2017/04/30 のログ
ご案内:「タナール砦」にヴェロニカさんが現れました。
ヴェロニカ > あちこちの戦いの爪痕が色濃く刻まれている砦での戦いは、魔族の軍勢による侵攻側におおよそ趨勢が傾いており、すでに砦も奪われてしまっていた。
人間の軍勢もまだ抵抗を諦めておらず、遠くに戦いの気配はしているものの、直に勢いに乗った魔族の勝利に終わることだろう。
その場にあって魔族であるはずの自身は、低級である異形の魔族たちが作り出した魔力の鎖のようなもので後ろ手に腕を組まされていた。
周囲の魔族たちの好色な視線を、煽情的なドレスを纏う肢体に注ぎ込まれている中、まだ手を出されていないのは戦いが終わっていない緊張感で空気が張り詰めているというだけで、また人間側の将を討ち取った、あるいは女の捕虜でも連れてこられでもしたら、その糸は簡単に切れてしまうようだった。

「……困ったことになったわね」

そう周囲の下品な笑い声に紛れる程度の小さな呟きを零した自身の頭には、魔族の証である角はなく、背中から翼も生えていない。
使える兵員を得るために、戯れで人に趨勢が傾いている砦へとやってきて、そこから何人かの兵士をヘッドハンティングする心づもりだった。
当然、欠員ができた砦は脆弱になろうが知ったことではないと考えていた天罰でも下ったのかわからないが、少なくともここに来たせいで今魔族たちに囚われた貴族のような有様になっている。
傍に控えるメイドもおらず、交渉をしていた将軍は随分と前に魔物の大腕によって首があらぬ方向に曲げられたきり動かなくなっていた。
当然魔族の力を示すなり、逃げ出すことも考えていたが、まだ外で戦う人間が多くいる中、魔族の姿を晒して魔族と共にいるのを見られるのはそれはそれで都合が悪く、早いが話八方塞がりの様相を呈している。

ご案内:「タナール砦」にサタンさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にソル・グラディウスさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」からソル・グラディウスさんが去りました。
サタン > 既に戦いの趨勢は決している。
遠域での残敵掃討は功を欲する若い魔族達に任せればよい。
男もまた此度の戦には交友ある魔族に乞われ参じた客将のようなもの。
既に陥落にある砦において、下級の魔族達が略奪と乱暴に欲を出して走り出すのを眺めながら、口許には巻き煙草を咥え、紫煙を燻らせながら、捕縛された者達が集められた場へと脚は向いて歩みを進めていた。

捕縛された娘を囲み、下衆な声を上げ、舌なめずりしてご馳走を眺める魔族達の輪の中囲まれた娘の呟きは、無論男には聞えるはずもなく。

「――…ほう…捕らえたというのは、これか…。」

静かな声音が囲む魔族達の聴覚へと伝わり広がる。
刹那、涎を垂らし暴発しそうな欲望を隠そうとしない魔族達の表情に恐怖の色が浮かび、下品な笑い声は静まり、取り囲む輪は何かに道を譲るように割れ、囚われの貴族のような有様の娘の前にその男は姿を見せた。

ヴェロニカ > このまま人間の軍勢が全滅するのを待つころには、逸る魔族たちが自分にも群がってくるだろうことは容易に想像できる。
傍にいるメイドも、こんな時にはいたところで大した役に立たない状況で、すでに周囲では連れてこられた捕虜を欲望のはけ口にしている光景まで見られ始める。
いよいよ行動しなければならないかと考えが浮かんだところで、周囲の空気が変わった。
不意に魔族たちが静まったのは、自身の正体に気づいたから、なんて楽観的な考えを浮かばせてもくれない静かな声と共にやってくる気配に、つい小さく唾を飲んでしまう。

「……アンタが指揮官…な、わけないわよね、戦いも終わってないのに堂々と捕虜を漁りに来るような者だもの」

魔族たちの群れが割れ、その間からやってくる長身の男を見て開いた口は、周りの魔族の反応など見えていないような不遜な言葉を吐く。
両腕を戒めている鎖も低級な魔族の放ったそれに過ぎず、その気になれば戦いに転じることもできるが、そんなことをすれば間違いなくその姿を人間に目撃されてしまう。
そういうドン詰まりにいることをおくびにも出さずに、いつもの調子を見せた姿は、その内に灯す魔力がわからなければ、状況が読めていない愚かな貴族の令嬢に映るかもしれない。

