2017/04/26 のログ
ご案内:「タナール砦」にレナーテさんが現れました。
■レナーテ > 王国軍と魔族軍の衝突が繰り返される砦、魔族に奪われてから数日経っても取り返せずにいた事で、此方側から動かざるをえない状態に陥る。
そこから進行されれば、進路には自分達の帰る場所があるのだから。
「……終わりましたね、1班ごとに固まって内部の掃討を行いましょう。危ういなら直ぐ撤退です」
大型の隼、リトルバードの部隊が頭上から火薬の詰まった樽を落とし、中に仕込んだ起爆装置が衝撃で火花を散らす。
強烈な爆発がそこらで繰り返され、開けたところで騒いでいた魔物はバラバラに吹き飛び、静かになったところだ。
とはいえ、まだ建物の中はわからない。
爆発で壊れた門の前へとやってくると、魔法機剣を手にした少女達も姿を表し、死角を埋め合うようにしながら内部に突入していく。
必ず枚数は有利な状態で戦え、危ういならば直ぐに退け。
組合長に教えられた言葉通り、絶対の勝利以外は狙わない。
指揮を執るレナーテも、数人の少女と共に建物の一つへと入る。
槍のように銃剣を突き出す構えのまま入っていけば、素早く辺りを見渡す。
自分はこっちを、貴方達はそっちをと、ハンドサインで指示を出せば、少女達が頷き、程々の距離感に離れながら動く。
浮き駒が出ないようにしながら、荒れ果てた食堂内を歩き続けた。
ご案内:「タナール砦」にフォークさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にフォークさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にフォークさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にフォークさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にフォークさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にフォークさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にフォークさんが現れました。
ご案内:「タナール砦」にフォークさんが現れました。
■フォーク > (戦の時代が変わったのかもしれんな)
フォーク・ルースは爆発する戦場を眺めながら、そう思った。
魔物たちが玩具のように消し飛んでいく。結果として大勝利だが、戦場で働いたという実感は薄かった。
個人の武や魔術が勝敗を決める時代ではない。
フォークは新しい時代の流れをひしひしと感じていた。
そしてその流れは、旧い軍人である己を押し流すほどのものであることも理解できた。
「こりゃ転職も視野に入れるべきかねえ」
苦笑交じりに呟いてみせる。
その笑みには、どんな生き方をしても戦場に戻ってしまう自分の滑稽さへと向けられていた。
他の仕事などできるわけがない。戦場で死ぬ。それがフォーク・ルースという男のさだめなのだ。
(おや?)
すでに自分が必要な戦場ではない。隊列からこっそりと抜け出した男は、一人の少女が部下らしき少女たちと食堂へと入っていくのを見た。
(俺が敵なら、指揮官が一人になったところを衝く)
男は少女が一人になったところを見計らい、こっそりと影に隠れて見守ることにした。
気配は丸出しなので、心得があるならすぐに気づくことだろう。
■レナーテ > ティルヒア戦争で制空権という言葉を知ったが故に、戻ってから直ぐに隼を見つけることを優先した結果は上々だった。
ただ、こうして歩兵で内部を制圧するのは…時折現れる強者が、こうした戦法では死なないからだろう。
魔族の国の奥ならば、この程度の爆撃でも涼しげに立っている輩もいるはずだと。
『敵影なし!』
『敵さんいないよー!』
戦場に似つかわぬ幼い声が幾つか響く、食堂の中は誰も居ないようだった。
ほっと安堵の吐息を零すと、回りを仲間の少女が見張っているのを確かめてから見取り図を取り出す。
この近くには、地下牢獄があり、そこに捕虜を捕らえられるようにされている。
捕虜と聞けば聞こえはいいが、人間でも魔族でも、女を食いものにするために放り込む檻としか見ていない。
小さく溜息を零しつつ見取り図をしまうと、何かの気配に気づく。
誰かに見られているような……そんな感じ。
訝しげに眉をひそめつつ、魔法銃を背中に回すと、ケープの中に手を突っ込む。
気配のする方角を見やりながら手にしたのは、二つの液体がバラバラに収められた瓶。
カシュっと音を響かせながら蓋を捻ると、中の境目が破れ、液体が入り交じる。
「……隠れてるなら出てこないと、怪我しますよ! 投降するなら危害は加えません!」
腹部についたホルスターからフリントロックピストルの様な魔法銃を抜き、銃口に魔法陣を浮かばせつつ、気配の方へとゆっくり歩く。
援護に入れる程度に離れた少女達は、彼女の張り上げた声に気付き、彼女のもとに集結していく。
気配のする方へゆっくりと進み、物陰が見えるところまでくれば、足を止めて様子をうかがうだろう。
■フォーク > どうやら少女たちは建物内の探索か見張りをしているようだ。
(そうかい。魔物が潜んでいる様子はないかい)
男が安堵したような、ちょっぴりつまらないような気分になり鼻の下を擦った。
するとリーダーらしき少女が紙を取り出した。そしてその中身を眺めてからため息をつく。
その様子を見て、男は即理解した!
(なるほど。ここはぐるぐると人と魔物とぐるぐる陣地の持ち主がかわる場所だ)
つまり
(魔物が残した財宝が眠っている可能性が高い……?)
