2018/11/24 のログ
ご案内:「タナール砦」にホアジャオさんが現れました。
■ホアジャオ > 冬も近い天気の良い昼、風はそよぐ程度だが冷たく、空には雲一つない。
砦から少し離れた丘の上、帽子を被った人影がひとつ、木に寄り添って姿を溶け込ませながら、砦の方面を伺っている。
(うーん……)
砦の周囲は今は非戦闘期間らしく、時折騎馬が出入りする程度。旗印からすると、人間側のようではある…
■ホアジャオ > 喧嘩好きが高じて、ちょっと見学に来たつもり。
砦の内部では知らないが、今見る限りの砦の周囲はとてものんびりしたもので、ちっとも雰囲気は解らない。戦線はきっともっと遠くなんだろう。
(マフィアの抗争(ケンカ)とは違うんだろと思うンだケド…)
町のごろつきを引き連れての抗争は何度か経験がある。平和に過ごしている市民にとっては、どちらも50歩100歩かもしれない。
■ホアジャオ > 兵の募集の張り紙をダイラスで見たものの、思い切れなくて偵察に来たのに…
(…どォしよ)
もっと砦の向こうへ行けば解ることは一杯あるんだろうが…
ご案内:「タナール砦」にクレス・ローベルクさんが現れました。
■クレス・ローベルク > 自分を鍛えるため、志願兵としてやってきたものの、運がいいのか悪いのか。
敵がやって来る訳でもなければ、訓練も集団向けで、何時もの仕事にあまり関わりもない。
今もこうして、砦の周りの哨戒をやっているのだが、魔族っ子一人居ないときた。
「まあ平和な事は良いことなんだけど……とお?」
そこで、何やら周囲の森にある気配に気づく。
魔族の偵察かと思うが、それにしては敵意もないし、魔族によくある強い魔力も感じない。
一体何なんだろうかと首を捻るが、取り敢えず呼びかけてみる。
「そこの人ー!木に隠れてるのバレてるから、出てくるか逃げたほうが良いよー!今なら追わないからー!」
■ホアジャオ > 帰ろうと背を向けようとしていたところに大声で声がかかる。
「!哎呀…」
思わず顔を真っ赤にして振返って睨みつけ、やけくそ気味にわざと草木を鳴らしながら木陰から姿を現す。
「笨蛋(バカ)!うるさいねえ!今帰るとこだよ!」
大声でやり返して、これはこれで…
■クレス・ローベルク > 姿を現したのは、意外な事に魔族でもなければ兵士でもない、チャイナドレスを着た女性。
チャイナドレス自体は王都にもファッションとして取り入れられているため、珍しくはないが、
「何だって?ピンイン……笨蛋?シェンヤン語?
何でシェンヤン人がこんなとこにいるんだ……?」
シェンヤン人が王都に対して怪しい動きをしているのは知っているが。
何もわざわざこんな所を狙う必要はないだろう。
だが、もしかしたら何かの陰謀があって遣わされてきたスパイかもしれない。
なので、男はバツが悪そうに、
「あー、ごめん。やっぱ今のナシ。
帰る前に、一度此処で簡単な尋問受けてから帰ってくれない?
