2018/10/12 のログ
ご案内:「タナール砦」にジェネットさんが現れました。
■ジェネット > 軽快に蹄が地面を叩く音。
早朝、新たな騎手(仮)を王都近くの宿に叩き込んでからそのまま早駆け、噂の最前線たるタナール砦の近くにやってきた。
魔族領域との境界の要衝にして、主戦場たる要塞の威容には好奇心を掻き立てられる。
黒い甲冑の重装騎兵――半人半馬の女武者は、さて今の砦はどちらのものかと近づき過ぎぬよう気をつけながら、砦の周囲を歩いて見て回る。
■ジェネット > 「うーむわからん」
どうやら戦闘中ではないようだが、そのせいでなおさら今どちらが砦を占領しているのかさっぱりわからない。
ここで正面から突撃してみれば一発だろうが、
「魔族が取っていたらシャレにならんな。人間ならまだ……あ、いや魔族と間違われると面倒だな。うむ」
さてどうしたものか。中から誰か出てくればわかりやすいのだが。
蹄で土をほじくり返しながら、遠巻きにじっと門を見て
ご案内:「タナール砦」にレジナさんが現れました。
■レジナ > 野太い男の号令が砦から響く。
遠く離れていても聞こえる程の重厚な音がし、門が開いていった──
と、その向こうに現れるのは、一つの人影。
本来は立て掛けておくものであろう、長いポールの先に棚引く軍旗を、
片方の肩に担ぐようにし、それでもバランスを崩すことなく半人半馬の女性から、
人間の脚で十歩少々の間合いまで歩いて来る。
その旗は、王国側の軍旗であった。片手は極自然に、剣の柄の上に置かれている。
■ジェネット > 「お?」
門が開いて、王国軍の旗が出てくる。
なるほど今日は王国軍の勝ちだったか。
よいことだ。個体差はあれど基本的に魔族よりは人間のほうが好ましい。
まあ、噂の魔族を生で見ることが出来なかったのが微妙に残念といえば残念だが。
「ほう、こちらに来るな。一騎駆けか? 斥候にしては堂々と軍機を担いでいるし、使者かな」
なら道をあけてやらんとな、と路肩に寄ろうとして、人影はこの道ではなく私自身を目指しているのでは、と気づく。
さて、友好的であればよいのだが……
対魔族の最前線で働く軍人ともなれば、亜人への当たりも強かろうなあ、と想定して、巨大な槍と盾を支える腕にやや力を込める。
■レジナ > 「まずは名乗らせて貰うわね。──私は、王国側に与する傭兵のレジナ」
さほど張っている風でもないが、良く通る女性らしい声で、戦士は言った。
槍と盾を構えた腕に籠もる微妙な力……戦働きの経験が有るものであれば、
見て取れる微妙な緊迫を察し取るや、戦士の方は自分の意志を明らかにするように、柄から手を下ろす。
「これは私の勘なのだけど、貴女は魔族に与する者ではない──
どうかしら? それを確認して来るって大見得切っちゃったから、教えて欲しいわ」
正規の軍人の作法ではないが、あくまで丁寧な口調で告げた。
■ジェネット > 「ふむ、ではこちらも名乗ろう
我が名は草原の偉大なる戦士、コーサー氏族が妾子、ジェネット。
今は氏族から独り立ちしたところでな、所属はない」
相手が構えを解けば、こちらも腕に込めた力を抜いて、槍を背に乗せる。
それからフルフェイスのバイザーをちゃり、と持ち上げて目礼。
こちらの警戒を読んだように剣から手を離したところ、
そして小隊どころか単独で出てくるところを見るに、彼女は手練らしい。
であれば、氏族の女として非礼の無いよう応じるまで。
「その問いに答えよう。ああ、私は魔族でもなければその仲間でもない。
東より来た、草原の遊牧民の末裔だ。この見た目では信じてもらえるかわからんが」
大体半々で魔族呼ばわりをされるのだ。
残り半分のうち、3/4程度は不気味なものを見るような目を向け、1/4は好奇や興味の目で見てくる。
そんな扱いには慣れたものなので、
「軍に不要な警戒を与えたことは素直に詫びよう。去れというならすぐにでもそうする。
最前線というのをこの目で見たかっただけなのだ、他意はない」
■レジナ > 無頼の傭兵とは言え、戦人の名乗りを神妙に聞き留める程度の作法は心得ていた。
