言葉を続ける
同時に損害状況等を確認し、保全の作業の指示をして──
「私はヤツを追って魔族の国へ入る。
…手の内をいくらか見られている。このまま手負いの機を逃したくはない」
そう言って、魔力を込めていた指を魔法石から離して
「──助力に感謝する。レナーテ」
■ラボラス > ――――……漸く…復讐する立場に為れると言う物だ…。
(砦から離脱して行く魔物たちの行動は早い
それは、其れまで蹂躙と勝利のみを繰り返して来た軍団が
敗北に備え、撤退を訓練して居たかの如く。
呟くかに、言葉を零した其の直後、黒鎧の姿もまた、屋上から落ちる。
飛来してきた、数人のデーモンとサキュバス達が曳く綱へと捕まり
二人の姿を静かに見下ろしながら、魔族の領地側へと、退いて行く。
屋上には、砕けた鎧の破片と、血痕めいた黒が暫しの間残り
それも、次第に薄れ、風化する様に消えて仕舞う事だろう――)
■レナーテ > 軍勢の撤退速度の速さは、こうした逃げも想定していたかのように手際がいい。
魔という暴力の権化とは真逆の動作は、それだけ冷静に現状を見据えてきたというところか。
つまり、この逃げは命を守るというよりは、次を楽しむためのもの。
つかの間の勝利、それを覆すのはそう遠くないと、自ら言っているのと変わりないと。
「……組合長は貴方を買っていましたが、私は違います。この状況で追撃して勝てる筈がないです。さっきの突きは、蒼月の炎が効いていたから、一瞬のすきが生まれただけです。それぐらい……わかりますよね?」
息を整えながら、一気に胸の中に溜まった憤りを吐き出す。
相手が何をしていたのか、何故冷気を通さなかったのかを理解していれば、追撃して勝てる状況ではないことぐらい分かるはずと。
何かを急ぐ彼女を睨むように顔をあげると、小銃のスリングベルトを肩に通して、背中に回していく。
「はっきり言います、今の貴方ではあの黒い人には勝てません。一軍の将なら……よくかんがえたらどうですか?」
強い弱いという話ではなく、彼が持つ力はその垣根を超えたレベル。
それが分かっているのかどうか……怪しい彼女をみやりつつ、思いをぶつけていく。
■サロメ >
「ああ。あれは都合が良かった」
少女の言い分を認めつつも、判断を変えるつもりはないと言ったように王国側とは反対の、暗雲立ち込める魔族の国を眺めながら
「さてどうかな、君が来てくれたおかげで私も切り札の多くを温存できた。
同時にヤツのカラクリも大凡の検討がついた、剣を交えてその気性も存分に味わえたしな。
……故に、翼ある獣の将を討伐しようとするなら、またとない好機であるのも事実だ」
大剣を軽く振り払い、鞘へと収める
そして懐から取り出した竜骨の笛を吹けば、一度後退させた翼竜が砦へと翼を運ぶ
同時に2,3騎、翼竜に乗った女騎士が現れ屋上へと向かう、おそらくサロメ直衛の騎士達なのだろう
「君達は今回の攻防の詳細を王城へ報告してくれ」
■レナーテ > 「……本当にあの力の正体がわかっているなら、同等の何かを持たないと勝負にもならない。それに彼は負傷して逃げたのではなく、戦そのものを楽しむ為に此方に時間を寄越しただけです」
何も分かっていない、恐らくアンチマジックかなにかという目測で動いているのだろうと思えば、奥歯を噛みしめる。
やってきた翼竜と仲間達をみやり、そしてかけられる言葉に頭の中で何かが千切れ飛んだ。
先程までの苦痛を堪える顔も、怒りも、すっと消えていくと、不気味なほどの満面の笑みを浮かべた。
「謹んでお断り申し上げます。私達の仕事には含まれていませんので、死に急ぐ戦をして、無駄死にの末に第3師団に笑われたいのでしたらば、どうぞご勝手になさってください。これから王城に戻った後、組合長に今日の業務報告をしなければなりませんので、これにて失礼します」
怒りのせいか、念話にもそれが響いていたらしく、すでに撤退中の少女達は戦々恐々な状態で走る。
組合内、怒ると一番怖いのは秘書であると仲間内では既に知られていることだからで。
わかりましたか? と言いたげに可愛らしく小首をかしげた後、僅かに細めた瞳の隙間から、冷ややかな金の瞳孔が無表情に見つめる。
「……ユーレック、帰りますよ」
空で待機していた紅のマシコが傍に降り立つと、その背に飛び乗っていく。
怒りの具合を知ってか、相棒の彼も彼女に何も言うことはなく、砦から飛び去るのだった。
■サロメ >
オーギュストも女のヒステリーは苦手だと言っていたが、その通りだなと溜息を吐く
「ヤツの力の正体に検討がついているのならそれでいい。
あの組合長に話が通るならそれこそ上等だ」
屋上に降り立つ翼竜へと飛び乗り、飛び去る彼女達を一瞥して
「死に急ぐ必要のない、余裕がある部隊がまだあるのだから、
王国軍もまだ捨てたものでもないということだな」
征くぞ、と振り返ることはせず、そのまま魔族の国の空へと飛び立っていった
