2019/01/09 のログ
ご案内:「タナール砦」にタマモさんが現れました。
タマモ > 元に戻る事、それは即ち、中に眠る存在も戻る事となる。
ただ、一つだけ変わった事もある。
その存在が、最も闇の深い深夜にしか現れなくなった事だ。
それこそが、今、この時。
この場所に存在した事を、その者達は後悔する事だろう。
例え、それがどんな目的の為に居たからであろうとも。

「………ふ、ふふ…希望や目的を抱く者達の、それを狩る事の何と愉しい事か。
勝手に出られなくされていた分、たっぷりと取り戻させて貰うからのぅ?」

どさり、砦の中で何人目かの犠牲者である人間の兵士が倒れる。
今日は人間側が占領していたらしいか、まぁ、運が悪かったと思って諦める事だ。
何の外傷もなく倒れる兵士を一瞥し、くすくすと少女は笑う。

タマモ > その音を聞いてか、偶然か、少女が佇む通路へと向かってくる者の気配。
それを感じれば、少女は笑みを浮かべたまま、その方向へと右手を差し伸べる。
現れたのは、新たな人間の兵士…見回りなのか、散歩なのか、一人だった。
その姿が見えた途端、少女はその手を軽く握り込むように動かす。
まるで、その兵士の何かを掴んだような仕草…実際にそうなのか、かくん、と兵士の動きが止まり首が不自然に傾けられた。
その者を見る誰かが居り、近付けば気付けるだろう、その者が眠っているのだと。

「さぁ、お主の夢も喰ろうてやろう、その魂と共に、な?」

言葉と共に、ゆらりと少女の姿が消える。
ほんの数秒後、少女が再び姿を現わせば、その兵士もまた身を揺らし…床へと倒れ込んだ。
それを見遣り、少女はまたくすくすと笑うのだ。

そう、今回の少女の目的は、呪詛を行使するのに利用する魂を得る事。
絶望や恨み辛みを抱き死に到る者達、その魂には強烈な念が篭る、その手の力の行使に非常に使えるものなのだ。

タマモ > 「こんな場所に居らず、己の国の中で大人しくしておれば良いものを…
身の程を知らぬのか、ただの死にたがりか、どちらにしても愚かよのぅ?
妾を真に愉しませられる者一人居らんのじゃ、これが、お主等の運命なのじゃろう」

王都内で暴れるべからず、珍しく元式が己に対し進言した。
何でも、王都内に居る面白い相手からの警告を受けたらしい。
軽視出来ない相手の言葉だからこそ、仕方なしに、そこから離れたこの場所で動く事にしたのだ。
力を振るえる相手がいたら遊ぶ、居なければ嬲り尽くす。
まぁ、相手からしたら堪ったものではないに違いない。

ご案内:「タナール砦」にロザリアさんが現れました。
ロザリア >  
「またまたあれが暴れていると聞いてやってきてみれば…」

薄暗い廊下、命と魂が潰えるその場に鈴の音のような声が響く
声の主は、一匹の黄金に輝く蝙蝠
蝙蝠ははたはたとはためき、やがて輝きを膨張させ人の姿を形作る

「──知らぬ顔ではないな。
 タマモ…といったか。…少し、雰囲気が変わったか…?」

比較的呑気な問いかけ
しかし言葉ほど、向けているその眼は怪訝に細まったものではなく
おおよそ…といったところではあるものの、目の前の相手が自分の知るそれとは違う、ということを感じている様子だった

タマモ > ぴくん、と耳が揺れる。
場にそぐわぬ声、それを聞き取ったからだ。
ゆらり、と緩やかな動きで、視線が向けられる。
少しの間を置き、くすりと笑う。

「………確か…そう、ロザリア…じゃったか。
お主からすれば、確かに知らぬ顔ではないじゃろう、が…
そうかそうか、お主、気付いておるな…?」

その問いに答えながら、すぅ、と目を細める。
本来の己が宿る存在を知る者達は、大半が初見で見抜いてはいなかった。
だが、今、目の前に居る者は言葉とは少々違い見抜いている口振りだ。
遊べそうな相手、そう思えばこそ浮かべる、愉しそうな玩具を前にしたような笑みだった。