背筋を伸ばした姿勢で彼女の口上を確と聞き、それからようやく表情に微笑みを浮かべる。
「切った張ったも嫌いではないけれど、一傭兵としては難敵が増えなくて安心した。
国を挙げて、とはいかないけれど、今のタナール砦は貴女を歓迎するわ、ジェネットさん」
魔族と絶えず奪い、奪い返されを繰り返すこの砦は、詰めている面子も、日々異なると言っても
過言ではない。門の向こうで自然体に構えている者たちも、
この戦士と同様に、正規軍のものではない鎧に身を包んでいる者が多く。
「ご覧の通り、今は一時の空白といったところだけど……
折角だから砦を見ていく? 戦働きがお望みなら、数日もすれば、また始まるわ。きっと」
■ジェネット > 「ここまで近寄られた時点で私の強みは死んだも同然だ、
もしそちらがやる気だったらしっぽを巻いて逃げなければならないところだった」
ケンタウロスの強みは、馬体から繰り出される速力だ。
それを発揮できない距離まで詰められた時点で、争いになれば勝ちの目は大きく減る。
故に、歓迎されたことにほう、と胸を撫で下ろし。
「歓迎に感謝する、レジナ。もっと殺気立っているかと思ったが、存外に気楽なものなのだな?」
素性の怪しい亜人族にも砦を見せてやるというのはありがたい話だが、守りの上で大丈夫なのだろうか。
いや、噂通りの陣取り合戦の舞台であるなら、敵味方ともに勝手知ったる我が砦、ということか。
「なら、お言葉に甘えて見せてもらおうかな。戦働きは、騎手がいる時に改めて志願しに来よう」
■レジナ > 「とは言え、私が戦る気だったら、多分ここまで近寄せて貰えなかったでしょうけれど」
高級騎士たちに良くある、誉めそやし合いというのとは異なる……素直に口をついた感想。
戦いに身を置く者たちは、恰も超短期の未来予知の如く、培った経験に基づく勘で、
彼(彼女)とはこれからすぐ敵になる、という予感が咄嗟の行動を取らせる事も少なくない。
「上の方々はもう少し気を引き締めろ、と言うけれど多分本気では言ってないわね。
今は私の様な傭兵が詰めている者の多くを占めているからでしょうけど。それも要兵術かしら」
軍旗を抱え直すと踵を返し、門の方へと歩いて行く。確かに気楽とも思える足取りで。
「ここでは余りに戦が頻繁に起こっているから、緩急をつけないとやっていけないのよね」
こと戦に至れば気を引き締め、平時は気を抜く。そういった意味での緩急について述べ。
■ジェネット > 「いざ近寄られるまで確信を持てなかったあたり、上手い戦士だと思ったが」
勘で敵味方を選ぶ事はできても、人間はどちらかと言えば味方という先入観ばかりはどうしようもない。
こと、魔族かヒトか、の二択を強いられるタナール砦とあれば、
出てきたのがヒトだったというだけで油断が無かったかと言われれば自信はない。
「いや、メリハリがつけられるのは戦士の資質だろうと思うぞ。
四六時中緊張していては戦う前に疲れ果てるだろうし、逆ならば砦を守ることなどできまい。
なるほど、そう見ればこの砦は流石に手練が多いな……」
■レジナ > 「ここは一種の聖地だから……日常的に戦の舞台になっていること、
それが毎度死戦になること──その辺りの事情を心得た者がやってくるからでしょうね」
手練れが多い、と見受けられるのは間違いではないはずだ。
己にとっても、自分を技量で上回る戦人を幾らでも見かける。それなりに腕に覚えがあっても、だ。
その分人の入れ代わりも激しく、詰めている人間も様々な人種の者が多い。
彼女、人馬族を見ても──内心はどうあれ──露骨に好奇の眼差しを投げかける者は多くないのが証拠でもある。
「中も見てみる? ここで戦う可能性があるなら、損はないと思うけど」
■ジェネット > 「聖地、か。戦士の聖地、心に来る響きだな!」
戦士が生き、そして死ぬ。それが日常と化すとは、いったいどれ程の血を吸ったのか。
恐ろしさもあるが、その異次元の領域に対しての好奇心が勝る。
「ああ、見せてもらえるなら是非。
私は見てのとおりだから籠城は好かんが、もし取られた時の奪還一番槍なんかは是非目指してみたいしな」
からからと笑いながら、レジナの後ろに続く。