こんな所にシェンヤンの人が居るのどう考えても不自然だし」
わざわざ自分からシェンヤン語を口走っているから、スパイではなさそうとも思うが、こちらの観察眼を欺くだけの諜報の可能性もある。
こちらも一応国に雇われた身だ。万が一の事を考えるとやらざるをえないだろう。
故に男は、仕方無さそうに首を振り、腰の剣に手をかける。
「抵抗しなければ、ただの事務的な質問だけで終わらせるからさ、どう?」
■ホアジャオ > 男が何やらぶつぶつ言っている。どうやら降りて来いと言っているらしいが…こちらはちょっと、頭に血が上っている。細い目をすうとさらに細めて
「ただの通りすがりだよ……抵抗なンかしないけど、用事があるンなら、そっちから来たらどうだい?」
腕組みをしてふんぞり返っている。
■クレス・ローベルク > 「こんな何もない所に、ただ通りすがる訳ないよね!?まあ、行くけども!」
何だろう、このシンプルな性格。
演技にしたってあんまりすぎる。これは多分スパイではない。
とはいえ、放っても置けないので、取り敢えず言われたとおり、木の幹を掴んで木登りを開始。
するすると登って、暫くすれば然程苦もなくホアジャオと同じ枝まで到達し、
「よっと。流石に二人分の体重かかると揺れるねえ。
と、言うわけで、申し訳ないんだけど、名前と年齢、それと此処らへんに来た目的を教えてくれない?」
■ホアジャオ > 男が登ってくるのを不機嫌そうにじーっと見ている。同じ枝まで到達した瞬間、蹴落としてやろうかとも思ったが、ふんと鼻息を吐く。
「…名前は『ホアジャオ』。21で、ただ喧嘩の見学に来ただけだよ」
問われれば背を幹に預け、腕組みをしたままぶつぶつと答える。次にはぎろっと睨みつけて
「…人に名前を聞いたンだったら、アンタも名乗んなよ…」
■クレス・ローベルク > 何か一瞬、非常に嫌な気配がしたが、何とか登りきり、彼女の話を聞く。
手帳を開いて記録を取りつつ、
「ホアジャオさんね。理由は喧嘩の見学……いや、戦いを喧嘩っていうのは正直脳筋過ぎ……いや、ナンデモナイ」
さっきからこの娘、非常に剣呑な眼でこちらを睨みつけている。
何か嫌なことがあったのだろうかと思うが、理由には思い至らず。
とはいえ、名前を聞かれたので、刺激しないよう素直に答える。
「俺はクレス・ローベルク。25歳。
職業は剣闘士だけど、今は期間限定で、あそこの砦の兵士になってる」
と、言った所で、
「喧嘩の見学って言ってたけど、もしかして何でも良いから喧嘩したい口かい?
だとしたら生憎だけど、あんま此処向いてないと思うよ?基本集団行動だし。まあ、戦闘訓練は良いの受けられるけどさ」
自分も剣闘士の修行のために来たから似たようなもんではあるが。
だからこそ、彼女が同じ轍を踏まないよう、おせっかいとは思うが忠告してみる。
■ホアジャオ > 口を尖らせて不機嫌そうに睨みつけたまま男の言葉を聞く。
なんとなく、予想はしていたが…はぁっと溜息をついて、目線を緩める
「仕方ないだろ…故郷を出てからこっち、喧嘩に付き合ってくれるひとってあンま居ないンだから…」
勝手に暴れまわったら駄目という事だろう。やっぱり、軍隊というのは窮屈そうだという印象は間違っていなかった様子で、まあ予想は当たったわけだが…
「唉!つっまンないねえ!」
思わず、2人が立っている枝がしなる程思いっきり蹴りつける
■クレス・ローベルク > やっぱりそうかー、と顔を覆う。
どうにもこの娘は短気そうだし、何となくそうだと思っていたが。
この国は、表向きは上品な部分も多い。
この娘みたいな直情型の喧嘩好きには生きにくかろう。
「なら、それこそ剣闘士にでもなればいいと思うけど……っとお!」
慌てて足を肩幅に開いて、重心を落とし、暴れる枝の動きに合わせてバランスをとる。
一見無様に見えるが、しかし一切動きは乱れない。
「危ないなあ……。でも、そんなに暴れたいんだったら、俺が手合わせしようか?
どうせ此処まで離れたら上司にはばれないし。
俺も帰ったら暇だしさ」
此処で帰っても、自主訓練ぐらいしかやる事がないのだ。
それなら、彼女を相手に組み手をした方が、まだしも暇を潰せそう。
そんな気持ちで、誘ってみる。
■ホアジャオ > 思わずやってしまった行動だった、慌てて謝ろうとした所、男はなかなかの体裁きで踏みとどまった。
(ふウん…)
少し好奇心が動いたところで、男の方から誘ってきた。紅い唇がにいっと笑みをつくる。
「いいのかい?大概、勝手に喧嘩したら怒られるってェ聞くけど」
そう言いながらもう、その場で手首、足首をほぐしにかかっている。
「怪我、させないってェ約束できないよ…」
■クレス・ローベルク > 「良いのさ。バレなきゃ怒られない。折角だから生傷の一つぐらいつけてくれれば、戦傷手当の一つもせびれるって寸法さ」
そう言うと、木の枝からひょい、と飛び降りる。
一回転した後で着地し、剣を抜くが、
「あー。獲物使っていい?