ロザリア >  
「気づいている…といえば気づいているが。
 本質を見抜いているかといえばまた別の話となるな」

ふわりふわりとした足取りで、正面まで歩みよってゆく
薄暗い中でも明るく見える翆の瞳を細めて、その顔を見据えた

「……以前吾と言葉を交わしたお主は、少々間の抜けた感もあってそちらのほうが好感触であったのだが。
 さて、どのように変質したかまで見抜くことは吾にも叶わぬな」

薄い薔薇色の唇にこちらもうっすらとした笑みを浮かべる
相対する者の笑みとは、まったく別種の笑みだっただろうが……

タマモ > 「ふふ…確かに、あの子は余りに抜けたところが多過ぎるのぅ。
それに、温過ぎる…己が、どのような存在か、まったく自覚がない」

言葉を紡ぎながら、ふぅ、と呆れたような溜息を零す。

「その自覚があれば、そんなものを誰しも感じさせる事もないじゃろう。
妾等が与えるべきは、恐怖に絶望じゃ。
そう、それが本来の九尾狐と言う存在…分かるかのぅ?」

向けられた瞳、それがより真紅の輝きを強くする。
笑みを浮かべる、その唇の端がつり上げられて。

ロザリア >  
「さて、東洋のあやかしには疎くてな…。
 恐怖に、絶望、ふむ…人のもつそれらを体現する存在か」

こちらを見ている、その視線にそれは現れている
…舐められたもの、と笑みを浮かべるも一触即発…といった雰囲気ではなく

「しかしそれは吸血鬼とて同じこと…。
 もっとも、ヴァンパイアが畏怖される対象は人に限定されるが。
 ……貴様はそうではないらしい。九尾狐とは、節操のない化物のようだな」

釣り上がってゆくその口元を見れば、相手が自分を獲物としか見ていないことがよく理解る

「吾と遊ぼうと言うには、些か不躾であるぞ。狐」

タマモ > 「ふむ…確か、ここには同じ九尾狐が存在したか。
実際にそれが、妾と同等の存在かは些か疑問じゃがな」

相手が言う東方の妖、多分、シェンヤンの事を指しているのだろう。
少しの間行ってみた事はあったが…場の影響もあってか、そう大したものではなかった記憶がある。

「吸血鬼、か…血を流す生き物であれば、何でも喰らおうとする存在と思うておったが…
なるほど、脆弱な人間しか相手に出来ぬ存在であったか」

向ける視線に、明らかな嘲りの色が浮かぶ。
が、同時に、周囲の空気を震わせるような威圧が発せられ始めた。

「お主も、己の身の程を弁えるが良いじゃろう。
吸血鬼とは、不死者の一種じゃったな?
喰らうても不味そうではあるが、嬲るには程よくありそうじゃ」

ロザリア >  
「吾自身、吾を見下すような者と言葉を交わすのは随分と久しいが、
 何、人の血がもっとも美味であるというだけのこと……」

その場に佇むようにして、その瞳を見開く
──常の者ならばそれだけで竦み、動きを封じられよう魔眼
果たして眼の前の存在にどれほどの影響があろうか、といったところだが

「吾も獣の血など口にはせぬのだがな……。
 知らぬ顔というわけでもない…暇潰しの相手ぐらいにはなってやろう」

タマモ > 「ほほぅ…この世界も、意外と矮小なものじゃ。
案外、自由を手に入れれば安易に手中に収められそうじゃのぅ?」

己が実体として存在した頃、どれほどの実力者が居たものか。
何度か手合わせをした、今や神霊として存在する元式と比べれば…
相手の力が通っていたのは、ほんの僅かな時間だろう。
力の発現に合わせて力を全身に込めてやれば、それで終わりだ。

「では、教えて貰おうか。
見下す者もそう居らぬお主が、この世界が、どの程度のものか。
ふふ…ついでに、見下される立場がどんなものかを教えてやろう」

と、言葉を終えると同時に、その姿が消える。
その姿は、次の瞬間には相手の真横にあった。
しかし、それだけだ、特にまだ手出しをしようとはしていない。
その動きに対する相手の反応、それを見るように、横から相手の顔を見詰めているのだ。