サタン > 最早何度攻め落とし、またその数だけ人間達に奪われたか数えるのも阿呆らしい砦の攻防そのものに、男はなんら楽しみも感じてはいない。
略奪と暴行の様も最早見慣れた光景だ。
下らぬ戦の報酬は自らの気を惹くモノでもあれば良かろうと、然程期待もせずにいた。

見下ろす視線の先で、鎖に後ろ手に縛られた娘が発する言葉をククと喉鳴らし小さな嘲笑で応じながらも、男の感覚は娘の内に灯る魔力を感じ取って、その素性に凡そながらも感付いていたのだが

「――あぁ、まぁ客将のような者だ。
それで、無様にも捕虜となっている貴様は何者だ?
貴族の小娘風情が居る場所ではあるまい?」

同様に、男も自身が魔王であるという身分は明かさず、娘の言う不埒な魔族を演じていた。
男の身に宿る魔力の炎は不遜な言葉を吐く娘でも感じ取る事が出来るほどに、強大な力を発していた。

ヴェロニカ > 攻め落とされた砦で始まる狂宴の有様は鼻について、少し表情を歪めるが、すぐに目の前に立つ男の存在感でそんなことにかかずらってもいられなくなる。
見下ろされてる状況には生来の高いプライドが軋むようで、僅かな熱とその他大多数を占める不愉快な感情がありありと浮かぶ顔や深紅の瞳には、警戒は見えても恐れは見て取れないだろう。

「良い御身分ね、アンタがちゃんと戦えば、もっと戦いは早くにカタがつくんじゃないかしら。
あたしは貿易商で、ここの兵士を引き抜きに来てたのよ、買い物は直に品物を見ないと納得できないもの」

男の名乗る立場には、皮肉半分願望半分な言葉がついて出て、問いかけられる言葉には、あくまで惚けた態度で返す。
下級の魔族がいくら怯えようが全く気にすることはなかったが、少なくとも傍に立たれただけで肌を焼かれるような魔力を感じる以上、軽率な行動をすることはなかった。
正体こそ読めないが、強大な力を持つ相手と正面切ってぶつかれば、確実に自分の正体が人間にも知られるだろう危機感はあり、じっと値踏みするような視線を向けることになる。

サタン > 見下ろす自身を見上げる真紅の瞳に宿る気位の高さは嫌いではない。
自身の存在に怯え控える魔族達とは比べるまでも無い。
故に皮肉と願望混じりな言葉も咎めはしまい。

紫煙燻らせていた巻き煙草を地へと落とし、革靴の先が揉み消しながら、娘の言葉にまたも喉を鳴らして嘲笑うかのように

「ハッ、こんな下らぬ遊びに我が力を振っては意味もあるまい?
若い魔族には戦を知る良き場であるしな。
それに、我が力を振るっていたのなら、貴様の目当ての品も全て灰塵に帰しているというもの。ウィンドウショッピングくらいは出来ただけ感謝してもらいたいものだがな?」

男の言葉がはったりか否かを判断するは娘次第
既に男の興味を惹いた娘以外の捕虜が受ける狂宴は男にとってはノイズでしかない。
既に趨勢は決し砦内も制圧が終わった頃合であろう。
気位の高い瞳を宿すこの娘がその正体を明かすか否かと、興が乗り始めた男は、取り囲む魔族達を一瞥し

「この娘は我が頂く。異を唱え、我に立ち向かう者は誰かいるか?」

言葉を発した。
決して大声では無いのに、その声音には有無を言わせぬ力が宿り、極上のご馳走を持っていかれる無念さを見せながらも、逆らう言葉を発する者は誰一人として居なかった。

ヴェロニカ > 煙草を踏みにじる男に見下ろされながら、その見上げるような長身に乗せられた顔を見つめていた。
しかしその姿勢に疲れて身動ぎすると、支えるものの少ない胸が動きに合わせて揺れる。

「こっちは商談に来てたのに、アンタらの遊びで潰されたんじゃたまったもんじゃないわ。
あたしね、欲しいものは手に入れたい方でね、お預けされるならとにかく取り上げられるなんて耐えられないの」

