2018/10/13 のログ
■レジナ > その言葉を聞くと、戦士は口元に手を当てて笑った。
「流石、勇猛ね。私たちの傭兵とも、騎士とも、雰囲気が違うわ。
爽やかというか──詩心が無いのが悔やまれるわね」
賞賛というのとはまた違うが、その戦人と日常的に親しむことを長年、
続けてきた種族特有の死生観から来ているのだろうか……
戦や死に対する純真さ、爽やかさに素直な好感を伝え。
「流石に全部が全部、とはいかないけど、中でも陣形を組めるくらい広々してるわよ。
長い廊下もあるし、貴女のその脚が活きる場所もある」
馬を屋内で走らせるのに向かないというのと全く同じ理由で人馬族に、
屋内は向かないのも確かではあろうが。
中は流石に重厚な作りで、初めて訪れる者にとっては迷宮のようにも感じるだろう。
敵を幻惑するために複雑な作りになった場所を設けるのはよくあることであるが。
■ジェネット > 「む?」
何かおかしなことを言ったろうか。王国の感性とはやはり違うか、と少し眉根を寄せ。
「戦士は金のため名誉のため、騎士は誇りのため国のため。
だが私達草原の民は命のため戦うものだ。
それが奇異にみえるのだろうな。いや、爽やかと言われたのははじめてだ」
理由を聞いてみれば、むしろ好意からの笑いだと知れて思った以上に感情豊かに振る舞うレジナに少し打ち解けた感を覚える。
「そんなにか! いや、だが直線は流石にあまりなさそうだなあ。
騎馬突撃ができんのは残念。腕のいい騎手込みでかろうじて行けるか、というところかな」
複雑に入り組んだ砦の構造を見て、なるほどと頷く。
やはり会戦とは勝手が違いすぎる。
それでいてこの砦を守ってきたレジナ含む人間たちの適応力や戦術はきっと思いもよらないほど凄いのだろう。
■レジナ > この国よりももっと辺境で、人間とは違う種族がもっと多く、血族単位で領土を構えて栄えている土地の
生まれである戦士にとって、人馬族という種族の違いは忌避するべきではない。
違いを無くそう、無いものとして扱おうとも思わないが、違いを尊敬は出来る。
自分の言葉で言う、その人間族にはあまり見られない爽やかさを素直に羨ましく思いながら。
「そうねえ、ここなんか、貴方達にとっては有利になりそうじゃないかしら?」
てくてくと歩きながら、広々とした中庭を指さしたり、色々部分でここは有利に戦えるとか、
ここは不利になるとか、まるで趣味事のようにああでもないこうでもない、と語りながら砦無いを散策。
そういった話に夢中になっていたせいもあるのだろう、また迷宮のように入り組んだ構造を歩きながら、
少しだけはっという顔をした。
「あ。しまった。この辺りは初めての人向けじゃあなかったわ……」
こめかみを指先で掻く。聞こえて来るのは、苦し気な呻き声……
にも聞こえたが、それは良く効くと男女の声が重なり合っており、甘さを含む。嬌声だった。
■ジェネット > 「そんな土地があるのか。王国で立身出来なかったら行ってみたいな」
血族単位で、というのが特に気に入った。草原と同じような生き方ができそうだ。
もしその時が来たら、是非その土地について詳しく教えてくれ、なんて世間話を交えながら、砦の中の地形を頭に叩き込んでゆく。
時折あの城壁の上は入れるのか、とか
此処の直線はいざ戦う時どのくらい塞ぐのか、とか質問を交えながら、有意義な時間を楽しみ
「うん? …………あぁ、そういうことか。街と違って娯楽もないだろうし、うん。
戦士が血を残すのはよいことだ。死ぬまでに一人でも強い子を作るのは褒められることだぞ。
勿論相手も承諾している場合に限るが、そこまで無体はすまい?」
この女戦士が、見られて「マズい」ではなく「気まずい」方の表情をしたので、それが双方の合意、
ないし決められた掟の中で行われていることだと理解して頷く。
草原では強い戦士が子作りするのはよいこと。
戦利品として倒した戦士の雌を相手にするのも、逆に女戦士が倒した戦士を相手にするのも、許される。
合意もなければ勝敗に定められてもいない強姦でさえなければ、特に忌避することもない。
■レジナ > 「何ていうのかしらね、戦場の嗜み? かしら、そういったものに理解があるようで安心したわ。
ええ、勿論合意の上よ。合意、合意。娯楽が少ないから──」
まるで親善大使ね、と、釈明をしながら戦士は安堵の吐息を密かに漏らす。
戦場というものは、子孫を残そうと言う本能が働く……というのは良く言われること。
それに、何かあればすぐ武器を手に飛んでいかなくてはいけないから、腰を据えられる娯楽もない。