一応これ、人を切れない様に出来る魔剣なんで、大怪我の心配ないからさ。駄目なら普通に拳使うよ」
使い慣れた武器を使った方が実力が出せるし、何より本番に近い形で戦える。
彼女もまさか、戦場に無手で来る程無謀でもなかろうし、何らかの武器は持っているだろうと踏んでの質問だ。
■ホアジャオ > すとん、と木から飛び降りて、男からの提言に少し首を傾げる。
「なァにそれ…刃が潰してあるのと、同じってェこと?」
言いながら、腰の後ろからじゃらっとヌンチャクを取り出すと、目の前に掲げて見せて
「まァ、構わないよ。アタシのは、ふつうに殴られたら痛いやつだケド…」
両手に持つと、腰の後ろに鎖を回して構える。
■クレス・ローベルク > 「まー、その認識でも問題ない。
相手の血を流すのが仕事の剣闘士とはいえ、あんま大怪我させたり殺したりすると観客引いちゃうからさ。
こういうのを使うわけ」
正確に言うと、女性を裸にひんむいてしまうためのものなのだが、それは言わぬが華。
別に嘘はついていないし、こうしてみると筋肉と女性らしさが調和した良い身体だ。
犯すとまでは言わないが、少しぐらい目で楽しむぐらいは役得のうちだろう。
「オッケーオッケー。元より殴られるのは慣れてるよ。
それじゃあ、こちらの提案を飲んでくれたお礼に、初撃は譲るよ」
そう言うと、こちらも剣を構える。
腰には二本差しているが、取り敢えずは一本だけ使って様子を見るつもりのようだ。
■ホアジャオ > 男の言葉に細い目を数度、瞬くと「你小看我嗎(なめてンの)…」
眉を吊り上げて、紅い唇が不敵に笑う。
「じゃァ…遠慮なくッ!」
低い体勢から一足飛び、間合いに飛び込んで右足元から左斜め上目掛けヌンチャクの一撃を放つ
■クレス・ローベルク > 男としては、別に舐めたつもりはない。
強いて言うなら、職業病に近いもので。
相手に華を持たせつつ、こちらも一筋縄ではいかない事を観客に示すために、彼は初撃を譲りがちなのだった。
「ごめん、シェンヤン語は単語は拾えるけど文までは解んないんだ」
などと、事によれば火に油を注ぎかねない事を無自覚で言いつつ、男は後ろに軽くステップ。
左脇腹を狙うヌンチャクは腹を掠めるが、有効打にはならない。
しかし、そこから更に一歩の距離をバックステップで稼ぎ、
「ヒュゥ、危なっ。流石に食らったら危ないね。
こりゃ下手に近づかないほうが良さそうだ……なんて言って、やっぱり向かってきたりしてっ!」
と言うと、先程離した距離を、再び前への跳躍で詰める。
先程躱した攻撃から、敵の間合いを簡単に計算し、それがギリギリ届かない位置まで跳び、
「此処からなら、カウンターは取れない、よっと!」
彼女の胸の辺りに向かって、突きを繰り出す。
■ホアジャオ > 「啧!…」
バックステップで躱され、ぐるんと周回するヌンチャク。
相手の撃が来る頃には再度戻ってくる――それを読んで更に体制を低くして突きを躱し、戻ってくる鎖で剣を絡め取ろうとする。
―――絡め取れればぐい、と引きながら蹴りを繰り出そうと
■クレス・ローベルク > 「うわっ!?」
まさか、あの短い鎖でこちらの剣に絡ませてくるとは思いもよらない。
引っ張られてホアジャオの方にたたらを踏んだ所に、今度は逆に後ろに蹴り飛ばそうとするかの様な、腹部狙いの前蹴りが迫る。
「ぐうっ……!」
それを左腕で受ける。ミシミシという骨が軋む音が鳴るが、折れはしない。受けた瞬間に身体を引いて、衝撃を殺したのだ。
そして、
「今度はこちらの番、だよっ!」
ヌンチャクが絡んだ剣を押し込んで、蹴りで崩れた相手の体勢を更に崩す。その隙に、今度は逆に引いて、剣から鎖を抜く――或いは相手のヌンチャクの握りが甘いようなら、そのまま武器を奪ってしまおうかと。
■ホアジャオ > 膂力では男には叶わない――絡めた鎖はこちらの枷になる可能性が高い。ヌンチャクの片方は開放して剣は自由になる。するりと剣が抜かれれば――
