2019/01/15 のログ
ラボラス > (――其れは、勘、と呼べるものであったかも知れない。
気配を察知したとまではよらぬ、ただ、闇の一点へと視線を投げただけの事
レンズ越しに見える巨躯は決して何か動きを見せる事は無く、戦いを知らぬ者なら未だしも
死を知り、猛る事を知り、そして冷静を知る者ならば、『撃たなかった事が正解』だと感じ取れるだろう。)

――――――…………。

(階下へと去って行く様子は無く、物見台から離れる気配も無い
狙撃手にとっては、周囲に遮蔽も無く、ただ只管に狙い易い位置取りだろう。
砦の中からも、宴の喧騒が聞こえて来はしても、何か軍備と警戒をしている気配は見当たらぬ
他の見張りが居ない訳では無い、だが、少なくとも其の視界の網に掛からぬ技量を以て砦側面に張り付いたのなら
其処までは、少なくとも成功、と言える結果になる筈だ。)

『おら、オレサマの腕に傷をつけたツケ、払わせてやるぜェ!』

(砦内部、最も彼女たちの侵入場所に近い位置で、そんな声が微かに聞こえて来るだろう。
悲鳴と、まるで追いかけっこを愉しんで居るかのように移動する気配。
其の気配が、他の複数人の気配に捕えられて、何処かへと運ばれて行く。
まるで隠そうともしない宴の気配は、侵入者にとっては、決して耳触りの良い物では無い筈だ。
だが、少なくとも其の気配を辿る事が出来れば、砦内部の、どの辺りに女捕虜たちが運び込まれているか
其の位は把握出来るだろう。

よりによって其処は、人間達が戦略を練り、魔族の侵攻に備えるべき
戦略室に使われていた部屋、で在った)。

レナーテ > 彼がそこから動かないのも、狙撃担当の神経をすり減らす結果になっていく。
目を離せば、今にも彼女達のところに走っていくのではないか?
そんな不安からか、4人のうち誰かは彼を見ている状態となり、視野はせわしなく動き回る。
それだけ、じっくり見る時間が減るのは、少々危険とも言えるだろう。
そんな中、俊敏な動きでロープを使って壁を上り切ると、少女達は身を低くして周囲を伺うと、響き渡る下賤な罵り。
絹を切り裂く様な嗚咽と、低く欲に塗れた黒い声が重なり合っていた。
その方向へと近づいていくと、血潮と交わりの匂いが徐々に濃くなり、女捕虜たちの声も大きくなるだろうか。
戦略室という神聖な場所で繰り広げられる痴態に、少女達は必死に怒りと殺意を押し殺す。
今それが一辺たりとも溢れたら、あの黒鎧の男が此方へやってくるのは目に見えている。
息を整えつつ、建物を包囲するようにして壁から降りると、此方の指示に従い、化学反応で閃光を発する薬瓶を取り出していき、起爆準備に蓋を捻っていく。

『少し騒いだらすぐバレます、どさくさに紛れて逃げましょう。多目的船から砲撃を開始してください、弾体に気付かれて、騒ぎ出した瞬間に一気に仕掛けます。突入合図と同時に、ユーレックと他のクリムゾンクレストは回収にお願いします』

静かに始末して、静かに逃げるは難しい。
騒ぎに乗じる作戦へと切り替えていくと、それぞれが物陰に身を潜め、時間を待つ。
――その念話をして10分が過ぎた頃だろうか、何かが迫る気配が空から迫るのに気付くだろう。
彼らの見やる世界、その空が渦巻いて引き裂かれる。
風を圧縮した特殊な魔法弾が雲を巻き込んで行くと、小さな気流の小玉を大量に発生させ、王都側の砦へと雨霰と降り注ぐ。
当たれば、無茶苦茶な気流を発生させる強力な突風が吹き出し、並の魔物ならきりもんで壁に激突する勢いがある。
だが、彼やその部下に居るような魔族ならば、簡単に堪えられるダメージにもならない子供だまし。
それが迫る中、その合間に此方は事を起こすのだ。