ご案内:「タナール砦」からレナーテさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からサロメさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からラボラスさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にヴェルムさんが現れました。
■ヴェルム > さてさて…再び人間のものとなったタナール砦。
現在そこに駐留しているのは、砦の防衛部隊として配属された将兵たちと、第十三師団の面々。
数日前の会議にて、第三師団の新師団長が掲げたタナール絶対防衛宣言。
そんな彼女の一言は、鶴の一声…にはならなかったようだ。
砦にやってくる人や資源の集まりは、微妙に増えている…という程度。
それでもまぁ、やるべきことはやらねば。
「ふぃー…早くしないとカテリーナちゃんにマジで躾けられちゃうな」
会議に同席していた部下の報告をしっかり頭に叩き込んでいたヴェルム。
彼女の言い分はどうあれ、砦をもっとがんばって守ろうというのは同意である。
なので自分たち師団の方から、いくつか資材を投入してみた。
単純な話、タナール砦の防衛線を、少々魔族の国側へ進めてみた程度だが。
砦前面に新たに簡易陣地を築き、さらに土嚢や盛土を用立てて新しい防衛線を作り上げているところである。
人もミレーも魔族も関係なく、十三師団の面々はテントや櫓を築き、土嚢を運び、スコップで盛土を作っている。
もちろん早急に作らないと怒られちゃうから、師団長であるヴェルム本人も、団員たちに混じり白シャツ姿で泥にまみれ汗水流してスコップでえっさほいさ。
知らない人から見れば、この人が師団長なんて思うはずがなかった。
ご案内:「タナール砦」にクラリッサさんが現れました。
■クラリッサ > 最近またタナール周辺が騒がしい。
半年ほど前にあれだけ暴れればしばらくは大丈夫と思っていたが。
「まったく、いい加減大人しくしてくれないと困るんですよね」
正直戦争とか面倒なことしたく無いし、さっさと帰ってほしい。
そう思いタナールの前まで来たら目の前で工事を始めている。
「あのーその工事中止してさっさと帰ってくれませんか?こっちは一応魔族の領地なんで、勝手な工事とかされると困るんですよ」
工事をしている人たちに大替えで警告をする。
「ただちに中止して帰ってください、中止しないなら今から私を10万ぐらい動員しますよ~」
■ヴェルム > 砦に警報が鳴り響く…
魔族の領地からやってくる者は、何者であれ報告し臨戦態勢を取れ。
そう厳命してあるから。
甲高い鐘の叩く音が響き渡れば、前面陣地にいる非戦闘員は砦の中へと速やかに退避していく。
そして砦の上部では設置された砲台の砲身がすべて、陣地のさらに前方の荒野。
そこに一人佇む女性へと向けられた。
そんな彼女に目立つよう、完成しかかっていた盛土をがしがしとよじ登り、スコップを肩に乗せて佇む百姓っぽい師団長。
「こっちも仕事でやってるからそういうわけにいかない。
文句があるなら上に言ってくれる?」
領地…というよりも曖昧な緩衝地帯のような気がしないでもない。
しかし目の前に現れた一人の女性は、その物言いから明らかに魔族。
軍隊を率いず単独で現れたということは、それだけの実力を持っていることか。
まぁいきなり撃つのもあれなので、どうしようもないですよ~と、お役所仕事的な返答をしようか。
そんな男の背後にる王国軍部隊は、人間のみならずミレーや魔族まで従えており、各々の得物を手に警戒心を露わにしている。
中には彼女のことを知っており狼狽している魔族もいるかもしれないが、帰れと言われて帰るような団員は一人もいなかった。
■クラリッサ > 「ええっと、帰る気が無い、つまり私に対して砦の防衛戦どころか野戦を挑もうとしている、ええっと、その、馬鹿なんですか?」
自分の知名度もまだまだだなーとため息を漏らす。
めんどくさいと言わんばかりに手を振って。
「まあお仕事なのは分かりましたけど、魔王が来たからどうしようもないんで10倍ぐらい援軍よこせって言えば言い訳も立つでしょ、ちょっと一発殴るんでそれで帰ってくださいね」
そう言い終わると同時に盛り土の内部から直接1000人、盛り土の背後から1000人のクラリッサが地中から出現。
盛り土で待機している部隊を挟み撃ちで文字通り一発殴る、あくまで素手なのでそこまで痛くはない。
「これ、うちの国の土ですよ?それ分かって使いました?」
■ヴェルム > 馬鹿と言われても動きようがない。
せめて魔王が100人やってきたとかなら、まぁしゃーないくらいには思ってもらえたかもしれない。
だが悲しいことにこの師団は十三師団…体のいい使い潰し部隊という名目は消えていないのだ。
「おっと…」
盛土の前後から現れる計2000人の彼女。
さすがにこの状況は面食らってしまうが、素手で殴られようともその程度で士気が下がるような面々ではない。
「そんなこと言われてもさ、土運んでくるの大変だしコストもかかるし」