「イヤァッ!」
そのまま相手に向かって飛び込むよう手を付いて前転、脳天に蹴りを打ち下ろそうと
■クレス・ローベルク > 「おっと、抜け……」
た、と言い終える事は出来なかった。
前転からの脳天蹴りが、こちらに振り下ろされていたからだ。
「ごがっ!?」
直撃。
男の脳が揺れているのか、ぐらりと頭を抑えて身体が前のめりになる。
見るからに隙だらけだが――
■ホアジャオ > (太好了…!)
落とした踵から確実な手ごたえ。
男がぐらりと身体を前のめり揺らがせば、間髪入れず追い打ちを掛けるように頭目掛けて左から回し蹴りを放ち―
■クレス・ローベルク > 「――今ッ!」
放たれた左回し蹴りを、がくん、としゃがむ事で避ける。
この攻撃を読んでいた訳ではない。読んでいたのは、展開。
頭部にダメージを受ければ、追い打ちを仕掛けてくるであろう読みで、敢えて直撃を食らったのだ。
「お蔭で、頭かち割れるかと思ったけどね……!」
そう言って、ホアジャオの腹に剣を突き刺し、そのまま顎までを、下から上に切り上げようとする。
直撃すれば、魔剣の効果で斬れる事はないが、腹を突かれたダメージと、顎を打撃された衝撃は入るだろう。
後、あくまで人体を切らないだけなので、服は相当大胆な事になるだろう。
■ホアジャオ > まさか、このタイミングでカウンターが放たれるとは思っていなかった。腹、顎と剣が登ってくるのを細い目を見開いて見て
「…ッ!」
顎にまで入りきる前に体を反らせて逃す。そのまま後ろへ手をついて数度、後転して距離をとって、何とか構え直し。
「!?哎呀…!」
上着とブラトップが胸元までバッサリ切り落されている。最早両肩に引っかかっているだけだ…
思わず眉を怒らせて
「ちょッと!そンな服、沢山持ってないンだかンね!」
躊躇せず邪魔な上着を脱ぎ棄てれば、白い上半身が露になる。
ご案内:「タナール砦」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からホアジャオさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」にタピオカさんが現れました。
■タピオカ > 夜。魔族との攻防続く北の壁、タナール砦。砦の前の平地、人族と魔族との戦いで前進したり後退したりと曖昧な前線。そこに荒く削った岩を積んで作ったガードポストがある。矢や多少の突進をしのぐ程度の小さな防御陣の中に小さな人影がひとり居る。じっと、その向こうにいる魔族、夜闇の奥に青緑の瞳向けて。
「最近魔族の動きが活発だからって、臨時の傭兵として雇われたんだけど……。今夜も仕掛けてくる様子はなさそうだね。うん……」
タナール砦の増援として冒険者ギルド経由で雇われてきた遊牧民。前線に居座って3日経つが、今のところ妙な様子も攻める様子もなく。夜空に白い息吐いた。
「ちょっと寒いね……」
そばの焚き火に、ポンチョの裾から手を伸ばし。
追加で木をくべたら、ふるりと身震い。火に近づいて暖を取る。
ご案内:「タナール砦」にザイヴァーさんが現れました。
■ザイヴァー > 焚火から延びる一筋の煙。それを目印に集まってきたのは、魔族軍の先兵、
普段、野に出るような雑多な装備ではない、しっかりと剣や鎧を装備したゴブリン。
鉄の塊のような棍棒を持ったオーク。
そして、両手に大きな斧を持ったオーガリーダー。
もしかしたら、薪で休む遊牧民のいるガードポストを取り囲むように移動する。
どうやら、高い知能を持ったリーダーがいるようだ。
『ギギ…美味そうな匂い……』
『ブブブ……メ、雌だ。人間の雌だ』
『抑えやがれ馬鹿ども。女の冒険者はな、捕まえて、手足ちぎって玩具にするのが良いんだ』
『ッギ。流石リーダー。天才だ』
そんな会話をしながら、遊牧民に近づいていくだろうか……?