ロザリア >  
「世界の大小なぞ、己の視野で変わるものよ。
 ふむ、その口ぶりだと自由ではないのだな…?
 枷をつけられている獣にしては随分と口が滑る」

はた、と眼の前の存在が掻き消え、次の瞬間には己の真横へと移動している
それに驚いた様子は見せず、ゆっくりとその翡翠の視線だけを横へと向けて

「吾の凝視で射竦む程度の獣でもないようだが。
 それを披露して終わり…というわけでもあるまいな」

タマモ > 「ならば、お主から見たこの世界はどう映るのか。
枷か…その枷も、じきに外れる。
先を考え、発言や行動を改めるのは今の内だと言うておこう」

さて、少し様子見といこうか。
反応速度は思ったより早くないのか、言葉に合わせ相手の視線はこちらに向けられる。
試しにと、その手がゆらりと動き、相手の目の前で握られてゆく。
先程行った、相手の意識を眠りへと強制的に誘う妖力。
夢や希望を持つ者に対して、特に強い効果が発揮されるもの。
もっとも、不死者である相手に通用するかは分からない。

「愉しい夢の世界に招待しよう。
…まぁ、望まねば、辛い現実が待っておるがのぅ?」

ロザリア >  
「…さて、吾の眼に映る世界など貴様にはどうでもよかろう。
 ……して、何のつもりだ……?」

眼の前で握られるその手を視線で追う
その所作に感じられる力も、その作用すらも、ロザリアの魔眼は見通してゆく
故に、疎ましげにその眉を顰めた

「…成程、恐怖、絶望…夢や愉しさとは正反対のものではあるが。
 生憎とそんなに都合の良い世界が夢の中にしかないことなぞ、とうに識っている。
 その手の術も法も吾には通じぬぞ…それとも、夢の世界でなければ吾を嬲ること、叶わぬか?
 ……無論、望んで嬲られるなどという趣味もないが」

小さく溜息を吐けば、自分自身のその小さな手のひらをすっと持ち上げて
ふわりと黄金色の粒が舞い散り、鋭い切っ先を持つ黄金の燭台が浮かぶ
次に、何かを仕掛けようとするタイミングに合わせ、その切っ先はその喉笛を狙い放たれるのだろう

タマモ > そう、この力は夢や希望を持つ者を限定した力。
それを夢の中で叶えさせ、絶望に叩き落し、魂を奪う。
効かないと言う事は…それらを持ち合わせていないか、耐性があるか、そもそも眠らないか、だ。
記憶の中にある相手が、不死者らしからぬ姿を見せていただけに、もしやとは思ったが…あてが外れたらしい。

まぁ…それはそれで、他に愉しみを見出せるから良しとしよう。

「ふむ…夢は、所詮は夢、分かっておるようじゃな。
しかし、それを知るが故に、より不幸となる場合もある。
………望まぬとも、結末は変わらんじゃろう」

とん、と地面を蹴り、一瞬で一度距離を離す。
何をするかと思ったのだが、浮かぶ燭台を見て、軽く考える仕草。
なるほど、己の動きを甘く見ているか、そんな考えが浮かぶ。

「妾は、あの子と違い…遠慮はせんぞ?」

体を屈め…再びその姿が目の前から消え去る。
何者の目にも留まらぬ、神速とも言える動き。
そして、右手には鋼をも紙のように切り裂く爪。
次に姿を現わしたのは、相手の背後。
その時には、既に爪が相手の片腕を切り裂くべく抜けた後だ。
当たったかどうかは、相手が回避出来るか次第だろう。
動きに反応し喉笛を狙う燭台は、あえて紙一重で避けてみせる。

ロザリア >  
「…吾を不死なる怪物と知っているのであれば遠慮などする意味もなかろう。
 いや、そういった前置きをする以上は───」

刹那、目にも留まらぬ斬風が駆け抜け、ドレスとその薄金の髪が大きく棚引く
それに反応するように燭台はその喉笛を目掛け高速で飛翔するが、その白き喉を捕らえることはない

「───……なるほど、人智を超えているな」

知覚した時には斬り飛ばされ、宙を待った己の右腕を追うように視線を巡らせる
痛みを感じる様子もそこには見られず、人としての痛覚はやはり死人(しびと)のようになっているのだと思わせる