所属した部隊でこんなウワサを聞いたことがある。魔物たちが魔界から持ってきた財宝がタナールには眠っていると。
(もしかしたらあの娘、その財宝の地図を眺めていたのではあるまいな)
すると少女がこちらに銃を向けた。やはり気づかれたか。
しかも銃口には魔法陣まで浮かんでいる。魔法にまったく知識のない自分には対処の仕方も思い浮かばない。
ただ、これだけは思った。
(なんとかして、あの地図を手に入れよう。せっかく戦場に来たんだ。少しはいい目に合わないとな)
男は両手を上げて、物陰から出ていく。
「おーーーっと、慌てなさんな。俺は味方だぜ。ほら、人間だ。しかもこんなに男前!」
にっかりと精一杯の作り笑顔を見せよう。
「お前さんたちが建物ん中に入っていったのを見かけてな。心配だから後からこっそり見守ってたんだぜ!」
■レナーテ > そこらで敵影無しの声が響き渡るが、時折唸り声と魔法の放たれる静かな音が重なり、静寂に包まれる。
静けさがずっと続くようになり、それは、ここらに居た敵は一掃されたということになる。
物陰から飛び出てきた姿はかなりの巨漢、使い込まれた皮の鎧姿から冒険者か或いは傭兵か、そんなところだろうと思うところ。
両手を上げているならば攻撃することはなく、銃口に浮かんだ魔法陣は消えていき、やってきた他の少女も、切っ先を向けることはない。
「……お気遣いありがとうございます。でも危ないですよ? 魔族と衝突する最前線ですから、あと…一応、みんな所有者がいる娘なので、手を出さないでくださいね?」
男前という自称には答えること無く、丸メガネの向こうの瞳から僅かに緊張がとけていく。
集落の外に出た時のために、組合に所属した奴隷と立場をとる娘が殆どだ。
あくまで形式的なもので、実行力が試されたことはないが。
断りの言葉を入れると、側に居た少し背の高い少女に瓶を渡す。
「中身混ぜちゃったので、遠くに投げ捨ててください」
任せてと、赤毛の少女が剣をしまい、オーバスローで遠くへと放る。
一間おいて瓶が砦の外で木に激突すると、まばゆい光が一瞬溢れる。
彼が出てこなければ、それで無力化しようという考えだったのだろう。
『レナちゃん、地下どうするの?』
「二班でいってください、中は未確認なので要注意です」
他の班の少女達の問いかけに答えると、8人ほどの少女が地下へ通じる階段へと向かっていく。
「まだ完全に全て確認が終わったわけではないですから…何かご用事がないなら離れたほうがいいですよ?」
再び彼へと視線を戻せば、苦笑いを浮かべて告げる。
こうして見上げると、身長差故にとても自分が小さいような気がしてしまう。
ピストルをホルスターへ戻しつつ、左手は背中に回した魔法銃へと伸びる。
可愛らしい格好と小柄な体つきのわりに、妙に銃の捌き方が堂に入っているように見えるかもしれない。
■フォーク > 「ははは、こっちは男の子だもんね。どんなに危なかろうが、レディーのガードは義務なのです!」
男の子というには幾分……いやかなり歳を重ねているが、男はユーモアたっぷりに受け答えをしてみせる。
根が明るいのは生まれつきなので、取り繕うのに特に苦はなかった。
こちらに敵意がないことを理解したのか、少女が部下に瓶を投げさせる。
強烈な光が生まれた。
(この光、戦場で見た爆発に似ているな)
もし彼女が今回の戦の軍略を描いたとしたら、彼女は指揮官の中でもかなり中枢にいる人物なのかもしれない。
ならば尚更、このタナールの財宝を知っている可能性が大だ。
すると部下の一人がリーダーの少女を「レナ」と呼んだ。どうやらレナが彼女の名前または通称のようだ。
彼女の部下たちが地下へと降りていく。
(んな~るほど、ここで俺を牽制しておいて部下たちに宝を探させる気か。そうはいくかい)
男はコホン、と咳払いをした。
「いやね。俺は傭兵でこのタナールにも何度も来ているから知ってるんだ。この建物の秘密を……」
そして声を潜める。
「もしかしたらあんたたちが探しているモノかもしれねえ。俺たちがこの場所を占拠できてる間に、見つけちまった方がいいんじゃないかい?」
残ったメンバーをぐるりと見回して。
「行くんなら、俺とレナ……あんたと二人きりがいい。少数精鋭の方が動きやすいからな。残りのメンバーはそうだな、建物の周囲を探索するといいかもしれねえぜ」
分断。これが狙いである。後はゆっくりと仕掛ければいい。
■レナーテ > 「……変わった人ですね」
明朗に冗談の様な言葉を交える彼に小さく溜息を零したが、浮かべる表情は、その様子に子供の戯れを見るような、暖かな苦笑い。
この砦に宝があるとは思いもせず、ただ捕虜や敵が居ないかを探っているだけの言葉も、何やら変な勘違いを煽ったようだ。
咳払いの音に、キョトンとしたまま彼を見やっていれば、建物の秘密のフレーズに、眉がピクリと動く。
(「組合長からは聞いたことが無いですが……何か隠し部屋があるのかもしれませんね」)
それなら、そこに魔族を潜ませ、奪還後に不意打ちに使うことが出来る。
それは阻止せねばならないと思えば、彼の言うとおりその部屋を探したほうが良さそうだと考えながら頷く。
しかし、彼が言う二人きりを聞いた瞬間、周囲の少女達の血相が変わる。
先程瓶を投げた少女に至っては、剣のトリガーに指をかけ、鍔の辺りから赤い魔法陣を広げていた。
『何でレナとだけ行こうとしてるんだ? こいつはな――』
「…大丈夫です。もう過ぎたことですから……閉所のようですから、そうしましょう。一応、リトルバードの娘達に周囲偵察をするよう信号弾を上げてください」
今にも切りかかりそうだった少女を手で制しつつ、苦笑いで告げれば、少女は舌打ちしながら魔法陣を消していく。
他の少女達も心配そうに彼女を見やるが、大丈夫と笑みを浮かべながら地下階段の方へ向く。
「では行きましょうか、そちらのほうが内部に詳しいようなので、先導をお願いできますか?」
彼の狙う分断に乗ったようだ。