となれば、戦と戦の空白期間にやることと言えば、必然的に限られてくる。
その辺りは雇われ者たちも心得ていて、そういう時はここら辺を使いましょう……
といった、牧歌的とさえ言える民間ルールめいたものがあるのだ。
「折角優れた戦人が参戦してくれるかも知れないチャンスを潰したとあれば、
その損害に対して賠償を請求されてもおかしくないところだったわ」
と、ひとしきり安堵すると……絶えず聞こえて来る歓楽の声もあってか、
この辺りの事情の伝え方を危惧していた自分のほうが妙な気分になってくる。
とはいえ、その後の女々しい対応は性質には合わず、率直に彼女を見上げ。
「これも、砦の文化の一種ということで。
郷に入ってはなんとやら──どうかしら、貴女も、文化を体験してみる気はない?」
と、気性柄、挑む様な、それでいて艶を含んだ視線を投げかけ。
■ジェネット > 「合意なら何も問題はないな。
草原もそうだった。娯楽といえば狩りか子作りの真似事でなあ」
しみじみと呟く。
赤飯を炊き、氏族長たる大父に抱かれた女は晴れて大人として性交を許される。
戦場で捕まえてきた有望な戦士や、同じケンタウロスのいい仲の男と致す義姉たちも多かった。
そんな環境で育ったから、そこかしこで男女が交わっていても気後れはしない。
まあ、これが流石に交わっている男女が丸見えだったり、
屋外でこの有様だったりしたならばレジナに詫びを入れてすぐにでも此処を去っただろうが。
「…………ふむ、体験」
正直、むらりと来ていないかと言えば嘘になる。
レジナの視線を受けて、ゴクリと生唾を呑み、静かに頷いた
■レジナ > 個人部屋を与えられていない雇われ者たちにとっては、暗黙の了解として
そういった娯楽を享受出来るエリアが必要……とはいえ、専用の部屋というのも用意しし難い。
なので、一部の区画でのあれやこれやについては、黙認するというのが上の判断。
その仕組みの恩恵にあずかる者達も、自分たちの行為を見せ付けたいなどとも思っていないから、
意外なほど秩序だって、このエリアは利用されていた。
戦士は、激しい戦で何とか生き残り、ぽっかりと空いた空白の時間が妙に肌寒く感じてたところ。
「あら、話が分かるわね!」
度胸は在ろうが、誘いをかけるというのは幾つになっても胸が高鳴るというもの。
好感触を感じ取ると、両手を組み合わせてニコニコとする。具体的な返事はされていないが、
そこは押しの一手という戦術であった。
「この砦の事を知るなら、根付いた文化も体験してみないとね。
砦の構造も頭に焼き付いて、一石二鳥……いえ、気持ちいい事もついて、三鳥かしら。
さあ、さあ、そうと決まればあちらに行きましょう?」
伸びた廊下の途中、曲がり角を曲がってその先へ向かおうと、先導し──
■ジェネット > 「うん、せっかくなら体験してみるのも悪くないかなと思うんだ」
あくまでも空気にあてられたのではないというふうに装って、ニコニコと喜ぶレジナに見惚れる。
意外と、というわけではないが押しが強いのだなと少し圧されながら、蹄で床を叩いて先導する彼女に続き
「ところで、アレだ、あの。参加するなら、人の姿を真似たほうがいいか?」
脚が遅くなるが、交尾には俊足もいらんし、と人化魔法は使ったほうがいいか聞く。
■レジナ > 奔放に見えて中々秩序だったもので、戦士はその廊下の途中にある曲がり角の前に、コインを一枚落とした。
なんという事もなく、一枚のコインが転がっているだけけだが、その曲がり角から先は使用中、という意味になる。
この辺りであれば一見の者が踏み込む事もあまりないので、存外上手く機能する仕組みだった。
「ああ、ごめんなさい。私としたことが、気を遣わせてしまったわね。
勿論、そんな必要はないわ。私たちは違う種族だけれど、その違いが素敵だと思っているから」
個人の感想なので、断言こそしなかったが。自分はそうなのだ、という意思を乗せて、
器用に片目を閉じて見せる。媚態というよりは、茶目っ気のある仕草だった。
さあ、行きましょう──と、その奥へ向かって歩を進め。
■ジェネット > 「うん」
種族の違いがよい、とお茶目に告げたレジナに胸がとくんと跳ねた気がする。
勝手知ったるというふうにコインを放って合図を残す彼女を見て、そのルールを覚えながら後ろについて行く――
ご案内:「タナール砦」からレジナさんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からジェネットさんが去りました。