「その程度では吾に悲鳴すら上げさせることはできぬがな」

切断された右腕から溢れる血が新たな右腕をその衣服ごと即時に復元する
更に斬り飛ばされた腕は炎上し、灼熱の火球となって背後のタマモへと降り掛かった

そして、ゆっくりとした、緩慢な動きで振り返る吸血姫の周囲には、黄金色の魔力を帯びた剣、槍、斧──無数の武器が宙に浮かび上がり、そちらを標的とするように刃を向けて

「──貴様の悲鳴にも興味はある」

決して広いとは言えない砦の内部、的確に追尾するかのように、無数の黄金の武具が飛翔する
ロザリアの魔力によって生み出されれているそれらは通常の黄金とはまるで別種の異常とも言える硬度を持っている
鋼をも切り裂く爪といえど、刃が立つか否かは──

タマモ > 「やはり、不死者は不死者か。
面白いものじゃのぅ…故に、楽しみようが増えもする」

切り裂く感触はあったし、相手の腕は宙を舞っていた。
が、その腕は元通りに、斬り飛ばした腕は炎となって襲いかかってくる。
なるほど、動きには対応出来ていない、それを確信出来れば十分だ。
襲い掛かる炎に対し、ゆっくりと空いた左手を振るい…ぼんっ、とそれが弾け飛んだ。

「悲鳴か…」

改めて視線を向ければ、その周囲に浮かぶ無数の武器が見えた。
向けられた言葉に、ぽつりと呟くも、飛来するそれに対してすぐに動きを見せない。

「妾が今、興味あるのは、悲鳴ではない。
ならば、それは何なのか?」

同じ武器として扱った燭台が、どうなったのか。
完全に見切り、無駄な動き無く避ける、それを見せ付けたはずなのだ。
数を増やせば当たる等と、そう考えているならば…

「さて、何じゃろうな?」

と、問い掛けをしながら、再び相手へと向けて床を蹴る。
そう、ここは広いとは言えない砦の廊下。
床、壁、そして天井、跳び移る場所はいくらでもあるのだ。
そもそも、鋭いからと相手の獲物を斬り落とす必要はない。
飛来する武器、今度は少し余裕をもって避け、一気に相手の元へと踏み込んだ。

無理をせずとも、簡単に斬れるものが、ここにある。
閃く爪、それは今度は相手の四肢を狙っていた。
斬れば、また何らかの形で襲ってくるだろう。
それでも、それを避け、また相手の四肢を狙う。
そう、今の己の楽しみは、この飽きるまで斬り裂き続けられる相手の肢体となっていた。

ロザリア >  
「貴様の興味など吾が知る由もない。
 しかし、夢への誘いと爪で裂くだけが貴様の能か?そうではないであろう」

目にも留まらぬ速度で振るわれる爪
人と変わらぬ身体能力であるロザリアにとっては絶対に躱せぬであろう攻撃だった
しかしこの吸血姫には魔王を喰らい無尽蔵に溢れ出る魔力と、大図書館にも匹敵する魔術と魔法の智があった

爪が触れるその一瞬
先程とは違う現象が起こりその爪を弾き返す
爪の切っ先が触れ、切り裂かれる筈であった位置には液体のように姿を自在に変える黄金色の皮膜が張られていた
それが攻撃を防いだことは明白───先程の燭台も含め、獲物を取り逃がした武器達は再び切っ先をタマモへと向け飛翔し、乱舞する

自分自身が反応できなくとも、そう設定され組み上げられた術式は確実に反応する
リアクティブアーマーのように展開する鉄壁の防護術式が、その爪撃を阻んでいた

「…魔術師が何の備えもなしに敵の前に立ち尽くすわけがなかろう?。
 もっとも最初に今のをやられていたら、さて、どうなっていたかは知らんが」

そう言い放ちながら、小さく肩を竦めていた

タマモ > 「いやはや、面白い。
本来の妖狐とは、化かす事を得意とする。
それが昇華すれば、相手の力を写す事が可能となる」

何かに弾かれた爪、まぁ、それが目に入った時点で気付いている。
魔術による力…もし、何も知らぬまま相手をしていれば、それが何か理解するのに苦労した事だろう。
だが、今の己は違う、この世界の者を喰らい、魔術に関する知識は得ている。
今は消し飛んだ相手の腕、その断片を爪を介しての相手の理解。
相手を知る事と、その相手が扱う力の元を理解する事。
それらが揃えば、それに対応する術も生み出される。