そんな時だった。
空が。昼間のように明るくなる。それほどまでにまぶしい光源が天空に現れた。
「そこの冒険者、頭を低くしろ!」
そう言った、ドラゴンに乗る赤い鎧の男は、剣を振り下ろす。
『ヴレイク、ブレイク!』
そして、その光の波状の剣筋は、次々とゴブリンやオークを切り裂き、黒いチリに変えていく。
『ブブブブブブブ!』
だが、オーガリーダーは耐えたようで、片膝をつきつつも、睨む。
「おい、バスカード。出力が低いぞ」
『うるさいな!お前が冒険者を傷つけないようにって言ったんだろ?』
そんな会話をしつつ、遊牧民の冒険者の隣へと、ドラゴンから下りる。
「無事だったか?俺はザイヴァー。今回、この作戦の指揮を任されたものだ……
話は後だ。まず、あのオーガリーダーを倒そう」
そう言って、バスカードを構えよう……
■タピオカ > 「今、何か……。
……!」
傭兵といえば聞こえはいいけれど、実態は使い潰しの兵力。
報酬と引き換えに前線に配置されて、期日のうちに戦いが無ければよし。
戦が始まれば、脅威に立ち向かうというよりも控えている正規兵にいちはやく駆けつけてもらうための伝令役となる。
ふと、何か妙な気配と匂いを覚えて眉をひそめるが。闇夜に隠れ足音を消す方法を知っていたらしい相手が間近に現れて一瞬ひるんだ。伝令役らしく、腰の笛を吹き鳴らそうとしたが。――その時。
「はっ、……、はいっ……!」
夜が昼になった空からドラゴンの羽ばたき。マグメール第1師団を束ねる、思わず背筋が伸びてしまうよな鋭い声を耳にすれば慌ててその場に伏せる。
「……すごい……。あの剣から、光が……!
雷で打たれたみたいに、あっという間に敵がちってく……!」
目の前の光景に目を丸め。圧倒的な聖剣の駆逐力に興奮気味に頬を上気させる。これでも控えめな結果らしい。ドラゴンの背の上のやりとりを耳にして、くす、と少し肩を揺らして笑み。
「大丈夫だよ!助けてくれてありがとう!
僕はタピオカ。……うん、わかったよ!