周囲に響く喧噪の中、男の言葉には不愉快そうに笑みを引きつらせながら、また睨み付けるような強情な視線を向けていく。
男の言葉はハッタリにも聞こえる話だが、未だ読み切れない男の実力から一笑することもできず、一挙動に注視する深紅の瞳には露骨なまでの警戒心が見て取れるだろう。
やがて外や砦の戦いも終結に向かったか、争う音が遠くなってくると、もう人間の軍勢による救助は全く期待できなくなると察する。
そんな折に、男が告げる言葉に、脳裏の奥で何かが千切れ飛ぶような音を聴いた気がした。

「いや、いるわよ、ここにいるに決まってるじゃない、何勝手に決めてるのよ。
……名乗りなさいよ、アンタそれぐらいの『格』はあるんでしょ?」

砦に響くほどの大音声でないのに周囲の喧噪すら解さずに響く声に、魔族たちが無念の言葉を漏らす声も絶えたところで、唐突に戒められていたはずの手を挙げながら言う。
己を戒めていた鎖は、魔法陣で呼んだ風の刃に切り裂かれ、簡単にその役割を果たせずに落ちていく。
非力な令嬢があっさりと立ち上がる姿に周りの魔族が呆気に取られている中、びしっと指を突き付けて不遜な態度で問いかけてから挑発的に笑いを零した。
かなり屈辱的な扱いに、怒り心頭に近い状態だったが、周りにいる魔族たちの手前、みっともなく当たり散らすことができない憂さ晴らしのようなもので。

サタン > 戦場に不釣合いな扇情的なドレス姿の娘が身動ぎ、小柄な身には不釣合いのような豊かな膨らみの揺れに周囲の魔族達から涎を嚥下するような音が幾つか零れる。

商談が御破算になった上に哀れ捕虜の身にされても尚、強情な真紅の瞳が向ける視線。
警戒の色は見せながらも、言う事は言う性分であるのだろうかと、思いつつも、表向きは貿易業を隠れ蓑にしている男はまたも喉を鳴らし。

「商機を見誤った貴様の失策ではないかな?
こんな下らぬ戦で敗れるのならば、所詮その程度の商品しか居なかった、と思うがな。」

遠域の戦の音も途絶え、魔族が勝利した。
男の通達に逆らう魔族の声は皆無であれど、不意に拘束の鎖を切り裂き異を唱え指差す娘の所作に、この戦で初めての愉悦を見せ、口許は緩く弧を描き、喉を鳴らした。
『格』と言うならば、この戦場に居る全ての魔族の中でも最上級に位置する男は、指差し挑発的な笑いを零す娘と自身の周囲に、男の宿す炎のような魔力を表す真紅の転移魔方陣が展開された。
紅と炎のオーラを発しながら、紅瞳は娘を見下ろし、口許はゆるりと開かれ

「『大罪』に連なる魔王が一柱。『憤怒』の魔王サタンだ。」

この男の『格』を言葉は紡いだ。
娘の自身に対する値踏みはいかほどかと多少の興味も抱いた。

そして転移の魔方陣が放つ炎は増し、二人の姿は魔族達が支配する戦場から砦の司令執務室へとその姿を消した。

ヴェロニカ > 「こればっかりは災難にあったと諦めるしかないわね。
魔族相手に単騎で張り合えるようなイカれた奴がいたなら、きっと掘り出し物だったでしょうけど、アンタらに潰される程度のツキならあり得ない話ね」

戦いの趨勢は喫した以上、この場にいる人間は全て形は違えど魔族の糧となり、王国に帰還することは叶わないだろう。
それならば遠慮することはないと開き直り、目の前の男を倒せば周りは手出しする気も失せるだろうかと考えたところで、周囲に現れる炎の魔法陣に気づく。

「これは…転移魔法?バカにしてっ……何っ!?」

咄嗟に、魔法の性質を大雑把ながら見抜くと、即座にそれの対応のために指を動かす。
周囲に炎の魔力が満ちるならば、相反する水の元素からなる魔力で阻害をしようと指で魔法陣を描こうとして、続く男の名乗った『格』に、挑発的だった表情に動揺が走った。
それだけなら問題なく元素の召喚は間に合っただろう。
加える事の正体の隠蔽による魔術の制約、心の底に浮かんだ畏怖するべき魔王に抗することができるかという疑念が動作を僅かに鈍らせて、魔力比べは成立することなく転移が発動する。
遅れて召喚された多量の水の元素、つまりは天井から降り注ぐ瀑布は近くにいた不埒な魔族を吹き飛ばしたが、それはこの場から消えた二人に影響するものではなく。