その適応能力の高さが、己の強さの秘訣。

「写す事が出来るならば、それの対抗手段も得られる。
ふふ…分かるか?…お主が力を使えば使う程、妾への対抗手段が減ってゆく。
じわじわと、追い詰められる恐怖を、お主はこれから知るじゃろう」

もっとも、己の力はそれだけではないが。
言葉にせず心の中で呟き、今度は相手に見えるように、その爪を伸ばす。
そして…その爪に、今、まさにその爪を弾いた力が込められた。

「さぁ、もっとお主の力を見せよ。
妾が力を増やす前に、妾を倒さねばな?」

三度、床を蹴って襲い掛かる、今度は左手の爪で、襲い掛かる武器を弾きながら。
更に、なぜか何とか相手の目にも追える動きで、だ。
だが、今度の攻撃は、先と同じ方法では防げない。
相手が何をしてくれるのか、浮かべる表情は、それを楽しみにしているようで。

ロザリア >  
「成長とは喜ばしいことだな。
 吾には新たな知識を得ることは出来ても成長することはない。
 不死者たるもの、それが自然ではあるが……さて」

……わざと鈍い動きをするのは更にこちらの手を見せろと言っているのと同義
相手の浮かべる表情も、最初のそれとは少し違ったもののように見受けられた

「では、ヴァンパイアの闘争というものを見せよう…」

戯れではなく、闘争であると言葉にし、攻撃を目前にその眼を閉じる
そして、その爪が襲いかかった瞬間、その身は文字通り霧となって霧散する

黄金の武具達も魔力の粒となって消え失せ、砦の中には再び静寂と暗闇が訪れる、その中で
ギラリと真紅が光る
それは二対の輝く朱、それと共に生臭い獣の吐息が無数に感じられる
暗闇を凝縮したような暗き獣が吼え、その爪と牙を以て四方からタマモへと飛びかかってゆく
犬とも狼ともとれぬ異形の獣は俊敏かつ、的確に標的の急所を狙い襲いかかる

"さあ…どうする…?貴様の喉笛を食い破るまでその獣は首だけになっても動き続ける…。吾の魔力が枯渇することもない、故に数が減ることもない"

そして霧となりその場から消え失せた筈のロザリアの声が砦の中へと響き渡った

タマモ > 「そうじゃな、不死が故に、不死者には成長がない。
その為に、知識を得ようと、得られぬ力もあるものじゃ」

振り下ろす爪に、感触は無い。
どうやら、吸血鬼にある能力の一つを使った感じか。
ならば、次はそれに対する対抗手段をもってして…
のんびりと、そんな考えを巡らせている中、無数の武器に変わって獣の気配が感じられるようになった。

「ふふ…九尾狐が、どのような存在か知らぬ故か。
獣の頂点に座する相手に、獣を仕掛けてどうする?
もっとも…いや、折角の馳走じゃ、それは頂こうか。
………お主の魔力ごとな」

さすがに武器は喰らえないが、それが獣となれば話は別だ。
武器に変わって襲い掛かってくる獣、それに向かい手を伸ばす。
右に5本、左に5本の爪、それが逆に獣に襲い掛かり、その身を一瞬で細切れにしてしまう。
首を刎ねても、喉笛を食い破ろうと動き続ける獣だと言う。
さて、細切れになっても、それが可能であるのか?
そもそも、それそのものが喰われてしまったら?