それじゃ僕が囮になる!」
ほっと安堵の笑みも混じって名前のみの自己紹介。
ひとつ頷けば、ガードポストの中から飛び出していく。
片膝ついたオーガリーダーの鼻面に向けて、一瞬で取り出した投げナイフを投げた。投げながら走り続け。ナイフに気をとられた隙をついて、ついていたその片膝を抜刀しながら斬りつけた。
ばっと血肉が散り。オーガリーダーが立ちすくむ。
この隙に一撃を!とばかりに将軍へ向けて片目を瞑ってみせ。
■ザイヴァー > 元気のいい返事と共に、タピオカがガードポストから飛び出す。
そして、中々の剣すじと共に、オーガリーダーを立ち竦ませた。
その隙を見逃すザイヴァーではない。
タッ……!と駆け、遊牧民の冒険者のウィンクには戦場での戦士の笑みで返し…
バスカードによる一閃が、オーガリーダーの首を斬り飛ばす。
どうやら、オーガリーダー以外の雑兵は先ほどの一撃で撤退したようだ。
「ふぅ……どうやら、付近の雑兵は引いたようだな…」
『うえぇ……オーガの血でべっとべとだぜ……』
「黙れ愚剣。お前の聖なる光で吹き飛ばせばいいだろう」
『あ、そうか』
そんなことを話しつつ、タピオカの傍に寄る。
「タピオカといったね。改めて…俺はザイヴァー・グランフォード・カイゼルだ。」
『で、俺様はバスカード・ヴレイカーだ。よろしくな、嬢ちゃん』
「すまないな、本来は三人一チームでガードポストを守るようにしたはずなのだが…
命令の行き違いがあったようだ。謝罪しよう……」
そう言っていると、空からは竜騎士の羽音。そして地竜騎士の地響きが鳴る。
どうやら、ザイヴァーの部下が到着し、撤退する魔族軍を追撃する様だ。
「どうやら、我が部隊も着いたな……さあ。後は軍に任せてくれ。寒い中、よく頑張ってくれた」
そう言って、ポム、と、タピオカの頭に掌を置こう。
「さあ、俺は砦に戻るが……君も、一緒に戻るかい?」
『まだ、魔族の雑魚共がここらへんにはうろついてる。ザイヴァーと一緒の方が安心だぜ?』
なんて、言ってみようか……
■タピオカ > オーガリーダーの首が飛んだ瞬間に、ひゃーう、とよく響く口笛。
遊牧民が尖らせた唇から鳴らしたものだった。
力も技もタイミングも、経験もなければあのオーガの太い首を胴体から切り離すのは難しい。赤い鎧の将軍と、その相棒らしき剣の絆を目にして再び瞳は細められる。他に敵が居ないのを確認してから曲刀についた血潮を布で拭って相手のそばへ。
「よろしく!ザイヴァー、バスカード!
ううん。そんなこと。
軍も人手が足りない状態だって聞いてるから、仕方がないと思う。
……って、え、あっ、……、もしかして……ザイヴァー……、将軍……?」
階級社会に慣れない遊牧民は旅先でたまたま乗合馬車を共にしたよな気安い勢いで笑顔を向けて。彼に片手を差し伸べ握手を求める。聖剣のほうには挨拶がわりに手を振ったのだけれど。雇われた時に聞いていた、師団を束ねる人の名とその人が持つ不思議な剣の話に遅れながら「作戦の指揮を任された小隊長」程度ではない相手の階級に気づいた。
あわあわわ。あわてふためいていると竜騎士たちの羽音に顔を上げ。
「あっ、あ、は、はい……。ザイヴァー将軍……。
え、っと、きょ、恐縮です……」
ぽんと髪へ触れた大きな温かい手の感触。
思わず頬に紅色を染めて。慣れないかしこまりかたをしてしまう。
「うん、……っはは……!
竜騎士の皆は頼もしいなあ……!
狩猟を楽しんでるみたい。
そろそろ見張りの交代の時間だったし、将軍と一緒に戻ります。
連れていってください!」
空も陸も。竜での電撃作戦が魔族軍を追いかける様子に思わずこぼれた笑み。頼もしげにその様子を見ながら、こくりと彼の言葉に頷いて。
■ザイヴァー > ザイヴァーと呼び捨てにされれば、目を丸くするもふっと苦笑し…
「ああ、軍も質と量を兼ね揃えた部隊が少ないのでな。君たち冒険者には苦労を掛ける。
……ああ、そうだ。俺は将軍だよ」
驚いたかい?なんて、少し茶目っ気を込めた笑みを浮かべて。
慌てふためくタピオカを眺めようか。
「ははは。そんなに硬くならなくていいよ。君は軍属じゃないからね。
あ、でも、部下の前で呼び捨ては勘弁してくれよ」
『いいじゃねぇか。ザイヴァー。呼び捨てくらいよ。
こんな可愛い子が親しみを込めて呼んでくれるんだぜ?部下の目がなんだよ』
「黙れ愚剣」
何て言いつつも。部下たちが魔族軍を撤退させているのを見つつ。
一緒に戻ると言われれば、ドラゴンが背を向けて、乗りやすく身をかがめている。
その上に乗り、相手が乗りやすいよう手を差し出して…
「さあ、砦まであっという間だが……空中は寒いからな。この薬を飲んでおいてくれ。」
そう言えば、赤い小粒の薬と水筒を渡す。
「これは冬に空を飛ぶときに兵が重宝する、体を温める薬だ。飲んでおいたほうがいい…」
そして……
「さあ、行くぞ……!