「……『大罪』の魔王、それも『憤怒』だなんてね。
呑気に僻地で珍獣を囲ってたらいいのに、わざわざ人の商売を荒らしにくるなんて、タチが悪いのは噂通りみたいね」

気が付けば砦にある、今や使うもののいない総司令の部屋に転移させられていた。
依然として魔族の姿を解放はしていなかったが、魔術を行使しようとしたことでその能力はおおよそ露見してしまったことだろう。
目の前に立つ長身の男を見上げる視線は、口ぶりながら顔に浮かぶ表情は苦々しい。
知らしめられているその実力を知らないわけはなく、深紅の瞳に映るのは強い警戒の光だった。

サタン > 炎が舞い上がり二人の姿が消えて後に降り注いだ瀑布に飲み込まれた愚かな魔族達は、ようやくそこでこの娘が同じ魔族だと気が付いただろう。
そして、お預けを喰らった事に加え、置き土産の洗礼に業を煮やした彼らが残る人間達に何をするかは最早わかりきった事だろう。

欲望の奏でる五月蝿いノイズから遠い執務室で
男の正体を知り、警戒の色を強く見せる娘の紅瞳の視線を気にするでもなく、娘に背を向けて軽く室内を紅瞳は見回しながら、右手はコートの内ポケットに収めていた巻き煙草を取り出し、口許へと運んだ。
指先が炎を灯し切先に炎を宿せば、紫煙をその肺へと深く吸い込み満たせば、吐息に乗せて紫煙は室内に広がりを見せ。

「次はもう少し商機を見極める事だな。戯れで行う商いなど上手くいくはずも無かろう。
で…最早身分を隠す必要もあるまい?
我に名乗らせたのならば、貴様もその名を名乗っても良いと思うのだがな?
それとも、名も知らぬ小娘として魔王の捕虜として慰み者にでもなるつもりか?」

無論、名乗らないのならば言葉通り、戦利品としてその身を喰らってやるだけのこと。
先ほど見せた水の元素による召喚など抵抗はあるだろうが、それら全て叩き潰すだけだとの心算。

司令用の部屋だけに聊か豪奢な寝台など目にすれば、男の脚は歩を進めてその寝台に腰を下ろし、既にその正体は露見している娘へと紅の視線を向け、娘がとのような手を取るのかを双眸は面白げに眺めていた。

ヴェロニカ > 執務室の中では、辺りの喧噪は遠く、転移魔法でやってきた二人だけの空間は非常に静かだった。
背を向けて部屋を見渡しながら煙草を吸い始める男には舐められていると感じながらも、うかつにその背中を襲うことができない。
やっと周りの視線を気にせずに済む環境に移動できたにも関わらず、存分に力を振るって叩きのめせないことに、内心のプライドにヒビが入っていくような心地で唇を噛んだ。

「た、戯れっ…!?そっちが台無しにした分際で言ってくれるわね…!」

男の言いぐさには、魔族たちの前で抑え込んだ怒りも相まって、見る見るうちに腹を立てているのが態度に出てしまう。
そして男に促されるままは少し癪ではあるものの、人化の術を解いていく。
頭から伸びる角と、背中から広がる皮膜の翼が取り戻されていくと、ベッドに腰を掛ける男の方へとずかずかと歩み寄りながら再び口を開き。

「ヴェロニカ・オンシジウム・スターチス、『支配の眼』と言った方が通じやすいかしらね?
まぁ魔王だろうと関係ないわ、配下も連れずあたしと二人きりになったのを後悔させてあげる!」

努めて冷静な態度を保ったまま、自ら名乗っていく。
そしてベッドに余裕綽々な態度で座っている男に向けて、魔法陣が描かれつつある深紅の瞳を向けた。
瞳から放たれる魔力は男へと分け与えられていき、それに潜む呪詛が、同時に男を縛ろうとする。
恐らく正面切って戦ってはただでは済まない、そういう判断から虎の子ともいえる術を不意打ち気味に放つことにした。
ただし負担の大きい現状では魔法陣が完成されるまでにそれなりの猶予があり、術自体も高い抗魔の力や魔力があれば跳ね返すことできるものである。
高いプライドからわざわざ名まで告げた術の性質に思い当たることさえできれば、戦い慣れていれば対処はそう難しくないだろう。

ご案内:「タナール砦」からサタンさんが去りました。
ヴェロニカ > 【中断です】
ご案内:「タナール砦」からヴェロニカさんが去りました。