そう経たずして、獣は喰い散らかされ、より力を得た九尾狐が佇む形となるだろう。
ただ…

「………遊び過ぎたか…」

ぽつりと呟く、その視線が、窓から廊下に僅かに差された日の光に向けられていた。
そう、己が存在を強めていられる時間帯が過ぎてしまっていたのだ。
ただ、それは相手にも言える事なのかもしれないが。

「やれやれ…更なる力を得られる機会であったのじゃが、これは逃してしまうかのぅ」

今、相手は霧状だ。
もう少し時間が得られれば、そこから引き摺り下ろす事も出来そうではあるが…さすがに、すぐには出来ない。
ふぅ、とわざとらしく溜息を吐きながら、相手の居るだろう、二対の朱が見える方へと視線を向けた。

ロザリア >  
首だけになろうと喰らいつく獣…ではあるもののその身を細切れにされては動くべくもない

「……ふむ、吾の魔力毎喰らったか。…腹を壊さねばよいがな」

獣はまるで歯が立たなかったが、それを喰らうとなればまた話は変わってくる
魔力が同質のものであれば吸収もできるだろうが、さて

「おや…空が白いで来たか」

朝日に透けるかのように霧が再び現れ、集まれば少女の姿を作り出す

「九尾というものも夜の眷属であったか…?
 して、如何する…?吾は日の光は好まぬといった程度のもの、であるが」

タマモ > 「さて…力を持たぬ不死者ならば、壊すやもしれんが…」

力となり得るものならば、そんな事はないだろう。
今のところ、魔力は得られたが、腹を壊したかは分からない。
ふむ、と己に新たに流れる力を見るように、視線を手元に。

「………日が昇れば、人は動き始める。
今は、目立つ時ではないのでな。
続けたいのはやまやまじゃが、見逃してやろう」

続けていけば、間違いなく、得ていく力で相手を伏せられるだろう。
だが、相手に言う通り、目立ち過ぎると別のところが絡み面倒になる。
己にとって、本当に厄介なのは、その存在だ。
肩を竦め、それを伝えれば、改めて視線を相手へと向ける。
なかなかに愉しませてくれた相手、その姿を覚えておく為に。

ロザリア >  
「人を嘲る割には人を恐れるのだな?面白い」

こちらに向けられる視線に、己が視線を交わす
なるほど、文字通り喰らうといったままに、黒き獣達の魔力をその糧としたらしい
新たな力を得たその姿を翡翠の瞳が見通しながら、眼前の相手が終わりを惜しんだ理由に納得する

「この程度の戯れでよければ吾も望むところであるぞ。
 よい暇潰しになる。吾としては、貴様がそうやって得る力が吾や我が眷属に向かなければ何も気にするところはない」

むしろ、それが人に向けられるならそれで良いと言ったところだ
人への憎悪だけを決して忘れぬヴァンパイアからすれば、もっとやれと言いたいところですらあった

「…そして貴様の事情もなんとなくは掴めてきたところだ。
 陽の光が照らす間の貴様は、夜の貴様のことは覚えているのか?」

単なる好奇心を満たすためだけの設問である、口元を緩め紡ぎ出すその言葉はどこか愉しげにも聞こえた

タマモ > 「残念じゃが、妾は人間如きに恐れを持っておる訳ではない。
あれとやり合えば、お主とて妾と同じ答えとなろう。
さて、代わりに、別の興味も持ったが…それはまた、次の機会で良かろう」

元、己の式とは思えぬ存在。
どころか、今現在の主でさえ逆らえない存在だ。
むしろ、倒せるものならば倒してみろ、とも言えるだろうか。
あの笑顔を崩せぬまま、弄ばれる姿が容易に想像出来る。
と、まぁ、暇潰しと言えば暇潰しか。
少々意味深な含みを持たせるが、それをどんな意味で考えるかは相手次第だ。

「やれやれ、お主もあれに似て意地の悪いものじゃ。
ある程度の予想は付いておるのじゃろう?言うまでもない。
まぁ、あの子に言うならば、その方が妾は助かるがのぅ。
それで、枷が外れ易くなるのじゃからな」

言葉とは裏腹に、くすりと笑う。
時が経てば、どうせ理解されるならば、と言った感じで。
流れがどう転がろうと、まだ、己は出られる機会は得られるからだ。

ロザリア >  
「では、次は満月の夜にでも会おうぞ。
 闇の眷属がもっとも力を発揮できる上で戯れたほうが楽しかろう」

眼を伏せながら小さく笑い、ドレスを翻しその背を向けて

「吾の想う通りであるならば、もう一人の貴様には言わぬほうが善かろうな。
 吾自身は人間など微塵も好かぬが、タマモは人の世を楽しんで生きているようだった。
 わざわざそれに水を差すような無粋な真似は、優雅とは言えぬ」