『突入!』

窓の隙間から放り込まれる瓶が砕け、まばゆい閃光が一瞬だけ室内を埋め尽くす。
視野を真っ白に焼き尽くし、方向感覚をも奪うそれの後に、少女達は一斉になだれ込む。
敢えて魔力は使わず、その剣技と銃剣術、そして自身は獣化で発生させた爪の刃で魔物達の急所を狙って奇襲を仕掛けていく。
後は時間との勝負、山陰に隠れていた3羽の紅の大きなマシコ達が飛び立ち、山嶺を滑るような低空飛行で、少女達の侵入地点へと急ぐ。

ラボラス > (――静寂、だが、其れが戦いと無縁を示すとは限らない。
静寂の中行われる戦いの多くは、決して己が望む物とは言い難い、が
――だが、戦いには変わらない。

動かぬのは、戦いが未だ終わって居ないからだ。
階下で宴が繰り返されている今も尚、己は戦いの中に在る。

――故に。)

―――――…………成程、理に適って居る。
『使える連中』が来た訳か。

(視線が、其の瞬間に空を見上げた。
静寂の中、空気を切り裂くような音、そして、雲が、風が、大渦と為る。)

――――――嵐に備えよォッ!!

(咆哮めいた命令が、物見台から砦へと響いた、瞬間。
砦全体が、其れこそ嵐に飲まれたかのように、狂乱の渦と化す。
至る所に降り注ぐ空気の渦が、砦内で宴と勝利に興じていた魔族達の大多数を吹き飛ばす
砦全体が地震に襲われたかのように揺らぐ中で、始まった侵入者の奇襲が其処に嵌るなら
少なくとも混乱が続く中で、其れを押し留められはしないだろう。

黒鎧は、号令と共に階下へと身を翻す。
少なくとも歩んで向かうなら、其の砲撃の真の目的までを悟って居ないなら
侵入者たちと遭遇するまでは十分な時間が在る筈だ。
件の部屋で犯されていた、捕虜たる女騎士たちは、3人
其の内の一人は、今し方逃げ出したところを捉えられ、引き戻されたばかり
そして、覆いかぶさる一人と、バランスを崩して転倒している五人の魔族が、『今の順番』の様だった)。

ご案内:「タナール砦」にサロメさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」からレナーテさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からサロメさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からラボラスさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にレナーテさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にラボラスさんが現れました。
レナーテ > 多目的船に収まった大きな鳥から莫大な魔力を受け、その属性を付与して固めて放つ魔力の大砲撃は、まるで隕石の様に空を切り裂いて降り立つ。
途中で分裂して、散弾の様に飛び散る一つ一つがぶつかれば小さな嵐と言わんばかりに風を吹き荒ばせ、砦内を乱気流が襲ったように掻き乱す。
吹き飛ぶ魔物達、彼らに混乱を与えつつも、不意打ちは追撃を予感させる事に叶っただろうか。
足場が崩れたところで雪崩込んで一気呵成に勝負をつける、電撃作戦は自分達の得意分野だが、敢えてそれを囮にする事で裏を書こうとしていく。

『さっきの奴、降りたよっ! そっち行くかもしれないから注意してっ!』

その声が脳裏に響いたのは、突入の後だった。
不意打ちの閃光が魔物達の視野を白く染めたなら、最早攻撃も防御もままならぬだろう。
気配を察知して、大凡の間合いで当てるぐらいの感覚の良さと、不意打ちに動じぬ胆力がなければ対処し辛い選択肢を選んだのだから。
捕虜となった女騎士達を確かめるよりも早く、少女達は一気に魔物達へと詰め寄る。
声もない、無論慈悲もない。
肉食獣が獲物の喉笛を噛みちぎるように、ただ淡々と殺しを行う。
その為に怒りの炎を、氷のように冷たく鋭く研ぎ澄まし、感情のない瞳が彼らを捉える。
魔法銃を携えた少女達は、喉笛や心臓、眼孔を貫きつつ脳、と言った弱点を狙って槍術に劣らぬ鋭い突きを放つ。
剣を携えた少女達も、まるで吹き抜ける風のように跳び抜け、喉笛を切り裂くなり、同様の急所を全体重を載せた強烈な刺突で貫こうとする。

「……っ!!」

右手を限界まで獣化させ、普段の細い指には肉食獣の太く鋭い爪が宿される。
それを喉の肉ごと抉る勢いで震い、犯すべく獲物を捕まえた魔族の喉を切り裂こうとする。
何の対処もできなければ、血を吹き出し息絶える獲物へ、魔族自身が変わり果てることになるだろう。