しっかりと、背に掴まっておいてくれ…!」
『あーあ。ザイヴァー。役得だな~こんな可愛い子に抱きしめられるなんて……』
「黙れ愚剣」
二人を乗せたドラゴンは、羽ばたき……
砦へと向かうだろう…
■タピオカ > 「そっ、そんな……!
ただ、僕は雇われただけで……。
それに、マグメール第1師団の団長が、ただの傭兵に声をかけてくれるほど気さくなんて思わなくて……、……」
労いの声をかけられると動揺も収まるどころか揺り返していく始末で、何を言ってるのか自分でもよくわからなくなって俯くありさま。
「わわ、わかりました……、って
……、じゃなくて、わかったよ、ザイヴァー……。
あはっ、可愛いなんて……。バスカードは口もついてないのに、口が上手だね。バスカードこそ……さっきの、とってもかっこよかったよ」
背筋を伸ばしながら身体の力を抜く、なんてちぐはぐな事をしてしまいながらも。
落ち着く先は気楽な口調へ。まだ少しぎこちない様子だったものの、彼と剣のやりとりに肩の力が緩んで。いつもの喋り方を取り戻していく。
「ふふ……優しいね、ザイヴァー。
ありがと!じゃあいただきます……」
ドラゴンの背から手を伸ばされたら、馬車に乗る淑女にでもなった気分。少し嬉しそうに目元綻ばせつつ、相手の広い背中に収まろう。
渡された薬にお礼を告げて。言葉を疑わずにそれを口に含むのだった。
「うんっ……!ザイヴァー!
僕、竜に乗るの初めてなんだ……!
あはは、バスカードのことも後でぎゅってしてあげようか?」
今度の返事は、うきうきと弾むような首肯となった。
初めてのドラゴン騎乗。興奮気味に、きゅ、と彼に身体を寄せながら。余裕が出来たのか、軽口も聖剣へと向けつつ。ドラゴンが夜空へ浮かべば、相手の背からわああ、とか、ひゃああっ、等と立て続けに歓声が上がり。
■ザイヴァー > 気さくと言われれば、ふっと笑い。
「っはは。俺も、男だってことだよ。それに、君は傭兵の前に冒険者だろう?
冒険者なら、守るべき、民だからな」
『嬢ちゃん、知ってるか?こいつ、訓練中は部下に鬼だの悪魔だの言われるくらい厳しいんだぜ?』
なんて、剣と持ち主、共々笑もう。
そして、口が上手いと言われた剣については……
『あー。その優しい言葉が剣身に染みるぜ……もっと言ってもいいんだぜ?』
「タピオカ。こいつはおだてると調子に乗るから。もっと愚剣扱いでいいんだぞ?」
『その優しさの百分の一でもこいつにあればな~』
何て言って。そして、初めての騎竜にはしゃぐ少女には、自然と表情も緩むというもの。
『おいおい、俺様を抱きしめたら、嬢ちゃんの肌が切れちまうぜ…』
そして、小さな声で……
『抱きしめるなら、ザイヴァーを抱きしめてやってくれよ。
こいつ、戦いの後の体の高ぶりの抑え方の相棒が自分の手なんだよ。悲しいだろ?