まさか土から人が生えてくるなど、思いもしない。
彼女の言葉を聞く限り、どうやら噂に聞く魔族の聖女とかいう女なのだろうか。
だとすれば分が悪いとも言えるかもしれないし、戦い方次第でお帰り願えるかもしれない。
■クラリッサ > 素手で殴ったのは怪我する前に帰ってという意味だったがさすがにこれで帰る気は無いらしい、そもそも素手戦闘なんて苦手だし。
「私は戦争なんかしたく無いんです、めんどくさいし、得られるものなんて無いし、タナールを取ったり取られたりで戦う振りをしていたいんですよ!大体この前第7ナントカってのが何の成果も上げられずに壊滅したばかりじゃないですか、あの自称魔族専門軍団とか言う糞雑魚軍団が!」
それに凝りもせずに金を湯水のごとく使ってまだ魔族を攻撃しようという王国の無策っぷりにもいい加減腹を立てていたのか、かなり口調が荒くなる。
「そんなことに金使うぐらいならもっと国内の安定に力注いだらどうですか?」
そう言っている間に盛り土の裏ではさらに人数が増えて3000人が盛り土の背後で戦闘態勢を取っていた、まだ攻撃はしていないがその気になればいつでも戦闘開始できる状態ではある。
■ヴェルム > 素手で殴られたくらいで、異種族同士切磋琢磨しているイロモノぞろいの十三師団の面々が動じることはなく。
たったそれだけで反撃を開始するほど、血気盛んでもない。
まぁそれでも、じりじりとした一触即発な感じはしていただろう。
だが当のヴェルムはそうでもなかったようで。
「あ~、わかるわ~。
コッチも取ったり取られたりなフリができたらどんなにいいか…。
にしても…ふふ、糞雑魚集団て…まぁオーギュストはなんというか、自業自得感はあると思う」
口汚く王国を誹る彼女の言葉に、この師団長はうんうんと何度も首を縦に振って、思いっきり同意を。
それどころか前第七師団についても、なんか同調してきた。
「それが言えたら苦労しないけど…ウチら上に盾突けないからさ~
戦う気が無いなら、見逃してくれるとかは…無いよね?」
彼女の言うことは、ぶっちゃけ最もだ。
先ほどは砦の防衛がんばるとか言ってたけど、優先するんだったら~と聞かれれば内政に向けるべきと思う。
ともかく、なかなか話が通じる相手ではないだろうかと考えるが、彼女にも立場というものがあるだろう。
少なくともまだ戦うような空気は出していない。
■クラリッサ > 「あ、何か意外に話し通じそう」
あの国、女の軍人はやたら頭固いけど男は意外と話し通じる。
しかし一応立場はある、話し合いで解決できないなら本格的に戦わないといけないがそんな気分ではない。
「いや、そもそも戦う気が無いなら一旦撤収して1週間後ぐらいにまた来てくれればいいんですけど、さっきも言った通り出来レースなら付き合いますので」
この言葉に嘘は無い、戦争している振りをしてお互い消耗しない状態を維持するのが一番都合がいい。
タナールを長期占領されたり、ましてや今のようにちょっとづつ陣地を作られて領地の既成事実化をされるのが一番困る。
「大体そうやって砦の先に陣地作るって意味無くないですか?砦の存在価値が無くなりますよ?それとそんな先っちょだけ、先っちょだけだから、みたいなことされると魔王の面子が立たないからやめてくださいホントお願いしますよ」
■ヴェルム > 「マジ?まさかの和解?」
ヴェルムにしてもまさかの事態。
話の分かる人って、どこにでもいるものだなぁ。
団員たちも、オイオイなんか急に距離が縮まったぞとかなんとか、ヒソヒソし始める…前向きなタイプの。
「出来レースか、言っとくけど他の部隊を売ったりとか、そういうのはできないよ」
いくらなんでも仲間を売るような真似はできない。
まぁもう既にゴリッゴリの背信行為真っ最中なのだが、それはそれだ。
彼女と十三師団との間で、戦争しているというフリをして、勝ったり負けたりを装う。
「いやぁ、マジで命令だから…あぁでも、争うフリで被害が無いのもアレだし。
この陣地壊されちゃった~なら、お互いの面子が維持できるんじゃないかな。
コッチもたまーに勝ったことにしてもらえたら嬉しいけど」
一応負けっぱなしではまずいので、勝ち負けの八百長をできないだろうかと、出来レースというのもそういうことだろうと。
■クラリッサ > 「あーもうそれでOK!とりあえずその陣地はさっさと壊してもらいます、それで今日の所は帰りますから、また来ますのでその時はそちらが帰っていただければそれで結構です」
被害が出ないなら八百長上等。
話の分かる相手で助かった、変に拗れることも無く終わりそうだと安堵のため息を漏らす。
「じゃあ交渉成立ならその土嚢と盛り土は壊しますけどかまいませんね、皆さんは砦に引っ込んでください、これ壊したら私帰りますので、そうそう、私は魔王の中でも話が分かる方ですけど、他の人はそうとは限らないので気を付けてくださいね」
向こうが仲間を売れないと言う以上こっちも同様に他の魔王は売れない、それこそ魔王の面子に関わる、だからお互いの個人的な約束にとどめたかった。