ご案内:「タナール砦」にサロメさんが現れました。
サロメ > 「…報告の時間から大勢は決したと見ていたが…」

眼前に聳える強固な砦、タナールはその震動を肌に感じる程に喧騒に包まれていた
王都への報告は遅れに遅れ、隊を編成し出撃するのに時間を喰った
やはり近くに新しい駐屯基地を作る必要があるな、と歯噛みしつつ…

「…この場で待機しろ、すぐには動かないほうがいい。
 今砦を落としている相手はあの翼ある獣、ラボラスだろう」

さて、どうするか…中で何が起こっているかの把握も必要だが、
あの魔族の気性を考えるなら突撃以外の手段もいくらも取ることができる
しかし、伝令された情報が多いというわけでもない
ある程度は推測で動くことになる

「(ヤツには返すべき借りもあることだ…一つ仕掛けてみるか)」

新生第七師団の一個中隊をその場へと待機させて、
従えた翼竜を駆り、砦の空へと踊りだした

ラボラス > (階段を下りて行く先には、暴風が渦巻いて居た
比較的体格の大きなデーモンですら、唐突な気流の乱れに転げ回り、或いは壁面へと押され
最も巨体を誇るオーガの一部が、如何にか踏ん張る形で仁王立ちとなって居た。
一番被害が大きかったのはサキュバス達だろう、翼が在り、尚且つ軽量の彼女たちは、悉くが行動不能に陥って居る

爆発や炸裂、と言った一瞬の衝撃では無く、持続するが故に対処の遅れが目立つのだろう
そして、其の上で閃光すらもが瞬いて視界を奪うのならば、如何に屈強な戦士と言えど
同じ様に、苛酷に訓練された兵達の刃を、或いは銃弾を、覆し抗うのは難しかった筈だ。)

―――……仕掛けて来たか。 この俺に、俺の軍団に。

(――そして、その混乱と暴風の中を、物ともせずに進む影が在る。
黒鎧を纏う巨躯の背後に、影が一つ増え、二つ増え――
そうして影が、混乱に満ちた階下の廊下へと現れたならば。
其の右腕に、揺らめく様な邪悪なる陽炎を携え、廊下の直線を、大きく薙ぎ払い。

――刹那、其の廊下に蔓延る暴風だけが霧散し、一瞬で凪を取り戻した。)

――――――――立て直せ。 …魔法部隊は屋根に上り、砲撃を止めろ。
オーガ隊は通路を開け、窓から降り階下へと集え、一度砦内から退去しろ。
斥候部隊、動ける者は今すぐ砲撃の元を探れ、場所さえ判れば其れで良い、可能ならば…潰せ。

(決してそれは、怒号では無かった。
けれど、まるで鼓膜を震わせるよりも早く、脳裏へと突き刺さる様な威圧を以て戦士に伝えられる。
混乱を呼ぶ兵達は、其れだけで戦意と迫力を取り戻し、窓から次々に飛び出して行くだろう。

――外、もし待機し、砦の様子を伺う者が居れば、其の変化を見て取れる筈だ
軍団が、動いた、と)。

レナーテ > 空と陸で風が暴れまわり、掻き乱す最中、閃光と不意打ちで魔族たちを静かに仕留めていく。
恐らく同じ様に視野を潰されてしまっただろう女騎士へ、それぞれが少女特有の小さく華奢な指で頬に触れていき、耳元に唇を寄せて囁く。
助けに来た と、そして逃げようと。

『急ぎましょう、多分それほど立て直すのに時間は――』

振り抜かれる右腕が、勝るとも劣らない荒風を巻き起こし、砲弾の効果が掻き消されていく。
その一振りだけで何が起きたか、全てを察せなくとも息を呑んで硬直したのは間違いない結果を確信したからだ。
恐らく、もう建て直されていると。
その証拠に戦の声を上げて外へ飛び出して行く魔物達を、窓の端から確かめると、背中に冷や汗が伝う心地で一層顔が凍りつく。
一刻も早く離脱すべきとなれば、急げと合図を出しながら、大急ぎで部屋の外へと飛び出す。
此方は現場とは反対側の方面、鉢合わせるリスクは少ないとみるが、絶対ではない。
剣士が前に出て前衛を築きつつ、銃士と自身は女騎士を庇うように囲い、魔族側の砦出口へと向かう。
閂の掛かっている扉からわざわざ抜けねばならないのは、視野を暫し失った彼女達がロープを安全に降りれないからだ。