誰より戦って、誰より殺した奴へのご褒美が自分の手なんてよ。
だから……さ』
何て言って。だが、風のせいでザイヴァーには聞こえていないようだ。
「さあ、砦が見えたぞ」
そして、砦に到着。砦では、兵士たちが慌ただしくしている。
そして、竜舎に到着すれば…
『将軍!お疲れ様です!』
「うむ、前線は我が第一師団の主力が押している。他の戦線はどうだ」
『は!第一戦線ですが…』
そんな感じで、兵との会話に入るザイヴァー。そして、気が付けば、タピオカにバスカードを持たせていて……
『あー、仕事モードに入ったな、ザイヴァー。しばらくかかるぜ~。
そのあいだ、俺と話すかい?』
■タピオカ > 「ふふ。かっこいいなあ。
いつもありがとうね、ザイヴァー。
僕やみんなの生活を守ってくれて。
傭兵としてここにきて、王都での暮らしがザイヴァーや騎士の人たちに支えられてるってよくわかったよ。
――そうなんじゃないかなあって思ってたよ、バスカード。
そうじゃないと、あんな風に敵を散らせないもの」
竜の背にてはしゃぐと、自然と口数も増えるもので。
1人と一振りとの雑談は弾むが、聖剣の小さな声を耳にし。
「自分の……手……?
~~~~っ!……そっ、……、そういう、こと……。
え、……、えっと。……うん……。
僕でも……相手にしてもらえるなら……。
助けてもらった、お礼もしたいし……」
相棒が自分の手。その意味を少し遅れて知るとほのかに顔を赤くする。手が勝手に、彼の背を抱く力を少し強めてしまいながら。
剣にだけ聞こえるようにぽつぽつ小声こぼしながら、こくん。恥ずかしそうに頷くのだった。
やがて砦が見え。着地するなり兵士たちの報告を受ける姿は将軍らしく威厳に満ちて見えた。眩しそうにそれを見上げながら、従者のように聖剣を受け取りそっと輪から離れ。
「ザイヴァー、師団長の顔になってるもんね。
お話しよっか、バスカード。
……って。うーん。……、僕、剣とお話するの初めてだよ。そういえば。
バスカードは男の人なのかな?そんな感じに見え……、見える、という、か聞こえるけれど」
竜舎近くの天幕のあたりに剣と共に寄って行くと、恐るべき理力を備えた、見た目は普通のサーベルを両腕でそっと抱きつつ語りかける。
■ザイヴァー > 自分の手が相棒。そんなことが暴露されてるとは露と知らないザイヴァーの腰から外されたバスカード。
彼はタピオカに抱かれながら、質問に答える。
『ん?ああ。俺様は男だぜ?多分、肉体があったらザイヴァーに引けを取らないイケメンだったろうなー』
なんて、ケラケラと返して。そして……
『まあ、剣と話すなんて人間の人生って言うのか?その中でも一回、あるかないかだろ。
気にせず、普通に男とだべってると思えばいいぜ?』
剣と話すという不思議体験をしている相手にはそう言って…そして。
『あー、嬢ちゃん。さっき俺が、抱きしめるならザイヴァーをって言ったこと、アイツには内緒にしてくれよな?
恥ずかしいじゃねぇか。俺がアイツの事マスターだって認めてるようなこと言うの……』
そう言いつつ、天幕の傍を歩いている一人と一振り。
『でも……さ。アイツにとっちゃ、娼婦ですら、守るべき民なんだよ。だから、おいそれと戦場まで連れてこねぇし、
部下の女騎士に手を出すくらいだったら、多分腹斬るだろうな。それ位頭が固いんだ……
本当に、裸のアイツの上半身、抱きしめるだけでもいいんだ。
アイツに、女のぬくもりって言うのか?剣には分かんねぇが……
そういうの感じさせてやりたいんだよ…俺の、マスターによ。
まあ、初めて出会った冒険者に頼む話じゃねぇかもしれねぇがな。
ちなみに、アイツの部屋は、砦の……』
そして、バスカードはタピオカにザイヴァーの部屋の場所を教える。
そんなことを語っていると、ザイヴァーが戻ってくる。
「おい、愚剣。タピオカに何かセクハラしていないな?」
『大丈夫だって。俺様、そんなに信用ない?』
「ふん、ならいいんだが…・俺は部屋に戻る。タピオカは…
そうだな、空いている部屋があったはずだから、そこを使ってくれ」
そう言って、去って行こう。