"あれ"と呼称するものが何なのか、それは知る由もないが、
自身と渡り合う程の者が恐れるのであれば、それは余程の存在なのだろう
それは心の片隅に留めておくとして……

「吾が手の内は深淵、真に覗こうとするならば次からは貴様にも多少は犠牲を支払ってもらうことになろう。
 が、貴様のその枷とやらが外れた時には、喜んでそれを見せようではないか」

背を向けたままに歩み出せば、その身体は黄金の光のシルエットとなり、砦に差し込む朝日の中へ溶け込むようにして消えていった

ご案内:「タナール砦」からロザリアさんが去りました。
タマモ > 「満月か、良かろう。
その時に会う事が出来れば、より楽しみも出来よう」

軽く日の差す窓に目を遣り、軽く頷いて。

「それは、お主に任せよう。
ふふ…その時は、妾の恐ろしさを今度こそ思い知らせてやろう。
楽しみに待っておるが良い。
…ありがちな台詞ではあるが、今はそれで良かろう」

助かったな、残りの人間共は。
くるりと振り返れば、相手と同じように、少女はその姿を消した。

ご案内:「タナール砦」からタマモさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にゼロさんが現れました。
ゼロ > タナール砦の中の、ひとつの部屋に少年は居た。
 一日の間、己の傷を癒すことに使ってしまったのは痛恨というべきであろうか。
 しかし、300のレギオングールと戦い、数を減らしたから、なんとか瀕死で済んだというところだろう。
 自分の鎧も、仮面も、自分が死ぬことを許してくれない。
 まだ戦うことができるということを感謝するべきであろうか、少年は、仮面の下で息を吐き出す。
 血が足りない、先日流しすぎたことを悔やみ、立ち上がる。
 食堂で食事を摂ろう、食事をして血を回復しなければなるまい。
 少年は、少しふらつきながらも、しっかりと己の足で立ち、食堂へと移動する。

ゼロ > ふらり、ふらり。少年の体は本来の動きと比べれば生彩に欠いている。
 自分でも、おぼ付いていないと思うのだが、生きているだけでも、そして、一日で動けるというこの状態というだけでも御の字であろう。
 少年は、なんとかという様子で食堂に到着する。
 そして、食堂の人に、食事を注文することにする。
 とはいえ、普通の食事を多めに注文するぐらいである。

 血が足りないので、肉系の食べ物を多めに注文し、少年はプレートに盛ってもらい、それをもって、移動し、隅っこのテーブルへ。
 一人で、いつものようにもそもそと食べる事にする。
 周囲は、酒を飲んだり仲間内で騒いだりと、楽しそうだな、と思う。

ゼロ > もしゃもしゃ、もぐもぐ。少年はひとりで食事を続ける。
 体を癒すために、体調を戻すために、今は食事をするだけである。
 仮面を少しだけずらし一心不乱に食事をし、体から出た血を回復しなければならない。
 もぐり、もぐもぐもぐもぐもぐもぐ。

 しばしの間食事をしていれば、空腹も満たされる。
 肉を中心とした食事であれば、血もすぐ回復するだろう。
 そんなことを考えながら少年は食事を終えて、立ち上がる。

 食べてすぐ回復し切る――わけではないが、鎧は先ほど食べたそれをどんどん血に変換しているようだ。
 ……鎧なのか、それとも自分の体なのか。
 少しだけ分からないが、回復が早く住むのはいいことだ、と。

 先程よりも足取りは強く、部屋へともどるように歩き始めた。

ゼロ > 「――――。」

 少年が部屋へと戻る道ノリは、あまり早いとは言えないが。
 歩くたびに活力が戻ってきている気がする。
 次の時には、もう普通に動けるようになるだろう。
 自分の状態を確認して、少年は、休むために部屋の中へ。

 そして、今回は早々と休息に入ることとなった

ご案内:「タナール砦」からゼロさんが去りました。