「……別の気配」
『レナちゃん、ちっちゃい竜がそっちに向かってるよ。美人さんが乗ってるけど』

だが、単騎だという言葉に訝しみながらも、此方は撤退を急ぐ。
妨害がなければ、砦の裏手を抜け、脱出地点へと急げるのだが…。
そして、次の砲撃の迎撃を整えるならば、それは肩透かしに終わる。
これだけ勿体ぶって撃たなかったのは、砲身を維持する船体が連射に耐えられないからだ。
遠い海の上では、激しい反動で軋み、転覆しないように維持するので手一杯の状態なのを、彼らが知る由もない。

サロメ >  
砦には砲撃が行われ、応戦するように魔族の軍も跳ねへ上り、
砦の窓からも兵隊らしき者立ちが降り立っていた
いずれかの軍が砦へ攻撃を仕掛けているのは明白、
そして魔族の軍と戦っているのならば、味方である可能性は極めて高い
更に、統率のとれた魔族軍の動き、将が砦内にいるのも歴然だろう

しかし砦中空へと待機しつつ、妙なことに気づく
砲撃が止んでいる──?
となれば、今砦を攻めている者達は撤退戦に入ったか、と納得する

胸元から小さな魔法石を取り出し、反響魔術を構築し、展開する

「──敵方の将、ラボラスだな。
 我は王国軍第七師団長、サロメ=ディレイン=アクアリアだ」

反響魔法が砦全体の壁を伝うようにしてその声を砦内部の者達へと伝えてゆく
向こうがこちらを覚えているかは定かではないが、もしそれを期待できるなら…

「全面交戦か、将同士での一騎打ちにて砦を賭けるか。どちらかを選べ──」

…相手がこれに乗るか反るか
乗ってくれば既に砦内部の者が逃げる程度の時間は稼げる筈…

総力戦は不利だ。砦というのは守るほうが有利にできている
相手の気性に賭けるところもあるが、さて

ラボラス > (空へと展開した魔法部隊が、残りの砲弾を多少でも防いだか如何か。
次弾に備えた陣形は、しかし平穏な空模様を確かめるばかりとなったらしい。
然し、直ぐに次が来ないと確信出来るなら、其れだけでも無駄では無い。
上空部隊から、第二波の気配無しと連絡を伝えられれば、更に廊下を進み行き、階下へと。)

砦内の状況を確かめろ、アレだけの砲撃を、虚仮脅しの為だけに放つとは思えん。
ネズミが居れば炙り出せ、そして追い詰めろ。 其の蛮勇を後悔する程にだ。

(歩みながら伝達する指示、其れに従い、再び腹心の影が二つ、背後より掻き消える。
砦内の混乱を鎮める役割ならば、彼の者共だけでも十分に過ぎる。
ならば己のすべき事など一つだけ――この混乱を招いた者への、仕置きだ。

――ふと、其の刹那響いたのは、其れまでの奇襲を鑑みれば余りにも不自然な程に堂々とした、名乗りで在った。)

――――――『憶えて居るぞ、其の声。
あの男の跡を継ぎ、今や貴様が長か、女。 ――肩の傷は癒えた様だな。』

(其の声は――否、声と言うよりは、魔力による念波に近い物だろう脳裏への言葉は
砦の周辺に居る、全ての者へと伝えられる筈だ。
覚えて居ると、愉快気な戯言すらも含んで返る言葉の後、僅かな間が空いたのは
彼の女が、この混乱を創り出した張本人であるとは考え難かったからだ。

だが、其れでも――獣の様に、弧を描いた口元が、答えを語る。
程無くして、窓の一つから姿を現した黒鎧の巨躯が
まるで風に乗る綿毛の如く、ふわりと砦の外、翼竜を駆る女の眼下へと降り立ち。)

―――『死に急ぐならば、容赦もするまい。 だが、興が乗った、相手をしてやる。
但し――俺の軍団は、貴様が勝利しない限り、砦のネズミ取りを続けるぞ。』

(其れが、最大級の譲歩で在ると――全ての者に)。

レナーテ > 閂を引き抜いて転がし、巨大な扉を少女達が押し開いて道を作る。
巨大な丁番代わりの柱が擦れ、板が軋む音は王都側の場所に届くほど大きくはないが、近くにいれば気付く程度の音はある。
開かれた隙間から、全裸に近い女騎士を引っ張って少女の群れが抜け出すと、城壁に近い草地へと急いだ。
山嶺から低空飛行で迫る真紅色のマシコが足に搭乗用の籠をつかみ、降り立っていく。
急げ急げと女騎士達を先に籠へ載せようとしつつ、その場を確保すべく僅かな時間の守りを固めていった。
彼の配下が、そこに間に合うかどうかは互いの時間の勝負というところか。

『レナちゃんっ!? こいつ私達の念話に割り入って……』
『いえ……これは術です、魔力の波が……ありますから、でもなんでこんな』

その理由はすぐにわかった、ネズミを取り続ける。
此方の存在に気付かれたというところか、ぞわりと悪寒が少女達の背筋を走ると、何を言うわけでもなく、互いの視野を潰しながら撤退の準備を進めていった。
幾ら少数精鋭とは言え、物量で押されて耐えられる数ではない。

サロメ >  
「──ああ、肩の傷と、誇りの借りを返させてもらう。
 …いいだろう、ならばこちらも抵抗程度はさせてもらうぞ」

乗った

軍団長の言葉通り、兵隊の攻撃こそ続くだろうが、
ラボラスの足を留めておけば、少なくとも新たな細やかな指令を下すことはできない
魔族の軍はそれこそ兵隊一人の力とて侮れないものだろう、が…
この翼ある獣という軍団でもっとも大きなウェートを占めているのは軍団長の強さと頭脳だろう

問題は一騎打ちの勝算か
そう考えながら、砦の屋上へと降り立ち、翼竜を放つ

翼竜が飛び向かう方向へと剣を抜き放ち、魔力を込め極光の標を撃ち出し、攻撃開始の合図だ
魔法石を通し第七師団にもその会話の内容は伝わっている
怒号と共に、対魔族特化戦力たる王国軍第七師団が砦正門へと突入を仕掛けた
突撃するは剣に盾、後続は銃を構え、退魔術式を展開しながら術者がそれをサポートする

その目前で砦内部から逃げ出す人影を見つければ追手を撃破すべく布陣し、勢いのままに叩き潰してゆく

「屋上で待つぞ、ラボラス」

抜き放った大剣を石畳へと突き立て、悠然と立ち構えた

ラボラス > (初手の混乱は、間違い無く油断と驕りに突き刺さった最良の刃だった。
然し、其れ故に、其の不名誉を取り戻そうと猛る兵もまた、当然の結果だろう。
囚われて居た女騎士達を先に逃して行くのならば、其の猶予は在った筈。
だが、砦の外に逃げおおせた侵入者たちの直ぐ傍を、ばさりと、羽音が一つ――)

『みぃつけた…♪』

(其れは、空。 『ネズミ達』を見下ろす様に、宵闇に二つの眼が妖しく光って居るだろう。
そうして、程無くして彼女達の元へと迫る筈だ、コウモリに似た羽音を響かせながら
先んじて展開していた斥候たる――幾人もの、魔眼を持つ、サキュバス達の群れが。)

――――誇りなぞ、豚の餌にもならん。
貴様にほんの僅かな復讐心が在るならば、其れだけで俺を殺して見ろ。

(――屋上へと降り立った女を見れば、笑みを深めた。
刹那、其の場から掻き消える黒鎧の巨躯が、次の刹那には階上の窓へ
再び消えたかと思えば、低層の物見塔へ、壁面の足場へ、次々と移動を繰り返し
女の待つ屋上へと辿り着くまでは、そう時間も掛からぬだろう
第七師団と翼在る獣、二つの勢力が衝突する、正に戦場の咆哮を舞台としながら

女の前、漆黒の闇に浮かび上がる、異質な黒き剣を右手に、携えた。)

――――……時間稼ぎを算段して居るなら、後悔するぞ、女。